統一協会と「赤報隊事件」2

 安倍晋三元首相の死去に伴う衆院補選で、ジャーナリストの有田芳生さんが、「安倍後継」を標榜する吉田真次氏に挑んだ山口4区(山口県下関市長門市

 結果は吉田5万1961票、有田2万5595票と敗れたが、吉田氏の得票を前回の安倍元首相の8万票余りから激減させた。安倍昭恵氏が全面的に支援した故安倍首相の「弔い合戦」だったことを考えれば、有田さんの得票率は31.27%で、大健闘したと言える。

 有田さんは、「敗れることではなく、敗れることを恐れて戦わないことが恥。岩盤にキリで穴を開けていく戦い」と言って立候補した。

AERAより)

 「もともと勝てるはずのない挑戦なので、面白い選挙をやろうよということで12日間やった。選挙スタッフも、『こんな面白い選挙はなかった』と楽しみながら戦ってくれました。これまで6回選挙をやっているが、一番面白い選挙でした。街頭では圧勝でしたよ。相手陣営はほとんど街頭をやらなかったから。こっちはすごい激励、歓声。ホント、最高の選挙でした。やっぱり野党は闘わないといけない。候補者を出せないとかそういうことではなくて」(有田さん)

 選択肢を示すことが大事だ。

 特に統一協会の「聖地」から立候補したことに敬意を表し、感謝します。

 統一地方選は維新の躍進が目立った。自民も議席を減らしたが、共産が大幅に後退し、右傾化が進んだ印象。安倍、菅、岸田と続く自民党政権の悪政を肯定するかのような結果で残念だ。

 もっと残念なのは、衆院補選でも地方選でも投票率が低かったことだ。

 当落は投票しない者が決め (神奈川県 小川仙太郎)26日朝日川柳より

 かつて、森喜朗氏が「(選挙に)関心がないと言って寝ててくれば、それでいい」と言い、麻生太郎氏は「若者が政治に無関心なのは悪いことではない」と言った。こういうことを言わせておいてはいけない。
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 先日のブログで樋田毅『記者襲撃』から、朝日新聞記者を殺害した「赤報隊」を追う中で、統一協会に関する疑惑を引用したら、読者の関心がとても高かった。それで、もう少し関連個所を引用させてもらおう。なお、本書では樋田さんは統一協会を「α教会」、国際勝共連合を「α連合」、統一日報を「α日報」と記している。

 アイヌ問題に関連して北海道の白老町長襲撃事件を起こした右翼活動家、矢部氏(仮名)は、「赤報隊」の事件について樋田さんにこう語ったという。

 「何年にもわたって犯行続け、捜査も完全に行き詰っている。こうした事件は、やわな右翼では起こせない。α教会ではないのか。当時、朝日新聞と『朝日ジャーナル』がα教会の霊感商法を厳しく追及していて、犯行動機は十分にある。」と。

 「赤報隊」を名のった事件は1回ではなく、1987年90年にかけて何度も起きている。
1987年
 1月24日 朝日新聞東京本社銃撃事件
 5月3日 朝日新聞阪神支局襲撃事件
 9月24日 朝日新聞名古屋本社社員寮襲撃事件
1988年
 3月11日 朝日新聞静岡支局爆破未遂事件
 3月11日消印  中曽根康弘竹下登両元首相脅迫事件
 8月10日 江副浩正リクルート会長宅銃撃事件
1990年
 5月17日 愛知韓国人会館放火事件赤報隊

 矢部氏は、これだけの回数の事件を同じグループがやったとすれば、とても「右翼」とは考えられないと言っている。以下、引用。

《私が「(略)α教会だとしたら、韓国系の宗教団体であり、中曽根、竹下両首相に靖国神社参拝を求める脅迫状を出すだろうか」と逆に質問すると、矢部氏は「本心のキーワードを隠し、右翼を装っているのだ。テロ事件を繰り返すには強固な秘密組織が必要だ。右翼には秘密組織など作れない。それが可能なのは、左翼を除けば、α教会しか考えられない。」》

 朝日新聞への脅迫状も国粋主義的な内容なので、樋田さんの疑問は私も抱いた。
 これについて矢部氏は、本心を隠して右翼を装い、強固な秘密組織を持つことができる犯行グループは、謀略に長けた統一協会である可能性を示唆している。(P65)

 統一協会朝日新聞への強い憎しみを行動に移すことを示すエピソードもある。
《『朝日ジャーナル』誌上で霊感商法批判の記事を書いていたC記者の千葉県の自宅は、信者とみられる複数の男たちによって四六時中監視されていた。娘さんが幼稚園に通う際、これらの男たちが背後からつきまとうため、一人では家を出られなくなり、家族や知人らが付き添って通園していた時期もあった。》(P140)

 「統一日報」の元記者だった人物によれば、統一協会には「対策員会」という裏工作組織があった。統一協会の組織の各部門から実務責任者が集まり、教団に敵対する動きなどへの対処を協議する機関だったという。その証言―

《「対策員会の中で、陰の仕事をしていたのが清元氏(仮名)で、清元氏の下にいた川田政司氏(仮名)が裏工作、つまりは謀略を任務にしていた。このため、川田氏が率いる組織は「川田機関」とも呼ばれていた。謀略を緻密に計画し、大胆に実行できるのは、やはりα連合にいた佐合哲二氏(仮名)だと思う。佐合氏は元新左翼革マル派の活動家で、頭脳明晰で知略に長けていた。佐合氏の下には、後に広報部長となった小山章氏(仮名)もいた。小山氏は早稲田の民青(共産党系の学生組織、日本民主青年同盟)の出身だった。」

 津田氏によると、川田機関は東北地方の「α運動被害者の父母の会」を潰すために、被害者を装った人物を潜り込ませ、会員にならせた。そのうえで、この会員の働きかけで幹部の男性を金で篭絡して内紛を起こさせ、やがて会を分裂させたのだという。》(P177)

 この謀略体質は恐ろしい。さらに、非公然部隊を自衛隊体験入隊させたこともあったという。(P181)

《「犯人右翼説」は捜査関係者の間でも根強い。しかし、「いったい誰が、これほど大胆で継続的な事件を起こすことができるのか?」という疑問についての答えは、容易には見つからない。東京で活動する新右翼団体「一水会」の幹部は「われわれは、警視庁のマークが厳しくて事件を起こせるわけがない」と話す。関西の新右翼活動家も「一件だけならともかく、連続して八件の事件を、警察の監視の目をくぐり抜けながら起こすことなど、われわれには絶対に不可能だ。残念なことだが」と話していた。》(P193)

 右翼団体、右翼活動家は警察の監視下に置かれていて、赤報隊のような事件はとても起こせないと断言する。

 これに対して、統一協会が、日本の政治権力からの「庇護」を受け、警察も容易に手出しできない存在だったことを私は想起してしまう。

 真相は必ずはっきりさせなければならない。