クルド人への生活者としての支援を

 きのうは「難民の日」だった。 

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入管へのデモ。100人ほど参加したという。知った顔が何人もいた(テレビ朝日

 「牛久の会」(牛久入管収容所問題を考える会http://ushikunokai.org/)の仲間と入管に抗議するデモに参加し、川口市での「在日クルド人の現在2021展」ものぞこうと思っていたのだが、都合がつけられずにどっちにも行けなかった。残念。

 私は自分史ビデオの制作を「なりわい」の一つにしている。クライアントの人生を30分から1時間の映像作品にするもので、その第一作目の納品が今月中なのだ。それで連日、編集映像とナレーション原稿の仕上げ作業をやっている。
 そこに明日のZOOMイベント「焚火のある風人塾」の準備やら母親の介護関係の野暮用やらが重なって、めずらしく忙しい日々になってしまった。
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 土曜(19日)のテレビニュースに、在日クルド人を支援する松澤秀延さんが紹介されていた。私もお会いしたことがあるが、手弁当クルド人を親身になって助けている奇特な方だ。

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松澤さん。クルド人の子どもの学費を負担して高等教育を受けさせたりもしている。

 このブログでも何度か書いたが、トルコではクルド人差別・弾圧が激しく、当局に「不穏分子」と睨まれたら、司法手続きなどそっちのけで拘束、拷問され、暗殺されてしまうこともある。

 欧米では、「トルコからきたクルド人」というだけで難民認定される国もあるなか、日本はクルド人を過去一人も難民認定していない。

 不法滞在の外国人はそれぞれ「すみわけ」があって、クルド人川口市周辺に多く、仕事は解体業に特化している。仮放免でシャバに出ていても仕事はできない建前になっているのだが、食っていかなくていけないので、実際はみな働いている。見つかればまた収容されてしまう。不毛ないたちごっこだ。

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仮放免許可書。これで収容は解かれるのだが・・

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健康保険がないので医療費は全額負担となる

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このクルド人家族は、子どもが手術を要する病気で、松澤さんに助けを求めている

 

 私は入管に収容されたクルド人十数人に面会したことがあるが、みな家族を抱え、どうやって暮らしを維持していくか悩んでいた。
 心配の中心は、日本で生まれ育った子どもたちのことで、仮放免の身分のままでは進学もままならない。成人に達しつつある子どもたちは、将来が描けずに苦しんでいる。

 政府は、取り締り一辺倒ではなく、彼らが日本社会で希望をもって生活できるような支援策をとってほしい。

「リンゴ日報」を買い支える市民のふんばり

 この人のこの世の時間すこし借りてきれいな指をあかず眺める (東京都 柴崎加寿子)

 きょうの「朝日歌壇」に載っていた佳作一首。

 この世で借りた時間、そこにある愛。心がしーんとするきれいな歌だ。

 私たちは、ある条件のもとで、ある限られた時間、生を受けている。それは命を預かっている、あるいは借りていると言ってもいい。人間本来の在り方を思い起こさせる。

 この歌を選んだのは、先日紹介した、歌人にして細胞生物学者永田和宏氏。さすが。

https://takase.hatenablog.jp/entry/20210531

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 晴れ間をぬって自転車散歩。
 川に沿って走るのが好きだ。

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野火止用水は水辺に紫陽花が連なって美しい。東村山市

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 お知らせから。
 今月の「焚き火のある風人塾」を6月22日(火)21:00から開催します。

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 今回は6回目で『気づきの宇宙史 138億年 ⑥138億年を生きる』です。これが各論の最終回になります。
 ビッグバンからの138億年を大きく振りかえり、この宇宙のなかで人類はどのような存在なのかを確認します。
 「私に言わせれば、人類のような種の存在は『バクチを打って百万回たてつづけに勝ちつづけてきたくらいの幸運』によるものなんです」生物学者、木村資生氏)
 私たちがなぜ生まれてきたかを問うことは、どう生きるべきなのかという「倫理」を考えることにもなります。   
 「つながって、つながって、つながりあって、ひとつ」のコスモロジーから、なぜ人を殺してはいけないのかの問いにも挑戦します。
 今回は総集編として、初めての方も「気づきの宇宙史」の全体像が分かりますので、お気軽にご参加ください。

bonfire-place.stores.jp

 ここに出てくる木村資生という先生は、遺伝学の権威で、生物学のノーベル賞と言われる「ダーウィン・メダル」を日本人で唯一受賞している。
 木村先生はちょっと古い方なので「バクチ」を比喩にしたが、今風に言えば、ジャンボ宝くじ100万回連続1位になるくらいの幸運」とでもなるだろうか。

 「連続」だから、一回でも外れたらダメ。連続100万回当たるというとてつもない確率。ため息がでるほど、すごいな。

 その人類を宇宙はなぜ生み出したのか。宇宙における人類の立ち位置、そしてそこから見えてくるコスモロジーを考えていきます。
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 先日の続報。
 帰国を拒否して日本に留まったミャンマーのサッカー選手、ピエ・リアン・アウン氏について、政府は、難民申請すれば認定する方向で検討しているらしい。難民認定は一昨年が44人で申請の0.4%、去年が47人で1.2%とほとんどが不認定なのだが、政府はミャンマーについては特別扱いするという。

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 《ミャンマーにおいては,2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生し,各地で抗議デモが活発化しています。国軍・警察の発砲等による一般市民の死亡・負傷事案が発生し,デモに参加していない住民に対する暴力等も報告されており,情勢は引き続き不透明な状況です。
 そのため,ミャンマーにおける情勢不安を理由に本邦への在留を希望するミャンマー人については,緊急避難措置として,在留や就労を認めることとしました。
 また,難民認定申請者については,審査を迅速に行い,難民該当性が認められる場合には適切に難民認定し,難民該当性が認められない場合でも,上記と同様に緊急避難措置として,在留や就労を認めることとしました。》(出入国在留管理庁HP)
http://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/10_00036.html

 日本に在留するミャンマー人は約3万5千人。これを機に、その他の国籍の人へも出入国管理のあり方を変えてほしい。

 入管による非人道的な長期拘束は、東京オリンピックに向けての治安対策ではじまった。それがオリンピックを前に見直しが始まるというのは皮肉だ。

takase.hatenablog.jp


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 香港紙「リンゴ日報」の弾圧続報。

 同紙を発行する「壱伝媒(ネクストデジタル)」の経営と編集部門のトップ2人が国安法違反の罪で起訴され、きのう19日に裁判所で初公判が始まった。2人の保釈は却下された。2人とともに17日に逮捕された同社最高執行責任者(COO)の周達権氏ら3人は18日に保釈された。

 起訴状によると、ネクストデジタルの最高経営責任者(CEO)の張剣虹氏とリンゴ日報編集長の羅偉光氏、また法人としてのリンゴ日報を含む関連3社は、昨年7月から今年4月にかけ、同紙創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏とともに、中国や香港政府への制裁を外国の組織に呼びかけて「外国勢力と結託」したとされる。

 初公判で、警察が同紙本社からパソコン40台以上、情報が保存されたサーバー16台を押収したことが明らかにされた。警察は、同紙が掲載した約30本の記事に問題があったとしている。(朝日新聞

 一方、市民はリンゴ日報を買うことで支援の姿勢を示している。

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新聞を買って支援しようと多くの市民が買い、売り切れたという

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紙面に「ふんばろう」と

 「リンゴ日報」は18日、前日の6倍以上に当たる50万部を発行した。1面で読者へのメッセージを掲載。取材資料の押収といった当局の手法により「香港の報道の自由は危機にひんした」と非難し、「社員は最後まで戦い抜く」と抵抗の意志を示した。

 アメリ国務省は香港政府に対し、「リンゴ日報」幹部らを直ちに釈放することとメディアへの不当な圧力を停止するよう要求した。

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NHK「国際報道」より

 日本政府もいつも「検討」ばかりしていないで、タイミングよくしっかり抗議すべきだ。それが、新聞を買ってふんばっている香港市民に連帯する道だろう。

弾圧と発展-中国の二つの顔

 先週末から奈良を旅してきた。

 特別展「聖徳太子法隆寺」を奈良国立博物館で6月20日までやっていると聞き、これは必見!と前売り券を購入した。

www.narahaku.go.jp

 今年は太子が亡くなって1400年にあたる。これを記念して、太子と太子が建立したとされる法隆寺ゆかりの至宝(国宝36件!重文75件!をふくむ)を公開するという豪華企画だ。

 日本の国柄を理解するには古代における仏教のあり方を知らなくては、と勉強を続けていて、その主要な対象の一つが聖徳太子だ。私にとっては「不要不急」のお出かけではない。
 ただ、あとでポスターをよく見たら、わざわざ奈良まで行かなくても、7月には東京の国立博物館でもやることになっていた。でも、チケットも買ったことだし、この機会に法隆寺などを実地に観るのもいいなとでかけた。

 交通費節約のため、行きも帰りも深夜バスにしたのだが、「高齢者なのに無理するのはやめなさい」と娘に叱られた。たしかに乗客は若い人たちばかりで、車中は三密。それにやはり疲れる。ちょっとヤバイ。こんどから長距離バスは控えよう。

 奈良は緊急事態宣言にはなっておらず、レストランでも酒を出していたが、あるお店に、「宣言発令中の地域から来られた方の入店をお断りします」との注意書きが貼ってあった。ちょっと肩身の狭い旅である。

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観光客がおらずどこに行ってもガラガラ。法隆寺ひとり占め・・信じられない。

 いろんなところを回り、聖徳太子もこのあたりを歩いたのだな、などと思いながらのいい旅だった。おいおい報告したい。
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 ほとんど毎回観るテレビ番組にNHKの「国際報道」がある。BS1の番組なのだが、この春からNHK総合でも放送している。
 番組の中身もいいのだが、進行を仕切るMCの酒井美帆さんがまたすばらしい。コメントの内容もタイミングも実に的確で、勉強ぶり、勘の良さを感じさせる。また細かい気配りも。きっと人柄もいいんだろうな。

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国際報道MCの酒井美帆さん

 美人だがどこか視聴者の感情にひっかかるアナウンサーもいるなか、まったくいやみを感じさせないさわやかさは出色だ。そのさわやかな話ぶりや表情が努力の末に身についたのではなく、天性のもののように思われる。朝の番組でも重宝されそうだな。
 彼女はNHK職員ではない。オーディションで抜擢されたのだろうか、よくこんな逸材を見つけてきたものだ、などと酒井さんの出自にまで関心をもってしまう。

 ところできのうの「国際報道」は中国に関するニュースが二つ。

 一つは、17日朝、香港で政府に批判的な新聞『リンゴ日報』の編集・経営部門の幹部5人が逮捕されたニュース。

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国際報道より

 逮捕されたのは、同紙を発行するメディアグループ「壱伝媒(ネクストデジタル)」行政総裁の張剣虹氏や同紙編集長の羅偉光氏らで、容疑は「香港国家安全維持法」(国安法)の外国勢力などと結託し国家の安全に危害を加えた疑い。香港警察によれば、19年以降、30回にわたって、記事などを通じて外国の組織などに中国や香港の政府に制裁を科すよう呼びかけたという。

 創業者の黎智英(れいちえい、ジミー・ライ)氏はすでに同罪で公判中で、他にも複数の抗議活動に関連して無許可の集会に参加した罪で実刑判決を受け、刑務所に収容されている。https://takase.hatenablog.jp/entry/20210417

 『リンゴ日報』によれば、「捜索で記者たちのパソコン38台が押収され、その中には取材の資料が大量に含まれている」、「香港で保障されている言論の自由が危ぶまれる事態だ」という。

 取材源が共産党にダダ洩れになるとすれば、取材される人は危なくてメディアに本心を言えない。結果、「愛国的」でない言論は表に出なくなる。メディアが黙らされることは、市民の思想信条、言論の自由が消滅することにつながる。

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リンゴ日報は、あくまで闘う姿勢を示すが・・

 

 中国共産党は、個々の人物だけでなく、メディアそのものをターゲットにして自由な言論をつぶしにかかっている。香港基本法違反であり、「二制度」を完全に無視する行為だ。

 12日、去年12月禁錮10か月の実刑判決を受けて刑務所に収容されていた周庭(アグネス・チョウ)さんが刑期を短縮されて出所した。

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出所した周庭さん

 痩せて憔悴した感じだが、はやく体力・気力を回復してほしい。しかし、弾圧がより過酷になっているので、今後の活動は封じられそうだ。

 民主化運動は冬の時代、さらに厳冬期に入ったような気配だ。

 もう一つの中国関連ニュース。
 17日、中国が有人宇宙船「神舟12号」を打ち上げ、独自に建設中の宇宙ステーションにドッキングを成功させた

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国際報道より

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 搭乗していた飛行士3人は、宇宙ステーションの中核部分に乗り移った。4月には基幹となる施設「天和」」を打ち上げており、来年の完成を目指している。3人は、今後3か月ステーションに滞在し、建設作業や実験などに従事。ステーションの外にも出て作業をするという。

 中国の宇宙進出のスピードには驚かされる。技術的な進歩が著しい。

 この背景には、米中対立があり、アメリカの法律でNASAと中国の協力が禁止され、国際宇宙ステーションを中国が利用できなくなったことがあり、現在ロシアとの協力を進めつつ、宇宙進出にまい進している。
 ちなみに、ロシアとは「国際月科学ステーション」プロジェクトを進めており、今年から5年間両国が探査機を月に送り調査、26年以降は月に施設を建設する予定だ。

 以上二つのニュースは、中国の人権弾圧の強化と先端技術での躍進という二つの面を象徴するように思われた。

 コロナ禍からの回復では独り勝ちの中国。これから、いっそう抜きんでた経済の伸びが予想される。

 “お上にたてつかなければ、暮らしはどんどん良くしてやるよ”
 中国共産党のこのささやきは、さらに説得力を増しそうだ。

3本指を掲げたミャンマーのサッカー選手が帰国を拒否

 3本指を立てた、あのミャンマーのサッカー選手が帰国を拒んで日本に残った。

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ピエリアンアウン選手。指にはWE NEED JUSTICEと書かれている

https://twitter.com/nytk_nytkjpn

サッカーワールドカップ(W杯)アジア2次予選の日本戦で、ミャンマーのクーデターに抗議する意思を示した代表選手、ピエリアンアウン選手(27)が17日、大阪市内で会見した。16日夜、母国への帰国便への搭乗を拒み、日本政府に保護を求めた行動から一夜明け、「多くの日本人に応援をもらった」と語り、「心配や不安はある。ミャンマーを助けてほしい」と呼びかけた。

 控えゴールキーパーだったピエリアンアウン選手は5月28日に千葉市であった日本戦で、国歌斉唱の際、クーデターで権力を握った国軍への抵抗の意思を示す「3本指」を掲げた。この行動について、試合後、朝日新聞の取材に「不安定なミャンマーの現状を世界に知ってもらいたかった」と話していた。

 会見には、同選手を支援する空野(そらの)佳弘弁護士(大阪弁護士会)や、「帰国すると命が危ない」と同選手の保護に動いた在日ミャンマー人のアウンミャッウィンさん(47)が同席した。

 ピエリアンアウン選手はチームを離れる計画について、「アウンミャッウィンさんと連絡を取り合い、ホテルから一緒に逃げようとしたが何回も失敗し、警備が厳しくなった」と振り返った。帰国予定日の16日も「いったんは逃げることができないと諦めたが、最後のチャンスだった(関西空港での)出国時にがんばった」と話した。出入国在留管理局に対し、英語で「私はミャンマーには帰りたくない」と伝えたという。

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事前にひそかに連絡を取り合って保護を約束したという。朝日新聞が密着取材していた。(朝日新聞の配信動画)

 ミャンマーをめぐっては出入国在留管理庁が5月28日、国内のミャンマー人がクーデターによる情勢不安を理由に日本にとどまることを希望する場合、在留や就労を認める緊急避難措置を始めている

 空野弁護士によると、ピエリアンアウン選手は近く難民認定を申請する。》(笠原真、宮崎亮)https://www.asahi.com/articles/ASP6K5TCQP6KPTIL021.html 
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 9年前のきょう、都内でアウンサンスーチーさんの67歳の誕生日を祝う会が都内であり、私も参加した。これはそのときのフェイスブックの投稿。

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私のFBより 2012年6月17日

 このときは民主化がどこまで進むかという期待で、会場の雰囲気も明るかった。当日ネットでヤンゴンと会場をむすぶ計画もあった(結局できなかったが)。

 今では連絡どころか、彼女の消息すら分からない。

 日本政府は在日か国外からかを問わず、保護を求めてくるミャンマー人をしっかり保護することを内外に明らかにし、ミャンマー軍部への圧力をもっと強くするべきだ。

 今回のピエリアンアウン選手のケースが、これからの日本の難民認定や入管行政に変化をもたらしてくれるといいのだが。
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 ミャンマー国内では、民主化を求める市民のなかで武装闘争に踏み切る人が増えているという

 2013年にタイで開かれた第1回ミス・グランド・インターナショナル大会にミャンマー代表として参加したター・テッテさん(32)が、国境周辺で活動する少数民族武装組織と合流して、軍事訓練を受けていることがSNS上で話題になっている

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ターテッテさんのツイッターより

 ター・テッテさんは自身のフェイスブックに小銃を手にした写真を掲載するとともに「反撃する時が来た」とコメントした。

  RFA(自由アジアラジオ)の電話インタビューにター・テッテさんはこのように答えている。

 「軍政のやり方が許せなかったことが武装を決意した理由。クーデター発生直後の2月には市民と一緒に平和的デモに参加していたが、軍兵士や警察官による残虐行為で、男女を問わず、子供までもが暴行を受け、拘留され、殺害された。もう武装化以外の選択肢はな政を放逐することだ」

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かつての少数民族有力2組織トップ、KNU(カレン民族)のボ・ミヤ氏(右)とKIO(カチン民族)のブラン・セン氏。1988年の民主化弾圧の痕、学生組織ABSDFの一部はこれらの軍事部門の庇護のもと武闘を試みたが大きな成果はあげられなかった。ZOOMセミナー「ミャンマー少数民族エリアの現在」(5月17日)より

 彼女は少数民族カレン族のキャンプで訓練を受けているが、一方、国軍から離反した兵士がインストラクターとなって軍事訓練をしているケースもあるという。

 先月、民主派勢力は「国民防衛隊」結成を発表。民主派が大っぴらに武闘を宣言したとも解釈できる動きで、武装した市民と国軍との戦闘が増えているという。

 いまの国軍のやり方を見ていると、平和的な形での民主化はもう無理だと市民が武闘に望みを託すのはよくわかる。しかし、それはより多くの犠牲を出すだろうし、軍事化にともなう特有の「暗部」もある。
 これ以上の悲惨をさけるためにも国際社会の強力な介入が必要だ。

https://takase.hatenablog.jp/archive/2021/04/06

 

 

あなたは日本のために戦えますか?

 先週の土曜(12日)の夜、小平市の「どんぐり林」で、「いきものの歴史影絵」の上映会があった。

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 45億年の地球の歴史が生き物を進化させてきた物語を、子どもたちと父兄がみごに演じた。生演奏付きという豪華なパフォーマンスですばらしかった。

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40億年の進化は豊かな生態系を生み出した

 私は影絵のあと、40億年前に深い海の下で生まれた、たった1匹の小さな”いのち”が、現在地球にすむ植物、動物、菌類をふくむあらゆる生き物の祖先であること、同じ祖先から生まれてきたのだから、生き物はみな“親戚”であることなどを15分ほどお話した。子どもを対象にお話したのだが、父兄の方が楽しんでくれたようだ。
 子どもは分からないことは遠慮なく「分かんなーい!」と言う。そこはつらいが、勉強になる。これからも話をする機会を見つけて挑戦しよう。
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 お知らせです。
 高世仁のニュース・パンフォーカスNo.16 「あなたは日本のために戦えますか?」を公開しました。

www.tsunagi-media.jp

 「自国のために戦うか」という質問の国際アンケート調査で、「はい」と答えた人が96.4%ともっとも多いのはベトナムで、わが日本は「はい」の答えが世界最低、しかもダントツの最下位だ。
 万が一、日本が他国に軍事攻撃されても、戦おうという人はわずか1割と少ししかいないということになる。

 好戦性を問うているのではなく、質問文は「もう二度と戦争はあって欲しくないというのがわれわれすべての願いですが、もし仮にそういう事態になったら、あなたは進んでわが国のために戦いますか」と慎重なニュアンスだ。

 国民が自分の国を守ろうと思わないところで、どんな安全保障政策がありうるのか。私たち一人ひとりに問いかけられている問いだが、どう考えたらいいのか。
 ご関心あればお読みください。

 パンフォーカスには結果を一部しか出していないが、ここにすべての国・地域の答えのグラフを紹介する。
 これを見ていると、いろいろ考えさせられる。日本はグラフの一番下。

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「自国のために戦うか」の問いに、青が「はい」、茶が「いいえ」、緑が「わからない」。日本は「分からない」も抜きんでている(友人の三谷真介さん作成のグラブ)

 

北朝鮮人権抑圧への抗議を続けよう

 8日、1回目のコロナワクチン接種を受けてきた。

 小さなクリニックなので、待合室があふれ、何人もが外で立って待っていた。流れ作業のように、次から次へと医師の前に呼ばれ、打たれていく。痛みはほとんどなく、針がいつ刺さったか分からなかったほど。翌日注射の箇所がちょっと痛んだだけで何事もなかった。

 私が打たれたのはファイザー社のワクチンだが、これは効き目が1年もたないかもしれないとファイザーの社長が言っている。

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 ウイルスはワクチンをくぐり抜ける変異種を生むだろうから、ワクチン自体も新しいものが開発されるだろう。

 ただ、いま使われているいくつかのワクチンは、それぞれ作用機序をふくめ全く別物らしい。どれがいいかという比較も必要だ。使いでも違う。例えば、ワクチンの保管温度は、ファイザー社のものマイナス75℃(±15℃)。 モデルナ製の保管温度はマイナス20℃(±5℃)とどちらも超低温が要求されるのに対して、中国製のやつは+2℃から8℃と普通の冷蔵庫でもOK。高価な保冷設備が必要ないので途上国では喜ばれているという。意外と効能も良かったりして。
 各国のワクチンもでそろって、そろそろランキングが出そうだな。第一位は・・・?
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 2日ほど前のNHKニュースで、3Dアニメ映画”True North”が紹介されていた。

 北朝鮮政治犯収容所に入れられた家族の物語だ。清水ハン栄治監督が、10年かけて脱北者の証言を聴きインドネシアを制作地にして作ったという。私も完成前から注目していたが、海外の映画祭でも好評らしい。


 清水さんは、「政治に関心がない人にもエンターテインメントとしておもしろく観られるように作った」という。この手の政治的・社会的テーマを扱うことがなかった日本のアニメにも刺激になるかもしれない。

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外国特派員協会にて

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清水ハン栄治さん

 この映画制作に協力した、政治犯収容所の看守だった脱北者安明哲(アンミョンチョル)さんは、収容所の内部機関にいた人物として初めて実態を暴露した。
 ジン・ネットの番組に複数回登場してもらい、私自身、日テレの番組のスタジオでも一緒に出演したご縁がある。

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アンミョンチョルさん

 彼の証言をもとにした映画ならば、リアリティは保証付きだ。
 上映館が増えてきたので、そろそろ観に行こう。

 政治犯収容所については、1年前(去年5月30日)NK WATCHという団体が北朝鮮の人権に対する国際人権運動の成果」(Effects of International Advocacy toward Human Rights of North Korea)という報告書を出し、その中で興味深い言及があった。

http://www.nkwatch.org/wp-content/uploads/2020/06/Effects-of-International-Advocacy-toward-Human-Rights-of-North-KoreaNKWatch-3-1.pdf

 この報告書は、北朝鮮の人権侵害に対して国外から声を上げることがどれほどの成果を生んだのかを総括している。ふつうの独裁ではない北朝鮮への抗議が、はたして効くのかは、とても大事な論点だ。

 報告書は結論として、人権状況にわずかではあるが改善がみられるとし、その成果が政治犯収容所にあらわれているという。
 一部翻訳して紹介しよう。

 まず総括的には―
 「(報告書は)国際的人権運動が北朝鮮の人権状況に影響を与えていると指摘した。
 そのひとつは、政治犯収容所の数が減ったこと。北朝鮮の人権の実態への国際的批判によって、1980年代後半から90年代前半にかけていくつかの収容所が閉鎖された。この結果、収容所は12ヵ所から6ヵ所へと半減した。さらに金正恩が権力を掌握したのちに2ヵ所が解体され、現在稼働しているのは4ヵ所となった
 ただし、解体された収容所の被収容者すべてが解放されたわけではない。他の収容所に移された人々もおり、残った収容所は拡張されている。つまり、北朝鮮政府の人権に関する考え方や政策に大きな変化はないということだ。」

 「15号管理所(ヨドック政治犯収容所)の完全統制区域は今も機能している。既存の収容所の閉鎖にともない、これまで15号は大規模に拡張されてきている。とりわけ、2013年12月の張成沢チャン・ソンテク)の処刑により、収容所の拡張にはずみがついた。現在、15号の完全統制区域は面積600平方キロ、南北24キロ、東西25キロにおよぶ。5万人がこの施設に収容されているものと推定される

 ヨドックはアンミョンチョルさんが看守を務めていたところで、当時は、思想に「改善」が見られた人が外にでられる可能性がある「革命化区域」と、一生出ることがかなわない「完全統制区域」の2種があったが、今は後者しかないという。ただその規模は拡大していると報告書はいう。

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私がグーグルアースに緯度経度を入れて検索したヨドック収容所。これは宿舎のあるごく一部の地区。この収容所だけで5万人収容されているという


 収容所というと、日本人は監獄のようなイメージをもつだろうが、北朝鮮の収容所は一つの郡くらいに広大だ。ヨドックの600平方キロというのは、東京23区とほぼ同じ面積。収容された人はそこで農作業や森林伐採をはじめさまざまな無償労働を強いられる。その一部は、中国企業などからの注文による製造工程で、収容所は北朝鮮が外貨を稼ぐ基地にもなっている。

 報告書によれば、拷問などが多少減った収容所もあるとのことだ。少しであっても改善は改善。北朝鮮の人権抑圧への抗議の声を上げ続けよう。

ウイグル人ジェノサイド 当事者の声を「報特」が取材2

 畑のトマトがぐんぐん育っている。

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大玉の品種なので、支柱を2本にしてヒモでゆわえた

 きょうは暑くなりそうだ。
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 報特のウイグル問題特集のつづき。

 

 「職業訓練施設」では、何が行われていたのか。
 2018年、国際人権団体の招きで来日したオルム・ベカリさんが話す。

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オルム・ベカリさん

〈ベカリさん〉
「2017年3月26日に、新疆中部にあるトルファンのピチャンで拘束されました」

 新疆出身のベカリさん、カザフスタン帰化し、旅行業を営んでいた。新疆の実家に帰省したとき、警察が実家にまで乗り込んできて、テロの疑いをかけられ「職業訓練施設」に連れていかれたと話す。

 ウイグル語の使用を禁止され、職業訓練とは名ばかりの場所だったという。

〈ベカリさん〉
「施設では、彼らがテロにあたるとする46項目について、何度も何度もたたきこまれました。また、中国共産党習近平国家主席をたたえる歌を唄わされました」
(歌う)♪共産党がなければ新しい中国はない・・

 さらに、テロの容疑を認めるよう、拷問を受けた。

〈ベカリさん〉
「この傷は拷問の痕です。拷問は2,3時間続きます」

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「椅子に縛られて殴られました。このあたりとか・・何人か交代で殴り続けます。人間のやることじゃありません。目の前で死んだ人も二人見ています」
 
 自分がいた部屋の見取り図を描いてくれた。12平方mほどの部屋に24時間鎖につながれていた

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ベカリさんが入れられた部屋の見取り図


〈ベカリさん〉
「部屋ではこの丸のそれぞれに人が鎖でつながれていました。合わせて数十人いました。死刑を待っているような光景でした」

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 どのように縛られていたのか、持参した鎖で再現してくれた。

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〈ベカリさん〉
「実際には足と足の間はもっと狭いです。
「平気で仕事や言葉を教えるとか言うけれど、実際は鎖で縛って、私たちは死を待つだけでした」

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 妻がカザフスタン政府にかけあったこともあり、拘束から8か月後、施設の様子を口外しないことを条件に解放された。

 新疆からの亡命者を多く受け入れているトルコ

 イスタンブールに、長期間、新疆で拘束されていた女性がいた。
 2019年、取材に応じたのは、カザフスタン国籍のウイグル族、グリバハール・ジェリロバさん。カザフスタンと新疆を行き来して、衣類の貿易を行っていた。

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グリバハール・ジェリロバさん

 2017年、買い付けにきたウルムチ市内で拘束。
〈グリバハールさん〉
「朝8時に警察がホテルのドアをノックしてきました。聞きたいことがあると車に乗せられ、夜中に収容施設まで連れていかれました」

 地元当局は「テロをほう助した」としたが、本人はまったく身に覚えがなかった。

〈グリバハールさん〉
「子どもたちが中国大使館に問い合わせたところ、グリバハールはテロに参加したと書面で回答がありました。私はテロリストではありません」(と泣く)

 1年3カ月ものあいだ、多くの女性たちと過酷な体験をしたという。
〈グリバハールさん〉
「週一回、丸裸にされ、電器棒を持った警官が10人ほど入ってきて、部屋を点検します。そのかん、銃をもった3人の男が私たちを見張っていました。
 収容時の検査で妊娠していると分かった女性は強制的に中絶させられました。みんなで泣きました」

 入っていたという拘置所衛星写真を見てもらった

〈グリバハールさん〉
「これです。この場所で拷問を受けたんです。鉄の椅子に座らされました。殴られて気を失うことがありました。
 なかには、取り調べから戻ってきて、死んでしまった女性もいるんです」

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 2018年に釈放され、世界各地で証言を続けている。
 中国共産党系の機関紙は、「犠牲者を装う役者」と証言を全面否定。

 トルコはいま経済的に中国依存を強めている。危険を感じる機会が増えたというグリバハールさんは、より安全な地をもとめて、去年フランスに渡っていた。

問い:新疆のいまの状況はよくなっていますか?
〈グリバハールさん〉
「全然よくなっていない。いまの時代、ネットやSNSがこれだけ発達しているのに、新疆にいる多くの人と連絡すら取れないことはおかしいと思います。
 中国によってウイグルの文化は消されています。

 人々が行き交うバザールは解体されバリケードで封鎖された 2014⇒18

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2014年 川嶋久人氏撮影

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2018年 川嶋久人氏撮影


 祈りをささげるモスクは駐車場に姿を変えた 2010⇒19

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川嶋久人氏撮影

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川嶋久人氏撮影

 ここ十年で新疆の街並みは大きく変わってしまった。背景にあるのは習近平政権がかかげる中華民族の復興に欠かせない「一帯一路構想」だ。

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〈法政大の熊倉潤准教授コメント〉
・・新疆には石油などの天然資源やレアメタルも豊富にある。一帯一路で西方の国とつながる鉄道が通るのは新疆で、非常に重要。要の位置にあって絶対に手放すことができない。(それが)弾圧される側の叫びや告発につながっている・・・

 日本政府は制裁には踏み切らずに慎重な姿勢だ。
茂木敏充外相〉
・・(アメリカと)新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有した。
日本として今後どう対応していくかは更に検討を深める・・

 日本には3000人の新疆出身者がいるとされ、帰化した人もいる

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アフメットさんたち在日ウイグル人が声をあげはじめた

 故郷に帰れない人たちの思いは

〈アフメットさん〉
「『私達はあのときにもっと声を上げて、それを阻止すべきだった』という風に、世界の政治家が思う時代が科ならず来ると思います。
 世界のどこで誰の身に対して起きても、許さないんだと、放置しないんだと、そういう世界を創っていくかどうか、政治家たちの判断、行動力が問われているんだと思います」

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 ここでVTRは終わり、取材した宇佐美幸徳記者がこうコメントした。

2018年にアフメットさんに初めてお会いした時には、家族に危害が及ぶとして、顔出しの取材は断られた。今回、顔を出して、相当な覚悟を決めて取材に応じてくれた。その裏には、現状に対する大変な危機感があると思う。
 アフメットさんは大変冷静な方で、私たちの取材に、ウイグルの言い分を聞くだけでなく、欧米の言い分、そして中国の言い分も聞いて、総合的に判断してほしいと言っている。このうらにはウイグル問題がまだまだ知られていない、知られたあかつきには、分かってもらえるはずだという思いがあると思う」

 

 アフメットさんの最後のコメント―あのときもっと声をあげて阻止すべきだったと世界の政治家が悔やむだろう―は非常に重い。
 これはヒトラーが台頭したときを想起させる。世界は、彼の強引な拡張政策を批判し警戒しながらも、懐柔して何とか止められないかと逡巡しているうちにナチスは戦争とジェノサイドへと突き進んでいった。

 戦うべき時期を逃がせば、災厄を被るのはウイグル人だけではなくなるという歴史の教訓を、アフメットさんは語っているように思われる。