イラン情勢に国際的な関心が集中するなか、ガザの「停戦」は名ばかりで、イスラエルによるパレスチナ人の一方的な殺戮が続いている。


「2025年10月10日にパレスチナ・ガザ地区で停戦が発効してから6カ月が経過した。しかしこの停戦はもろく実効性に乏しく、ガザでは現在もイスラエル軍による攻撃が続き、軍事支配がますます拡大している。人道援助は妨げられて人びとは厳しい生活を強いられ、本来なら防げるはずの死が相次いでいる。紛争の激しさは以前に比べて弱まったものの、ガザは依然として壊滅的な状況だ。
ガザの人びとは清潔な水や食料、電力の不足に直面し、医療を受けることも困難だ。ガザで援助活動を行ってきたMSFなど37の国際NGOをイスラエルが登録拒否したことにより、さらに厳しさが増している。2026年1月1日以降、MSFはイスラエル当局によりガザへの医療・人道援助物資の持ち込みを一切止められている。
同時に、イスラエルはガザの外で専門治療を必要とする患者の医療搬送も妨げている。WHOによると、現在ガザでは1万8500人以上が医療搬送を待っており、その中には4000人の子どもが含まれている。
MSFの医療施設では、ガーゼや湿布、滅菌された医療物資(手袋、ガウン、消毒剤など)をはじめ、インスリンなど非感染性疾患の治療薬をはじめとした医薬品が極めて不足している。この状況は慢性疾患の治療に深刻な影響を及ぼし、ガザの人びとの苦しみを増大させると同時に、彼らの尊厳をも奪っている。」 MSF(国境なき医師団)のプレスリリース(4月13日より)
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多くの人が、今の世界は人類史の転換点だと言う。なぜ世界はこれほどまでに根本的な秩序が揺らいでいるのか。
私はそれがコスモロジーの危機に深く関わっていると見ている。コスモロジーとは、世界(宇宙)がどうなっているのか、その秩序・条理・法則を了解する、いわば「世界観」で、人生観と裏腹になっている。、誰もが無意識に持っている、生きている意味や倫理を支える基盤となるものだ。
私は「サングラハ教育・心理研究所」というところで「仲良く楽しく生きて 楽に死ぬ」ために学んでいる。ここは、いわばより良い生き方を追及する「学び舎」であり民間シンクタンクだが、岡野守也主幹が病気療養中の間、私が主幹代理を務めている。
以下は最新号の会報に私が書いた巻頭言である。
巻頭言 会報「サングラハ」第206号
研究所主幹代理 髙世 仁
《「日に日に世界が悪くなる」―朝のテレビ小説の主題歌の一節が、胸に刺さります。世界中で分断と対立が激化し、戦争が日常の風景と化しています。秩序の「底が抜けた」とでもいうべき事態は、なぜ起きているのでしょうか。
現在の状況は、かつての冷戦―社会主義対資本主義という対立構図―とは異なります。注目すべきは、対立するはずのトランプとプーチンという大国の指導者同士の奇妙な「蜜月」関係です。ロシアはトランプを勝利させようと米国の大統領選に介入し、ウクライナ戦争ではトランプがロシア寄りの姿勢を隠そうとしません。背景には単なるビジネス上の利害を超えた、思想的な共鳴があるように見えます。
プーチン政権は「神への不敬を罰する法」を制定し、権威主義的な家族観・ジェンダー観の復権、性的少数者への弾圧を推し進め、トランプ政権の動向と見事に呼応しています。
金子夏樹著『リベラルを潰せ』(新潮新書)によれば、トランプの岩盤支持層のキリスト教福音派とプーチンを支えるロシア正教の保守派が、思想的に結びつくだけでなく運動体を形成して活動を拡大しています。両者を結ぶキーワードは「反リベラル」であり、欧州の極右勢力との連帯もそこに根ざしています。この潮流は「近代」に対する「前近代」の反逆のように見えます。イスラム圏では急激な近代化への反発から、一九七九年のイラン革命を皮切りに復古的な原理主義勢力が影響力を増大させています。いま欧米の先進国で起きているのも、自由・人権・多様性・グローバリスムを含む「リベラル」な近代的価値観への反発であり、「古き良き時代へ」という退行的潮流の拡大であるように思われます。日本も例外ではありません。「古き良き日本」を掲げる新興政党が急速に支持を伸ばしています。
なぜ人々は「前近代」へと引き寄せられるのでしょうか。有史以来、人の生きる意味を支えてきたのは宗教に支えられた伝統的なコスモロジー(世界観・人生観)でした。しかし近代化はそれを解体しつつあり、解体のスピードは速まっています。いま世界で起きる現象に通底するのがコスモロジーの空白と「前近代」への回帰衝動ではないでしょうか。
しかし「近代」を否定して過去へ戻ることは解決にはなりません。近代の達成を踏まえたうえで、それを「含んで超える」新たなコスモロジーの確立こそが今求められているのではないでしょうか。サングラハが長年問い続けてきた思想的課題は、まさにこの時代に切実な意味を帯びています。》
私は一昨年、トランプが当選しそうな状況がどうにも理解しがたく、いろいろ考えた末、伝統的コスモロジー崩壊への危機感が彼への支持につながっていると分析した。
単に経済的・政治的な要因だけでなく、その底に、民衆の日々の人生の支え、倫理の根っこをめぐる混迷がトランプ支持へと向かわせていると見ている。
以上は私の仮説である。ご意見あればお聞かせ下さい。
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