チベット人「政治犯」家族と再会


 「ラモツォ家族とドゥンドゥップ・ワンチェンさんが、無事に再会をはたしました。アメリカ時間の12月25日です。」
 ついさっき、飛び込んできたニュースだ。発信者は、映画『ラモツォの亡命ノート』の監督、小川真利枝さん。どうやら、再会の現場も撮影していたようだ。

 今月はじめに観たこの映画は、チベット女性亡命者の日常を8年もかけて撮りためた映像から成る。あまり宣伝されていないはずだが、ポレポレ東中野というミニシアターで連日大入りだという。上映は明日28日まで。
 ラモツォはチベットのラサでバター売りをしている時、レストランで働く夫ドゥンドゥップ・ワンチェンに出逢う。夫は2008年北京オリンピックが開催されることについてチベット人のインタビュー取材を行なった。オリンピックは「平和」と「自由」の祭典というのに我々チベット人には平和も自由もない、だから開催には反対だ・・・。そんな、チベット人の真情を取材したドゥンドゥップ・ワンチェンさんは、中国当局から「国家分裂転覆罪」に問われ、政治犯として懲役6年の刑を受ける。
 彼は危険を伴う取材の前に、安全なインドに妻のラモツォと子ども4人を残してきた。2009年、インドのダラムサラで小川真利枝監督はパン売りをしていた美しいラモツォに出会う。ラモツォはその後、アジア圏以外で初めてチベット難民を受け入れた国・スイスへ。現在は米国・サンフランシスコに子どもたちと暮らすが、釈放された夫はチベットの故郷コツェ村に監視付きで暮らし、未だ再会は果たせずにいる。
http://www.lhamotso.com/
 映画の最後の場面で、釈放されたドゥンドゥップ・ワンチェンとラモツォら家族が携帯電話で8年ぶりに涙ながらに会話をする。いつかきっと会おうね、と約束しあう一家が早く再会できればいいと願っていたのだが、今回それが実現したのだ。釈放後も24時間厳しい監視下に置かれていた彼がよく脱出して渡米できたものだ。
 「久々に、このような安全と自由を感じることができました。私は、私の妻と子供を再び抱きしめることができるようにしてくださった皆様に感謝したいと思います。しかし、私は祖国チベットを去ったことの痛みも感じている」。家族と再会したドゥンドゥップ・ワンチェンさんのコメントである。

 彼が投獄された直後、まだ10歳だった長女、ダドゥンはこう言っていた。
 チベットには自由がない。だからお父さんはビデオを撮った。自分のことより、チベット人みんなのことを考えて、映画のために自分を犠牲にした。私はそれを誇りに思う」。
 この言葉に、チベット仏教の“慈悲”を感じる。“慈悲”は強いな。
 再会できてほんとうによかった。一家がよい年を迎えられますように。
(以上の記述では、チベット文化支援人 落合大祐さんの映画評を参考にしましたhttp://www.chiheisen.net/