「法と秩序」を守るにはトランプが退場すべし

 月は霜月。「霜降」(そうこう)は今日までだった。
 先月23日から初候「霜始降」(しも、はじめてふる)。
 28日からが次候「霎時施(こさめ、ときどきふる)。
 末候が今月2日からで「楓蔦黄」(もみじつた、きばむ)。
 紅葉の時節だ。明日から節季は立冬。はやいなー。

 夕焼けが鮮やかなのは季節のせいだろうか。きょうも天空の雲すべてが朱に染まっていた。

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刻々と色が変わる夕焼け。だが、視界に電線がたくさん入ってしまう。

 ああ、写真に電線が入る・・。
 で、思い出したのが、外国人の目から見た、日本の風景の「撮りたくない」ものワースト3。
 外国人観光客の間では、「日本の観光地では写真を撮ると、必ず何か撮りたくないものが写り込む。それを入れずに撮れたら、それがベストショットだ」と言われているそうだ。
 その「撮りたくないもの」のトップ3は、①工事現場などにある赤いコーン、②電信柱と電線、③看板
 こう指摘するのは、スイス人のステファン・シャウエッカーさん。(以上はシャウエッカー著『外国人だけが知っている美しい日本』大和書房P204より)

 シャウエッカーさんとは、以前『ガイアの夜明け』で取材させてもらったご縁だ。
Japan Guideという外国人ツーリストが最もよく利用する日本観光案内サイトを運営している。

takase.hatenablog.jp


 会員数は約100万人、月間ページビュー800万。”Japan”の一語だけでgoogle検索すると、上から3番目か4番目に出てくる。

www.japan-guide.com


 東日本大震災の後、すぐに被災地に入り、海外のデマや不正確な情報(日本の北半分は放射能で危険だ、とか)を正し、観光客を呼び込むことで復興に貢献するなど、すばらしい活動を続けている。
 日本にいる外国人ツーリストに「日本の旅の情報をどうやって得ていますか」と取材すると、7割から8割がJapan Guideと答えた。ここ10年のインバウンドの急増にはJapan Guideがかなり寄与しているはずだ。いまはコロナ禍で大ピンチだと思うが、なんとかがんばってほしい。

 さっきの話に戻ると、たしかに日本の町では、どの方向にカメラを向けても電線やら看板が写ってしまう。それに我々は慣れて、気にならなくなっているらしい。
 「きれいな花が咲いている桜の木のそばに電柱や看板があっても、日本人は桜だけに注意がいって、他のよけいなものを意識からのぞいているようですね。日本人の特技です」とシャウエッカーさんに言われたことがある。

 外からの目は、自分では気がつかないものを教えてくれる。
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 アメリカ大統領選挙。いま6日の夕方だが、まだ開票が続いていて「当確」が出ない。

 今朝の朝日川柳より
 テッポウを構え決着待つ選挙 (栃木県 井原研吾)
 もう少し賢い国かと思いきや (和歌山県 坪田和子)
 唯一の見習うべきは投票率 (兵庫県 井上竜太)
 
 今回は選挙キャンペーン中から異様な緊張感が漂っていた。

 とくに、8日にFBIが、ミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事(民主党)の拉致計画を阻止し、13人を逮捕した事件は衝撃的だった。

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 13人は武器使用の訓練をし、投票日の前に200人を集めて同知事を襲う計画だったという。ウィトマー知事は新型コロナウイルス対策に熱心でロックダウンを行おうとし、これに懐疑的な人々から敵視されていた。
 グループに潜入していた覆面捜査官がたまたま情報を入手したから阻止できたが、それがなかったら拉致されていた公算が高い。殺害されたかもしれない。

 ウィトマー知事は8日の記者会見で、自らを拉致する計画は、ドナルド・トランプ大統領の発言と関係があると主張。トランプは過去数カ月間、「不信感をあおり、怒りをたきつけ、不安や憎悪、分断を広める人たちに温情を与えている」と述べた。

 トランプは4月、「ミシガンを解放せよ」と無責任なツイートをして同州政府への抗議行動者を支持。翌月、ロックダウンに反対する武装抗議行動者らが州政府庁舎になだれ込んだが、今回逮捕された13人のなかの2人はそこにいた。

 この事件のあと17日にミシガン州に入ったトランプは集会の演説でウィトマー知事を「刑務所に入れろ」と発言。これにホイットマー知事はツイッターで即座に反応し、「こうした発言こそが私や家族などの命を危険にさらすもので、やめるべきだ」と非難した。

 トランプは明らかに暴力を煽っている。これが大統領のすることなのか。
 アメリカでは近年、数多くの暴力事件に市民の武装集団が関係していて、国土安全保障省は年次報告書で、暴力的な白人至上主義が「国内で最も根深く致命的な脅威」だとしている。もっともアブナイのは、イスラム過激派などではないのだ。

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アメリカの各地で跋扈する白人至上主義の武装集団(写真は「国際報道」より)

 トランプは「法と秩序」を呼号するが、暴力集団を扇動するトランプが退くことが法と秩序を守ることになる。