長井健司さんの死によせて―ITの威力2

長井さんが殺される現場を撮影したビデオ、写真は複数あり、何人かの撮影者が、隣接する建物のいくつかの部屋または屋上にいたことが分かる。カメラアングルから撮影場所が特定されるのではないかと心配していたが、やはり治安当局はすでに現場建物の捜索を始めたようだ。今後は撮影場所の確保が難しくなるだろう。
また28日には、一時インターネットを遮断する措置も取られた。軍政はさらに、携帯電話から海外への通話をできなくしたほか、東南アジアに関するニュースや情報を流すウェブサイトをブロックし、ミャンマー国内からそうしたウェブサイトへのメール送信を禁止しようとしている。
民主化勢力への攻撃は、デモの直接的弾圧から、情報発信活動の押さえ込みへと及んできた。これは、軍事政権が、インターネットなどによる情報発信をいかに恐れているかを示すものだ。
26日、フランスの通信社AFP(長井さんの契約していたAPFではない)が配信した記事「Technology puts Myanmar protests in international eye(テクノロジーミャンマーの抗議行動を世界に見せている)」がITの威力を描いている。
「今回もりあがったミャンマーの抗議行動は、ユーチューブ時代のハイテク機器のおかげで世界的なスポットライトを浴びたが、この点、インターネットがなかった時代の1988年の暴動と非常に対照的だ」。
ヤンゴンにあるおよそ200ヶ所のインターネットカフェには、IT知識のある大学生がやってきて、携帯電話やデジタルカメラで撮った写真とビデオを四六時中送信している」。
1988年の民主化運動が起きたときには、ミャンマー軍政は電話盗聴まで行って情報が外に漏れるのをブロックした。そのため、革命前夜かと思われた運動の盛り上がりと死者3000人とも言われる大弾圧の実態は、なかなか世界に伝わらなかった。それから20年の経過は、情報伝達において巨大な違いを生み出している。
長井さんの死はいくつものカメラで撮影され、インターネットで瞬時に世界に発信された。それがいま、今世界各地での抗議行動を誘発し、国際機関と日本政府の迅速な対応へとつながっている。
「これが『グローバリゼーション』というものの実態なんですね」。
AFPは、インドでウェブサイトを運営するミャンマー人亡命者のこの言葉を伝えている。
この「グローバリゼーション」とは、アメリカの新自由主義経済の拡大という意味でのそれではない。
亡命者が言う「グローバリゼーション」、それは人類が協同して未来を作る「具体的な可能性」を示唆している。