近所を自転車で通りかかると、わっと目に飛び込んできたサツキの花。空の暗い雲を吹き飛ばすように咲いている。
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香港の裁判所は16日、民主派の主要メンバーらに実刑判決を言い渡した。
19年8月に香港中心部で行われた政府への抗議デモ2件の無許可集会組織罪などで、香港紙、蘋果日報(リンゴ日報)創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏に、合わせて禁錮1年2月。
黎氏のほか民主派9人にも量刑を言い渡した。民主派団体「香港市民愛国民主運動支援連合会」の李卓人主席は禁錮1年2月。2件のうち1件の無許可デモを巡り、東大博士課程在学中の元立法会(議会)議員、区諾軒氏に禁錮10月、「香港民主主義の父」と呼ばれる李柱銘氏には禁錮11月、執行猶予2年が言い渡された。(共同)
問題になったデモは、2019年8月18日と同31日で、これまでは許可のないデモへの関与なら罰金刑で済んでいたのが、今回は実刑になった。
8月31日の集会、デモは、警察から催涙ガス弾や色つき水の放水を浴びるなか取材し、その夜繁華街が大荒れになって朝まで街頭にいた。香港取材の原点であり、忘れられない貴重な体験だった。
ますます厳しい立場に立たされる民主派だが、体調に気をつけて乗り切ってほしい。
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先日受けたPCR検査の結果が、翌日メールで届いた。
「この度高世 仁様の新型コロナPCR検査の結果は、陰性となりました。」
「陰性となりました」はいいのだが、次に「重要な基本的注意」があり、いろいろと書いてある。
そのなかに、こんな文章が。
「※本検査の精度は当検査センターの基準を満たしていますが、検査結果の正確性・完全性を100%で保証するものではありません。
※本検査の判定が陰性であっても、SARS-CoV-2感染を否定するものではありません。」
今回検査を受けたのは、近く取材で、高齢者が集まる場所に出入りする予定だからだ。取材先に不安を抱かせないための検査である。「陰性証明」くらいは出るのかと思ったのに、これでは検査の目的が達成されないではないか。
要は公的な検査ではないからだろう。政府や都は、いつまで検査を民間任せにするつもりなのか。
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ウイグルで何が起きているかをさぐるドキュメンタリー「中国 デジタル統治の内側で~潜入・新疆ウイグル自治区~」(原題:Undercover: Inside China’s Digital Gulag)のつづき。興味深い部分をつまんで紹介する。
N:ウルムチで行方不明者の話を聞こうとしましたが、人々は怯えて口を開こうとはしませんでした。ようやく英語を話すウイグル族の男性に取材ができました。
ウイグルの男性「あなたを信じても?」
私:もちろん大丈夫です。なぜ信用できないと?
「あなたが『回し者』ではないかと怖くなってしまって」
私:政府の回し者?違います
N:男性は、両親が施設に収容されているといいます。
私:ご両親が収容施設に?
「ええ、珍しいことじゃない」
私:拘束の理由は?
「分かりません。私が無事なのは、運がいいだけ。神様のおかげでしょう」
私:あなた自身も、いつ拘束されるか分からない状況だと?
「そうです。誰にも分かりません」
【2014年 新疆ウイグル自治区】
N:こうした政策の始まりは2014年。この年に習近平主席は就任後はじめて新疆ウイグル自治区を訪ねました。視察を終え、ウルムチを発った当日に爆発事件が発生。その数週間後の事件と合わせて、数十名が死亡したのです。死者、負傷者の多くが漢族でした。
【ダレン・バイラー】(ウイグル文化研究者)
「習近平氏はこれを自分自身への攻撃だと感じたのでしょう。そしてウイグル族の問題は放っておいてはだめで、対処が必要だと考えたのだと思います。」
N:この前年の2013年も、北京の天安門付近など、各地でウイグル族が関わったとされる事件が続きました。政府は分離独立を目指す勢力の犯行だなどと非難しました。暴力に走ったのは一握りのウイグル族です。しかし、習政権は自治区のイスラム教徒すべてをテロリスト予備軍として扱うことを決めたようでした。
【ダレン・バイラー】
「政府は市民を点数で評価します。安全な人物は100点、そこから条件によって10点づつ引いてゆきます。例えばこんな条件です。〈ウイグル族である〉、〈15歳から55歳である〉、〈イスラム教の知識がある〉、〈日常的に祈る〉、〈外国に親族がいる、パスポートを持っている〉。すぐに政府は、安全でないとみなされる人物が非常に多いと気づきました。そこで収容施設を建て始めました。」
N:中国政府は当初、施設の存在を認めませんでした。しかし、1年のあいだに刑務所のような建物が大量につくられていることが衛星画像によって明らかになったのです。
これは建設中の収容施設と見られる建物の映像です。施設は1200ヵ所にものぼると見られています。
N:リーはウイグル族のタクシー運転手から話を聞きました。
Q:施設に入れられた友人は?
「大勢います」
Q:帰ってきた人は?
「誰もいません」
Q:どれくらいの人が施設に?
「自治区全体で100万人は超えるでしょう」
N:100万人は自治区のウイグル族の1割近くとなります。政府は否定しますが、もっと多いと考える欧米の研究者もいます。
N:施設の外にいる人もまた標的となっています。世界に変化をもたらす中国の先進技術。彼らはその実験対象となっているのです。ここ数年でウルムチは中国でも指折りのハイテクの町に発展しました。習近平主席は中国の未来に大きな野望をもっています。
習近平「中華民族の偉大なる復興は順調そのもの。世界をリードする科学技術大国へと突き進みましょう」
N:現在およそ1400社のハイテク企業が新疆ウイグル自治区に集まっています。その理由を探りました。新疆ウイグル自治区のデジタル監視システムに関わっていた一人のエンジニアに話を聞くことができました。
エンジニア「ウイグル族は人間扱いされない。中国政府にとっては、研究目的の実験動物のようなものです。ウイグル族の情報を集めるのは簡単。まず、家の前にカメラを設置する。そして彼らの外出先でIDカードをチェックする。商業施設はもちろん、自分の居住区に戻るときも、IDカードの読み取りを義務づけさせる。情報はすべて公安部門のデータベースに蓄積されます。」
N:ウイグル族の居住地域は巨大な実験場と化していました。
【ダレン・バイラー(ウイグル文化研究者)】
「政府がデータの収集を始めたのは、2017年。あらゆる技術に活用しています。」
N:ダレン・バイラーはウイグル文化の研究者。新疆ウイグル自治区に数年間暮らしていました。
「当局は自治区の住民全員に警察署でデータを登録するよう呼びかけました。DNAや血液のサンプル、指紋などはもちろん、マイクに向かってしゃべらせて音声パターンを採取したり、顔のスキャンも行います。」
N:現地では民族間で親戚のような付き合いをさせることも進められています。当局がウイグル族の家庭に漢族を親戚として割り当て、泊りがけで訪問させるのです。
漢族「民族の融和が進み、今や一つの家族に。彼らが私の新しい『親戚』です!」
N:当局が親戚として送り込んだ漢族の訪問者たち。実態はスパイだと見られています。
【ダレン・バイラー】
「この親戚たちは、監視対象となる人々の経歴などを示す情報などを集めて、データベースに入力するのです」
N:また、ウイグル族の住宅の多くは、識別コードを使って個別にマークされています。
「定期的に警察官がやってきて、コードをスキャンします。すると、スマートフォンに居住者のデータが表示されるのです。警察官がデータにない人物が住んでいないか確認します。」
N:調べるのは家庭内のことだけではありません。各所にある交番ではスマートフォンのチェックが行われています。
【共産党幹部】
「求められたら、手渡すしかない。警官はケーブルを繋いでスマホのデータを読み取る。その結果拘束されたウイグル族が大勢います。」
N:いまやウイグル族はスマートフォンにコンテンツの監視用アプリをインストールするよう求められています。
【グレッグ・ウォルトン(サイバーセキュリティ専門家)】
「地元の警察によって開発されたさまざまなアプリが実用化され、日常生活に対する今までにないような介入が行われています。」
(つづく)