中村哲さん「武器ではなく命の水を」再放送

 きのう、アフガニスタンのカブールで、中村哲先生の遺体に奥さんと長女が対面した。ニュースで流れた映像は痛ましく、見るのがつらかった。
 アフガンの人々にとっての偉人は、家族にとっては大切な夫であり父でもあった。用水路建設に着手して15年以上になるが、その間、中村さんは息子さんを病気で亡くすという悲しい出来事もあった。ながく別れて暮らさざるをえなかった中村さんと家族には、私など想像できないほどの苦労があったことだろう。アフガンで奮闘する中村さんを支えつづけた家族にも尊敬の念をもった。

 今夜11時からEテレで中村哲さんの追悼番組が放送された。
 これは2016年9月のETV特集「武器ではなく命の水を~医師・中村哲アフガニスタン」(制作:日本電波ニュース社)の再放送。

f:id:takase22:20191207232904j:plain

 久しぶりに観て、あらためて中村さんの偉大さに感銘を受けた。中村さんの語る言葉、自然と人との接し方に深い哲学を感じる。番組を観ながら、尊敬するすばらしい人を失った悲しみを新たにした。
 見逃した人は、12日(木)の午前0時からの再々放送をぜひご覧ください。

f:id:takase22:20191204220437j:plain

中村さんは率先して現場作業にあたる

f:id:takase22:20191207233759j:plain

地元の男たちが喜んで水路工事に従事していた

f:id:takase22:20191208001548j:plain

困難を乗り越え、用水路にはじめて水が入った瞬間

f:id:takase22:20191208001836j:plain

2003年の荒れ果てた土地

f:id:takase22:20191208001842j:plain

 2008年には緑の農地に変った。魔法のようだ。

f:id:takase22:20191208002216j:plain

豊かな水に、子どもたちの笑顔がはじける

f:id:takase22:20191208002436j:plain

地元の人々から親しまれ尊敬されてきた中村さん





 

アフガン支援の中村哲医師の訃報

 きょう、アフガニスタンで医師の中村哲先生が亡くなった。アフガニスタン東部ナンガルハル州を車で移動中に何者かに銃撃され、中村さんを含め6人が殺害されたという。このニュースにショックを受けている。
 中村哲さんは、農業用水路の建設などにより人々の暮らしを立て直すことに貢献し、尊敬を集めてきた。まったく私心なく、人々の幸せのためにすべてを捧げていた中村さんは日本の、いや世界の宝である。私は心から尊敬しており、このブログでも何度か紹介した。
(2012年、中村さんとお会いしたときのことはhttps://takase.hatenablog.jp/archive/2012/08/04

 ご冥福を祈るとともに、中村さんを長年取材してきた谷津賢二さんが先日FBで引用していた中村さんの著書『天、共に在り』(NHK出版)の終章を紹介して故人を偲びたい。https://www.facebook.com/kenji.yatsu.73

f:id:takase22:20191204234102j:plain

緑の大地を背景に中村哲先生(谷津さんのFBより)

f:id:takase22:20191204234742j:plain

用水路建設で1万6500haの農地を回復し、のべ200万人以上の雇用を作った。(写真は谷津さんのFBより)

 人間にとって本当に必要なものは、そう多くはない。少なくとも私は「カネさえあれば何でもできて幸せになる」という迷信、「武力さえあれば身が守られる」という妄信から自由である。何が真実で何が不要なのか、何が人として最低限共有できるものなのか、目を凝らして見つめ、健全な感性と自然との関係を回復することである。
 戦後六十六年、誰もがそうであるように、自分もその時代の精神的気流の中で生きてきた。明治の時代は去りつつあったが、かくしゃくとした風貌は健在で、太平洋戦争の戦火をくぐった人々がまだ社会の中堅にいた。日本の文化や伝統、日本人としての誇り、平和国家として再生する意気込み―もうそれは幾分色あせてはいたが、一つの時代の色調をなしていた。私たちはそれに従って歩めば、大過はないと信じていた。だが、現在を見渡すと今昔の感がある。進歩だの改革だのと言葉が横行するうちに、とんでもなく不自由で窮屈な世界になったとさえ思われる。
 しかし、変わらぬものは変わらない。江戸時代も、縄文の昔もそうであったろう。いたずらに時流に流されて大事なものを見失い、進歩という名の呪文に束縛され、生命を粗末にしてはならない。今大人たちが唱える「改革」や「進歩」の実態は、宙に縄をかけてそれをよじのぼろうとする魔術師に似ている。だまされてはいけない。「王様は裸だ」と叫んだ者は、見栄や先入観、利害関係から自由な子供であった。それを次世代に期待する。
 「天、共に在り」。
 本書を貫くこの縦糸は、我々を根底から支える不動の事実である。やがて、自然から遊離するバベルの塔は倒れる。人も自然の一部である。それは人間内部にもあって生命の営みを律する厳然たる摂理であり、恵みである。科学や経済、医学や農業、あらゆる人の営みが、自然と人、人と人の和解を探る以外、我々が生き延びる道はないであろう。それがまっとうな文明だと信じている。その声は今小さくとも、やがて現在が裁かれ、大きな潮流とならざるを得ないだろう。
 これが、三十年間の現地活動を通して得た平凡な結論とメッセージである。

ウイグル問題で相次ぐスクープ

 最近かなりストレスフルな事態に直面している。
 こういうときは、修行のチャンスと考えよう。
 「生死事大 無常迅速」(しょうじじだい むじょうじんそく)というすばらしい禅の言葉がある。
 これについて、私が師事している岡野守也先生は
 《生きることは誰にとっても一大事、大変なことです。天地自然から預けられた人生の時間は、嫌でも好きでも有限・無常で、やがていのちはお返ししなければなりません。そのことをしっかり自覚すると、精一杯できることをして生きようと思わざるをえないでしょう》と解説する。
 世ははやくも師走になって、まさに「無常迅速」である。
・・・・・・・・・・・・
 今夜の報道ステーションウイグルの収容所について特集していた。
 日本に留学しているムハラム(ムハンマドアリ)さん(26)の父親は聖職者。2017年3月、父親が突然行方不明になった。ムハラムさんが父は収容所にいるのではとSNSで発信したところ、しばらくたって父親が刑務所に入れられていることが判明。ムハラムさんの情報発信への牽制ではないかという。

f:id:takase22:20191202222820j:plain

 また、収容所から出ることができたカザフ族のオムル・ベカリさん(44)が、中では毎日鎖に繋がれ、中国共産党を讃えさせられたことを証言した。

f:id:takase22:20191202222504j:plain

目隠しをされ後ろ手に縛られた多くのウイグル人

 CNNが、新疆ウイグル自治区で収容所に近づいて取材を試み、中国の警察に妨害、阻止された映像は興味深かった。即逮捕されても不思議ではないこんな取材を、日本のマスコミはやるだろうか。CNNクルーが逮捕されたらアメリカ政府は激しく抗議して解放させるだろうが、日本政府の場合は、そういう危険なところにノコノコ行く取材班が問題なのだ、と言いかねない。なにせ、習近平国賓で招こうとしている我が政府である。

 情報が極端に規制され、実態がなかなか外に伝わらないウイグル問題だが、このかん超弩級のスクープが相次いだ。
 今月に入って、ニューヨークタイムズ国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が内部文書を入手したのだ。

 【北京=中沢穣】中国政府が新疆(しんきょう)ウイグル自治区少数民族ウイグル族を弾圧しているとの批判が、国際社会で高まっている。中国政府による弾圧の内幕を記した内部文書が相次いで明らかになったためだ。中国政府は反論に躍起だが、国際社会の圧力が政策転換につながる見通しはない。

f:id:takase22:20191203005755j:plain

 「決して容赦するな」。習近平国家主席は当局者にこう命じ、イスラム過激分子との「対テロ闘争」の徹底を求めた。米紙ニューヨーク・タイムズが報じた内部文書は、テロ対策を名目としたウイグル族への弾圧が、習氏の指示に基づくことを明らかにした。
 同紙が入手した約四百ページの文書からは、ウイグル族イスラム教の慣習や教えに従ってひげを伸ばしたり、酒を飲まなかったりすることを理由に、中国政府が「職業教育訓練センター」と呼ぶ施設に収容される実態が浮かぶ。
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した内部文書は、「職業教育訓練センター」が事実上の強制収容所となり、百万人以上が収容されている現状を示した。ウイグル語ではなく中国語を使わせ、脱走を防ぐために入浴中や食事中も監視を怠らない。収容対象者は、監視カメラ映像や携帯電話のデータなどあらゆる個人情報を集め、人工知能(AI)で解析して選び出していた。
 衝撃的な実態が明らかになり、香港問題に加えてウイグル族への弾圧が国際社会の関心を一気に集めた。ポンペオ米国務長官は二十六日に「中国が人権を踏みにじっている証拠だ」として、中国に圧力をかけるため各国に協力を求めた。英国やドイツ、フランスなども批判を強め、国連監視団の受け入れを求めている。米国との摩擦を抱える中国は欧州との関係を重視してきたが、この戦略に影響を与える可能性もある。
 中国政府は反論に追われている。同自治区政府は「悪意のあるデマだ」と同紙の報道を全面否定。ICIJの内部文書について、外務省の耿爽(こうそう)副報道局長は「新疆に民族、宗教、人権問題は存在しない」と反論した。
 圧力にいらだつ中国政府だが、ウイグル政策を変える兆しは見えない。二十六日には「宗教の教義を時代の要求に合わせて新たに解釈する」ことをテーマにした会議を開催。全国政治協商会議の汪洋(おうよう)主席が出席し、イスラム教徒に対する従来の強硬姿勢を改めて確認した。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201911/CK2019113002000136.html

 さらにNPOとAFPが衛星画像の解析という手法でスクープを報じた。
 【11月27日 AFP】《中国の少数民族ウイグル人の先祖らが眠る墓地が中国政府によって破壊されている。こうした行為について活動家らは、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)で行われている、ウイグル人アイデンティティーを根絶する試みの一環だとして批判を強めている。
 同自治区では過去2年間で数多くの墓地が破壊されている。人工衛星画像の解析を行う非営利団体「アースライズ・アライアンス(Earthrise Alliance)」とAFPが共同で行った調査で今回、明らかになった。

f:id:takase22:20191203005849j:plain

  (上の写真の墓地が、下の写真では破壊されているという)
 シャヤール(Shayar)県では、3か所の墓地で人骨が露出しているのをAFP記者が確認している。同県ではこのほか、墓地が掘り起こされて更地となり、壊され、がれきの山と化した墓や聖廟(せいびょう)がそのまま放置されていたケースも複数見られた。
 墓の取り壊しをめぐる当局の説明は、都市開発や古い墓の「標準化」などさまざまだ。だが、海外在住のウイグル人たちは、墓の取り壊しがウイグルでの生活の全てを管理しようと試みる中国の弾圧の一環だと訴えている。
 曽祖父の墓を壊されたというサリヒ・フダヤル(Salih Hudayar)さんは、「こうした行為は、私たちが誰であるかを示す証しを消し去り、効率的に漢民族にさせようとする中国の取り組みだ」とAFPの取材に対して述べた。》
https://www.afpbb.com/articles/-/3257102

ウイグルで行なわれているのは、人権侵害の極みともいえる暴挙だ。さらなる報道を期待する。

香港:デモ隊の暴力をどう見るか2

f:id:takase22:20191127091034j:plain

 ここ数日、さすがに寒くなってきた。これから大事な時期で倒れるわけにはいかないので、インフルエンザワクチンをうった。
・・・・・・・・・・
 今回の香港の区議選で感心したのは、連日、街頭で警官隊とぶつかっていた抗議者たちが投票を控えて「戦闘」をやめ、政府が混乱を口実にして選挙を延期する企てを阻止して投票の実施につなげたことだ。抗議運動にリーダーがいないなか、こういう整然とした動きがとれるというのは驚きである。
 倉田徹さん(立教大教授)は、香港のデモ隊は単なる暴徒ではなく、冷静に効果を計算し、香港人の支持を得ているという。倉田さんの分析は、「暴力=悪」と反射的に考える人が多い日本人が香港の運動を理解するのに有益だと思うので、ちょっと長いが引用する。
 《暴力行為を辞さない「前線」のデモ参加者と、休日に平和的なデモ行進を行う多数の市民は、かなり性質の異なる集団である。しかし、彼らの間には、「共通の目標を持つデモ参加者同士は攻撃し合わない」という強い意志が当初から存在している。ネット上では、デモの支持者同士は「兄弟」や「手足」と呼び合う。自身の一部に近い、かけがえのない仲間という意味である。負傷者・逮捕者などの犠牲者には「義士」の「称号」も与えられる。平和主義者も、暴力行為を非難したり、逮捕者を冷笑したりすることはしない。
 こうした「仲間」の集団はかなりの規模に上る・デモが暴力性と平和性を持ちあわせることで、多くの参加者から共感を得やすい状況を作っているからである。暴力行為と平和的な行動は同時並行的に進められているが、双方が常に行なわれているわけではない。デモ支持者たちはネット上の掲示板などでしきりに議論と分析を重ね、行動の「効果」を分析し、次の行動を考える。暴力が嫌われそうな予兆があると「前線」は退いて、時には行き過ぎを謝罪もし、平和デモが主流となる。そして平和デモに応じない政府への怒りが市民に蓄積されると、政府への圧力を強めるために暴力行為が行われる。つまり、デモ参加者の行為は、相当程度「民意」を汲み取って構築され、実際に民意を勝ち得ている。8月16日の香港紙「民報」に掲載された調査では、デモ参加者の暴力が過度であるとする者は39.5%であったのに対し、警察の暴力が過度であるとする者は67.7%に上った。経済に悪影響が出た場合、最大の責任は香港政府にあるとする者が56.8%、デモ参加者にあるとする者はわずか8.5%である。
 政府の対応方針は一貫して、暴力行為に罰を与え、一般市民をデモから遠ざけることだが、暴力的なデモをさらに強力な警察力で鎮圧し、平和的なデモを無視する現在の対応策は、両者を離間させるよりもむしろ団結させている。政府の支持率は大規模デモの開始以降も下がり続けている。
 九月に入ると、ネット上で「香港の革命歌」が作られ、各地に集まってこれを歌う集会が多くの人を集めている。政府はすでに「香港人」という巨大な「仲間」を敵に回してしまったのである。》(倉田「香港デモ 暴力の論理」『外交』Vol.57、P16-17)

 デモ隊の「前線」、いわゆる「勇武派」への広範な支持は私も感じていた。デモ隊が目抜き通りの車道をブロックして交通を混乱させ、それを鎮圧しに警官隊が駆けつけると、多くの沿道の野次馬たちはそれにブーイングを浴びせやじり倒すのだった。
 暴力をふるうデモ隊は単なる「暴徒」ではなく、むしろ仲間意識をもって支持されている面があることはたしかである。
 
    一方、市民の間の亀裂が大きくなっている点も見ておく必要がある。区議選の当選者数では民主派が圧倒したが、実際の民主派と親中派の割合はざっと6対4。香港世論は二分されている。

 《24日の香港区議会(地方議会)選挙は、雌雄を争った民主派と親中派の得票率がそれぞれ56.7%と41.7%となり、直接選挙枠の議席配分率が85.2%(452議席)と13.1%(59議席)だったのに比べ僅差にとどまった。区議選は各選挙区の得票数が最も多い候補が一つの議席を独占する小選挙区制だったことが、民主派を圧勝に導いた。》

 そして民主派、親中派といっても、それぞれ一枚岩ではない。民主派には、とりあえず北京がうるさく介入してこないなら現状維持で十分だという人から、香港が独立国家になるべしという人までいる。
 親中派について、香港中文大学院生の石井大智さんがこう書いている。
 《日本のメディアで一般的に「親中派」と言われる人々は、香港では「建制派」と呼ばれる。(略)建制派とは簡単に言えば階層社会である香港で社会の支配階級に当たるとされている人々のことを指す。
 建制派はもともと2つのグループに分かれていた。「イギリス統治時代の香港政庁に近い経済界の支配者」と「もともと中国共産党に近い左派だった人」という2つのグループである。前者は植民地時代から香港の統治機関に近しい立場を取ることで経済的利益を得ようとする人々、後者は中国共産党と強い結びつきを持ち続けてきた人々である。
 香港がイギリス領だった頃、両者は正反対の存在であった。だが、香港が中国に返還されたことで、香港政府への協力は北京の中国政府への協力と矛盾しなくなった。そして両者のグループは次第に一体化していき、社会の支配階級として香港政府の決定に強い影響を与え続けてきたのだ。(略)こうした経緯を知ると、建制派と言っても一枚岩ではなく、単なる中国政府の操り人形でもないことが理解できるはずだ。
 「英領時代の香港政庁に近い経済界の支配者」によるグループは経済的利益がある限り中央政府と結びつくだろうが、いざ彼らのビジネスを阻害するようになれば中央政府を支持しないようになるだろう。一方、「もともと中共に近い左派」であるビジネスエリートたちは中国政府を支持しているように見える。しかし、それでも中国政府からすれば「香港人」であり、中国本土の共産党員と同じレベルで中国共産党の支配に組み込まれているとは言えない。
 実際、今回の逃亡犯条例改正案についても、懸念を示した建制派とされる議員・関係者は多くいた。だからこそ香港政府は逃亡犯条例の審議を諦めざるを得なかったのである。
 建制派は、結果として中国政府に寄り添った意思決定を行うことが多い。経済政策においては、建制派の意見と中国政府の意見の隔たりは少ないからだ。大陸から観光客が多くやってくれば彼らが経済的に潤うのは間違いない。また、香港が人民元のオフショア(中国本土外)の拠点となれば香港の金融センターとしての地位を強化することも彼らを経済的に潤わせることになるだろう。しかしそれは必ずしも建制派が中国共産党イデオロギーに賛同することを示しているわけではない。逃亡犯条例改正案のような、香港の現状に対する著しい挑戦については中国政府の意向にかかわらず彼らも反対するのである。》(石井大智「香港デモは区議選挙でどう変わる」日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/112100065/?P=1

 建制派の一部は区議選で大敗を喫したことで、香港政府を批判し始めているという。区議選後の動向を見るにあたっては、建制派の動きにも注目しなければ。

銅鑼湾書店事件に関わった中国工作員が豪に亡命求める

 日曜、膝痛で歩けなくなった母の愚痴でも聞こうかと、久しぶりに自転車で西東京市に行った。途中、鈴木町という結構広い一画にさしかかる。きっと鈴木さんも多いのでは?こんど町名の由来を調べてみよう。

f:id:takase22:20191124154553j:plain

 鈴木神社という古い神社があり、境内にある神主の住居の縁側に小型のビニール袋いっぱいの銀杏が100円で売っていた。買ってきてつまみにし酎ハイを呑む。秋深し。
・・・・・・・・・
「五千年」初のまともな選挙です (大阪府 浜田竜哉) 今朝の朝日川柳より

 そういう見方もあるのか。たしかに中国では、人民共和国建国以前も以降も選挙が民主的だったことはないかもしれない。今回は中国の「工作」もあまり効果がなかったか。
 香港では中国のスパイ工作がよく話題になる。
 例えば中国のCCTVが、HKleaksという個人情報暴露サイトを使って、「香港の暴徒どものマスクをはぐ」ことを奨励しているが、このサイトではデモ活動家や抗議活動参加者の写真、名前などの個人情報を晒している。これは怖い。これも中国の工作と香港ではみなされている。

f:id:takase22:20191128015650j:plain

HKleaks

 香港での「スパイ工作」を担ったという中国人がオーストラリアに政治亡命を求め、現地だけでなく欧米のメディアで大きなニュースになっている。
 王立強(ワン・ウィリアム・リーチャンWang Liqiang)という人物で、オーストラリアの情報当局に中国共産党の機密情報を提供したという。中国共産党政権70年の歴史の中で最大規模の情報漏えいとも言われている。

f:id:takase22:20191128013408j:plain

王立強氏

 彼の証言がすべて事実かどうかは確定していないが、さもありなんと思わせる事例がいくつも出てくる。

    王氏は、中国工作機関のダミー会社の社員として香港に滞在し活動していたという。
 興味深いのは、このブログで何度もとりあげてきた「銅鑼湾書店事件」の拉致に直接に関わっていたと語っていることだ。

香港「銅鑼湾書店事件」の真相 - 高世仁の「諸悪莫作」日記


 以下、ライブドアの記事より。

 《10月、王氏はオーストラリア安全保障情報機関(ASIO)に自身が中国共産党のスパイであると申し出て、工作情報を提供した。11月23日から、現地紙やメディアの取材に応じている。帰国すれば死刑になる恐れがあるため亡命を希望している。
 福建省生まれの王立強氏(27)は安徽財経大学で油絵を学び、卒業後は大学の上層幹部の推薦を得て、香港の上場企業・中国創新投資(China Innovation Investment Limited、CIIL)に入社した。王氏によると同社は「普通の会社」ではなく、多くの中国共産党のスパイを育成する香港の中共前線機関で、トップは上級スパイだという。(略)
 (CIILの)向CEOは、1993年から香港で情報工作に従事していると王氏に話した。CILLは中国中央軍事委員会総参謀部に所属しており、同社の目的は「香港金融市場への浸透と軍事情報の収集」という。海外とくに米国の武器を購入することで技術情報を入手した。向CEOは、自身が米国の監視対象だと自覚しているという。
 CIILの主要な取引先には、中国軍の受注を受けて武器を研究、開発、製造する北方工業公司(Norinco)がある。
 王氏は、2015年に中国共産党を批判する書籍を出版する銅鑼湾書店の李波氏を本土へ拉致する行為に関わったと述べた。ほかに6人の工作員が派遣され、CILL内部の人がこの拉致で司令塔の役割を果たしたという。王氏は、拉致工作について、向CEOの家で報告をしているという。
 この書店から5人全員が拉致され、香港市民に中国共産党の脅威を知らしめる一大事件となった。香港メディアによると、書店員は本土の収容施設で拷問を受けた。李波氏は当時、中国国営テレビ(CCTV)に出演して「家族で本土に帰る」と語ったが、王氏によると、これは李氏の本音でないという。
 銅鑼湾書店員拉致の工作は、「中国共産党にとって不都合な書籍を出版したから」が理由という。
 王氏によると、この拉致事件が引き起こした香港市民への恐怖は意図的なものだという。「中国共産党は徹底的な抑圧を望んでる」
 王立強氏はCILLは、北京中枢からの指示を香港の実行者たちに伝達する役割を担っているとした。王氏はまた、向CEOや習近平氏担当の事務室役員と個人的な関係を維持しているという。》

 銅鑼湾書店事件は、香港市民を震え上がらせる効果を狙っていたと語るが、その恐怖こそが「逃亡犯条例」改正反対に市民を立ち上がらせ、6月以降の歴史的な行動になっていったのだった。

    また王氏によれば、中国の工作は教育界やメディアもターゲットにしていたという。先ほど触れた香港野活動家の情報をさらす活動も工作の一環だったと認めている。

 《香港の大学生たちがこのほど、民主主義のために堅く決意して暴力的な香港警察に立ち向かう姿は、多くの西側メディアに報じられてきた。実は、香港の教育界は、かつて王氏の「主戦場」であった。
 王氏は、香港の多数の大学に、CIILの向CEOが設立した中国本土資金の慈善団体「中国科学技術教育財団」などを通じて、中国共産党の指導要領を伝え広めていた。「学生と意見を交わし、愛国心と党指導者への愛について語り、香港の独立と民主抗議の支持者への反論を行ってきた」
 また、民主派に対するネット中傷工作組織にも関わったという。香港独立派を支持する学生や家族に対して、個人情報を公に晒し上げて、多数のアカウントで対象者を誹謗中傷するというものだ。
 王氏は、CIILのもうひとつの工作は、香港メディアの制御だと述べた。多数のメディアに投資して中国共産党プロパガンダを代弁してもらった。そして、内外の異見者の声を抑制するためにメディア企業上級幹部に、親中派の人物やスパイを就任させるという。
 「香港での中国共産党最上級の情報工作員の一人は、アジア主要テレビネットワークの上級幹部だ」と王氏は述べた。》
https://news.livedoor.com/article/detail/17433505/

 教育やメディアの分野をコントロールすることは人材育成、世論形成、選挙対策に重大な影響を及ぼし、中国の影響を強め、その国の将来を左右する。

    中国の「工作」については今後も取り上げていきたい。

香港区議選で民主派が圧勝

 ある研究者に会いに、法政大学の多摩キャンパスに行った。

f:id:takase22:20191125120556j:plain

 中央線西八王子寺駅からバスで20分超。キャンパスは山の中にある。赤く染まった木々の下を歩いて今年初めての紅葉狩りとなった。

f:id:takase22:20191125103135j:plain

 石碑があった。平和記念碑とある。学徒出陣で法政大学から約3000名の学生が戦場に向かい、このうち612名が還らぬ人となったという。

f:id:takase22:20191125102807j:plain

法政の学徒出陣式の写真だという

 碑には以下の言葉が;
  多くの学生が道なかばにして
  軍や工場に動員され
  学園と学問を放棄せざるをえない
  不幸な時代があった
  50年前のことである
  君たちは決して
  そのような青春を送ってはならない
      1990年8月 法政大学経済学部同窓会
 静かな山中にあるからか、この平易な文章に素直にうなづけた。
・・・・・
 香港の区議選。全452議席中、民主派が390議席(メディアによっては385議席)を占め8割超を獲得した。まさに地滑り的勝利。民主派が伸びるだろうとは思っていたが、ここまでの一方的な結果になるとは・・
 今回は反政府抗議デモに対する林鄭月娥行政長官や警察の対応について市民の意見を問う選挙だった。極限すれば警察とデモ隊のどちらを支持するか注目すべきは、投票率が47%から71.2%へと大きく伸びて過去最高になったこと。きのうはどの投票所も長蛇の列で2時間待ちのところもあったとか。これまで投票しなかった若者が、政府=中国共産党にNOを突き付けたいと積極的に参加したと見られる。
 それでも民主派は喜んでばかりはいない。多くの日本メディアが周庭さんを取材していたが、どのインタビューでも笑顔はなかった。

f:id:takase22:20191125231547j:plain

ニュース23より

 News23では「香港市民にとって、今日は決してお祝いする日ではない。ゴールを達成するようもっともっと闘わないといけない」とコメントしていた。
 今後の展開は予断を許さない。
 民主派はこれに勢いを得て街頭活動を強めるだろう。これに香港政府はどう対応するか。行政長官はウェブサイトに出した声明で「香港製畏怖は、人々の意見に謙虚に耳を傾け、真剣に熟考する」(The HKSAR Government will listen to the opinions of members of the public humbly and seriously reflect.)と述べたが今の強硬なデモ規制を緩めるかどうか。
 「覆面禁止法」の違憲判決や今回の親中派の敗北でますます危機感をもった中央政府が、事態を根本から変えようと、一気に介入してくる可能性も否定できない。
 多くの犠牲者を出さないためには、とにかく国際社会がずっと関心を持ち続けていることが重要だと思う。ウイグルチベットも忘れずに。

「銅鑼湾書店事件」を巡って中国とスウェーデンが対立

 『「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄』(文春新書)をとてもおもしろく読んだ。
 顔伯鈞(がんはくきん)氏の手記をジャーナリストの安田峰俊さんの編訳で出版した本で、中国共産党中央党校(習近平は元校長)の修士課程修了という党官僚のエリートが民主化運動に関わったことから「お尋ね者」となり、家族と別れて国外へと逃亡する過程が描かれている。

f:id:takase22:20191125011019j:plain

(顔氏 写真は以下より

https://twitter.com/hashtag/%E9%A1%94%E4%BC%AF%E9%88%9E

 アメリカも恐れるほどの先進科学技術を身につけた中国の強大化が、人権を無視する専制体制に裏付けられていることは承知していたが、民主化運動の当事者による運動とそれへの弾圧の実態は初めて知った。
 著者の顔氏は2015年2月にタイ、バンコクへと逃げてきた。いまもタイに留まっていると見られるが、「私の身はいまだ危険のなかにある」(P252)と言う。というのは、彼の知り合いでミャンマーに逃げたところを中国当局に逮捕されており、海外に出ただけでは安全ではないからだ。中国はいまや多海外にいる「お尋ね者」を拘束する、あるいはその国に拘束させることすらできるのだ。
《近年、中国は国外への逃亡者すらも逮捕や拉致の対象に含めている。2015年7月8日、タイ当局は同国内の亡命ウイグル族109人を中国に強制送還し、人道問題として全世界からの非難を浴びた。また、同年10月17日には香港で中国批判書籍の出版事業に従事してきたスウェーデン国籍の華人・桂民海氏が、やはりタイ国内で中国当局に拉致された。
 さらに同年10月28日、中国共産党の意図を受けたタイ警察当局は、すでに同年4月に国連難民高等弁務官事務所による難民認定を受けていた、亡命中国人の(顔氏の同志である)姜野飛氏と菫広平氏の2人を逮捕した。やがて、タイ当局は国際社会の関心と譴責を無視して、私の友人たち2人の身柄を中国に強制送還した。
 こうした事件の頻発は、中国共産党の金銭外交がタイをはじめとした東南アジア各国にどれほど巨大な影響力を行使しているかの疑い得ぬ証左であろう。この私自身を含め、タイに亡命して政治難民を申請しようと考える中国公民たちの身分は、極めて大きな危険にさらされている。共産党当局によるこうした工作は、おそらく時間とともに激しさを増している》(P248)
 おそるべき話である。

 ここに言及された桂民海氏とは、先月24日のこのブログ「香港「銅鑼湾書店事件」の真相2」と25日の同「3」に登場する「事件」の当事者で今なお中国に拘束されているとみられる。https://takase.hatenablog.jp/entry/20191024
https://takase.hatenablog.jp/entry/20191025
 銅鑼湾書店の株主で出版は彼が担当していたという。桂民海氏は中国生まれで北京大学を卒業。留学先のスウェーデンで国籍を取得して中国籍を放棄、香港で事業を興し、2014年に銅鑼湾書店を買収している。「失踪」するまで200冊ほどの本を出版したという。
 2015年10月、タイのリゾート地、パタヤで休暇を楽しんでいたところ突然「失踪」。

     家族や友人が探し回っていた翌2016年1月17日、桂民海氏が「2003年に飲酒運転で女子学生を死なせた交通事故の「法的責任を取る」ため中国に自発的に帰国した」と泣きながら自白する衝撃的な映像が国営・中国中央テレビ局(CCTV)で放送され、中国で拘束されていたことが判明した。
 それと前後して娘に「静かにしているように」というメッセージが届く。タイを出国した記録は残っておらず、国内法、国際法を無視した暴挙で、「自白」は強要だと娘は訴えている。
 この事件に詳しいジャーナリスト福島香織氏によれば;

《桂民海はパタヤの別荘マンションにいるところを連れ去られた模様で、マンションのカメラに不審な中国人が映っていたほか、中国人男性グループに車に無理やり乗せられていたといった目撃談まで飛び出した。さらに、知り合いを名乗る四人がマンションの管理部門の許可を得て、桂民海の部屋に入ってパソコンをいじっていたという》

 これはタイの主権を侵害する、中国当局者による拉致事件である。 
 中国に拉致された書店関係者5人のうち、いまも中国に留め置かれているのは桂民海さん一人だ。桂さんは15年に中国当局に拘束されたあと17年に一時釈放されたが、再び中国に行った際に拘束されそのまま今も拘束されていると見られる。

 その桂さんをめぐって中国がスウェーデンを恫喝しているとのニュースが入ってきた。
 《中国共産党に批判的な本を扱っていた香港の書店経営者で、中国当局に拘束されている作家の桂民海氏(55)に、スウェーデンの文化団体が言論の自由をたたえる賞を贈り、中国が猛反発している。中国側は授賞の撤回を求め、14日には「二国間関係に深刻な悪影響がある」と警告。スウェーデンのロベーン首相は「脅しには屈しない」としており、両国関係は険悪化しそうだ
 賞を贈ったのは、言論の自由の擁護を掲げる団体「スウェーデン・ペンクラブ」。公権力から脅迫や迫害を受けている作家や編集者に授与する今年の「トゥホルスキー賞」を、桂民海氏に授与すると4日に発表した。
 桂氏は中国共産党の批判本を扱っていた香港の銅鑼湾書店の株主で、1980年代に学んだスウェーデンの国籍も持つ。2015年にタイで失踪。その後、中国での拘束が判明し、一度釈放されたが、再び拘束されていた。
 在スウェーデン中国大使館の報道官は7日、「犯罪者への授賞は完全な茶番」とする声明を発表。授賞撤回を求めた上で「桂民海はウソつきだ。茶番を生んだ者は、希望的観測に基づき、独善的で傲慢(ごうまん)な行いをした。報いを受けるだろう」と主張した。》(朝日新聞11月16日)

 近年は、中国との経済関係を慮って、EU諸国でも中国への強い批判を控えがちになっているなか、「脅しには屈しない」とのスウェーデンの姿勢は立派である。
 桂氏の解放への声が大きくなることを期待する。 
 桂氏の解放を訴えるFBhttps://www.facebook.com/freeguiminhai/

 桂氏のアンジェラさんのインタビュー

edition.cnn.com