ロシア侵攻を予見したような映画として注目されている『ドンバス』。きょう遅まきながら、東京で唯一まだ上映しているキネカ大森で観てきた。
2018年製作で、ウクライナ東部のドンバス地方に舞台を設定した劇映画だ。14年、親ロシア分離主義勢力が、ルガンスク州とドネツク州にロシアの傀儡国家「人民共和国」の独立を一方的に宣言したが、そこでの出来事を13のシークエンスで表現している。
オープニングは、たくさんの市民がメイクしているシーン。彼らはフェイクニュース用の「俳優」たちで、テレビカメラの前でウクライナ側からの攻撃の悲惨さを「証言」させられる。「俳優」たちは最後、口封じのため皆殺しにされる。その殺人事件の現場にまたフェイクニュース制作チームがやってきて撮影するが、そこでは別の「俳優」たちがインタビューを受けている・・・。一つひとつがぞっとする凄まじい話だ。
セルゲイ・ロズニツァ監督は、すべて「事実」だという。つまり実話を映像化したのだと。
暴力が日常生活にもたらす分断と狂気の恐ろしさをこれでもかとばかりに描いている。
ロズニツァ監督のドキュメンタリーは『アウステルリッツ』、『国葬』、『粛清裁判』の3本を観て、感銘を受けた。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20201119
今回の『ドンバス』は劇映画だが、ドキュメンタリーとして実写できない最奥の現実を伝えている。
住民に対する虐殺と暴行、フェイクニュース、市民の財産の略奪、地下での過酷な避難生活・・・14年以降のドンバスの親ロシア「人民共和国」は、現在のロシア占領下の地域の状況を先取りしている。
これを知ると、ウクライナが簡単に「停戦」などできないことが理解できる。ロシアの支配下に入ることはウクライナ人を無法地帯に置くことになるからだ。それはロシア侵攻後、キーウ近郊のブチャなどでの住民虐殺を見ればわかる。
この映画を解説している映画評論家の町山智浩さんの言葉を借りると―
《やっぱこれで怖いのは降参したりね、降伏したりね、停戦して譲っちゃうと、そこに住んでる人達は本当に皆殺しになっちゃうなっていう事で。しょっちゅうそういう事をやってて、実はこのドンバス地域っていうのはウクライナ軍が1回突入した事があって、2014年に。そしたらロシア軍に取り囲まれちゃったんで、もうしょうがないからって事で降伏して脱出しようとした事があるんですよ。そしたら、ロシア側が、これ町がね、イロヴァイスクっていう町なんですけども、ドンバスのね。で、この人道回廊ってのを作るから、ここでウクライナ側に逃げていいですよって。ここは安全ですよって言われて、そこでウクライナ軍達はそこでウクライナ側に撤退しようとしたら、ロシア側が用意した人道回廊なのに、そこでボコボコに砲撃されて、皆殺しになっちゃった事件があるんですけど。
もう、全然信用できないんです。》
https://miyearnzzlabo.com/archives/80379
いまの情勢を深く理解することができる映画だった。
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統一教会(通称)については、テレ朝の「モーニングショー」が連日報じているし、新聞、雑誌も書きだしたので、詳しくはマスコミに任せる。
1)朝日新聞記事「旧統一教会に絡む被害相談、いまも 弁護士ら会見 元2世信者も同席」
https://www.asahi.com/articles/ASQ7D7DS3Q7DUTIL03F.html?fbclid=IwAR1Wc8bTjnXcTym4O33s8uuemrCAo6hY8y82rIGRiqMdEh99Md9NPPA_gTA
「昨年末までの約35年で、弁護士や消費生活センターが受けた旧統一教会に関する相談は3万4537件、被害総額は約1237億円で、昨年までの5年間に限っても約580件、約54億円という。
2)テレ朝モーニングショー「統一教会会長の会見は『100%嘘』と紀藤弁護士」
https://johosokuhou.com/2022/07/12/59802/
3)日刊ゲンダイ「安倍元首相側近の井上義行氏が大炎上!旧統一教会の「全面支援」で当選していた」
安倍元総理銃撃事件の2日前の7月6日、さいたま市文化センターで開催された旧統一教会の集会「神日本第1地区 責任者出発式」で幹部が「井上先生はもうすでに信徒となりました」と紹介、「必ず勝たなければいけない。勝ちこそ善であり、負けは悪でございます」と選挙応援にゲキを飛ばしており、井上氏も登壇して挨拶した。
井上氏側は旧統一教会の「賛同会員」になっていること、そして今回の選挙戦で教団側が支援したことを認めている。
「旧統一教会は全国に10万票を持っているという。全国比例で出馬した井上氏は、16万5000票を獲得し当選している。」
統一教会とかねてより関係が深いとされる自民党の山谷えり子参院議員(今回当選)のwikipediaには以下の記述が。
「東京新聞では山谷が過去に統一教会(現・世界平和統一家庭連合)関係者を秘書としていた可能性を報じている。
第22回参院選間近の2010年5月、 山谷への支援ならびに有田芳生への落選運動を通達する教団の内部文書が流出し物議を醸した。翌月には信者による有田に対する選挙妨害が行われた。」
これは知る人ぞ知るエピソードで、統一教会と政治との関係においてきわめて重要な事件だ。
その統一教会の文書では、有田芳生を落選させ、山谷えり子を応援するとはっきり書いてある。
「有田対策ですが、くれぐれも宜しくお願いします。相対的に有田退治になります 全国足並み統一行動を取ってください」そして、「山谷先生、安倍先生なくしてわたしたちのみ旨は成就できません」と安倍氏まで登場する。
敵視された有田芳生さん、統一教会に関する専門家としてこれからメディアで発言する機会が増えるだろうが、以下のyoutubeではかなりディープな話をしている。
統一教会の反社会的な実態が暴かれたあと、表向きは無関係を装う政治家が多くなったものの、裏では関係が続いているという。
さて、いよいよ核心は統一教会と政治の関係だが、どこまで明らかにされるのか。
(つづく)