長井健司さんの死によせて―北朝鮮も忘れずに

ミャンマー軍政への抗議が高まっている。
テレビである教授が、国際社会による制裁と援助停止は、ミャンマー国内で闘う民衆に、世界が支援しているんだ、孤立していないぞとのメッセージを送り、励ますことになるという意味の発言をしていた。賛成。まったくその通りである。
しかし、これと同様に、北朝鮮に人権制裁して、政治犯拉致被害者をはげまそうと主張する進歩派文化人はほとんどいない。
北朝鮮の人権弾圧は、ミャンマーとは比べものにならないほど酷い。そもそも政府を批判するデモなど起こりようもない。インターネットを使うどころか外国のラジオ放送を聞くことさえ禁止されている。毎日たくさんの人々が、街頭ではなく、一般人が近寄れない政治犯収容所の奥でひそかに殺されているのだ。
抑圧のレベルがあまりに高くなると、民衆は不満の声を上げることすらできない。ジャーナリストが入国して取材することもない。長井さん殺害のような事件自体おこりようがなく、実態が世界の目に触れることもなくなる。それが北朝鮮である。
自国民を人間扱いしない体制が、外国人に対して行った人権侵害が「拉致」だ。人権という点からいえば、北朝鮮は世界で最も厳しく糾弾されるべき国家であるはずだ。
ミャンマーに対しては「制裁」を叫び、北朝鮮とは「共存」「対話」を主張するのは、人権のダブルスタンダードといわれても仕方ないだろう。
ちなみに、「エコノミスト誌」が毎年発表する「世界民主主義ランキング」の2006年度版で北朝鮮は最下位の167位、ミャンマーは163位。http://www.economist.com/media/pdf/DEMOCRACY_INDEX_2007_v3.pdf
また、「国境なき記者団」の2006年度「報道の自由度ランキング」で、北朝鮮は168位で最下位、ミャンマーは163位。http://www.rsf.org/rubrique.php3?id_rubrique=639
いずれも、北朝鮮は毎年不動の最下位、まさに人権侵害のチャンピオンである。