暴力の応酬で転機に立つ香港情勢

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 通勤のルートをちょっと変えると、また別の植物に出会ったりする。このにぎやかに遊んでいるような花はノゲイトウ(野鶏頭)。風で揺れたりすると動物のようだ。
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 それでもさぐにゃぐにゃの赤子ここまでに一応はしたよくやった私

 14日の朝日歌壇の佳作に選ばれた上田結香さん(東京)の作。上田さんの歌はいつも暮らしの中で感じたことをあけっぴろげに表現していて、うなずきながら笑ってしまう。先日、うちの娘の誕生日だったが、一人暮らしの娘は顔を見せにも来ない。その夜、この短歌と同じようなことをかみさんも言っていたな。子どもは親が思うようには育たないが、それでもまあ、大きくなったのだからそれでいいのだ。
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 きのうのブログで、香港情勢は暴力の応酬が一線を超えつつあると書いたが、ついに爆弾が登場したらしい。
 《香港の警察当局は14日、反政府デモが行われていた付近で、手製の爆弾が使用されたと発表した。負傷者はいなかったが、一連の抗議デモに関連して、爆弾が使用されたのは初めて。香港政府が「覆面禁止法」で締め付けを強めた後、対立が一部で先鋭化している。
 警察発表によると、爆弾が使用されたのは13日午後8時ごろ。九竜半島側の旺角(モンコック)地区の繁華街で、路上の花壇の一角から爆発音がし、付近から携帯電話の破片や電気コードなど手製爆弾とみられる破片が見つかった。
 現場では同日、抗議デモが行われ、当時はデモ隊が築いた路上の障害物などを警察側が撤去する作業を行うため、付近に警察車両が止まっていた。警察側は、携帯電話によって起爆させる方式の爆弾が仕掛けられていたとみている》


 さらには警官をナイフで襲う事件も。
 《香港では今月5日の覆面禁止法の施行以降も抗議デモが相次いでおり、13日には20カ所以上でデモが呼びかけられていた。九竜半島の観塘地区では同日、高校3年の少年が警察官をナイフで切り付けて首にけがを負わせたとして、その場で拘束された。一方、14日未明には旺角地区で香港メディアの取材チームの運転手が、実弾より威力を弱めた布袋弾で警官から頭部を撃たれたうえ、警棒で殴られるなどしてあごの骨を折るなどのけがをした。》(朝日)


 香港でよく見かけるスローガンに"FIGHT FOR FREEDOM/STAND WITH HONGKONG"がある。「自由のために闘おう、香港とともに」という意味だが、民主派は、中国に国際的な圧力をかけてほしいと呼び掛けている。
 《香港で14日夜、米議会に「香港人権・民主主義法案」の早期可決を求める集会が開かれた。香港政府が5日にデモ隊のマスク着用を禁止する「覆面禁止法」を施行して以降、許可された初めての集会で約13万人(主催者発表)が参加した。》(産経)

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米国に期待するデモ隊(日経)

 これに呼応するかのようにアメリカが動いた。
 《米議会下院は15日の本会議で、香港での人権尊重や民主主義の確立を支援する「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決した。米政府に香港の「一国二制度」が機能しているかの検証を義務付け、中国政府関係者に制裁を科せるようにする。上院も可決する公算が大きく、その後トランプ米大統領が署名すれば法案は成立する。
 米国は関税やビザ発給で香港を中国本土よりも優遇している。人権法案は毎年の検証結果に基づいて優遇をやめたり、制裁を科したりできるようにする内容だ。香港への政治的な締め付けを強める中国政府をけん制する狙いがある。(略)
 中国政府は香港問題は中国の内政上のことだとして猛反発する。中国外務省の耿爽副報道局長は16日声明を出し、法案が成立したら報復措置を取ると警告した。》(日経)
 米国のこの法律には、中国は絶対に譲れない国家主権に干渉するものとして激しく反発するはずだ。
 香港情勢は内外ともにますます目が離せなくなってきた。

香港の若者は「暴徒」なのか4

 台風19号の被害が次第に明らかになり、きょう午後6時段階で、死者は12都県で75人、行方不明者は16人に上っている。死者の半数以上は福島県宮城県に集中し、東北地方で甚大な被害が出ているという。農業への被害も大きく心配だ。

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長野県では千曲川の堤防が決壊し多くの家屋が浸水した

 犠牲になった方々のご冥福をお祈りするとともに、被害にあった方々にお見舞い申し上げます。
 一方で、行政の非人道的な対応には憤りを覚える。
 日野市の多摩川河川敷で、14日午後にホームレスとみられる男性の遺体が見つかったとの報。https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019101501001800.html
 東京・荒川区では避難所がホームレスを拒否したことが明らかになった。社会に蔓延する差別が命そのものに持ち込まれるとは・・
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 今回、香港で取材して、抗議運動が転機を迎えているように思われた。
 「逃亡犯条例」改正をめぐって6月に始まった抗議行動は、条例改正を香港政府が撤回したあと、その抗議の対象は警察の暴力になっている。
 警察のデモ規制が非常に乱暴であることは私も何度か目撃した。当局は6月以降の抗議活動に絡んで2千人以上を逮捕、200人以上を暴動罪で起訴している。デモを「暴動」と認定した政府見解の撤回は、デモ参加者にとっては絶対に譲れないところだ。

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警察の暴力の「犠牲者」に黙祷する「勇武派」の少年たち。逮捕者の最年少は12歳だ。

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8月31日に地下鉄駅構内で複数の市民が警官に密かに殺されたとされ、駅の入り口に設けられた祭壇には連日お詣りする人が絶えない。しかし死者が出た証拠はなく、私はデマだと思っている。警察に強い不信感を抱く市民には「殺人」を信じるものも多い。

 一方、香港政府はあくまでもデモは暴動であるとして徹底的に抑え込む姿勢を明らかにしている。警察当局は9月30日付で内規を改定、拳銃や催涙弾を含む武器使用のハードルを下げた。そしてこの日、ついに警察がデモ参加者に向けて実弾を発射し18歳の高校生に重傷を負わせたのである。
 これに対抗するかのように、「勇武派」の暴力行使にも変化が起きている。これまでは彼らの暴力の対象は「人」ではなく「モノ」に限られていた。空港占拠でも施設は破壊されたが空港職員に暴力が向けられることはなかった。
 警官隊と対峙したさいに「勇武派」が投げる火炎瓶は、警官隊のはるか手前の道路上で炎を上げるだけだった。火炎瓶は示威であり、警官隊が前進してくるのを妨害する手段として使用されてきた。
 それに変化を感じたのは、「覆面禁止法」の10月5日からの施行を発表した4日だった。各地でデモ隊と警官隊が激しく衝突し、元朗という地区で、一人の私服警官がデモ隊に囲まれ袋叩きにあった。その警官は拳銃を発射し、14歳の少年が太腿に重傷を負った。実弾による2人目の負傷者が出たのである。デモ隊はこの警官に向けて火炎瓶を投げ、警官の服が燃え上がった。火は消されて大事に至らなかったが、この映像がネットで流れ、市民に衝撃を与えた。

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事件を報じるデモ隊擁護派の新聞。警官が少年を撃った、これは覆面禁止法という悪法が招いた事態だと書いている。

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親中派の新聞は、暴徒が警官に二回にわたって火炎瓶を投げた、許せない事態だと報じる。

 暴力の応酬は人命にかかわるレベルに達していると私には思えた。
 今後、銃器や爆弾など殺傷力のある武器がデモ隊側から使用されるという事態が出てきたらどうなるのか。謀略もからんできて大変なことになっていくだろう。考えたくないが、暴力の応酬がエスカレートしていって極端へと走るのはこれまで他の国でも見られたことだ。
 知り合いの香港人が真剣な表情でこう言った。
 「警官隊とデモ隊、どちらに最初の死者が出るか、固唾を飲んで見ています。それによって局面が一気に変わるでしょう。どちらにしても、今以上の混乱になるのは間違いありません。とても怖いです」。
 香港情勢はいま大きな転機を迎えつつある。

香港の若者は「暴徒」なのか3

 昨夜深夜、台風19号の中心が東京から北に抜けた。雨が止んだので外に出ると、満月が見えた。遠くに救急車のサイレン、そしてそばの草むらから虫の音が聞こえる。生き物はすごいな。
 被災した地域が早く日常を取り戻すよう祈ります。
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 もう月は神無月。節気はとっくに寒露(かんろ)。今年はまだ蒸し暑く台風も来ているが、露が冷たく感じられる時節という意味だ。
 8日から初候「鴻雁来」(こうがん、きたる)。ツバメと入れ替わるように雁が北からやってくる。井上陽水の『神無月にかこまれて』にこんな歌詞がある。
 「逃げるように渡り鳥がゆく/列についていけないものに/また来る春があるかどうかは誰も知らない/ただひたすらの風まかせ」
 とても好きな悲しい歌である。
 次候の「菊花開」(きくのはな、ひらく)が14日から。末候「蟋蟀在戸」(きりぎりす、とにあり)が19日から。きりぎりすはコオロギのことらしい。
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 香港のデモ隊で警察との衝突を辞さない「勇武派」。彼らの実態は、これまでもこのブログで書いてきたが、日本の怖い過激派のイメージとは全く異なる。常設の組織はなく、見知らぬ者同士が現場で知り合い、催涙ガス対策の防塵マスクやゴーグル、ペットボトルを配る兵站係、警察の動きを知らせる連絡係、催涙弾に交通規制用の円錐形のカラーコーンを被せて処理するグループと役割分担して動いている。女性も多い。

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10月6日(日)「覆面禁止法」施行後初めての大規模デモ。雨のなか多くの市民が集まった。ほとんどがマスクをして政府に抗議の声を上げた

 私が会った「勇武派」はいずれもごく普通の心優しい若者たちだった。「いいヤツ」なのである。共通しているのは切羽詰まった危機感である。
 ある男子大学生は「勉強は未来のためにするものだよね。でも僕らには未来が見えないんだ。勉強している場合じゃないよ」と言う。そして「デモでは催涙弾の処理など、大学では教わらないことを学んでる」と笑顔で語った。
 家族に遺書を書いてデモに参加する若者も少なくない。一人の若い男性の遺書にはこう書かれていた。「もう家に帰れないかもしれない。中国人民解放軍に殺されるかもしれない。でも、妹や甥にこんな濁った社会で生きてほしくない」。

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日中の平和的なデモのあと、夕方になると「勇武派」の出番だ。道路を遮断するバリケードを作って警官隊との衝突に備える。前方右のビルが政府総部、左が中国人民解放軍駐香港部隊のビル。

 こういう思いつめた「いいヤツ」が暴力を使うようになったのはなぜか。
 尋ねると返ってくる答えは「100万人が街頭に出ても、政府は市民の声を聴いてくれなかった。平和的な手段だけではだめだ」というものだ。
 今の香港は「真の普通選挙」が実現していない。立法会は各業種のエリートにしか投票権がない職能別選挙などもあって親中派議員が多数を占め、行政長官は事実上共産党政権の指名で決まる。そこで市民は選挙の代りに民意をデモや集会で示してきた。6月には香港史上最大のデモがあったが、その訴えをも無視されるとなれば、では平和的な手段以外の方法を使おうとなる。
 そして実際に実力行使が効果的だったと「勇武派」は考えている。逃亡犯条例改正を政府が撤回したのは9月4日。その前、8月12-13日にはデモ隊が香港空港を占拠して発着便が欠航となり、9月1日には再び空港への交通を妨害し到着客が空港で足止めされている。空港機能をマヒさせるという経済的ダメージを香港政府に与えたことが条例改正案撤回につながったとして、「勇武派」は実力行使への傾きをいっそう強めることになったのである。
 5日朝、前夜に破壊されてシャッターが下りた地下鉄の駅の前で、「地下鉄がストップして不便ではないですか」と通りかかった高校生に聞くと、「仕方ないですよ。こうでもしないと政府には伝わりませんから」と破壊行為を容認していた。
 しかし、デモ隊の暴力行為は次第にエスカレートしており、危険なレベルに達しつつあるように感じられた。
(つづく)

いくつかの訃報によせて

 NHKが朝から台風19号の警戒情報を流しているが、これは日本在住または旅行中の外国人に伝わっているのだろうか。昼前の映像で東京・銀座からの「デパートも閉店で、人影はまばらです」という記者リポートの後ろに、数人のツーリストらしい欧米系のグループがうろうろしているのが映った。言葉も分からず、心細いだろう。ホテルなどでは積極的に声掛けをしてほしい。
    また、ホームレスの人などは安全なところを確保できるのか。高齢者や障害者など災害弱者を行政は優先的にケアしてほしい。
 ところで、人間以外の生き物、例えばスズメやヒヨドリなどの鳥たちはどうやって暴風雨をしのいでいるのだろう。驚いているだろうな。ふと気になった。

 巨大台風の関東直撃で、あらためて日本列島は非常に自然災害(それも破壊的な)の多い土地柄なのだと気づかされる。超変動帯にある日本列島に住んできた「国民性」を論じたことがあるが、この列島は世界でもまれな強い熱帯低気圧の直撃地でもある。この土地柄と折りあって生きていくしかないと腹をくくるしかない。https://takase.hatenablog.jp/entry/20121202
 一方でこれまでとは違い、気候変動で巨大台風の増加はじめ天候異常が進むことが心配である。洪水や海面上昇で住む土地が無くなったり、砂漠化で移住を迫られるなど物理的に故郷を追われるケースが世界中で出ているほか、日本だけをとってみても災害により確実に「国力」を消耗するから将来の福祉、医療はじめ暮らしの保障が劣化する。一瞬にして莫大な人命を失わせる核戦争とは違い、じわじわと人類の生存条件を追い詰めていくのが気候変動である。「セクシー」などと言っている場合ではないのである。

 千葉県で昼ごろまでに停電の世帯が数千軒出ているそうだが、台風被害が小さくて済むよう祈ります。
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 何人かの訃報が届いた。
 長谷川禮子さん。

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長女の卒園謝恩会にて。いつも穏やかな笑みの本当に優しい方だった。

 娘がお世話になった東立川幼稚園の創設者で園長だった。子どもはとにかく遊びなさいという教育方針で、楽しい思い出がたくさんある。とくに園最大のお祭り「ジャングルまつり」では、暗闇の中から「ジャングルの女王」として登場し、みなを沸かせたことを懐かしく思い起こす。ありがとうございました。

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ジャングル祭りに長女と。みな仮装し、子どもは腰ミノで踊りまくる楽しい祭りだった。

 長谷川禮子園長についてはhttps://takase.hatenablog.jp/entry/20120801

 伊藤淳さん。

 かつての日本共産党の大幹部で後に「スパイ」として除名された伊藤律の次男として生まれた。
 この「伊藤律事件」は、共産党内の路線と主導権を巡る内部対立によるものだが、戦後の米国の占領政策による共産党の攪乱策も関連して起きた。90年代後半には多くの資料が発掘されて「伊藤律=スパイ」説は全くの濡れ衣で、逆に律を査問した野坂参三こそが「スパイ」だったことがはっきりした。https://takase.hatenablog.jp/entry/20160718
 父の汚名を晴らしたいという淳さんを主人公に、「父はスパイではない!~革命家・伊藤律の名誉回復~」(テレビ朝日テレメンタリー、2013年12月放送)というオタクな番組を制作した。https://kakaku.com/tv/channel=10/programID=641/episodeID=688859/
 この企画をテレビ局でプレゼンしたさい、若いプロデューサーたちから、そもそも伊藤律なんて知らないし、今の世の中に関係ない、なぜこのテーマをやるのか全く分からない、と強い反対の(そしてもっともな)声があがったが、当時のチーフプロデューサー が「たまにはこういう番組もあっていいんじゃないか」と通してくれた。こんな企画、今なら民放に絶対に通らないだろう。
 伊藤律はじめ共産党幹部らが日本を脱出して北京に設けた「北京機関」(徳田機関)の痕跡と律がながく幽閉されていた刑務所などを、淳さんと一緒に取材した。

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天安門広場にて伊東淳さんと。当時の日本共産党「北京機関」は人民解放軍の敷地の中にあった。

 淳さんは父親の名誉回復を日本共産党にかけあったが未だにまともな対応をしていない。9月7日、72歳でがんで亡くなったが、母親(律の妻)も本人も共産党の活動家だっただけにそれだけは無念だったろう。
 フリーカメラマンの杉本祐一さん。
 「9月25日、胃がんで死去、62歳。15年2月、シリアへの入国を計画したため、外務省から旅券返納命令を受けた。憲法が保障する報道の自由を侵害するとして国を提訴したが、一審、二審とも請求は棄却され、18年3月に最高裁が上告ログイン前の続きを退けて敗訴が確定した。」(朝日新聞
 杉本さんのケースが、紛争地に行くジャーナリストへの旅券を取り上げる嚆矢となった。常岡浩介さんへの旅券返納命令(https://takase.hatenablog.jp/entry/2019/04/24/)そして安田純平さんへの旅券発給拒否(https://takase.hatenablog.jp/entry/20190718)である。杉本さんの裁判闘争にはあまり大きな注目が集まらなかったが、今から思えば、メディア関係者すべての問題として闘われるべきだったし、自分ももっとやれることがあったのではないかと反省している。
 みなさんのご冥福をこころよりお祈りします。

香港の若者は「暴徒」なのか2

 超大型の台風19号がやってくる。15号で大きな被害を受けた千葉県の人たちが心配だ。家の屋根をブルーシートで覆っただけの人々は、さらに強い雨風が襲うと聞いて、不安でいてもたってもいられないだろう。「一人暮らしは心細い」と泣く女性の高齢者をニュースで観て、何とか被害が小さくなるよう祈らずにはいられない。

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スーパーのレジは長蛇の列だった

 きょう早めに帰って、スーパーに寄ったら、飲食品を買いだめする人で見たことのない混みようだった。ペットボトルの水は売り切れ。帰宅して窓ガラスにガムテープをバッテンに貼り、自転車をフェンスに縛り付け、物干し竿を室内に取り込んだりした。東北出身者は台風被害に慣れていないので心配である。
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 シリア北部クルド人支配地にトルコが攻撃をかけている。
 《トルコ軍はテロ組織とみなすクルド人主体の武装勢力シリア民主軍(SDF)」に対する攻撃を10日も継続した。トルコはトランプ米大統領がシリアからの米軍撤退を表明した後、シリア北東部での攻撃を開始。前日の空爆と地上戦開始に続く攻撃で、戦闘員だけでなく民間人の死者も出ており、多くの住民がこの地域からの避難を迫られている。》。
 IS掃討の最大の功労者であるクルド勢力を見捨てていいのかという、民主、共和両党からの声に対して、トランプ大統領は「彼らは第2次大戦で我々を支援しなかった。例えばノルマンディーで我々を助けてくれなかった」と言い放った。中東における最低限の秩序維持ももはや米国には期待できない。すでに多くの避難民が出ている。日本政府もトルコ政府を牽制するなどしてこれ以上の悲劇を食い止めるべきだ。
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 昨日の続き。
 10月5日、緊急法発動による「覆面禁止法」が施行された。デモや集会では、身元がばれないよう、マスクをする参加者が多いが、これを禁止するものだ。この日、いくつかの地区でデモが行われた。ネットメディアのライブ放送を便りにデモをやっている場所を知ることができる。それを頼りに探すと深水埗(サムスイポ)地区のデモ隊に遭遇した。「覆面禁止法」施行後はじめてのデモ(の一つ)である。
 ほとんどが若者で、ほぼ全員がマスクをつけている。抗議の意思を示すためだという。きょうたくさんマスクを買ったという人もいた。10月1日の国慶節前からほとんどのデモ、集会が「違法」扱い。最近はデモが「ゲリラ」化しており、直前までどこでやるかが分からない。神出鬼没で警察も取締りに動きにくい。
 デモ隊は小さなグラウンドのある運動場に入り、集会が始まった。6月以降の警察による暴力で負傷した人に黙祷を捧げ、手のひらを空に向けた。5本の指で「5大要求」を示している。人数はおよそ500人で夜7時半ごろ解散した。

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「5大要求は一つも欠けてはならない」と主張

 帰った人もいたが、多くはそのまま残り、カップルでダべったり、グループでスマホを見たりしている。どうやら何かを待っているようすだ。
 8時過ぎ、黒ずくめの若者数人がグラウンドの中央に集まって相談を始めた。カメラを持って近づくと、メデァアは近づくなと制止された。「作戦会議」らしい。そのうち、他の参加者も集まってきて50人以上の輪になった。

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テニスコートの中央で「作戦会議」。右下の黄色いベストの集団はメディアで、作戦会議には近づかない。

 集団が動き出したのでカメラマンと追いかける。旺角(モンコック)警察署の前の交差点に差し掛かるとバリケードで道路を遮断し始めた。そのまま目抜き通りのネイザン通りを南下して交差点ごとに交通を遮断する。工事現場の木材やゴミ箱など手当たり次第に道路に引きずりだしてバリケードを作っていく。彼らこそ「勇武派」と呼ばれる集団なのだった。

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ゴミ箱など手当たり次第に道路に並べて「バリケード」を作る

 1キロ近い大通りが車が通らない歩行者天国のようになると、市民らが通りに出て、北に向かって行進を始めた。「勇武派」の行動が引き金になって、夜の大デモが出現したのである。沿道の市民らもスローガンを唱和しながら移動していく。
 このように、「勇武派」と「和理非派」は、画然と区別される存在ではなく、いわば役割分担して政府への抗議活動が展開されていることがわかる。
 デモは旺角警察署の交差点で、警察への非難の声を上げはじめた。警察署のスピーカーからは甲高い女性の声で「解散しなさい」との警告が大音響で流れ、上階の警官らが銃を構える。しばらくすると機動隊が到着してにらみ合いになった。
 沿道の市民が機動隊に激しく罵る。機動隊の隊長らしき男が市民の一人を指さすと数人の隊員が駆け寄って有無を言わさずに地面にねじ伏せ連行する。そのたびに大きな抗議の声が沿道から上がる。
 この日は火炎瓶や催涙弾が登場することなく、機動隊が数名を連行し、バリケードを撤去して去っていった。

 香港中文大学の世論調査では、「警察はデモ隊に対して過剰に暴力をしていると思うか?」については「とてもそう思う / そう思う」が合わせて71.7%だったのに対し「デモ隊の暴力は過剰か?」という質問には「とてもそう思う / そう思う」が合わせて39.4%だった。6割はデモ隊の「暴力」を容認している。
 そもそもデモ隊はなぜ「暴力」を使うようになったのか。
(つづく)

 

香港の若者は「暴徒」なのか

祝砲を実弾で撃つ国慶 (神奈川県 石井 章)
衰亡は香港島から古希の国 (兵庫県 上村晃一)
                 朝日川柳10月3日より

 

 5日(土)、6日(日)と香港を取材してきた。撮影した素材をホテルからネットで日本に送り、6日夜のフジテレビ「Mr.サンデー」で放送された。私自身まだ観ていないのだが。

 香港はいよいよのっぴきならない状況になってきた。
 国慶節の10月1日、新界地区の荃湾(ツェンワン)でデモ隊が警官隊と衝突。警察は高校生をピストルで至近距離から撃ち、銃弾が左胸に命中して一時重体となった。その高校生は3日、暴動罪と警察官を襲った罪で起訴された。デモで実弾による初めての負傷者が出て、その彼を暴動罪で起訴したことは市民の憤激を煽っている。

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10月1日に高校生が撃たれた荃湾の現場。一命はとりとめたのだが白い花が供えられていた

 当局は6月以降の抗議活動に絡んで2千人以上を逮捕、200人以上を暴動罪で起訴している。いま市民がかかげる5大要求には、デモを暴動と認定した政府見解の撤回があり、ここは市民にとっては絶対に譲れないところだ。
 一方、香港政府はデモ=暴動を徹底的に抑え込む姿勢を明らかにし、デモ自体を禁止し、取り締まりが非常に乱暴になっている。警察当局は9月30日付で内規を改定し、拳銃や催涙弾を含む武器使用のハードルを下げていたと報じられている。
 警察はメディアにも銃を向けるようになっており、9月29日には、インドネシア人の女性記者が、警察が撃ったゴム弾で失明した。
 4日はもう一つの転機を迎えた。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が議会の審議を要しない「緊急法」を発動。翌5日0時からデモにおいてマスク着用を禁じる「覆面禁止法」が施行された。
 周庭さんは「香港に住むのは怖い」とはじめて思ったという。

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 緊急法の発動は、抗議活動に油を注ぐ形になり、若者たちがより激しい抗議活動に出ている。4日夜は各地で中国系とみなされた店舗や鉄道の駅などがデモ隊に破壊され、中国本土に近い新界地区・元朗では、私服警官がデモに加わっていた少年(14歳)をピストルで撃って太ももに重傷を負わせた。実弾による二人目のけが人である。
こうして暴力的な衝突がどんどんエスカレートしている。

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銅鑼湾(Causeway Bay)駅は入り口が焼け焦げシャッターが下りていた。スマホで写真を撮る人多し

 そこで急遽、香港に向かったのだが、5日未明に着くと、昨夜の破壊行為で、鉄道は全線運行中止。多くのショッピングモールも営業を停止する異常事態だった。さて何を取材しようか。

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荃湾の中国銀行は激しく破壊されていた。表に面したガラスは全て割られ消火栓から中に水が注ぎこまれて水浸しになった

 周庭さんが私たちをレノンウォールに案内してくれたとき、日本の皆さんに見せたいスローガンがあると指差したのが「「沒有暴徒 只有暴政」(暴徒はいない暴政あるのみ)だった。https://takase.hatenablog.jp/entry/20190915
 デモ隊は「暴徒」なのか?これは政府と市民側の最大の対立点である。
 デモ参加者には「和理非(和平・理性・非暴力の略)派」と実力行使も辞さない「勇武派」がいるとされる。ニュースで火炎瓶を投げ、地下鉄のインフラを破壊する若者たちを見て、「暴力は決して許されない」と反発を感じる日本人は多いだろう。
 そこで今回は、徹底的に「勇武派」を追いかけて、彼らは「暴徒」なのかというテーマを考えてみることにした。
(つづく)

香港で高校生が警官に撃たれ重体

 10月に入っても暑い。きょうもオフィスではエアコンを付けっぱなしだった。
 暑さのせいか、ヒガンバナの開花が遅いらしい。どこかに咲いていないかなと探しながら歩いていたら、通勤路上のフェンスから真っ赤な花が道路をのぞいている。

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 曼珠沙華とも呼ばれるこの植物、古く、米と一緒に大陸から日本に入ってきたようだ。有毒なので、虫やミミズ、ネズミなどを避けるために田んぼの畔や墓地によく植えられるという。

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 建国70周年の節目とあって、北京では盛大な式典が執り行われたが、香港各地では「嘆きの日」だとして「国慶ではなく国難だ」と叫びながら無許可デモが行われた。

 デモ隊の一部が警官隊と激しくぶつかった。火炎瓶と催涙ガスの応酬はこれまでどおりだが、きょうはデモが始まる前から警官隊が催涙ガス弾を使い、徹底的に蹴散らすつもりだったようだ。これまでは警察の規制に逃げていたデモ隊だが、きょうは警官隊に襲いかかり、押し返すケースもあったという。デモ隊側も覚悟を決めていたようだ。
 その中で、衝撃的な事件が起きた。デモ隊の若者が警官に至近距離からピストルを撃たれ、胸に命中して重体だという。

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 《デモ隊との衝突の中で警察が実弾を発砲し、高校2年の男子生徒(18)が左胸を撃たれて重体となった。逃亡犯条例改正案に端を発し6月から続く抗議活動で、市民が撃たれたのは初めて。デモは一段と先鋭化する可能性がある。》(香港時事)
 複数の動画が公開されているが、警官は威嚇射撃をすることなく、また足などを狙うこともせずに、ためらわずにピストルを胸に向けて至近距離で撃っている。殺してもよいと思っていたのか。
https://www.youtube.com/watch?v=MWmGgwpFLgQ
https://www.youtube.com/watch?v=uTYfWfd7Yqc
 この事件は運動の転換点になるかもしれない。市民は激昂しているから、あす以降の成りゆきがとても心配だ。中国共産党としては、デモ隊側の暴力と警察の武力による弾圧のエスカレートが武力介入の口実となることを承知した上で、手を打ってくるだろう。

 この3カ月超の運動では警官のデモ隊に対する暴行が酷いと問題になっており、これがまた市民の抗議行動を激しくさせている。いま香港の運動が掲げる5大要求には②デモの「暴動」認定の取り消し③警察の暴力に関する独立調査委員会の設置④拘束したデモ参加者の釈放と警察の取り締まりに関する要求が三つも入っている。
 しかし、もともとは香港警察は紳士的なことで知られていたという。今は警官が現われるや、市民から、警察は「黒社会」(暴力団)ださ!と罵声がとぶ。
 香港警察の中に中国本土の武警(人民武装警察部隊)のエージェントが入っていて指揮している、その証拠に北京語で警官隊に指揮するのを見た、という話もよく聞くが、この情報は確認されていない。
 中国の武警は香港に駐留しており、8月に新たな部隊が「交代」と称して香港に入ってきた。しかし、それは「交代」ではなく「増強」で、その数はすで1万人から1万2千人に達しているという。ロイターなどが報じている。香港警察は、犯罪捜査や交通警察を含めて3万5千人だから、中国の武警の存在感は大きい。
 これ以上、物理的な衝突がエスカレートした場合、習近平は武警をデモ規制現場に投入してくる可能性が出てくる。
 一方、その香港は、決して一人で闘っているのではない。国際連帯を強く求めている。私を含む日本人取材者で、デモ隊から感謝の言葉を伝えられなかった人はおそらくいないだろう。日本人と分かると日本語で「アリガトウ」と毎日どこかで声をかけられた。デモ参加者につかまって話し込むことも多く、香港人が闘っていることをぜひ世界に知らせてくれと熱く要望された。強大な中国を相手に闘うには多くの国々の人々とそれぞれの国のリーダーたちを巻き込まねば勝算がない。
 先日、デモ隊が欧米などいわゆる「自由」の国の国旗を掲げて行進した。現地で取材に当たっているライターの安田峰俊さん(https://takase.hatenablog.jp/entry/20181108に登場。私は9月1日に香港中文大学でたまたま会った)がその中に日の丸があるのを見て「国際的連帯と自由を訴える文脈でポジティブに日の丸が使われるの、ちょっと斬新ではある」と書いている。

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 きょう高校生が警官に銃撃されたニュースが入ると、日本共産党志位和夫委員長がすぐにツイッターに「極めて憂慮すべき事態だ。抗議活動に対して実弾を用いて対応することに、強く反対する。」と書きこんだ。日本の共産党でさえ、向こう(中国共産党)ではなく「こちら」側だ。

 いま二つの大きな価値観が香港でぶつかっている。香港が中国に蹂躙されぬよう、我々が何をできるか考えたい。