中国の人権侵害に関する情報がつぎつぎに明らかになっている。
今月はじめ、ウイグルの強制収容所でつくられた人毛のかつらがアメリカ税関で押収されるという事件が起きた。
《米税関・国境警備局は1日、「製造過程で強制収容・労働との関係や人権侵害が疑われる」として、中国の新疆ウイグル自治区から輸入されたかつらや付け毛などの毛髪製品13トン、計80万ドル(約8600万円)相当を押収した。製品が、イスラム教徒の少数民族ウイグル族らが強制収容されている施設や関連工場で作られたものとみている。
同局は声明で「非常に深刻な人権侵害の疑いがある。摘発は非人道的な商取引を認めない明確なシグナルだ」と強調した。製品に使われた毛髪が収容者自身のものである可能性も指摘されている》
https://mainichi.jp/articles/20200702/k00/00m/030/056000c
さらにおぞましい話が続く。
「ウイグル女性に避妊器具や不妊手術を強制──中国政府の「断種」ジェノサイド」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93907.php
この記事では、新疆ウイグル自治区の、1年間に18~49歳の女性の14~34%に不妊手術を実施する目標を掲げた地区を取りあげ、非人道的な「断種」キャンペーンを明らかにしている。
当局はあの手この手でウイグル人の出生を抑え、漢民族の比率を上げている。
《新疆ウイグル自治区は、中国政府の猛烈な同化政策の対象にもなっている。近隣地域から漢族(特に35歳以下の若い家族)を大量に移住させて、少数民族の文化的・人種的な希薄化を図っているのだ。2015~18年に新疆ウイグル自治区に移住してきた漢族は200万人にも上る。地域当局は、漢族男性とウイグル人女性の結婚も奨励している。》
中国政府は、ウイグル人の子孫を減らしていき最終的に民族アイデンティティを消滅させることを狙っているとしか思えない。
ちょうど1年前、証言を聞いたメヒルグル・トゥルスンさんも、収容所で注射を打たれ、薬を飲まされ、《アメリカのクリニックで検査したら、「あなたがこの先子どもを産むことは90%できないだろう」と言われた。収容所で注射されたのは妊娠機能を阻害する薬だったのかもしれない。》と語っている。
ジェノサイドである。
ジェノサイドとは、「国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもつて行われた」次の5つの行為を意味する。
(a) 集団構成員を殺すこと。
(b) 集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること。
(c) 全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。
(d) 集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること。
(e) 集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。
「断種」政策はdで、中国のウイグルに対する政策はこれらすべてにあてはまる。まぎれもなく「ジェノサイド」だ。
米政府は9日、中国西部の新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒に対する人権侵害に関わったとして、中国の高官らを制裁の対象にしたと発表した。
正当な制裁である。
国際社会は中国に断固とした抗議をすべきだ。
漢民族へも自由の抑圧が強まっている。
2015年7月に中国当局による人権派弁護士300人以上の一斉拘束で逮捕された王全璋弁護士が、1ヵ月ほど前にメディアの取材に応じた。
共同通信がスクープとして《(6月)19日までに共同通信の単独取材に応じ、取り調べの際に当局者から拷問を受け、罪を認めるよう迫られたと証言した。要求を拒むと「刑期を延ばす」と脅されたという。》と報じている。
https://www.youtube.com/watch?v=d7DJmgZdV3g
王さんは、地方政府による強制立ち退きや、法輪功迫害の被害者の弁護を担当したところ、国家の転覆を図った罪で懲役4年6ヵ月の実刑判決を受けた。その後3年以上、家族にも安否を明かされなかった。家族のもとに帰れたのは今年4月27日のことだった。
NHKには以下のように証言していた。
まず取り調べの不当性について―
「朝6時から夜9時まで手を上げた状態を強いられ、1ヵ月ほど続き、苦痛だった。警察は私の顔につばを吐きかけたり、蹴ったりした。自分の命がロウソクの火のように消えていくのを感じた。
取り調べでは拷問を受け、罪を認めるよう強要された。協力すれば刑を軽くすると持ちかけられ、弁護士の資格も保障すると説得してきた。」
しかし、王さんは一貫して罪を認めず、当局が手配した弁護士を拒否した。裁判は3年以上開かれず、その後行われた裁判も不公開だった。
「法廷では6~7人の警察が私を押さえ込み、裁判を強行した。当局者はためらいなく自らが制定した刑事訴訟法を踏みにじった。」
王さんは恣意的な法運用で人々の自由が奪われる危険が高まっているという。
「“国家の安全”という言葉は非常に幅広くあいまいな概念だ。当局は勝手に法を拡大解釈し、自らに権力を与え法律の制約すら守っていない。とても恐ろしい事態だ。
人権弁護士は権力を握る者が、法に基づいて統治を行い、市民が本来持つべき権利を保障するよう求めているだけだ。
我々こそが社会の安定や公正・社会制度を守っていて、破壊しているわけでは決してない。」
公然と海外メディアの前で当局を批判するのは非常に危険である。
王さんの勇気を称えたい。
もう一人、屈しない人を紹介しよう。
5月のブログで、「売国奴」として集中的な攻撃を受けている、武漢在住の作家、方方(ファンファン)さんについて書いた。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20200529
習近平応援団が十代の高校生まで駆り出して攻撃する方方さんだが、彼女、オンライン日記でこんなことを高校生に語りかけている。
「あなたもきっといつか分かる時が来ます。答えはあなたの内部から必ず出てきます」
方方さん自身、1971年、16歳のとき、文革の公式宣伝を信じ込まされていたという。
「その時に、文革が大惨事だという人がいたら、殴りかかっていたでしょう」。
自分を口汚く罵る若者たちを、ここまで信頼できるとは・・・
暴風が吹き荒れるなかでも、しなやかに闘い続ける人々がいる。連帯の気持ちを送りたい。