小池百合子学歴詐称疑惑によせて⑤

都知事選が始まった(テレ朝ニュース)

 東京都知事選挙の真っ最中で、小池百合子都知事が「AIゆりこ」をバージョンアップしたとのニュース。この人、つねに話題を提供し続けるのはすごいな。

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 小池氏は少子化対策として、保育料無償化の拡大や無痛分娩の助成制度の創設、大学給付型奨学金の創設などを公約に挙げた。これらはけっこうアピール度が高いと思う。選挙民の関心のツボを押さえている。

 2020年に再選を目指した都知事でも、小池氏は耳に心地よいいくつもの公約を掲げたが、それはどうなったのか。その一つだったドクターヘリDH事業に『週刊文春』(6月13日号)が切り込んだ。

週刊文春6月13日号

 DHは医師や看護師を乗せて傷病者のもとへ向かう救急医療用ヘリコプター。

 DH事業は「東京大改革2.0」のなかで、街づくりの一環として小池氏肝いりの政策だった。杏林大学医学部付属病院が医師・看護師を派遣する「基地病院」となり、入札の結果、DHの運航は学校法人ヒラタ学園に委託された。

 しかし、DH就航から2年、「異常なキャンセル率の高さ」「安全意識の欠如」という大きな問題が浮かび上がった。

 都のDHの運行回数は1360回。うち患者を運んだのはわずか306回で、患者を運ばずに戻ってきたキャンセルが1054回だった。キャンセル率は77,5%、約8割になる。東京都をのぞいた全国平均のキャンセル率は18%で、東京の異常さが分かる。

 ヒラタ学園の落札の経緯も不透明。DH事業の入札は、都から委任されて杏林大医学部付属病院が2021年に公募、入札に参加した3事業者のうち、ヒラタ学園が1億9520万円という破格に低い金額で落札した

 ところが実際にヒラタ学園に支払われたのは2億6504万円。ヒラタ学園に支払われる金額は、年間飛行時間を基準に算出されており、飛べば飛ぶほどもうかる仕組みになっている。本来、入札時に想定した金額よりも高くなれば「契約内容の変更の合意」が必要だが、それを行っていないという。

 ヒラタ学園電気店経営から身を起した平田勇理事長が一代で築きあげ、パイロット養成などの専門学校を運営、2003年に和歌山県で初めてDH事業をスタートさせ、その後、事業を急拡大させてきた。そのヒラタ学園のヘリは事故が多いと問題になっているという。

 09年沖縄でエンジン停止による不時着、17年には兵庫県で衝突事故を起こしかけ、同年、神戸空港でヘリ横転事故を起こした。DHに登場経験のある元パイロットは、ヒラタ学園を「航空業界のビッグモーター」と呼ぶ。

 5月28日、国交省大阪航空局は、ヒラタ学園に「事業改善命令」と「警告書」を出した。耐空証明の有効期限が切れた機体からの部品の流用、不具合を解消しない状態での運航など30項目におよぶ不正を指摘。その上でDHなどの公益性が高い事業を実施するために十分な予備品が配備されていないと非難している。

 この事業改善命令から3日後、ヒラタ学園の小型プロペラ機が神戸空港で訓練中に胴体着陸し、滑走路が5時間にわたって閉鎖、34便が欠航した。国交省運輸安全委員会による調査や兵庫県警の捜査が始まる異常事態となっている」週刊文春P21)

 ずさん極まりない管理体制のヒラタ学園に、命を守るDH事業を任せていいのか。

 記事は血税2.7億円を投じた肝煎り事業。小池知事のワイズスペンディング(賢い支出)の掛け声がむなしく響く」と結んでいる。

 小池都政カネがらみの疑惑が多い。
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(前回のつづき)
 小池百合子東京都知事学歴詐称疑惑が再燃したきっかけは、元側近の小島敏郎が、月刊『文藝春秋』5月に寄稿した手記『「私は学歴詐称工作に加担してしまった」小池百合子都知事 元側近の爆弾告発 緊急特集 都知事の「ウラの顔」』だった

文春5月号

 側近だった小島氏が小池氏と決別するのは、経歴詐称を乗り切るための自分のアドバイスがみごとに功を奏して再選、その結果、小池氏が変節していったのを見たからだった。

再選を果たした小池さんはその後、目に見えて変わりました。(略)改革路線から、自民党公明党、都庁官僚と手を組む都政運営に完全にシフトしたのです。(略)

 それにしても小池さんは、何故こんなに変わったのか。改革をやめ、自民党に気を遣うようになったのは何故なのか。いずれも再選を機にした変化です。》(P100-101)

 すべての答えは、学歴詐称疑惑の追及で窮地に立たされたことにあった。その「秘密」を守り、追及を封じるために変身したのである。

 ここから小池氏は権力の亡者になっていったと小島氏は見る。

都知事の座を去り権力を失えば、自分の秘密を守ることも難しくなる。それゆえ、小池さんは、都議会多数派と足並みをそろえ、都庁官僚の支持を得て、権力を持ち続けること自体が最優先になっています

 たとえば、と小島氏が挙げるのは、明治神宮外苑の再開発問題

 坂本龍一が亡くなる直前に見直しを求める手紙を小池氏に送った。しかし小池氏は事業を施行認可する立場であるにもかかわらず、小池氏は会見で、都は何もできないので「事業者の明治神宮にも手紙を送られた方がいい」と門前払いにした。

 築地市場の跡地の再開発をめぐっては、「5万人収容の多機能施設」や「アニメ・ゲームなどに特化したエンタメ施設」などが報じられているが、実際どのような施設になるのか、議会や都民に一切説明をせず、知事周辺だけで決めようとしている。

 東京五輪の開催では、国内スポンサーからの収入は3761億円に上り、うちIOCJOC電通の取り分は総額1077億円だった。それらは適正な金額だったのか、どこにいくら入ったのか。東京都は五輪組織委員会に監事を送り込んでいたが、言を左右にして説明していない。

 異論を許さない強権的な体質は、都民ファも同じ。22年度、都立高校の入試で英語のスピーキングテストが導入された時、ベネッセコーポレーションが運営に携わり、採点はフィリピンの子会社が請け負うなど、採点の不透明さが問題視され、さらに受験生によって不平等なシステムであることも指摘されて、3人の都民ファの議員が反対した。すると3人は除名処分にされた。テストはトラブルが多発して、わずか2年でベネッセは撤退を決めた。

 都議会では、小池氏は野党の質問には答えず都民ファ議員はヤジを飛ばすだけ。都庁幹部も小池流の紋切り型の答弁を繰り返すだけで、議会は熱議、討議の場ではなくなっている。

《小池さんは一時、国政への復帰が噂され、さらには次の総理候補としても取りざたされていました。意を決して、私が手記を発表しようと思い立ったのは、このままでは、日本の政治が危うくなると感じたからです。民主主義を守りたい、そのために力を尽くしたい、と。》(5月号P107-108)

 小島氏は小池氏が「ものすごい勢いで都の金をばらまいて」いること憂慮する。

選挙対策であり、単に自分がスポットライトを浴びたいからでもあります。23年1月4日の都庁職員を前にした挨拶では突然、「子ども手当をひとり一律5千円支給する」と宣言しました。その日の午後に岸田文雄総理が行うスピーチで「異次元の少子化対策」について語るとの情報を掴んだからです。「総理よりも目立ちたい」という欲望から、何の熟慮もなく、思いつきで言ったのです。

 東京は国より財源が、ずっと豊かです。小池さんはそのことに都知事になって気づき、ある時、私に嬉しそうに言いました。

「予算の単位が違うのよね、桁が」

 国は百万単位で物事を決めるけれど、東京都だと千万単位、億単位だというのです。》(P108)

 小池都政は、都庁舎に映像を投影するプロジェクションマッピングに2年間で48億5千万円の税金をつぎ込む。その事業者は、五輪談合で指名停止中の電通」が100%出資する「電通ライブ」で、入札の経緯も議会に明らかにされていないという。神宮外苑再開発ふくめ大企業優遇の都政は、広告主に忖度してマスコミが批判しにくいという声も聞く。

2月に始まった都庁の壁面を使ったプロジェクションマッピング。きょう24日から、10作目となる新たな作品「Synergyシナジー)」の上映を開始した。(日テレニュースより)

 今回の都知事選挙にあたり、都民そしてメディアは、真実と民主主義のために立ち上がった小島敏郎北原百代氏ら告発者の勇気に応えることができるだろうか。

(おわり)

小池百合子学歴詐称疑惑によせて④

 16日のTBS「サンデーモーニングに、歌手の加藤登紀子が初めてコメンテーターで出演。

16日のサンモニに出演した加藤登紀子

 何を言うのかと聞いていると、ウクライナ戦争についてコメントした。これがトンデモな内容で耳を疑った。

ウクライナにロシアが侵攻した当初から一刻も早く終わってほしいと言うのが私の思いでした。その最初の時から私は、日本の終戦時のことを思い出されて、つまり、戦争というのはどうやったら終われるのかという。勝ちとか負けとか言ってるかぎりは、誰も終わりたくないってことになっちゃうわけですね。

 日本の戦争も終わると決めれば、敗戦というのが決まっていた、1944年、5年のヒットラーが敗戦したころからは、歴然と日本が敗走することは分っている。そういった時期に誰も指導者が終戦を決められなかった。で、ずるずるずるずると原爆の実験を許し、原爆投下を許し、その間に膨大な空襲を日本のなかで・・。それは日本が最後の日まで戦うと軍部が言い続けて、日本を守るためにやるんだと言ってるんだけど、結局、そのためにどれほどの人が死んだのかということでいうと、ウクライナの場合も、世界中がいま、西側が応援して戦争を続けさせている。ゼレンスキーも最後の日まで戦うみたいな。でも結局、被害に遭っているのはウクライナなんですよね。ウクライナの人々であり、ウクライナの国土です。ほんとに壊滅的な被害を受けてるわけですね。だからやっぱり国際社会は、ほんとに本気で停戦をという方向にウクライナの問題は向き合わなきゃならないと思いますけど。戦争を終わらせた人が勝利者だと私は言わなきゃいけないと思います」。

 これに膳場キャスターが、いかにもごもっともという感じで、「終わらせた人が勝利者、たしかにそうですね」とフォローした。

 加藤氏はウクライナの現在にかつての敗戦間近の日本を重ね、ウクライナはどうせ勝ち目がないのだから、ゼレンスキーは早く降伏せよと言っている。戦争が長引いているのはウクライナが抵抗をやめないから、西側が応援しているからだと。侵略しているロシアを一言も批判せず、ウクライナに膨大な犠牲が出ているのは、抵抗を止めないからだという。

 ちょっと下品な例えで恐縮だが、これって、大男にレイプされかかって必死に抵抗している女性に「抵抗を続けるとケガするからやめなさい」というのと同じだ。割って入って男を制止すべきではないのか。

 良識を疑う加藤氏のような意見は、一部の平和主義者、リベラル派とされる人々がいろんな場で唱えており、見過ごせない。

 後日、本ブログで徹底的に批判する。
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 小池百合子東京都知事と若い頃、カイロで同居していた北原百代氏は、『文藝春秋』5月号で学歴詐称の発端をこう記している。

 進級試験に落ちて憔悴していた小池氏だったが、10月初め、急遽一時帰国した。エジプトのサダト大統領夫人が来日するので「アテンドしろ」と父親に言われたからだった。

「(1976年)11月半ば、カイロに戻ってきたあなたをひと目見て、とても驚きました。別人のように晴れやかな顔をしていたからです。そして荷ほどきをしながら、あなたは

「これ見て」と新聞を差し出しました。

 百合子さんの顔写真が大きく載っている記事を読み始め、私は驚きました。「カイロ大学文学部社会学科を日本人女性として初めて卒業した」などと紹介されていたからです(「サンケイ新聞」1976年10月22日)。

 私は思わず尋ねました。

「そういうことにしちゃったの?」

 あなたは、

「うん」

 と、屈託なく言いましたね。(略)

 そして、明日は帰国するという別れの晩がやってきました。(略)それに続く言葉を、私は今も、忘れることができません。あなたは言いました。

「私、日本に帰ったら本を書くつもり。でも、そこに北原さんのことは書かない。ごめんね。だって、バレちゃうからね」

 それでいい?と、あなたに念押しをされるように言われ、私は頷くよりほかはありませんでした。」(5月号P114-115)

 ここには当時のサダト大統領夫人に小池氏が「アテンド」するため父に日本に呼び戻されたとある。この背景には、小池氏とエジプトの政治権力との特殊な関係があった。(以下の引用は、本連載②で紹介した黒木亮氏のJBpressの記事から)

 小池氏は1973年10月にカイロ大学の2年に編入し入学金も授業料も無料だったと語っている。しかし、これ自体、正規の手続きに違反する不正編入だった疑いが強いという。編入できたのは、小池氏の父親がアブドル・カーデル・ハーテム氏(当時エジプト副首相兼文化・情報相)と知り合いになり、ハーテム氏のコネがあったためだと小池百合子氏自身が認めている

 ハーテム氏はエジプト政界の大物であり、日本との縁も深い。

「1957年に国民議会議員、大統領府副大臣、1959年にラジオ・テレビ担当国務相、1962年に文化相、国民指導・観光相、1971年に副首相兼文化・情報相となり、その後は長らく国民評議会(上院に相当)議長とエジプト・日本友好協会会長を務め、2015年に97歳で没した。

 1974年2月(当時は文化情報担当副首相)には公賓として来日し、田中角栄首相、三木武夫副首相と会談し、宮中で天皇陛下に拝謁した。1982年には日本政府から勲一等旭日大綬章を授与されている」。

 ハーテム氏は自身の伝記に小池氏との関係を記している。

ハーテム氏は中曽根康弘と1954年以来親交があり、中曽根氏から友人の娘であるとして当時学生だった小池百合子を紹介され、面倒を見ていたこと、小池氏がハーテム氏をGod fatherとか心の父と呼んでいたこと、小池氏に毎月14エジプト・ポンドの小遣いをやっていたことなどが記されている(小池氏は『振り袖、ピラミッドを登る』の250ページに、エジプト政府から毎月12ポンドの奨学金を受けていたと書いている)」。

 一方、「小池氏の著書『おんなの人脈づくり』(昭和60年刊)には、自分の父(小池勇二郎氏)が中曽根氏を昔から知っており、自分自身は小学生の頃くらいに中曽根氏と初めて会い、当時、毎年冬に中曽根氏から群馬の白ネギがどさっと送られてきて兄と食べたことが書かれている」(黒木氏のJBpress連載④より)。

jbpress.ismedia.jp

 ハーテム氏は当時、対日窓口となり一手に日本関係を牛耳っていたとされる。

「ハーテム氏の息子であるターリク・ハーテム氏(カイロ・アメリカン大学の経営学の教授、日本エジプト友好協会会長)に会って話を聞いた。彼によれば、小池家とハーテム家との結びつきは長年にわたる強いもので、小池氏が1992年に政治家になってからも、勇二郎氏は時々カイロの高級住宅地ザマレクにある父ハーテム氏のもとを訪れていたそうである。

 2011年のエジプト革命の際には、百合子氏が父ハーテム氏に電話をかけてきて、同年、リビア訪問の際にスケジュールを調整してカイロに立ち寄ったと言う。ターリク氏自身、勇二郎氏が2013年に亡くなる直前に彼に会い、2015年に父ハーテム氏が死去したときは百合子氏に日本エジプト友好協会を続けるよう勧められ、2017年には日本の百合子氏の家を訪問したという

 ハーテム氏と小池百合子氏はそれくらい親密な関係にあった。そして小池氏のエジプト留学時代、すでにハーテム氏は国内で絶大な権力を持っていた。国立大学の”不正卒業証書”がまかり通るエジプトでのことだ。その気になれば、入学資格のない異国の留学生を、一流国立大学の学部生に押し込んだり、“卒業証書”を与えることなど造作もないことだったに違いない」(黒木氏連載④)

 カイロ大学は対外的信用を維持するため、 “不正卒業証書”の事実には口を閉ざしている。

「過去にそうした不正があったことを認めれば、“不正卒業証書”を受け取った国内外の政治家、有力者、その関係者に影響が及ぶからだろう(特にサダト時代は数が多く、影響は計り知れないのではないかと思われる)。小池氏のようにエジプトに多額のODAを供与している先進国の政治家が実は卒業していないとは口が裂けても言いたくない。
カイロ大学の現文学部長アフメド・シェルビーニ氏は、「カイロ大学では2年前から小池氏に関する書類を出す場合は学長の承諾が必要になった」と言う。

 日本はエジプトに対して2016年までで総額1524億8600万円の無償資金協力(要はお金をあげること)を実施しており、カイロ大学はこれまで、大学付属の小児病院の建設・拡充や看護学部の施設改修資金として、総額で131億4900万円を受け取っている(黒木亮氏の連載⑤)

 カイロ大学文学部(オリエント言語学ヘブライ語専攻、1995年中退)で学んだ経験がある浅川芳裕氏は2018年6月に一連のツイッターで次のように述べている。

「小池氏の詐称疑惑についてカイロ大学に問い合わせれば済む話ではとの質問がくるが、そんなヤワでマトモな大学ではない。(略)大学権力を完全に掌握しているのは軍部・情報部。カイロ大学は1954年、軍部に粛清され革命評議会下に置かれて以来その伝統は続いている。現在、軍事独裁政権トップ(シシ大統領)がカイロ大学長ならびに各学部長の任命権を持っている。学科長は軍部の息のかかった学長の任命。つまり、これまで日本のメディアからの取材に対し、小池氏を卒業生として認めたり、都知事就任を祝福した学長、文学学部長、学科長らは同じ穴のムジナなのだ。

 カイロ大学卒業生・講師として、小池氏を絶賛し、都知事就任を祝福したナサール元学長は現在、県知事の有力候補で、大統領からの任命待ち(無選挙)。学長(学者)は権力のトップには就けないが、大学の自治民主化運動弾圧などでうまく立ち回れば、知事や軍閥企業社長などに天下りできる。

 そもそもカイロ大学を軍部管理下に置いた大元の一人が小池氏の後ろ盾、革命評議会の情報・文化・メディア担当のハーテム氏だった。現シシ大統領は、ハーテムからみれば、軍部時代の弟分タンターウィー(元国軍総司令官、11年革命後の国家元首代行)の部下、つまり孫弟子にあたる人物だ。小池氏の学歴偽証については長年、疑惑が出てきては、日本からのメディアの取材に対して、カイロ大学が卒業を認めることを繰り返しては、収束してきたが、その背後には、こうした小池のハーテム人脈を頂点とするエジプトの軍部・情報部と大学の権力階層構造があることも、念頭に置いておきたい。

 ただ、エジプト上層部・カイロ大学側にしても、何のメリットがなければ、いくらハーテム人脈といっても長年、わざわざ小池氏を擁護する理由はない。小池氏は(正規の学業を修めていないが)カイロ大学卒業(証書取得)がハーテムの権限による特別待遇だとすれば、その見返りは何かということが問題だ。これは、日本の国益にとってより本質的な問題である。小池氏の学歴詐称問題により、エジプトの軍部・情報部に借りがあり、弱みを握られた日本人が仮に現職の東京都知事だったり、長年国会議員、防衛大臣まで務めていたとしたら」。

 エジプト時代の小池氏と何らかの接点のあった人々やカイロ大学関係者を多数取材した筆者も、全く同じ結論を抱いている。」(黒木亮氏の連載⑤)

 なお、浅川芳裕氏ツイッター

 

 「ごめんね。だって、バレちゃうからね」

 48年前に屈託なくついた、若い娘のウソ。

 しかし、ここにきてそのウソは、それを隠し通そうとする工作の過程で、日本の主権、国益にもかかわる大きな問題へと発展してきたのである。

『女帝 小池百合子』より

 真相を知る北原百代氏が真剣に身の危険を案じたのも故なきことではなかった。

(つづく)

小池百合子学歴詐称疑惑によせて③

 6月20日は「世界難民の日」だった。

 世界の難民・避難民の数は、日本の全人口にあたる1億2000万人を超え(年5月時点)、過去最多の水準に達しているという。

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所が13日に発表した「グローバル・トレンズ・レポート2023」によると、紛争が続くスーダンでは昨年末時点で1080万人が故郷を追われている。2番目に数が多いのはウクライナ965万人

昨年4月15日に、大規模な武力衝突が発生し「スーダン危機」と呼ばれる事態に。「世界最大の避難民危機」と言われている。UNHCRのHP

UNHCRのHPより

 また、コンゴ民主共和国ミャンマーでも数百万人が国内で避難している。故郷を追われた人の約4割が18歳未満の子どもだという。さらに、UNRWA国連パレスチナ難民救済事業機関)の推計では、ガザ地区で続く暴力により、昨年末時点で人口の75%にあたる170万人近くが避難を強いられている。

www.unhcr.org

 私たちにとって当たり前の食事、仕事、勉強、病気治療、遊びなどの日常の営みが難民・避難民たちには奪われている。その状況を想像すると、早く何とかしなければという焦燥感と、こうした事態を招いた原因(紛争、迫害、気候変動など)に強い憤りを覚える。

 UNHCRは「急増する強制移動に対する無関心と行動の欠如に警告」している。世界の指導者たちよ、戦争なんかしている場合ではないのだ。
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 小池百合子東京都知事の元側近、小島敏郎が小池氏を経歴詐称で東京地検刑事告発した18日、小池氏の公式Xに、アラビア語を使っているとされる二つの動画がアップされた

 キャスター時代の動画で、小池氏自身これを見ながら「お宝映像」じゃないですか!と得意げな表情を見せている。

 SNSでは「流暢にかつ、堂々と通訳なしで話される姿」、「小池百合子、半端ないって」、「すげえ喋れるやん!」と感心する声が上がっている。

 ところが、この動画のアラビア語(らしきもの)を聞いて、全然わかんない! これアラビア語じゃない! と言うのは飯山陽氏。4月、東京15区の衆院補欠選挙に日本保守党から立候補した麗澤大学客員教授だ。私、この方はちょっと生理的に苦手なのだが、説得力ある批判なのでがまんして観た。(14分以降に小池氏のアラビア語分析)

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 小池陣営が、お粗末な動画を小島氏の刑事告発の日に人の目にさらす措置をとったのは、学歴問題を非常に気にしていることを示す。アラビア語使いからは酷評されて「お宝映像」はやぶへびだったとも言えるが、アラビア語の分らぬ多くの人にはイメージアップになったかもしれない。

 自分の経歴を詐称し始めた若き小池氏について、カイロで2年同居した北原百代氏は、小島敏郎氏の「爆弾告発」が載った同じ『文藝春秋』5月号に手記を載せている。

文芸春秋5月号

 北原氏は、ベストセラーになった石井妙子『女帝 小池百合子(2020年)までは早川玲子の仮名で証言していた。『女帝』の中で、北原氏は同居人以外には知ることのできないリアルな小池氏の姿を描写していた。試験勉強中の小池氏は―

《鉛筆でひたすら文章をノートに筆記している。(略)進級試験に向けて必死に勉強しているように、最初は見えた。だが、その勉強内容を知って、早川さんは驚く。意味をまったく理解しようとせず、ただ、教科書に載っている文章を図形のように暗記しようとしていたからだ。小池は早川さんに言った。

「テスト用紙が配られても、そこに書いてある問題も、どうせ読めないもの。だから、とにかく暗記した文章をひたすら大きな文字で書くの。空白が少ないほどいいんだって。東洋人の女子留学生だから大目に見てくれると思う」》(『女帝』初版P100)

『女帝 小池百合子文藝春秋社2020年

 「東洋人の女子留学生だから大目に見てくれると思う」という発言には、その後の彼女の生き方を暗示させるものを感じるが、それはともかく、小池氏が進級試験に落ちたことは言うまでもない。しかし、小池氏の「経歴」では留年せずに4年で卒業したことになっているのが謎である。

 はじめは小池氏がタレントとして成功するのを喜んでいた北原氏だったが、国会議員に転身したさい、学歴詐称公職選挙法に違反するのにメディアが追及できなかったことに驚いたという。

 過去を知る者として、小池氏から避けられていることを自覚していた北原氏だが、環境大臣になったときから、「私はあなた(小池氏)にとって、煙たいどころではなく、消えて欲しい人間なのではないか、と思うように」なったという。

《エジプトは軍事国家でアラブの春以降、政情不安で治安も悪くなっています。一方、日本はエジプトに多額のODAを出している。カイロ大学は軍の影響下にあり、大学にもODAが投入されています。大臣になったあなたはエジプトにとって大事な存在になったはずです。

 ご存知の通り、日本と違いエジプトは不正がまかり通る社会です。権力があれば大抵のことができてしまう。人が殺されても、調査が尽くされることもありません

 私は次第に恐怖を覚えるようになり、信用できる数人の友人に、悩みを打ち明けました。すると、「そういうことは黙っていたほうがいい」と言われました。》

 北原氏は働いていたカイロで、人混みが怖くなって表に出なくなり、目立つことを避けSNSでの投稿も諦めた。小池氏と2年同居したせいで、「普通に暮らせなくなって」しまったのだ。

 そして―

百合子さんが都知事となり、さらに総理大臣候補とまで言われるようになり、私の恐怖や苦悩はさらに増していきました。

 いくら私があなたのために事実を語らずにいても、隠れ暮らしていても、この恐怖からは解放されないのだと悟りました。それに百合子さんがしていることは、やはり犯罪なのです。黙っていることは、その罪に加担するのと同じです。

 そこで私は、メディアに伝えようと思い立ち、まず朝日新聞配達証明郵便で、手紙を送りました。(略)自分の氏名と、当時は日本に滞在していたので、その住所も書きました。ところが、まったく連絡がなかった。メディアにもあなたの力が及んでいるのではないかと、私はさらに恐怖の念に囚われました。》(文春5月号P116-117)

 その後、日本のメディアが小池氏の語る学歴以外のウソも垂れ流すのを見て、「嘘をつかせ続けてきた、メディアの責任も重いと思います」と北原さんは言う。

 偶然、石井妙子氏の文藝春秋の記事を読み、「この人ならわかってくれるのでは」と手紙を送ったことから証言が表にでたのだった。

北原氏(右)と小池氏(文藝春秋より)

 しかし、北原氏は『女帝』で仮名で証言したことをネットなどで批判された。その後、実名と顔をさらすことを決意した経緯をこう記す。

《『女帝が異例のベストセラーとなっても大手メディアは学歴詐称問題を真剣に取り上げませんでした。

 それだけではありません。出版後に突然、「カイロ大学の声明」が出ると、それだけを報じたメディアもありました。なぜ権力者の味方だけをするのか。声明文が出た後、ますます、ネットでは「だから仮名の証言者なんて信じられないんだ」と、バッシングは強まっていった。私は絶望と恐怖を、余計に強くしました。同時に、あなたが都知事選で再選を果たすのを、ある種、諦めをもって見ていました。

 それから三年が経った2023年11月。『女帝』が文庫本になると連絡を受け、私は自分から「この機会に実名表記に切り替えて下さい」と言いました。「仮名だから信じられない」と言われてきたので、実名にしようと決心したのです。

 メディアはどうしたら報じてくれるのか。ここまでしたらメディアは報じてくれますか。そんな必死な思いで、実名を出すことを選択したのです。》(文春5月号P119)

 北原百代氏がここにいたるまで、決死の覚悟で小池氏の過去を証言してきたことがわかる。メディア関係者は彼女の言にどう向き合うのか。とくに最初に告発しようと手紙を書いたが、なしのつぶてだった朝日新聞は。

 身の危険さえ感じたという北原氏だが、その恐怖には十分な理由があった
(つづく)

小池百合子学歴詐称疑惑によせて②

 ウクライナ関連の国際会議がつづいた。

 13~15日はイタリアでG7サミットが開かれ、ウクライナ支援策としてロシア中央銀行の約3千億ドルの凍結資産の運用益を活用することが決められた。その額およそ500億ドルをウクライナに資金援助するという。これはかなり大きい。

 ウクライナが提唱した「平和サミット」―包括的で公正かつ永続的な平和の実現に向けた国際的な議論の促進を目的とした首脳会合―は、15、16日、世界各地の約100の国・国際機関から岸田総理をふくむ多くの首脳級も参加してスイスで開かれた。

 サミットではウクライナが戦争終結の条件とする「平和の公式」10項目のうち、賛同を得られやすい「原発の安全確保」や「食料安全保障」など3つの項目で具体的な措置をとるなどとした共同声明を採択して閉幕。ただ、この共同声明には、サウジアラビアやインドなどおよそ10か国が署名を拒否し、とくにグローバルサウスの国々への支持拡大で課題を残した。

 3つの項目のもう一つが「捕虜の解放と連れ去られた子どもの帰還」だった。

 ウクライナ政府によれば、連れ去られた子どもは特定されただけで19,546人と2万人近くにおよび、帰国できた子どもはわずか388人に過ぎない

 ロシアは「強制ではなく戦闘地域の子どもたちを保護しているだけだ」とするが、軍事侵攻後の大統領令で、ウクライナ国籍の子どもを養子にする手続きを簡素化しており、占領地の子どもを自国民にする企てだと強く非難されている。国際刑事裁判所(ICC)は昨年3月、ウクライナで子どもの連れ去りに関与した疑いでロシアのプーチン大統領ら2人に戦争犯罪容疑で逮捕状を発付している。

 NHKの取材に応じたボフダン・イエルモヒンさん(18)は、ロシアに占領されたドネツクマリウポリ出身。両親をともに失い、学校の寮で暮らしていたがロシア軍が侵攻してきて、「安全のため」と称してロシアに連れ去られた。ロシアでは里親のもとで養子にさせられた、毎日、「ウクライナはネオナチだ」、「ウクライナでは臓器のために子どもが取引されている」などと聞かされ続けたという。徴兵の対象となる18歳を前に、SNSに自分の動画を投稿したことがきっかけで帰還に結び付いた

「帰国した日はウクライナ国旗を持って何度も飛び上がりました」と喜びを語る(NHK国際報道より)

18歳を前にSNSに動画を投稿し、帰国を訴えた(国際報道より)

 しかし、身柄を取り戻せたのはごくごく一部である。18歳になればロシア軍に徴兵される可能性が出てくる。迅速に子どもを帰還させる手立てを講じて欲しい。
・・・・・・・

 小島敏郎が行動を起こした。

 20日都知事選告示2日前の18日、小池百合子都知事を経歴詐称で東京地検刑事告発したのである。

 小島氏は小池氏の環境相時代から20年近く側近で、都民ファーストの会の事務総長もつとめたが、文芸春秋」5月号で、4年前の都知事選前に経歴詐称騒動が噴出した際にカイロ大声明を巡る裏工作に加担したことを認める「爆弾告発」を行っていた。

 この日、小島氏は、小池氏が都知事選の経歴にカイロ大卒(しかも首席で)と書かなくても公選法の虚偽事項公表罪に該当するとして東京地検に告発状を提出した。

 刑事告発したあとの会見では、質疑応答で、「エジプト人の日本研究者のイサム・ハムザ東京国際大教授が「卒業証明書は本物」と反論する一幕もあった。自らもカイロ大の卒業生で、小池氏を学内で見かけたことがあると説明。文学部副学部長を務めたことがあり、学内の事情に詳しいとし、小池氏は「追試」で大学を卒業したと主張した」(東京新聞)という。

 このハムザ氏の乱入も謎で、彼の小池氏擁護の行動は何を意味しているのか。

 このあと小島氏はビデオニュースドットコムの単独インタビューに応じている。

www.videonews.com


 これを見る限り、小島氏の動機に不純なものは感じられず、誠実に事実を語っている印象をもつ。

 この中では、小池氏が学歴詐称を追及されぬよう自民党にすり寄ったこと(37分以下)、カイロ大卒の経歴に小島氏が疑問を持った理由(40分以下)、神宮外苑問題からカイロ大声明の裏工作を知ることになった経緯(45分以下)、経歴詐称問題が日本の主権にかかわること(48分以下)などが語られている。

 学歴詐称問題については、カイロ・アメリカン大学で修士号をとった経歴をもつ作家の黒木亮氏がエジプト現地で取材を行い、4年前《徹底研究!小池百合子「カイロ大卒」の真偽》をJBpressに連載して「まともには卒業していない」と結論づけている。この連載は、小池氏側の主張の矛盾を詳細に分析した決定版ともいうべき内容で説得力がある。

jbpress.ismedia.jp


 黒木氏の結論は「小池氏がカイロ大学の卒業要件を満たして卒業したという証拠、印象、片鱗は何一つ見出せなかった」というものだが、これは、もしカイロ大学が正式な「卒業証書」(なるもの)を小池氏に出したとしても「卒業要件を満たして卒業」していないという意味である。極端な話、どこの国でも、教育機関によっては、まともに勉強しなくても、何らかの思惑、配慮(例えばお金や権力への忖度)で卒業資格を付与することがありうるからだ。

「エジプトの有力政治家が『この人物を卒業生にしろ』と命じれば、学長は職員に命じて卒業証明書や卒業証書を作らせる。職員は入学記録や初年度の成績などを参考に成績表も偽造し、大学内の記録も含めて形式的に完璧にする。したがって書類だけを見れば瑕疵がない」

「エジプトに来たこともないクウェート人やサウジアラビア人が医学や歯学のディプロマ(学士と修士の中間)や修士の学位を得たりしている」(黒木氏の連載③より)。

 黒木氏は「不正卒業証書を持っていたからといって、学位としては認められない。これは当然のことである」と断じる。正論である。

「疑惑解消のために、一番重要なことは、小池氏が、学業実態があったことを証明することだ。重大な疑義が呈されているのに、「卒業証書はある。カイロ大学も認めている」で逃げ切ろうとするのではまったくお話にならない。どうやって証明するかは小池氏が考えることで、それができなければ「クロ」ということだ」と黒木氏はいう。(19日のJBpressへの寄稿)

jbpress.ismedia.jp

『女帝 小池百合子』より。このころから派手なパフォーマンスを得意としていたようだ

 ただ、裁判となれば、小池氏側は「卒業証書はある。カイロ大学も認めている」で押し通してくるだろう。エジプト政府やカイロ大学は小池氏を擁護するはずだ。この背景にあるのは政治権力の闇だった。
(つづく)

小池百合子学歴詐称疑惑によせて

 3泊4日の九州の旅を終えて帰京。熊本市で講演したあと、福岡県朝倉市の山田堰などの農業遺産をめぐるツアーのガイドをしてきた

 15日夜は熊本市の紅蘭亭で十数人の講演食事会。16日は熊本市植木文化センターで中村哲医師が命がけで私たちに教えてくれたこと~平和そして人の道」というテーマで講演。約200人の参加者で会場がほぼいっぱいになり、中村先生への関心の高さをあらためて感じた。

 翌17日は山田堰の通水式を見学した。熊本駅発のバスツアーには半分が熊本から、残りは栃木、茨城、東京、奈良など各地から、計30人弱が参加した。私は中村哲医師と日本伝統の農業施設について解説するツアーガイドとして同行。山田堰については本ブログで何度か書いているが、現地の材料を使い、現地の人がメンテナンスできる灌漑施設を作ろうとしていた中村医師がモデルにしたことで知られる。

 中村医師とPMSは、山田堰方式の堰を次々に建設し、その数は十を超える。現在では灌漑面積が2万4千ヘクタール近くになり、熊本市の面積の6割に及ぶ。

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 17日午前11時すぎ、山田堰の水門が開けられると、筑後川の水が堀川用水へと導かれ、江戸時代から使われてきた水車群が回り出した。国指定遺跡の三連水車はメディア各社やたくさんの子どもたちが見守るなか大きな水音を立てて始動。朝倉の水車は、日本で唯一、農業に利用されている揚水水車だ。乾いた田が潤されていく様子に感動した。これから10月初旬まで稼働する。

始動した三連水車。(撮影は筆者)

朝倉の水車群は動力水車ではなく揚水水車で、用水の水面より高い耕地に水を揚げる。

水が田んぼを潤し始めた。これから田植えになる。

 中村医師は三連水車を含む朝倉の水車の構造を研究し、これもアフガニスタンに導入した。中村さんに水車作りを伝授したのが水車大工の妹川幸二さん(66)で、彼がこの地の水車のメンテナンスを担ってきた。近年体調を崩されて心配だったが、去年、橋本武治さん(44)という跡継ぎが見つかった。

十数年前の妹川さん(ジン・ネット制作のDVD「地域を潤し350年 歴史的農業遺産を守る」より

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 中村医師は朝倉だけでなく日本全国の伝統的な農業遺跡を調査・研究してアフガニスタンの感慨に採り入れている。今回訪れた熊本からも八代市の十連樋門、加藤清正公によるとされる土木技術の鼻ぐり井出(いで)や石刎(いしばね)なども採用されていた。

 中村さんは今の日本の風潮を批判してこう言っている。「利に惑わされて和を失い、先祖が営々と築いた国土を荒廃させ」ている、と。ご先祖たちは、次世代、次々世代のために豊かな国土を作ろうと懸命の努力をしてきた。各地に残る工夫を凝らしたさまざまな伝統の技術、施設はその結晶だ。そこに込められた先祖の思いをぜひ将来に受け継いでいきたい。
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 東京都知事選に小池百合子が3選を目指して立候補を表明した

 2期8年の実績と公約については、おいおい検討するが、まずは学歴詐称」問題を取り上げたい。

 小池氏の経歴がウソで満ち満ちていることは、2020年の都知事選直前に出版された石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋で暴かれたが、それでも女帝は2選を果たした。小池氏の得票率6割という圧勝を見せつけられ、なぜ都民はウソつきを都知事にするのかといぶかり失望した。

小池氏の移り身の速さと有力者に食い込むうまさ。細川、小沢、小泉にまとわりついてはのし上がっていく。(『女帝』より)

 しかし、ダメなものはダメ。ここで再び蒸し返したい。

 小池氏の学歴詐称疑惑はかなり前からあった。本ブログでも8年前に触れている。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20160805

 その後、オリンピック会場の大幅見直しなど、都民を驚かせる提案を行っては結局尻すぼみに終わり、パフォーマンスのうまさだけを見せつけてきた。私は彼女が拉致問題の集会に出入りしていたころから胡散臭い政治家だなと警戒していた。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20200627
 
 2017年には、関東大震災朝鮮人犠牲者の追悼式に追悼文を送るのを取りやめ、「希望の党」を立ち上げて政界を激震させている。当時のブログにはあきれ果てたようにこう書いている。

 「小池百合子東京都知事の動きは、もう『淫ら』と表現したい。『原発ゼロ』を打ち出して小泉元首相との連携をほのめかすわ、10月の首相指名について『(公明党代表の)山口那津男さんがいいと思う』などとリップサービスするわ・・勝つためにここまで節操なく振舞えるとは、バケモノだな」。https://takase.hatenablog.jp/entry/20170926

 結局、民進党は彼女によって空中分解してしまう。いやはや、すごい人物ではある。

 口先で権力にのし上がるうえではウソが不可欠。学歴詐称は大本のウソであるから、小池百合子という人間および政治家としての本質を見るうえで重要である。

 すでにご承知のとおり、学歴詐称疑惑は文春砲で再燃した。月刊文藝春秋5月号の『「私は学歴詐称工作に加担してしまった」小池百合子都知事 元側近の爆弾告発 緊急特集 都知事の「ウラの顔」 小島敏郎』である。

小島氏は元側近(文春より)

 以前学歴詐称疑惑が持ち上がったさい、エジプト大使館のフェイスブックカイロ大学の「声明」なるものがアップされて騒ぎが沈静化したが、これは小池陣営の「工作」によるものだったと、元側近の小島氏が暴露したのだった。
https://bunshun.jp/articles/-/71499

 「(小島氏が加担し、エジプト大使館のFacebookに掲載された)カイロ大学声明が発表されたことで、学歴詐称疑惑は、見事に鎮火されました。都議会自民党も「小池都知事カイロ大学卒業証書・卒業証明書の提出に関する決議案」から降り、対抗馬も立てませんでした。実質的に小池さんを推薦したのと同じです。小池さんは再選を果たしましたが、自民党の二階さんや都連には大きな借りができた。その結果、自民党寄りに変節していったのでしょう。」(小島氏)

 学歴詐称問題の「鎮火」は小池都知事の政治的立ち位置に影響したというのだ。となると、ますますこの問題は無視できないではないか。

 「関わった側近たちも厚遇しています。メールや電話でA氏と盛んにやり取りをした樋口さんは、21年1月に千代田区長選に出馬。小池さんが熱烈に応援し、若くして千代田区長となりました。荒木さんは22年7月の参議院議員選挙に立候補し、やはり小池さんが猛烈に応援した。惨敗しましたが、今も都民ファの特別顧問として小池さんと並ぶ立場にいます。」(小島氏)

 「共犯者」たちがみな出世するというおぞましい関係が見えてくる。

(つづく)

横田めぐみさんの「歯」をめぐる怪奇⑧

 外国人から日本のあれこれについて質問され、即答できすに考えこんでしまうことがある

 その1。立ち食いそばが好きな若いアメリカ人の男性が私に聞いてきた。

 「天ぷらそばって、なんであるんですか?」

 はぁ?

 「天ぷらはクリスピーなのがおいしいのに、つゆそばに入れるとコロモは濡れちゃうし中身が出てきたりして、天ぷらのよさが台無しになります。なんで天ぷらをそばに入れるんですか?」

 うーん、わからない。「チコちゃんに叱られる」みたいになってきたぞ。

    ただ、私は田舎者なのか、つゆでグズグズになった天ぷらが好きだが。

 外国人の質問、その2。これは中東のイランで尋ねられた。

 「日本はアメリカに原爆を2回も落とされてひどい目にあったのに、なぜアメリカと仲良くしているのですか?」

 さあ、みなさんはこれにどう答えますか。

 

 同郷の写真家、土門拳は1958年に写真集「ヒロシマを発表して内外に反響を呼んだ。なぜこれが衝撃を与えたのか。

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 広島、長崎の原爆被害の実態は、GHQによって厳しく秘匿されつづけた。そのため、戦後の混乱期、原爆がもたらした破壊と悲惨は、「タブー」とされてメディアも報道せず、多くの国民の意識から消え去っていった。被爆者はアメリカの核兵器研究の人間モルモットとして扱われ、偏見・差別のなか、救済されることなく、どん底の暮らしに沈んだ。

 被爆者差別の存在やその実態が、広く公にされることがなかったことについて、NHKは2010年の番組で、その原因を「戦後のGHQによる言論統制を受けた報道機関が、正しく原爆に関する報道を行わなかったため(略)」と分析した。

 人々は原爆投下から13年も経って世に出た写真集「ヒロシマ」を見て、こんなにひどいことがあったのか!と驚き、認識をあらためたのである

 原爆投下はまごうことなき戦争犯罪であり、国際法違反であり、人道にたいする罪である。しかし、アメリカは謝罪することも裁かれることもなかった。

 ところが、朝ドラ「虎に翼」のモデル、三淵嘉子は原爆投下は国際法違反だと判決を下したらしい。「らしい」というのは本の宣伝で見ただけだから。

三淵嘉子はこんな判決を下していたのか、、、

 さらにGHQは、日本政治の根幹を仕切るために、恐るべき謀略を仕掛けたのである
(つづく)
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 アムネスティ・インターナショナル日本の記者会見「脱北者が語る『闇に包まれた北朝鮮の人権危機』」に行ってきた。

10日の会見

安明哲さん。政治犯収容所について詳しい証言ができる唯一の人だ。

 アムネスティ韓国のスタッフとNorth Korea Watchアンミョンチョル(安明哲)事務局長が、北朝鮮の人権状況の改善のための今後の協力を求めて来日している

 アンミョンチョルさんは政治犯収容所で警備兵だった。彼とは10年以上前、日テレの「バンキシャ」という番組で一緒に出演したことがある。また、韓国で以前の私の会社のスタッフが何度もインタビュー取材させてもらった。うれしい再会だった。

 拉致問題もそうだが、政治犯収容所や強制労働などの人権問題も、北朝鮮内部からの改善の動きにはまったく期待できない。普通の独裁国家なら内部に状況を変えようとするグループや個人がいて、外部から支援するということがありうるが、北朝鮮については外部から圧力を加えるしかない。だから国際的な協力が必須なのだ。(これについてはまたあらためて報告する)
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 ストックホルム合意というチャンスが活かされることなく、拉致問題は膠着したまま今に至っているが、失敗を取りかえすにはどうすればよいのか。

 先日紹介した、ジャーナリストの有田芳生さんは、横田さん夫妻と孫のウンギョンさん一家の面会を仲介し、結果としてストックホルム合意成立に関与することになったが、共同通信の取材にこう答えている。


 ―合意から10年。どのように受け止めるか。

 「2014年3月に、拉致被害者横田めぐみさんの両親の滋さん、早紀江さん夫妻と、めぐみさんの娘キム・ウンギョンさん夫妻との面会がモンゴル・ウランバートルで実現した。こうした人道的課題が進んだ環境の下で成立した合意だった。福田政権から民主党の野田政権まで積み上げてきた下地があった。進展を期待したが何も動かず、北朝鮮が核・ミサイル開発にまい進し、安倍政権が圧力を強化する中で死文化してしまった」

 ―進展する可能性はあっただろうか。

 「北朝鮮が用意していた調査報告書を日本が受け取っていれば、可能性はあったのではないか。日本は、受け取った上で内容を徹底的に検証して問題点を突き付け、必要ならば調査のために平壌に連絡事務所を設置するなど、一歩でも二歩でも進めればよかった」

 「北朝鮮は合意の際に、拉致被害者田中実さんと、拉致の疑いが拭えない金田龍光さんに関する生存情報を伝えていたと、当時の外務省幹部が今では認めている。安倍政権は全ての拉致被害者の帰国を掲げていたが、この2人の生存を確認するだけでも、政権にとっては成果だった」

 ―今後、日本はどうすればいいのか。

 「報告書があるなら受け取り、『不幸な過去を清算し、懸案事項を解決する』とした日朝平壌宣言にもう一度立ち戻って、具体的な政策実現を進めるしかないのではないか。人道問題の観点から雰囲気をつくっていくことは、ストックホルム合意の教訓だと思う。幼児教育・保育や高校の無償化から朝鮮学校を除外しているのは差別であり、こうした問題を解決する必要もあるだろう」

 有田さんは「人道問題をテコに」できるのではないかと言う。モンゴルでのウンギョンさん一家との面会の2年後、有田さんは安倍首相に再会の提案をしていた横田滋さんが存命中の2016年3月17日の参議院予算委員会でのことである。

 「例えば政府も含めて、その後の肉親との出会いというものを人道的問題として拉致問題は絶対解決しなければいけませんけれども、滋さんは83歳になられた、早紀江さんは2月で80歳になられた、そういうお年も考えれば、拉致問題の解決という大きな重要な問題とは切り離して、人道問題としてこの問題は、2年前総理が実現されたように、進めていくことも考えなければいけないと思うんですけれども、これからのことを、御夫妻の意向も含めて、総理、お聞きになる御予定ありますでしょうか。」

 安倍首相はまともに答えなかったが、滋さんが亡くなった現在、早紀江さんが元気なうちにウンギョンさんに会わせてあげたいと切に思う。早紀江さんは遠慮して、自分から「会いたい」とは決して言わないだろうが、そこは忖度して実現に動くべきではないか。

 早紀江さんは、10年前、モンゴルで水入らずの3日間を過ごした後、ウンギョンさんと別れる時のことをこう述懐している。

 「今日みたいなことが起こるのだから、必ずまたいい日が来るから。希望だけは捨てないでね。絶対に希望ですよ」と言って窓から手を差し出すと、向こうも握り返してきて、涙をためながらも笑顔で「うん」とうなずきました。(『愛はあきらめない』P20)

 二人のこの希望は叶えられるのだろうか。

(連載おわり)

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 なお、有田さんの提言にはほとんど同意するが、朝鮮学校の扱いについては私は違った意見である。

 朝鮮学校の児童生徒に対するヘイトクライムヘイトスピーチは罰せられるべきだし、拉致問題朝鮮学校の問題を絡ませることにも反対する。その上での異論である。関心ある方は以下。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20160229
https://takase.hatenablog.jp/entry/20170721

横田めぐみさんの「歯」をめぐる怪奇⑦

 先日、能登でまた震度5強の揺れの地震があって、建物がグシャッと倒壊する動画が流れた。あれは輪島市で公費解体を待っていた建物だったという。

先日の震度5強の地震でつぶれた家屋(TBSより)

 石川県では約2万2500棟の「公費解体」を予定していて、うち解体・撤去が済んだのはわずか346棟なのだという。復興が遅れていることは知っていたが、ここまでひどいとは驚いた。なぜこんなに情けない事態になっているのか?

 この間、私も能登のことを忘れていたなと反省。現地は圧倒的にマンパワーが足りないらしい。政治も報道も復興が進まない原因を分析して、もっと支援を強めないと。
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 朝ドラの「虎に翼」では、GHQが幣原首相に指示した「五大改革」(①女性の解放、②労働者の団結権の保障、③教育の民主化、④秘密警察制度の廃止、⑤経済の民主化)を具体化する一環として、新しい民法を作っている。婚姻、家族などに関する当時の保守派の意見が、今の自民党右派と同じなのには笑ったが、それはさておき、これを見て思い出したことがある。

 ロシアがウクライナに全面侵攻を始めた直後、「ウクライナはどうせ勝てないのだから、多くの犠牲者を出さないように、早く降伏した方がよい」とテレビでコメントした識者が一人ならずいた。「勝ち目がないなら、さっさと手を上げれば、命は助かるし、敵も悪いようにはしないはず」というわけだ。SNSなどでは少なくない人がこの意見に賛成していた。

 こういう考え方が出てくる一つの要因は、日本人が降伏・被占領について「良い」イメージを持っていることだろう。「虎に翼」でも連合軍の占領を好意的に受け止めている様子が出ている。

 GHQは善意であり、国民を苦しめてきた日本の抑圧構造を打ち壊し、日本を民主化し、戦後の飢餓を食糧支援で救ってくれた・・。敗戦後、かなり多くの人が「日本は負けて良かった」と思ったという。

 しかし、降伏、被占領について良い印象を持つというのは、世界ではきわめて稀だと自覚した方がよい。そしてこれは作られた占領のイメージだということも。

 先日、「強いられた沈黙~発掘 沖縄の戦争犯罪記録」(NHKBS)という番組があった。戦後27年におよぶアメリカの施政下での、沖縄住民に対する犯罪の凄まじさは、まさに「鬼畜」といっても過言ではなく、観た後は怒りがおさまらない。

www.nhk.jp


 当時の沖縄では多い年で1400件(一日にほぼ4件!)の米兵の犯罪があったという。沖縄ではいまも米兵の犯罪が続くが、敗戦後は日本全土が「オキナワ」だったのだ。どれほど酷かったか想像がつく。しかし、GHQ占領政策にとって都合の悪い情報は徹底的に統制され、報道は許されなかった。国民の目から膨大な「不祥事」が隠されたのである。これについてはまた書こう。
(つづく)
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 曽我ひとみさんの単独インタビューを昨日の「ウエークアップ」で放送していた。先日のNHKの単独インタビューに続くものだ。実は、拉致被害者本人への単独取材は控えるよう、22年前の帰国直後に「取り決め」があり、それが解除されぬまま、ずるずると今に至っている。ひとみさんへの単独取材がスクープのように放送されているのはそういうわけだ。

ウエークアップより

 ひとみさんと一緒に拉致されたお母さんのみよしさんの消息は、いまだに北朝鮮から明かされていない。みよしさんは生きていれば今92歳。一日も早く、との思いはひとみさんも切実だ。

 進展がないまま時間だけが過ぎ、未帰還の認定拉致被害者の親で生存しているのは、横田早紀江さん(88)と、有本恵子さんのお父さんの明弘さん(95)だけ。

 救う会」と「家族会」は2月、「親世代が存命のうちにすべての拉致被害者の一括帰国が実現するならば、北朝鮮に対する日本独自の制裁の解除に反対しない」とする新たな活動方針を打ち出した。そして「親世代が存命のうちに帰国が実現しない場合は、強い怒りをもって独自制裁強化を求める」としている。「親世代が存命のうちに」と時間的制約をつけただけで、「全拉致被害者の即時一括帰国」という条件に変わりはない。

 何とか早く!とせっつかれて岸田首相が「条件を付けずに首脳会談を」と北朝鮮に提案。これに対して、北朝鮮金正恩氏の妹、金与正氏が「すでに解決された拉致問題を両国の関係の展望の障害物として置かなければ、岸田首相が平壌を訪問する日も来るだろう」と声明を出し、日本側が「全く受け入れられない」と応じてストップしている。こんなふうに表で両者がコメント合戦して事態が進むはずはない。

 小泉訪朝をおぜん立てした元外務省アジア大洋州局長の田中均は、今の政府の動きを危惧する。

ウエークアップより

 「こういうふうに政権が追い詰められて、それで北朝鮮のような国と協議・交渉するのはとても危険なこと。足元をみられてしまう」

 「北朝鮮のような国と」という表現に、実際に北朝鮮と渡り合った実感が出ている。

 田中氏は、小泉訪朝の1年前、2001年9月に小泉首相北朝鮮との交渉をやってもいいかと自ら提案したという。当時は外務省から首相に対して「やりましょう」と提案する主体性があったのかと感慨深い。

 小泉首相の「極秘でやってくれ」との命を受け、秘密裏にミスターXという人物と30回にわたる交渉を行った。その顛末は本ブログでも紹介した。

takase.hatenablog.jp

 

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 なんども決裂しそうになったが何とか関係をつなぎ、いよいよ大詰めを迎える。しかし、ミスターXは、小泉首相が訪朝する前にはどうしても拉致被害者の安否を出さない。田中氏は、首相が行けば向こうは必ず安否情報を出してくると思うが、平壌に着くまで安否も分かりませんよと小泉首相に告げると「自分が行くしかない」と訪朝を決断したという。首脳会談で金正日総書記が拉致の事実を認め、「誠に忌まわしい出来事で、率直にお詫びしたい」と謝罪、5人の拉致被害者を出してきたのだった。

 北朝鮮とのギリギリの交渉を経てきた田中氏の経験には学ぶべき教訓がいくつもあると思う。その一つは、拉致に直接は関係のない人道問題に取り組み、それで信頼関係を築きながら交渉を進めていったことだ。

 02年2月には、北朝鮮に「スパイ容疑」で拘束されていた元・日経新聞社員を無条件解放させた。また、同年5月、中国瀋陽の日本領事館に脱北者5人が駆け込んだ事件については、5人をフィリピンに出国させ(翌日、韓国への亡命が認められた)人道問題としては解決をみた。

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 横田滋さん早紀江さんは、めぐみさんの娘、ウンギョンさんが現れたとき、一も二もなく「孫に会いたい」と思った。当然の人情である。しかし「救う会」は、面会に強く反対した。「会えばお母さんは死んだと言わされ、拉致問題解決が『お終い』になってしまう」というのだ。

 孫と会いたいとの封印してきた思いが叶ったのは、あれから12年も経った2014年のことだった。

 そして、肉親の面会という人道問題がストックホルム合意という大きな外交的成果につながったのである。
(つづく)