27日(土)は地平線報告会で写真家の小松由佳さんの話を聞いた。
開高健ノンフィクション賞を授賞した『シリアの家族』(集英社)という作品ができるまでの激動の日々とその課程での思索を語ってくれた。



2017年に彼女が1歳の長男サーメル君とヨルダンに子連れ取材をする様子を取材したときからのご縁である。難民取材にオシメの取れない赤ちゃんを連れていくなんて普通は考えないが、これは彼女のスタイルである。私もはじめの1週間ほどヨルダンの首都アンマンのシリア難民宅に由佳さんと一緒に宿泊させていただいた。
取材中、難民のテントの中でサーメルがはじめて二本足で立ち、難民家族は拍手して喜んだという記念すべき瞬間も共有した。この取材はNNNドキュメント(日テレ)で「サーメル 子連れ写真家とシリア難民」というタイトルで放送された。
あれ以来、小松由佳さんは人間的にも、また写真家、ジャーナリストとしても著しい成長を遂げたと実感する。開高健ノンフィクション賞は、選考委員全員一致で圧倒的に評価されて決まったという。これからどこまで“大きく”なるか楽しみである。
JCJ(日本ジャーナリスト会議)の機関紙『ジャーナリスト』12月25日号の「25‘読書回顧―私のいちおし」という短い書評でこの本も取り上げた。

《石破前首相は戦後80年所感で「歴史に正面から向き合う」必要を強調したが、その思索の“タネ本”の一つが猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』(中公文庫)である。
太平洋戦争開戦直前、軍民から若手俊秀を集めた内閣直属の「総力戦研究所」が、対米戦は必敗との合理的な予測を東條首相に提出した。しかしそれは握り潰され、日本は立ち止まることなく破滅に突き進んでいった—その経緯を描くノンフィクションだ。高市新政権が独善的な危機扇動に傾くいまこそ読まれるべき一冊である。
なお、この作品をドラマ化した8月のNスペ『シミュレーション』は、史実の歪曲と批判され、NHKの“劣化”が世間の話題となった。
引き返せずに奈落へと向かう「慣性」の病理は、戦後も日本を蝕み続けている。辺野古しかり、原発しかり、リニア計画もまたその典型だ。
いち早く警鐘を鳴らした樫田秀樹は15年度のJCJ賞を受賞した。リニア計画は、トンネル掘削による環境破壊や住民への工事被害をもたらす上、傾国の大赤字事業となるのは必定だ。だが“国策”であり、JR東海が巨大広告主である事情からマスコミは批判を自粛する。受賞から10年、樫田はすでに表面化した深刻な問題を自分の足で丹念に追い、『混迷のリニア中央新幹線』(旬報社)を上梓、これでもなお“敗戦”へ突き進むのかと我々に問う。
25年度の開高健ノンフィクション賞は、小松由佳『シリアの家族』(集英社)が受賞した。シリア難民と結婚し二児をもうけた彼女が、「家族」を軸に、24年12月のアサド政権崩壊を挟む激動のシリア情勢を、まさに“自分事”として描き切った圧巻の一冊である。私は2017年のNNNドキュメントで彼女の番組を制作して以来のご縁だが、ヘイトが横行する今日、家族の中にもある異文化を理解し尊重する姿から、多くの示唆を与えられている。》
