「中国は5人を釈放せよ!」とアムネスティ

 仏教界ではダライ・ラマ14世とならぶ影響力があるといわれたティク・ナット・ハン師が亡くなった。

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ティクナットハン師(wikipediaより)

《世界的に知られるベトナム人の禅僧ティク・ナット・ハンさんが22日、ベトナム中部フエの寺院で亡くなった。95歳だった。ベトナム戦争反対を訴えた平和運動家で、近年は「マインドフルネス」や瞑想を著作で広め、欧米諸国の文化に影響を与えた。》(朝日新聞
 ハン師は、ベトナム戦争終結を呼び掛けたことで祖国ベトナムを追放され、ながく亡命生活を送ったあと、2018年に帰国していた。
 ベトナムの仏教は日本や朝鮮半島と同様、中国仏教を導入したもので、ハン師はベトナム臨済宗のリーダーだった。

 ダライ・ラマ14世もハン師も、故郷を追われ、海外で活動せざるをえなくなった結果、仏教の思想と実践を世界に広めることになった。政治弾圧がなければ、チベット仏教もマインドフルネスも今のような精神的影響を世界に与えることはなかっただろう。皮肉なめぐりあわせだ。

 ベトナムの仏教は大乗仏教で、もともと慈悲をベースにした社会運動への関与が強かった。ベトナム戦争中、何人もの仏僧が焼身自殺までして戦争に抗議している。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20120620

 ハン師は「戦争はすべて悪、正義の戦争はない」との考えから、アメリカ及び南ベトナムに対しても、また北ベトナム及び解放戦線(いわゆるベトコン)に対しても戦わないよう要求していた。

 半世紀前の当時、私はハン師や「べ平連」などとは違って、侵略者(米国)に対する北ベトナム及び解放戦線の抵抗戦争は「正義」であり、「ベトナム人民支援」、つまり後者を支援して早く勝たせることがもっとも早い解決策だと思っていた。一方の戦争当事者を「がんばれー!」と応援して、カンパや署名を熱心に集めた。

 戦争をどう考えたらいいのか。
 戦争一般というものはなく、一つひとつ具体的に見ていくしかないのだが、例えば、ミャンマーの民主勢力が武装闘争に踏み切ったことはどうなのか。

 迷いながら考えている。
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 アムネスティ日本が、中国の習近平主席に、囚われている5人の釈放を求める賛同者を募っている。私もこのキャンペーンに賛同のメールを送った。

www.amnesty.or.jp


 要請文は以下。

国家主席習近平 様

2022年北京冬季オリンピックパラリンピックの開催に伴い、私はこのまたとない機会に、貴政府が人権を全面的に尊重し、国際的な人権の枠組みに真摯に責任を持つよう求めます。

特に、表現の自由に対する権利を十分に保護するよう、貴国政府に求めたいと思います。表現の自由は、国際的な交流と相互理解を目的としたスポーツイベントであるオリンピックの文脈において、特に重要な意味を持ちます。

表現の自由は、世界人権宣言第19条で保障されています。国際人権法や基準によれば、何人も表現の自由の権利を行使したという理由だけで投獄されてはなりません。

したがって、私は貴国政府に対し、表現の自由を行使したために起訴または拘禁されているすべての人びとに対する訴えを取り下げ、以下の関係者をはじめとするすべての人びとを釈放することを求めます。その最初のステップとして、張展さん、イルハム・トフティさん、李翘楚さん、高智晟さん、リンチェン・ツルトゥリムさんを釈放してください。

・・・・・

 この5人は、市民ジャーナリスト、学者、人権活動家、少数民族人権派弁護士で、「自らの信念や政治的意見、政策批判を発信しただけで厳しい迫害を受けるリスクが高い人びと」の代表として挙げられている。

5人とは―

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張展さん(アムネスティHPより)

 武漢発のコロナ騒動から2年。コロナへの対応で世界一だったと豪語する中国。
 この初動を取材した何人ものジャーナリストたちが圧力を受け、拘束された。
 以前のブログ記事はhttps://takase.hatenablog.jp/entry/20211212

 

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イリハム・トフティさん

 2016年、国際的な人権賞「マーティン・エナルズ賞」の受賞者に、服役中のイリハムさんが選出された。2019年には、人権擁護活動の功績者に贈るサハロフ賞がイリハムさんに授与された。授賞式には獄中のイリハムさんの代理として娘のジュハルさんが出席した。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20131111
https://takase.hatenablog.jp/entry/20141123

 

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4.高智晟

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高智晟さん


 以前のブログ記事は、https://takase.hatenablog.jp/entry/20080429

 

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リンチェン・ツルトゥリムさん

 署名の目標はとりあえず3000。


期 間:2022年1月14日〜3月上旬(予定)
要請先:習近平国家主席
《署名はアムネスティ日本で取りまとめ、大使館を通して要請先に提出します。また、国際事務局と共有し、世界中で集まった署名と一緒に要請先に提出します。》とある。

 日本のテレビは、すっかり北京オリンピックがんばれムードになっているが、今日も拘束されて虐待を受けている人々がいることを忘れまい。
 よかったら署名をお願いします。