ウイグルで何が起きているのか―メヒルグル・トゥルスンさんの証言3

 足もとにツユクサが咲いていた。

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 《朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。英名の Dayflower も「その日のうちにしぼむ花」という意味を持つ。》(Wiki)『万葉集』などの和歌集では「月草」(ツキクサ)と表記されているという。

つき草のうつろいやすく思へかも我(あ)が思(も)ふ人の言(こと)も告げ来(こ)ぬ(巻4 583)
 すぐに消えるはかないものの象徴として、古くから慕われていたようだ。
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 きょう、れいわ新選組から比例代表で初当選した、重度身体障がい者の舩後靖彦さん(61)と木村英子さん(54)が本会議に初登院した。

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難病で屍(かばね)のごとき俺だから 『人につくす』で生きてる意味を

 二人は「重度訪問介護」のサービスを受けているが、今の制度では自宅での利用が前提で、通勤や仕事中にはこのサービスを受けられない。そこで急遽、参議院が二人の議員活動に必要な介護費を当面負担することが決められた。しかし、木村さんたちは二人の特例ではなく、障害者みんなに適用されるべきとして、抗議の意を示すため国会に登院しない選択肢も示唆していたが、国会の中で改革に努力するとして登院することに。国会前では取材者がどっと木村さんに群がり、一時は騒然とした。
 フジの「トクだね!」取材班は、木村さんを自宅から追いかけて箱乗りまで敢行。舩後さんの車にはテレ朝が国会まで箱乗りしたようだ。選挙前とはうって変わってメディアに大注目されている。

 以下は内閣府のHPの「障害者」に関する記述だ。

 《身体障害、知的障害、精神障害の3区分について、各区分における障害者数の概数は、身体障害者(身体障害児を含む。以下同じ。)436万人、知的障害者(知的障害児を含む。以下同じ。)108万2千人、精神障害者392万4千人となっている。

 これを人口千人当たりの人数でみると、身体障害者は34人、知的障害者は9人、精神障害者は31人となる。複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計にはならないものの、国民のおよそ7.4%が何らかの障害を有していることになる。》
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h30hakusho/zenbun/siryo_02.html

 女性が人口の半数を占めるのに、国会議員の比率に反映されないのはおかしいという論法からすると、障害者が人口の7.4%とすれば、衆参両院合わせて713人(衆議院465人、参議院248人)の中に50人くらいの障害者議員がいて当然ということになる。
     バリアフリー化は遅すぎたが、二人を受け入れるためのドタバタや軋轢(日本維新の会松井一郎代表は議員活動に介助費用を参院が負担することに反対した)が障害者をどう受け入れるかの問題に大きな注目を向けさせているのはいいことだと思う。
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 ウイグル女性、メヒルグル・トゥルスンさんの証言つづき。

 2018年1月18日、私は再び収容された。
収容されるとき、「おまえはこれでおしまいだ。無期懲役か死刑かだ」と言われた。6ヵ所の施設を転々とした。独房のときもあった。今度はオレンジ色の服を着せられた。「おまえはまもなく死ぬ」と言われた。また「死ぬ方法を選べる」とも。
 尋問の際、「私の二人の子どもはエジプトの旅券を持っている」と告げると、すぐエジプト大使館に連絡したらしく、エジプト政府の人が面会に来て、子どもとエジプトに戻れることになった。
 収容所から出ると、親、兄、妹はじめ親戚26人もが拘束されていることが分かった。
4月28日、当局から2か月以内に中国に戻るよういわれ、子ども2人を連れて北京空港からエジプトに向け出国した。北京を出るとき、警察官に、「自分はなぜこんな目にあわせられるのか」と聞くと、答えは「簡単だ。お前がウイグル人だからだ」というものだった。
 カイロに着いて元の家に行ったが、誰も住んでおらず、夫に会うことができない。知り合いに聞きまわると、夫は2016年、消息の絶えた私を探しに新疆ウイグル自治区に行き、そのまま捕まり、懲役16年の刑を受けたという。今はどこにいるか、生きているかどうかも不明だ。最後に夫と会ったのは、2015年5月にカイロ空港で見送ってくれたときだ。
 絶望に襲われた。北京を出発する前、必ずすぐに中国に帰るよう命令されており、家族からもエジプトにいる私に「帰ってきて」との電話が何度もあった。家族のことも心配で、帰るかどうかとても悩んだ。
 しかし、もし中国に帰れば、私は死刑になり、子どもは孤児になる。帰ったからと言って家族らが釈放されることはないだろう。新疆ウイグル自治区では、収容所に入っていない人でも家庭の中で24時間監視されている。自由さという点では、収容所の中にいる人と外にいる人の違いは、収容所の制服を着ているかいないか、違いはこれだけだ。 
 地区ごとに収容者の人数のノルマが与えられ、達成するために手当たり次第にウイグル人を捕まえている。悩んだ末、アメリカに亡命することにした。

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いま米国で二人の子どもと暮らす

 しかし、アメリカでも、どうやって調べたのか、中国の家族から「帰ってこい」と電話がくる。中国人から車で追いかけられたりしたこともあり、怖くなって3回もひっこしをした。それでも、今もスーパーで買い物していて尾行されたりする。
 中国ウイグルの家族が心配だ。妹は23歳、大学を卒業したばかりだが、消息不明だ。捕まっている人は高学歴の人が多い。中国が言うような「職業訓練」や中国語の勉強など必要のない人たちだ。2015年にはまだハラル食堂があったし、葬儀を(イスラム教徒の)ウイグル式にやることもできた。
 2018年には、すべての家庭に盗聴器がしかけられ、ウイグル的な文化、習慣は禁止された。伝統的なお祝いの言葉を交わすこと、お祭り、イスラム式の挨拶をしただけで収容される。女性がスカーフをかぶるのも禁止。スカートは膝上まであげないといけないし、ハラル食材を使うのも禁じられた。コーランを読んだら実刑だ。家には習近平の写真を掲げることを強いられる。海外旅行もできない。
 会社や銀行など政府機関でウイグル語を使ったら即実刑だ。男性は中国内地に送られ、女性は中国人(漢族)との結婚を促される。必ず中国人の男性とウイグル人女性の組み合わせで、逆はない。
 アメリカのクリニックで検査したら、「あなたがこの先子どもを産むことは90%できないだろう」と言われた。収容所で注射されたのは妊娠機能を阻害する薬だったのかもしれない。
 中国当局ウイグル人の文化を壊すだけでなく、ウイグル人を物理的にも消しさるつもりだと思う。
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 トゥルスンさんの証言を聞く限り、近代史上稀にみる非人道的な民族弾圧で、「ウイグル人を物理的にも消しさるつもり」という彼女の訴えに説得力を感じる。知られた人権団体がいっせいに声を上げている。もはや「まさか」と驚いている段階ではなく、行動に出なければならない。