ウクライナ情勢を左右するトランプの動向

 ロシアによるミサイル攻撃が強まっているウクライナでは、23日未明に首都キーウや東部ハルキウなどにロシア軍によるミサイル攻撃があり、7人が死亡し、子どもを含む70人以上がけがをした。

テレ朝ニュースより

 イギリスの研究機関は今月2日、12月末にハルキウに着弾したミサイルの残骸を調べたところ、部品にハングルが記載されていたことなどから「ミサイルは北朝鮮製」との分析結果を公表している。ウクライナ国防省情報総局のブダノフ局長も北朝鮮がロシアの最大の武器供給国との認識を示し、北朝鮮の助けがなければロシア軍の状況は壊滅的になっていただろう」としている。(ANNニュース)

 北朝鮮とロシアの軍事的連携はますます強まり、抜き差しならない関係になりつつある。

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  23日、ニューハンプシャー州の米共和党予備選挙トランプ前大統領(77)が、初戦のアイオワ州に次いで勝利し、共和党の大統領候補となるのが確実となった。今の時点での世論調査ではバイデンとの大統領選になった場合、トランプに投票するという人の方が多いというから、再選の可能性は十分にある。

NTVニュースより

 トランプのむちゃくちゃさ加減は、前回の任期中いやというほど見せられたが、再選すれば「独裁者になる」と本人が言っているとおり、すさまじいだろう。

 トランプは任期中、プーチンとつるんでウクライナへの軍事援助は停止する一方、イスラエルのネタニヤフと親密で米国大使館をテルアビブからエルサレムに移し、さらにパレスチナを置いてきぼりにイスラエルアラブ首長国連邦UAE)、バーレーンと国交を結ぶのを仲介した。トランプが米大統領に再選されれば、ウクライナ支援は打ち切られ、逆にイスラエル支援が一段と強まるだろう。結果、ロシアがウクライナに軍事的に勝利し、イスラエルパレスチナ攻撃と戦闘の周辺諸国への拡大に歯止めがかからなくなる可能性が高い。

 23日の予備戦の結果を受けて、世界各国とくに米国の同盟国は戦々恐々で、トランプ再選を見越した対策に乗り出す国も現れた。隣国カナダでは、トルドー首相が閣僚2人が率いる「対策チーム」を立ち上げ、トランプ大統領になったらどう関与していくか検討すると発表した。

NHK国際報道より

 カナダは前回のトランプ大統領の任期中、カナダ製品に一方的に関税をかけられ、貿易協定の見直しを迫られたり、トルドー首相が「弱腰」「不誠実」などと罵倒されたりした。トルドー首相は会見で「我々は4年間にわたって、トランプ前政権の難題を乗り越えてきた」という表現で、トランプ再選を国家安全保障の観点から見ていることをうかがわせた。

 

 藤原帰一千葉大特任教授)は、トランプ再選の「見込み」だけで情勢が大きく変わると指摘する。

「次期大統領はトランプになるという見込みだけで戦争のゆくえが変わってしまう。プーチン政権はトランプ政権再来まで持ちこたえることができればウクライナでの勝利が期待できるのだから、停戦する必要はない。ネタニヤフ政権はトランプが大統領になれば現在以上の支援を期待できるのだから、バイデン政権の要求、例えばイスラエルパレスチナにおける2国家の相互承認などに耳を貸す必要はない。トランプ再来への期待だけで戦争が長期化するのである。

 民主主義はよい統治を保証しない。プーチンもネタニヤフも選挙によって選ばれながら法の支配を顧みない統治と無法な軍事力行使を続けてきた。それらの武力行使を容認することによって、トランプの再来は法に制御されることのない力の支配をさらに広げてしまうだろう。」

 トランプが巻き起こす嵐は、すでにウクライナにも達している。