映像でウイグル族ジェノサイドに迫る3

 おととい、名古屋出入国在留管理局で3月に亡くなったスリランカ女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の葬儀が名古屋市内で営まれ、妹2人ら遺族や関係者ら約100人が参列し、ウィシュマさんに最後の別れを告げた。

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妹2人が泣きながら、2か月経つのになぜ姉が死んだのかがわからないと訴えた

 「ウィシュマさんの妹である次女のワユミさん(28)と三女のポールニマさん(26)はこの日午前、ウィシュマさんの遺体と初めて対面。変わり果てた姿に「姉でないようだ」と泣き崩れた。2人は1日に来日した後、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため14日間の自主隔離生活に入っていた」(毎日新聞

 ドメスティックバイオレンスの被害者で保護が必要な一人の外国人女性を、刑務所より劣悪な環境に長期収容し、体調の悪化を訴えてもまともな治療やケアを与えないまま死に至らしめた。この真相究明を政府はかたくなに拒否している。

 入管法改正案は、今よりもっと入管の裁量権限を大きくするもので、とうてい認められない。断固廃案にすべし。
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 ウイグルで何が起きているかをさぐるドキュメンタリー「中国 デジタル統治の内側で~潜入・新疆ウイグル自治区~」(原題:Undercover: Inside China’s Digital Gulag)のつづき。興味深い部分をつまんで紹介する。3回目

【リアン・テクノロジー社】

新疆ウイグル自治区での政府の活動を技術面で支える代表的な企業の一つが、リアンテクノロジー社です。

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「当社は新疆ウイグル自治区の通信環境をサポート。5Gを基盤とする情報社会の構築を目指します。」(リアン社の宣伝)

当局による万全な監視体制の構築にリアンの協力は欠かせません。
新疆生産建設兵団と協力し、安全な街づくりに貢献。カシュガルでは地元の公安部門に協力。治安維持システムの構築と運用をサポート。」

取材を続けるリーは技術に関心のある実業家を装って、リアン社の幹部に面会しました。

 

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【リアン社員】
自治区の治安関連業務は国内における最優先事項です。
当社は「顔認証」技術を提供します。

(別のリアン社員)
「どんな小さな道にもカメラが設置されています。
複数のカメラで全方向をカバーする。死角はありません。
一見普通のカメラですが、前を通り過ぎるだけで、あらゆる情報を収集されてしまう。
顔に浮かぶ表情や行動までも分析の対象となります。」

データの分析について、エンジニアの男性は、

【(証言)エンジニア男性】
「分析結果に基づきコンピューターが人物を分類。
「問題なし」「要注意」「危険」の3種類に仕分けます。顔認証システムは表情を分析。緊張した人を見つける。走っている人も危険人物とみなされる。

治安機関はそうした人々を拘束、再教育施設などに収容してしまいます。」

中国政府とハイテク企業との協力関係は、それだけにとどまりません。

リアン社員
「ここのセキュリティ産業は、世界で最も洗練されています。
高度な研究開発や実験も行われています」

Q:どんな形で保安や防犯に役立てているんですか?

「これ以上詳しいお話はできません。治安に関わる情報なので」

宣伝「リアンは情報活用のためのクラウド型データルームの管理を担当。」

幹部が回答を避けたのはこの最新式のシステムに関することかもしれません。

宣伝「政府の情報システムの一層の効率化に貢献。完璧な運用管理体制を提供します」

エンジニア男性
「コンピューターのシステムが巨大な貯水池の役割をします。あらゆるデータが流れ込んでくるのです。」

AI人工知能を搭載したシステムが、怪しげな動きを未然に察知しようとする。その結果、あらゆる行動が監視されることになるのです。

「撮影した写真や通話記録、位置情報など、スマートフォンの情報は何でも収拾されます。
『一体化統合作戦プラットフォーム』と呼ばれるシステムに、ウイグル族のデータを蓄積し解析にかけるのです。
その結果、『怪しい』とされた人は拘束されます。

グレッグ・ウォルトン(サイバーセキュリティ専門家)
「この地域は、中国のハイテク企業が住民をコントロールするための新しい技術を披露する、格好の場となっています」

新疆ウイグル自治区に見られるような、最新鋭の技術と厳しい取り締まりの組み合わせは、世界中どこを探してもみつからないでしょう。」


宣伝「各国への営業を強化し、顧客を拡大します。」

グローバルなAIビジネスは、莫大な富をもたらします。中国のみならず世界で巨大なマーケットを生み出す可能性があるのです。

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社員「新疆ウイグル自治区のシステムは中国国内の各地に広がっています。自治区と隣接している中央アジア諸国では、テロ対策や治安強化役立つ「商品」の需要が高い」

エンジニア
「監視カメラ網や顔認識技術、データ管理のシステムなど、人々を抑圧する数々のツールがここで導入され、ウイグル族で実験し、完成度を高め輸出されていくのです」

社員「ありがとうございました」

グレッグ「世界的な影響もありえます。いまここでは新しい形の統治が生まれようとしています。それは先進的な予測アルゴリズムで人々を監視し、管理します。こうしたシステムが世界で輸出されれば、自由や民主主義に著しい打撃を及ぼすことでしょう。」

監視システムを強化する政府の仕事を請け負うハイテク企業はリアン社だけではありません。世界各地に進出している中国の通信機器大手ファーウェイもまた新疆ウイグル自治区で活発に動いています。

「常に変化し、一歩先を行く・・

ファーウェイは地元の公安部門に技術サポートやデータベース管理などのサービスを提供しています。新疆ウイグル自治区の安定や安全に貢献した企業という評価も受けました。
2019年の4月にはファーウェイはAIを活用した治安対策に関する事業契約を結んだと報じられました。

今起きている問題について、リアンとファーウェイに問い合わせましたが、回答はありませんでした。

カシュガル

政府がイスラム教徒への締め付けを戦略的に強める中で、ウイグル族の文化そのものが脅かされています。

2週間潜入取材を続けてきたリー。最後に向かったのはウイグル文化の町、カシュガルです。
彼はモスクを訪ねました。

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「モスクの中にイスラム教徒の姿がありませんでした。なぜモスクへ行かないのかと尋ねると、人々はこう答えました。「トラブルに巻き込まれたくない」と。

ウイグル族の文化への破壊行為は、エスカレートしているようです。カシュガルでは伝統的なウイグル族の住宅が取り壊されていました。政府の近代化プログラムの一環です。
衛星画像にはさらに象徴的な破壊行為が。

モスクなどイスラム教の関連施設が一部または完全に取り壊されているのです。

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私たちが中国政府に見解を問うと、こんな回答が返ってきました。

ウイグル族への迫害というが、事実無根である。現地でのテロ対策は、信教の自由を守り、住民の人権を向上させるために行われている。対策は法に則ったものだ。教育センターでは研修生の人権が保護され、休みも取得できる。虐待はきびしく禁じられている。対策は効果をあげ、新疆ウイグル自治区の治安は大きく改善した。すべての民族が融和し、安心して暮らしている。」

ウイグル族などイスラム教徒の次世代は絶え間ない圧力のもとで育っていきます。

ダレン「中国政府はウイグル族の社会を結び付けてきたものを壊しています。子どもたちを伝統文化から切り離し、模範的な中国市民に仕立て上げる狙いのようです。」


ウイグル族の子どもたちは教室で自分たちの言語や文化を学ぶ機会を奪われつつあるようです。

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「私の名前はサニヤ。

かつて習主席が訪問した小学校です。映像では生徒たちがうれしそうに語っています。
「ホールに貴重な写真があります。忘れられない思い出です。

習近平指導部の政策の結果、この子どもたちの親や親族の多くが施設に収容されている可能性があります。

 (つづく)