アメリカで進むメディア不信

 アメリカ大統領選投票日が近づく中、ハリスが失速してトランプが優勢になってきたとの報道。混沌のなかにあるアメリカでトランプが支持されるわけを知りたいと思う。

 30日のNHK『国際報道』で、アメリカでメディアへの信頼度が過去最低にまで落ち込んでいることを特集していた。「リベラル」と「保守」の分断が深刻になりマスメディアもそれに巻き込まれる傾向にある。これがフェイクニュース拡散の温床にもなっているという。

目を疑うアメリカメディアの凋落ぶり(国際報道30日)

トランプ政権時代に大きな変化があった。深刻なのは支持党派によって極端な違いになっていること。

 「今のCNNはトランプ批判ばかりで、私の時代だったら、記者を呼び出して『やめろ』と言ったでしょう」と報道の変わりようを語るのは、元CNNワシントン支局長でホワイトハウス国防総省を取材したジョン・トーリス氏だ。

国際報道30日より

 かつてはCNNは抑制的な報道につとめたものだが、今は記者やアンカーがしばしば自分自身の意見を語り、ニュースの内容が挑発的になっているという。また視聴者もそういう内容の番組を好むようになっている。

 深刻なのは、事実関係ですら一致しない状況になっていることだ。例えば先日の巨大ハリケーンの被害で、ワシントンタイムズ(統一協会系の日刊紙)には「十分な支援が届かないのはバイデン政権が資金を不法移民の支援に流用したため」と報道。これをNBCニュースが「トランプ陣営の虚偽の主張だ」と反論している。

 こうしたなかアメリカでのメディアの信頼度はここ数年で急落している。とくにトランプ政権時代は共和党支持者の不信感が募り、近年は民主党支持者のあいだでも信頼度が低下している。インターネットの台頭で人々は自分自身のメディア、自分だけの小さな世界を見つけ、それで大手メディアを無視したいと思うようになったという。

 メディア不信に対して、市民からの寄付で運営する非営利の報道機関が存在感を増している。「調査報道センターCIR」(Center for Investigative Reporting)では調査報道を地道に行っている。デビッド・コーン支局長はCIRのポリシーを「重要なのは中立性でも客観性でもなく、正確であることです」と語る。「立場」ではなく、確信できるまで調べ上げて明らかにした真実を伝えたいという。

 大手メディアからも信頼回復をめざす動きがある。アメリカを代表するニューヨークタイムズ紙はトランプに対して厳しい論調で知られている。自らを反省するのはマイケル・シアー記者だ。

今こそ信頼を回復しなければというシアー記者

 過去の選挙でトランプ氏について多くの報道を行ってきたが、「人々の中で何が起こっていたのか、トランプ氏が人々の擁護者となり人々の声を聞く人物だと考えられていた事実を私たちが十分に理解していたとは思えません」と語り、今回はできるだけ両候補を公平に調査、報道するよう心掛けているという。

 2016年の大統領選挙で、圧倒的な数の新聞がクリントン支持を打ち出したのにもかかわらずトランプが勝ったときを思い出している。

takase.hatenablog.jp


 メディアが信頼されなくなれば、民主主義の基盤が揺らぐアメリカの地方紙がどんどんつぶれていくが、地元に新聞が無くなったところでは投票率が低下し、汚職が増えるなどの現象がすぐに表れるという。

takase.hatenablog.jp

 メディアが立場でなく、取材を尽くした上での真実に拠ることで信頼を回復するしかないだろう。

 ただトランプを批判するのではなく、なぜトランプを人々が支持するのかを掘り下げることがメディアに求められているのだろう。

takase.hatenablog.jp

 

 この姿勢はメディアだけでなく、日本の政治を見る上でも重要だと思う。ただ嫌いな政党、政治家を批判するのではなく、なぜその嫌な党や政治家は支持され、好きな政党や政治家は支持されなかったのか。その冷静な分析から本当の再生がはじまる。

自公過半数割れの衆議院選挙雑感

 10月27日の衆議院選挙は予想通り、自民・公明で過半数割れになった。これまでのように自公で何でも勝手にやることはできなくなるわけで、これからの政治の動きが興味深い。

NHKサイトより

 東京24区では有田芳生さんが、統一協会ズブズブの裏金議員で安倍派5人衆の一人、萩生田政務調査会長に「刺客」として挑んだ。いいところまで迫ったが及ばなかった。選挙キャンペーンをSNSで見ていたら、市民たちが自発的にプラカードを作って運動したり、生き生きとやっている姿がさわやかだった。有田さんは比例で当選したので、こんどは衆議院での活躍を期待している。

 「裏金議員」はどうなったか。

 「非公認」または「公認だが比例重複なし」での出馬を余儀なくされた裏金議員は44人。離党や議員辞職した議員を含め計46人。結果は半数以上の28人が議席を失った

日刊ゲンダイより

 裏金議員の過半数が落選したのは有権者の良識だと思うが、安倍派5人衆にかぎると、しぶとい。松野博一西村康稔萩生田光一世耕弘成の4名が当選し、落選は高木毅氏のみ。

 国民民主党(4倍に)、れいわ(3倍に)が躍進した一方で、共産党が10から8議席へと減らしている。そもそも岸田氏が総裁を辞めることになった政治資金パーティをめぐる裏金疑惑を暴いたのも、投票日直前に2000万円問題をスクープしたのも共産党なのだが、と理不尽感あり。企業献金の禁止など、もともと共産党が主張していたことを他の野党も言うようになって差別化しにくくなっているのか。また、参政党保守党など極右が獲得した票数には危機感を覚える。これもなぜなのか、選挙におけるアピールはどうあるべきかなど、さまざま考えさせられる。

 裏金議員で個人的に知っている人は、東京1区山田美樹東京7区の丸川珠代氏。山田氏は共通の知人がいて、一度一緒にワインを飲んで話したことがある。丸川氏はテレ朝時代のご縁。ともに落選で、こういう場合、どうするのだろう。議員としての再起を目指すのか、終活を始めるのか。

 当選組での知り合いは、鹿児島2区三反園訓千葉3区の立憲の岡島一正松野博一氏の敗れたが比例で当選)、保守党の近畿比例当選の島田洋一氏。

 三反園氏は、テレ朝「ニュースステーション」の政治担当キャスターから鹿児島県知事に出て当選。川内原発をやめるとの公約を、知事に当選したらすぐに「再稼働」OKに変身し、二期目の知事選挙では自公の支援を受けて敗北。すぐに2021年の衆院選で自民を破って当選するも、その後「二階派」に接近。今回は二期目で、無所属で自民や維新を破って当選したが、自民入りが予想されている。こういうのをヌエ的というのか。

 岡島氏は私がバンコクに駐在していたときNHK支局のカメラマンだった。彼もいろいろ渡り歩き、自由党(落)➡民主党(当)➡国民の生活が第一日本未来の党(落)➡生活の党(落)➡自由党➡立憲(落・比例当選)➡立憲(落)➡今回比例で当選。かつては「小沢側近四天王」の一人だったとか。

 島田氏は「救う会」の副会長で、福井県立大学名誉教授。「2006年春から6月にかけて、島田は八木秀次伊藤哲夫西岡力中西輝政らと会合を重ね、来るべき「安倍政権」の課題について議論した。彼らは「五人組」と称され、この時期、安倍晋三の重要なブレーンとして知られた[7]。安倍は同年9月20日に行われた自民党総裁選で初当選。9月26日に首相に就任した」(wikipediaより)。

 今回の選挙でもっとも残念だったのは、小選挙区選の投票率53.85%と、前回選より2.08ポイント低下して戦後3番目の低さだったこと。とくに若者が投票しない傾向がずっと続いている。同じ東アジアの台湾では若者の投票率が7割に達する。国民が政治に関心をもち、少なくとも選挙に参画しなくては、世の中は変わらない。

 そんななか、山形県投票率は60・82%で、国政選挙の都道府県別で5回連続トップとなったとのニュース。

 《なぜこれほど投票率が高いのか。県選挙管理委員会の担当者は「子供の頃親と一緒に投票所に行ったことがある人が多く、選挙があれば行くのが普通になっているのではないか」と話す。

 県内は3世代同居率が高く20年の国勢調査では13・9%で、5回連続全国1位総務省の調査によると、子供の頃に親と投票について行ったことのある人はない人に比べて大人になると投票に行く確率が20ポイント以上高かった》(毎日新聞

山形市の投票風景。家族で投票所に来ている(毎日新聞より)

 また、3年前の日経新聞によれば—

《なぜ、山形県投票率は高いのか?いくつかの特徴的な取り組みから分析を試みたい。

県の審議会に「若者枠」を設置

 まず、政治参加の分野において、山形県が進んでいるのは、投票だけではない。

 行政において具体的な施策を議論する全ての審議会等に若者委員(20-30代)を1名以上登用することを目標としており、積極的に若者の意見を行政に反映させている。

 実際、その達成率は徐々に上がり、令和1年7月時点で100%に達している。

遊佐町「少年議会」で子ども代表を選出

 次に取り上げたいのが、山形県遊佐町で行われている「少年議会」だ。

 これまで18年間続いている「少年議会」は、遊佐町在住・在学の中学生と高校生で構成され、遊佐町の若者の代表として「中学生・高校生の政策」を議論し決めていく。    こうした「子ども議会」は全国で行われており、その存在自体は珍しくない。
 ただ、遊佐町の「少年議会」は、大きく二つ他の地域の取り組みとは異なる。

 一つ目が、実際の選挙を通して代表選出を行うというものだ。
 一定期間、少年町長、少年議員の立候補を募集し、定数を超えた場合は、選挙を行う。
 その有権者は中高生で、各学校で、実際に選挙で使用する投票箱を使用し、本番の投票さながらに投票を行う。
 選挙を通して、自分たちの代表を選び、町の課題について議論し、実際に解決策を提示するところまで実施する。
 こうして実際の選挙の有権者になる前から、民主主義を体験し、その意義や、政治の重要性を学んでいく。出典:遊佐町少年議会 選挙広報2020

子どもを「参画状態」に

 二つ目が、実効性の伴った取り組みということだ。

 他の地域で行われている「子ども議会」は、単なる見学や模擬的なものであることは珍しくない。
 しかし遊佐町の「少年議会」は、実際に町の施策に反映され、自分たちの政策を実現するための独自の予算(45万円)も持っている。
 同様に、山形県金山町では2年に1度、高校生による議会を招集し、選挙で選ばれた高校生議員と議長が実際の議場で町長以下、町幹部に質疑する取り組みを行なっている
 実際、通学時のバス料金の負担軽減を求めた際には助成金をすぐに予算化するなど「模擬」にとどまらない事業となっているという。
 この根底には、平成18年に町が制定した「金山町自律のまちづくり基本条例」の考え方がある。
 第12条には、「満20歳未満の青少年及び子どもは、それぞれの年齢に相応しい町づくりに参加する権利を有する」と規定してある。
 なお、山形県の中でも金山町の投票率が最も高く、2017年衆院選投票率(全世代)は78.44%になっている。

 このように、山形県の取り組みは、「子どもの参画のはしご」でいう、「参画状態」になっており、投票率を上げるヒントになるのではないだろうか(逆に多くの自治体の取り組みは「非参画状態」となっている)。》

news.yahoo.co.jp

 すごいぞ山形!

 家庭そして学校での教育が重要であることは間違いなさそうだ。他の地方でも取り組んでほしい。

 

 

自民党が「裏金非公認」に政党助成金2千万円

 総選挙投票日間近に、自民党が「裏金非公認」に公認候補と同額の2000万円の政党助成金を振り込んでいたとの驚愕情報が・・・

(写真)自民党森山裕幹事長から支部会計責任者あての「支部政党交付金支給通知書」(赤旗より)

 

24日の『しんぶん赤旗』一面の続報

 これは23日のしんぶん赤旗』のスクープ。さすがにこれは各紙、各テレビ局も無視できずに報じている。

 裏金議員には厳しく「非公認」にしましたなどと言って、これでは「裏公認」もいいとこだ。

24日のテレ朝「モーニング」より

 以下、『赤旗』23日の記事―

 自民党派閥の裏金事件で非公認となった候補が代表の党支部にも党本部から総選挙公示直後に政党助成金2000万円が振り込まれていたことが22日、本紙の取材でわかりました。裏金づくりという組織的犯罪に無反省な自民党の姿が浮き彫りとなっています。

 政党助成金は国民の税金が原資です。本紙は、自民党森山裕幹事長から支部会計責任者あての支部政党交付金支給通知書」(9日付)を入手。ここには、「衆議院総選挙の公認料及び活動費として、支部政党交付金を支給します」とありました。

 支給額は計2000万円。内訳は「公認料」が500万円、「活動費」が1500万円となっています。

 裏金づくりで自民党非公認となりながら、党支部長のままの候補者が8人います。本紙は8人が代表の政党支部に取材。ある支部の会計責任者は「他の支部のことはわからないが、党本部から党勢拡大のための活動費ということで2000万円が振り込まれた」と認めました。

 自民党本部は9日に1次公認候補を、11日に2次公認候補を発表しました。非公認支部の会計責任者によると、党本部から届いた13日付の文書には「公認料」の文言はなく、2000万円を「党勢拡大のための活動費」として振り込むという内容だったといいます。政党交付金用の口座に総選挙の公示直後に振り込まれていたといいます。

 「党勢拡大の活動費ということで、選挙には直接は使っていない。事務所の職員の給与や事務所の費用など間接的には選挙に使っているといわれれば、そうかもしれないが…」と説明しました。

 自民党本部は、本紙の取材を拒否しました。(矢野昌弘)

 

 「東洋経済オンライン」によれば、

自民党は24日に「わが党の支部政党交付金に関する報道について」と題する文書を出し、非公認候補が代表を務める党支部に2000万円を支給したことを「支部活動の活発化や、党勢拡大」のためと説明。「非公認となった支部長が自身の選挙運動に使うことはできない」と釈明した。

 しかし、それでは公認候補が代表を務める党支部の活動費は1500万円であるのに対して、非公認の候補が代表を務める党支部の活動費は2000万円と、後者の活動費のほうが多額になるという矛盾が生じる。身内からも不満が出ており、「正直者がバカを見る政党だ」と、ある自民党公認候補が吐き捨てている》

 たしかに冒頭の写真にあるように、公認料500万円+活動費1500万円が公認候補への支給額。非公認への「活動費」の方が多くなる。説明すればするほど、矛盾が出てくる自民党

 この2000万円で選挙がんばって!当選したら「みそぎ」が終わって、はれてまた自民党でいっしょにやろうね、ということだ。

 裏金だけでなく、今回の総選挙では統一協会問題も忘れずに審判しなければ。この問題は企業マスコミの追求が弱いが、鈴木エイト氏統一協会ズブズブマップを判断材料に紹介しよう。

NEWSポストセブンより

www.news-postseven.com


 衆議院議員選挙と同時に最高裁裁判官の国民審査がある。罷免すべき裁判官の名前に「×」をつけることができ、「×」が有効投票の過半数に達した裁判官は、法律に基づき罷免される。信任されれば10年間は審査されない。

 これまで罷免された裁判官はいないが、「×」が多ければ圧力になるので、積極的に「×」をつけたい。

 以下、判断の材料に。

 民主法律家協会では、今崎幸彦氏中村愼氏の2人に「×」の評価だ

https://www.jdla.jp/shinsa/images/kokuminshinsa24_6.pdf?fbclid=IwY2xjawGHGYZleHRuA2FlbQIxMAABHfFY5Pcam6eMr7sdkFSpN2tNqcSAIXYg94qf_IWpCHqQh9924i3diGpbvA_aem_2_UusE3da8GjOaS1oi01nA

 一方、福島第一原発事故による損害の賠償や責任の明確化を求めて、訴訟をしている「ひだんれん」では、今崎幸彦氏宮川美津子氏の2人が「×」

 理由は—

 今崎幸彦氏は、福島原発事故に関して国の賠償責任を問ういわき市民訴訟」最高裁上告棄却決定を下しました。

 宮川美津子氏は第一小法廷の判事で、5大法律事務所の一つ、TMI総合法律事務所のパートナー弁護士でした。

 「だまっちゃおれん原発事故人権侵害訴訟・愛知岐阜」が上告され、最高裁第一小法廷に係属しています。

 「だまっちゃおれん」控訴審での東電側弁護人は、TMI総合法律事務所が務めており、東電側の弁護人も担当判事もTMI総合法律事務所ということになります

 原告団弁護団は宮川美津子判事に対し、回避*を求めてきましたが、反応がないとのことです。
*回避とは、裁判官自らが、除斥又は忌避の事由があると認め、職務執行を避ける場合

 これは、先日、JCJ(日本ジャーナリズム会議)のJCJ賞受賞作品東京電力の変節 最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』(旬報社)の著者、後藤秀典さんの評価だ。

 つまり、TMI という巨大法律事務所のパートナー弁護士だった人が最高裁の裁判官をつとめ、東電側の弁護人もまたTMIという茶番のような状況になっているのだ。

 司法の世界も腐っている。思いを込めて「×」を!

ウクライナ戦争に北朝鮮が参戦

 ウクライナをめぐる情勢が激しく動いている。

 トランプ前大統領は17日、ウクライナゼレンスキー大統領は戦争を未然に防げなかったと語り、ロシアのウクライナ侵攻についてウクライナ側にも責任があるとの認識を示した。

 トランプ氏は、200万人以上の登録者がいる「PBD Podcast」で、「ゼレンスキー氏は私がこれまで見た中で最も優秀なセールスマンの一人だ。米国は、彼が来るたびに1000億ドル(約14兆9000億円)を与えている。歴史上、これほどの大金を手にした人物が他にいるだろうか? いや、いない」と語った。また「だからといって、彼を助けたくないわけではない。私はあの人たち(ウクライナ国民)を大変気の毒に思っているからだ。彼はあの戦争を決して始めさせてはならなかった」と続けると、直ちに批判の矛先を民主党ジョー・バイデン大統領に転じ、ウクライナ紛争を「扇動(せんどう)した」のは同氏だと非難した。(ニューズウィーク誌による)

 トランプ氏は最近まで何度もプーチンと密かに電話で連絡を取り合っていたことが暴露されたが、明々白々の一方的な侵略を、侵略された側にも責任があるとするのは、ロシアが広めるプロパガンダそのものだ。トランプ氏が米大統領になれば、ロシア側に立って、ウクライナに大幅な譲歩を迫ることになるだろう。ここ1~2週間でトランプ氏がほとんどの激戦州で支持を伸ばしているとの報道に気が気でない。

 ウクライナとの戦闘に参加する予定の北朝鮮兵士が、ロシア軍の施設で訓練を受けてい動画をウクライナ政府が18日公開した。ロシア極東のプリモリエ地方にある訓練場で撮影された動画だという。ゼレンスキー大統領は、約1万人の北朝鮮の兵士がロシア軍に合流するために訓練を受けていると語っている。

北朝鮮兵がロシア兵としての訓練を受けているという

 ウクライナ軍の情報機関のトップ、キーロ・ブダノフは北朝鮮兵士の派兵について、まず第1陣として、8月にウクライナが越境攻撃を仕掛けているロシア・クルスク州に2600人が送り込まれ、11月初めには1万1000人がウクライナ国内で「戦闘態勢を整える」との見通しを示した。

 これを確認するかのように韓国情報機関の国家情報院は18日、北朝鮮は8日から13日の間に北東部のチョンジン港など3カ所から1500人の軍の特殊部隊兵士をロシア海軍輸送艦を使ってウラジオストクに送ったことを確認したと発表。移送に使われたロシアの艦船を確認したとする衛星写真を公開した。

韓国国家情報院が発表した衛星写真

 国家情報院は兵士たちがウラジオストクハバロフスクなどに分かれてロシア軍の訓練を受けたあと、ウクライナの前線に投入されるとの見方を示した。またまもなく第2陣も送る予定だとしている。北朝鮮兵にはロシアの軍服や武器が支給され、ロシアの少数民族に偽装するためとみられる、にせの証明書も発給されたといいう。

 さらに、国家情報院はウクライナ東部ドネツク州の付近で、北朝鮮の技術者が、北朝鮮製の短距離弾道ミサイルの発射地点に立ち会ったとの分析を発表した。そこで撮られた写真のなかに、去年8月のキム総書記が視察したミサイルの移動式発射台などを生産する軍需工場で、ミサイル技術者として同行した人物がいたという。AIの顔認証の技術を使って分析した結果だとしている。国家情報院は「ウクライナに投入された北の技術者が自国のミサイルの発射を支援するとともに、技術的問題点を確認したり、さらなる技術の確保を試みたりしているとみられる」と分析している。

ロシア兵とともに映る人物(左)が金正恩に同行した技術者(右)と同一だと分析

 国家情報院は、北朝鮮ウクライナ侵攻への「参戦を始めた」との見解を示している。

www3.nhk.or.jp

 これらウクライナ、韓国両国の情報機関からの発信はおそらく事実だろう。すでに北朝鮮が提供した砲弾数百万発も弾道ミサイルも実戦で使用されており、ウクライナの戦地で北朝鮮兵の戦死者が出たとの情報もウクライナ軍から出ていた。北朝鮮ウクライナ侵略への加担の度合いを強める一方だ。

 韓国国防研究院(KIDA)のトゥ・ジンホ国際戦略研究室長は20日ハンギョレとの電話インタビューで、北朝鮮ベトナム派兵」を通じて北朝鮮が経済・軍事的に相当な利益を得られるだけでなく、長期的に「有事の際、ロシアの朝鮮半島介入」を確約され、ロシアと協力した北朝鮮の未来を描いていると分析した。

 北朝鮮ベトナム派兵」とは言い得て妙である。米国が始めたベトナム戦争に韓国が参戦し、多くの兵士の犠牲と引き換えに経済的「離陸」を達成したのだった。

 北朝鮮のロシアへの異例の肩入れ、逆からいうとロシアによる「北朝鮮の取り込み」は勢いを増している。

 まだ表には出ていない情報だが、近く北朝鮮から2万人の労働者がロシアに派遣されることになっている。派遣先はモスクワ、ウラジオストクそしてもう一カ所が問題で、国際的には未承認国のアブハジアだ。

アブハジアジョージアの一部で、国際的には未承認国。点線で示されている黒海沿岸部分。


 アブハジアは、ウクライナのドンバスの二つの自称「人民共和国」とそっくりで、ロシアが介入してジョージアから分離独立させたロシアの傀儡国家クリミア半島にあるロシアの軍港、セバストポリウクライナからの攻撃にさらされ、ロシアの黒海艦隊が避難先を探すところに追い込まれている。そこで、黒海に面するアブハジアにロシアのための軍港を作ろうとしている。

www.nikkei.com

 北朝鮮の労働者は、そのために派遣されると推測される。北朝鮮の代表団はすでにアブハジアを訪問。両者の関係も密になりつつある。

www.donga.com

civil.ge

 ウクライナ戦争で結びつきを強めるロシアと北朝鮮だが、ウクライナ戦争に外国の正規軍が参戦するという、きわめて危険な事態が到来している。

日本の政治を激震させた『しんぶん赤旗日曜版』2

 今年度のJCJの大賞は赤旗日曜版だったが、それ以外のJCJ賞は以下の4点だった。 

  • 上丸洋一『南京事件と新聞報道 記者たちは何を書き、何を書かなかったか』 朝日新聞出版

 このうち後藤秀典さんは、以前「ジン・ネット」で一緒に仕事をした仲間である。彼は、電力会社・最高裁・国・巨大法律事務所の人脈図を描くことによって、「原子力ムラ」に司法エリートが含まれることを暴いた。弁護士を数百人かかえるBig Fiveと呼ばれる巨大法律事務所があるが、例えばそこに所属する弁護士Aは、原子力規制庁のメンバーで一審では国側の指定代理人であったが控訴審では東電の代理人として登場する。また最高裁の判事が東電とツーツーの巨大法律事務所の出身だったりするのは珍しくない。これでは原発事故被害者たちが最高裁で負け続けるのは当たりまえだ。

 贈賞式の記念講演は、裏金問題で告発をつづける神戸学院大の上脇博之教授だった。

上脇教授の記念講演


 上脇教授は、政治家を告発して司法につなげることは、メディアの調査報道があってはじめてできるのだと報道の重要性を強調した。上脇教授が語った報道と告発の例をいくつかあげると— 

安倍晋三総理主催「桜を見る会」記事中の「違法の疑い『前夜祭』」しんぶん赤旗日曜版2019年10月13日号、同月20日号、11月24日号

2020年5月21日、全国の弁護士・法律家6623 名が安倍晋三総理や「安倍晋三後援会」代表らを政治資金収支報告書不記載罪(政治資金規正法違反)等で東京地検に告発。その後も告発。

河井克行法務大臣夫妻ウグイス嬢『違法買収』」週刊文春2019年11月7日号

2019年11月27日、私たち研究者は買収罪・選挙運動費用収支報告書虚偽記入罪(公職選挙法違反)広島地検に告発

「安倍政権の首相補佐官“闇パーティー”の疑い」しんぶん赤旗日曜版2021年3月21日号、「㊙勉強会のライズ社と薗浦議員 闇パーティー疑惑」しんぶん赤旗日曜版5月30日号

2021年9月28日、私は薗浦健太郎議員と会計責任者(公設第一秘書)を2019年政治資金パーティー収支不記載・虚偽記入罪(政治資金規正法違反)で東京地検に告発

「パー券収入脱法的隠蔽 2500万円分不記載」しんぶん赤旗日曜版2022年11月6日号

2022年11月9日以降、私は自民党の5派閥政治団体の会長・会計責任者らを20万円超政治資金パーティー入明細不記載・虚偽記入罪(政治資金規正法違反)で東京地検に告発

岡山県 伊原木知事後援会 法律上限超える寄付受領か」NHK政治マガジン2021年12月21日

2023年3月2日以降、私は「いばらぎ隆太後援会」等複数の政治団体の代表者・会計責任者らを寄附上限150万円を超える違法寄附及び政治資金収支報告書虚偽記入罪(政治資金規正法違反)で岡山地検の告発

 

 今回の「政治と金」問題では、赤旗日曜版がダントツで、きょう届いた10月20日号には、森山派と小泉進次郎選挙対策委員長にも裏金疑惑というスクープが載っている

10月20日赤旗日曜版より

10月20日号より

 森山裕幹事長が代表だった近未来政治研究会(4月解散)は政治資金パーティの収入を7年間で332万円過小に記載。

 一方、自民党神奈川県連は22年、県内の自民党支部に698万円を支出しながら収支報告書に不記載、また同年のパーティ収入を40万円分記載しなかったとして上脇教授は、11日、同県連の代表だった小泉氏ら3人を、政治資金規正法違反で東京地検に告発した。

 先日、石破氏の疑惑も表面化したが、自民の「裏金議員非公認」を決めた石破、森山、小泉の3人全員に不記載疑惑が出てきたわけである。

 

 なぜ赤旗日曜版がこれほどスクープを連発できるのか?

 JCJ贈賞式のあとの懇親会で、スクープを次々に放っている笹川神由(かみゆ)記者とたまたま同じテーブルになった。そのテーブルには数人のジャーナリスト志望の学生もいて、はじめはその一人かと誤解していた。口数少なく静かに微笑んで存在感の薄い若者(失礼)だったので、まさか彼がそのスクープ記者とは思わなかったのだ。

 そして、笹川記者の語る取材活動の実態は、居合わせたジャーナリストたちを驚愕させた。

笹川記者は、おとなしい、どこにでもいるような若者だった。懇親会にて

 まず、赤旗共産党の機関紙であるから、裏金追及の取材は当然、党の組織的なプロジェクトとして行われているのだろうと思っていた。また、たいへんな量の文書や資料を細かく地道に当たっていく作業となれば、少なくとも数名のしっかりしたチームが組まれているだろうと想像していた。

 ところが、この取材は笹川記者が、党の幹部や日曜版の山本豊彦編集長の指示のないまま、「変なことが起きているから調べてみよう」と「勝手に」はじめたのだという。取材経過を報告するのは山田健介担当デスク一人だけで、具体的な取材のやり方は干渉されず、自分で決めてやっているそうだ。贈賞式にも懇親会にも、商業紙の記者、デスクやOBがたくさん来ていたが、彼らよりずっと自由な取材活動が行われているさまに驚いていた。赤旗の日刊紙ではなく、日曜版がスクープを飛ばしていたのは、取材していたのが日曜版所属記者の笹川さんだったからなのだ。

 笹川さんの経歴を聞いてまた驚いた。大阪の高校を卒業したあとトラックの運転手を4年間やって赤旗の記者になったというのだ。高卒の記者とは、いわゆる敏腕記者のイメージとはかけ離れている。

 庶民感覚で素朴に「おかしい」と思ったことを地道に調べる、これが笹川さんのやり方だと聞いて、なるほどとみなうなった。政治家なら多少汚いことやってるのは当たり前と触手を動かさないエリート記者とここが違うのだろう。

 この笹川さんという若い記者一人が、岸田政権を崩壊させるきっかけを作ったのか、と感慨深く話を聞いた。すれない素直な問題意識と粘り強い調査。あらためてジャーナリズムの原点を見たように感じた。こういうとき、日本のジャーナリズムも捨てたものではないと希望を持つ。

日本の政治を激震させた『しんぶん赤旗日曜版』

 新内閣発足から、わずか2週間。戦後最短での解散・総選挙となった衆議院選挙がきょう15日、公示された。

 そもそも、なんでこうなったかというと、岸田自民党総裁が再選を断念したから。では、その事態をもたらした「政治と金」問題を破裂させたのは何だったか。しんぶん赤旗日曜版』のスクープだったのである。

 今月5日、東京・日比谷図書文化館コンベンションホールで開かれた日本ジャーナリスト会議(JCJ)の「JCJ賞」贈賞式に参加した。2024 年度第67回 JCJ賞の大賞に選ばれたのは『しんぶん赤旗日曜版』の【自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン】だった。    
https://jcj.gr.jp/recentactivity/12198/

上西充子氏から大賞を授与された『しんぶん赤旗日曜版』の山本豊彦編集長(右)。筆者撮影

受賞者の記念撮影。大賞1とJCJ賞4。

 以下、JCJの発表文。

 【JCJ大賞】  『しんぶん赤旗日曜版』  自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン 

自民党の主要5派閥が政治資金パーティーのパーティー券大口購入者を、政治資金報告書に記載していなかったことをスクープした報道に始まった「しんぶん赤旗日曜版」の報道は、2023年から24年にかけての日本の政治を揺り動かした。公開されている膨大な政治資金報告書から、一つ一つを地道に積み上げ、検察の捜査にまでつなげ、それが大政治犯罪であることを明らかにした。 

 政治資金パーティーという、小さな問題に見えた事件は、実は政治資金問題の中心的問題で、事件の大きさは、自民党が公表せざるを得なかった議員が衆院51人、参院31人、計82人に上っていた(24年4月14日号)ことに示されるとおり、そのスケールの点では、1975年の「田中金脈」報道や、88年の「リクルート事件」報道を超えるものだった。 

 国会は安全保障政策の大転換を迎え、極めて重要な問題を抱えていたが、この問題に多くの時間を割き、秋に予想される、総選挙もしくは自民党総裁選を控え、「政治資金改革」は、いま、最大の政治的焦点となっている。こうした事態を引き起こしたのは、「しんぶん赤旗日曜版」の報道なくしてはできなかったことであります》

 このスクープは、『しんぶん赤旗日曜版』の22年11月6日号で、これにもとづいて神戸学院大の上脇博之教授が11月9日以降、自民党の5派閥団体の会長・会計責任者らを東京地検に告発して大きな山が動き始めたのである。

 実はこの直後は、どのメディアも後追いしなかったという。

 半世紀前、『文藝春秋』1974年11月号が立花隆の「田中角栄研究―その金脈と人脈」を載せた時、大手メディアの政治部記者たちが「そのくらいのことは皆知っている」とせせら笑ったことを思い出させる。日本の大手メディアは、検察が動くなどしなければ報じないのである。

 24年度の日本新聞協会の「新聞協会賞」は、「自民党派閥の裏金問題をめぐる一連のスクープと関連報道」で、朝日新聞社自民党派閥裏金問題取材班が受賞している。授賞理由:朝日新聞社は、自民党安倍派が政治資金パーティーで組織的に巨額の裏金を作り、所属議員に還流していた事実を2023年12月1日付朝刊で特報した。
https://www.pressnet.or.jp/about/commendation/kyoukai/works.html

 これで分かるように、ようやく新聞が本格的にこの問題を取り上げるようになったのは、赤旗日曜版の報道の1年後だった。
 
 5日のJCJ贈賞式の記念講演は上脇博之教授というタイムリーな人選だった。ちょうど前日4日発売の『しんぶん赤旗日曜版』(10月6日号)が「石破派も裏金」のスクープを放ち、上脇教授がこれにもとづいて告発を行ったばかりだった。

しんぶん赤旗日曜版10月6日号

上脇教授は、3日、自らが代表の政治団体が開催した政治資金パーティーを巡り、政治資金収支報告書に収入を少なく記載したとして、石破茂首相のほか、政治団体の会計責任者ら4人に対する政治資金規正法違反罪での告発状を東京地検に出したと明らかにした。

 告発状によると、石破氏や鴨下一郎衆院議員が代表を務めた政治団体水月会」は2019~21年に開いた政治資金パーティーで、別の政治団体から計138万円の支出を受けたのに、収支報告書の収入に計80万円分少なく記載したとしている》(産経新聞記事より)

 『しんぶん赤旗日曜版』がこの問題でつぎつぎにスクープを放ってきたが、この調査報道には「気が遠くなるほどの」(JCJの評者)忍耐強い努力が必要だという。授賞理由に「公開されている膨大な政治資金報告書から、一つ一つを地道に積み上げ」とあるように、直近3年分のインターネット公表されている政治団体政治資金収支報告書と政治資金パーティの明細収支報告書などを突き合わせていく地道な作業。そのためには恐ろしい数のPDF文書を丹念にあたっていかなくてはならない。

 贈賞式後の懇親会は中華レストランで、私はそのスクープを手掛けてきた赤旗の記者とたまたま同じ丸テーブルにつく幸運にめぐまれた。彼の話はジャーナリズムとはいかにあるべきかを私たちに深く考えさせた。
(つづく)

 

被団協にノーベル平和賞3

 ノーベル平和賞を選ぶノルウェーノーベル平和賞委員会は、ノルウェー国会が指名する5人の委員(議員は委員になれない)で構成され、任期は6年。選定が極端な政治色を帯びないよう、委員には「世界の紛争を客観視できる能力と意志」が必要という。今年委員長に就任したのが39歳と若いヨルゲン・バトネ・フリドネス氏だ。

ノーベル平和賞委員。右端がフリドネス委員長。ノーベル平和賞のHPより

 発表の後、記者から「ロシアの核兵器に関する行為も今年の決定に影響を与えたのでしょうか」との質問が寄せられた。フリドネス委員長は「(ロシアの)核兵器の脅しが、〝核兵器使用はタブー″という国際ルールに圧力をかけていることは明らかです」と答えている。ロシアのウクライナ侵略と核使用の脅しが、今回の日本被団協受賞の背景になっているのは明らかだ。

若者たちが被爆体験を語り継いでいることも授賞理由で触れられていた。「カクワカ」もその一つ。カクワカHPより

 日本人のノーベル平和賞受賞者には、半世紀前の1974年の佐藤栄作元首相がいる

 非核三原則の制定などが評価されたが、ノルウェーノーベル平和賞委員会は、2001年に刊行した記念誌『ノーベル賞 平和への100年』の中で、「佐藤氏はベトナム戦争で、米政策を全面的に支持し、日本は米軍の補給基地として重要な役割を果たした。のちに公開された米公文書によると、佐藤氏は日本の非核政策をナンセンスだと言っていた」と記し、受賞理由と実際の政治姿勢とのギャップを指摘した。この記念誌はノルウェーの歴史家3名による共同執筆で、同年8月の出版記念会見の際にその1人のオイビン・ステネルセンは「佐藤氏を選んだことはノーベル賞委員会が犯した最大の誤り」と見解を述べて当時の選考を強く批判し、「佐藤氏は原則的に核武装に反対でなかった」と語ったという。

 沖縄返還交渉の過程で「有事の沖縄への核持ち込みおよび通過」を認める密約を結んだことが、のちにアメリカの外交文書から合意の存在が確認された。また、佐藤の遺品にこの合意議事録が含まれ、2009年12月に遺族が保管していたことが報道された。なお、この密約を公開したとして毎日新聞社で記者を務めていた西山太吉国家公務員法違反で有罪となった西山事件が起きている
https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E4%BD%90%E8%97%A4%E6%A0%84%E4%BD%9C_%E4%BD%90%E8%97%A4%E6%A0%84%E4%BD%9C%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81#cite_note-97

 日本人として恥ずかしい平和賞受賞だった。

 日本被団協の受賞は喜ばしいが、ここまで来るには政治勢力の介入という困難にもさらされた。

 おめでたいニュースなので、メディアはあまり触れないが、原水爆禁止運動の分裂(原水協原水禁核禁会議)の影響も受け、「1964年に被団協も分裂し、1965年原水禁を受け、被団協代表理事会は「いかなる原水禁団体にも加盟しない」と決定し、原水協からも脱退した。2020年時点も被爆者団体が複数存在する都道府県もある」とされる。

 「なお1964年の分裂以降の広島県被団協は、同名の2団体が存在するため通常は理事長名を併記して区別されている。またテレビでは共産党系は「もう一つの被団協」とテロップで表示される。

広島県被団協(理事長・箕牧智之) - 旧社会党・総評系で2000年時点で会員約2万人。日本被団協に加盟。

広島県被団協(理事長・佐久間邦彦) - 日本共産党系で2000年時点で会員約3千人。日本被団協にオブザーバー参加。」Wikipedia

 とくに共産党原水禁運動に対する引き回しは激しく、1984年には原水協事件」が起きている。党の指示に従わない代表理事、理事6人を解任。日中出版が解任された代表理事吉田嘉清に内幕を取材した『原水協で何がおこったか、吉田嘉清が語る』を上梓すると、社長の柳瀬宣久と社員3名、吉田を反党行為を理由に除名し、吉田を擁護した哲学者の古在由重も除籍となった。

 当時、私の親しい人がこの「粛清事件」に巻き込まれ、市民運動への露骨な引き回しを目の当りにして、共産党に大きな不信感を抱いた。これについてはまた別の機会に。

 共産党といえばこんどの総選挙で注目されるのが、自民党萩生田光一・元政調会長の地盤、東京24区の動向。ジャーナリストの有田芳生さんが7日夜、東京都八王子市で記者会見し「東京24区から、萩生田議員に対する刺客として、立候補することを決意しました」と述べた

 今日13日は、八王子市で田中優子さんを招いて有田さんの総決起集会、「オール八王子市民集会」が開かれた。統一協会ズブズブの萩生田議員を落とせ!と集まった市民で立ち見が出る盛況だったそうだ。

オール八王子市民集会(13日)演壇に田中優子さん。

 有田さんは立憲民主党から出るのだが、支持母体は市民団体で、なんと共産党も有田さんを支持するという。かつて除名して「反党分子」扱いした人物を選挙で支持するとは、共産党も少し大人になったのか?

 立憲の党首に野田氏がなって、これまでの野党共闘の枠組みがガタガタに崩れるなか、この八王子方式は注目に値する。