子どもたちの自殺を食い止めるには

 政府は、27日から新たに8道県を追加し、21都道府県に緊急事態宣言を発令することを正式決定。来月9月12日まで適用する。また、高知など4県にまん延防止等重点措置を新たに適用する。両方合わせると33都道府県が対象になる。

 菅首相「明かりははっきりと見え始めている」(えっ、どこに!?)などと、また根拠のない楽観論を語るが、思い切った措置をとらずにダラダラと対策を小出しにするのは、「政治日程」を優先しているからだという。

 《首相に近い自民党議員は「12日に宣言が解除できたら、間を置かずに衆院を解散する」と、なお早期の宣言解除と衆院選の実施を念頭に置く。大型商業施設の休業といった対策の強化を行うと、「解散どころではない」といった印象を国民に与えかねない。政治日程でフリーハンドを確保していくためにも、「いまは大胆なことはやりづらい」(政府関係者)というわけだ》(朝日)

 そのせいで、どんどん犠牲者が増えているんだよ。

 菅義偉という人は、政治理念もリーダーシップもなければ、人情や最低限の常識もない。こんな人物が首相になれているのは、狭い意味での「政治」の駆け引きによってだ。次の首相にこの人物がなるのは許されない。

 

 菅首相に対して国民がサジを投げているなか、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、政府、国際オリンピック委員会IOC)を批判して、喝采を浴びている。

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尾身会長の発言に「聞いてらんないわ」とばかりに天をあおぐ三原じゅん子議員(左)。彼女、政府が非難されると眉根に皺を寄せたり、発言者を睨んだりマンガのようなリアクションを見せ、いつも笑わせてくれる(フジTVより)

 きのうの衆院厚生労働委員会で、「人々の意識に影響するかというのが大事だということは再三申し上げてきました」としたうえで、テレワークを要請している中でのバッハ会長の再来日について「やっぱり国民にお願いしてるんだったら、オリンピックのリーダーバッハ会長は、なんで、わざわざ来るのかと。普通のカモンセンス(常識)なら判断できるはずなんですね。なぜわざわざバッハ会長がもう一回?そんなのオンラインで出来るじゃないですか、というような気分がある」と批判。「銀座も一回行ったんでしょう?」と皮肉を込めて怒りをあらわに非難した。 

 パラリンピックの学校連携観戦については「おそらく、小学校の子が行っても感染はしない確率が高い。熱中症のことはあるけど。 実はそこが問題じゃないんですね。本質はそこで感染が起きるか起きないかじゃないんです」、「どういうメッセージを一般の人に(与えるか)ということ」とこれもばっさり。

 昼のワイドショーでは、MC(坂上忍)が、「尾身さんの発言に溜飲を下げた国民、多いんじゃないですか」とコメントしていた。

 総選挙で与党の自公に目にものを見せてやらなければ。
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 きょうのNHK「ニュース9」で、子どもの自殺のニュースが流れた。コロナ禍で去年から増えていたが、今年はさらに深刻化しているという。

 厚労省によれば今年1月から7月までの子どもの自殺は、小学生7人、中学生75人、高校生188人の合計270人にのぼった。未遂者や自殺願望をもつ子どもまで含めると膨大な数になるだろう。痛ましい。なんとかしなければと思う。

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あまりにかわいそうで胸が痛む

 24時間SNSでの相談に対応する団体は、相談件数がコロナ前の1.5~2倍になっているという。

 「家庭内がすごくギスギスしはじめて、みんなイライラしていて、『お前の学費のせいで、お父さんもお母さんも、こうなっている』などと、コロナ禍で崩れてきている家庭が増えていると思う」(岡田沙織氏)

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NHKニュース9より

 また、普通の学生生活を奪われたことで逃げ場や気持ちの吐き出し場がなくなっていることで精神的に追いつめられやすいという。取材を受けた高校生らも、友達関係がうまくいかない、家と塾の往復でリフレッシュできないなどと語っていた。

 さらに貧困などで、もともと厳しい状況の子どもたちが、生活を維持できなくなる懸念があるという。希望する子どもたちに無償で手作りの料理を提供する人々の献身的な努力も紹介されていた。

 相談窓口の充実、「居場所」の確保、学校の先生方の注意などは、それぞれ自殺を減らすのに有効だし、行政はいっそう支援してほしい。

 ただ、これらはあくまで対処療法である。いつも思うのは、もっと根本的な問題に行政も報道も触れないということだ。

 コロナ禍で子どもたちをとりまく状況がより厳しくなっており、それが事態を深刻にしていることは確かだ。しかしこれは環境であり「外因」である。人を前向きに生きるのためにもっとも大事なのは人生観=世界観だろう。

 このブログで何度も指摘してきたが、国際比較で、日本の子どもたちの自己肯定感はきわめて低い。ここがもっとも深い問題である。

 文科省は「命を大切にする心を育む」というスローガンを早くからかかげているが、具体的には自殺予防の防止プログラムという技術的な対策だったり、「動物飼育や植物栽培など生き物とのかかわりを通した「いのちの不思議さ」に触れる活動」(ある地域での教育実践)だったりと、ちゃんとした方針を出せないでいる。

 朝顔を育てたり鶏を飼育することが、そのままレジリエンス(打たれ強さ)ある「心」をつくることができるとは思えない。

 自殺したいなどとすぐに考えない「命を大切にする心」は、自己肯定感の高さが核心だと思う。
 では、それをどうやって形成できるのか。
(つづく)