畑では半月ほど前に種をまいたインゲンが芽を出した。見るからに“赤ん坊”という感じだ。
先週トマト植えたトマトの苗が花をつけた。黄色い星型の花。きょうは支柱を立てて、苗をヒモで結わえる作業をした。もう小さな実がついている。
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「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」の第8回受賞者と対象作品が決まった。
今年は2人が選ばれた。
小川真利枝さん(39)の『パンと牢獄 チベット政治犯ドゥンドゥップと妻の亡命ノートと』(集英社クリエイティブ)、そして小松由佳さん(37)の『人間の土地へ』(集英社インターナショナル)。
https://www.mymf.or.jp/topics/news_2021-05-14.html
ともにご縁のある人で、またいずれも本の出版前から「タダモノではない」と見ていた2人なので、とても喜ばしい。
小松由佳さんは4年前に彼女のヨルダンへの子連れ取材行をNNNドキュメント(日テレ)で番組にした。
著書『人間の土地へ』については去年のブログで紹介した。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20201010
小川真利枝さんは2009年、チベット亡命政府があるインド北部のダラムサラに滞在中、路上でパンを売るチベット人のラモ・ツォという女性に出会う。親しくなるうち、彼女の夫が、北京オリンピックを批判する映画を制作して獄中にある、国際的にも知られる政治犯ドゥンドゥップであることを知る。
真利枝さんは、ドィンドゥップの子どもを養いながらの亡命生活に密着。6年という長期の取材を映画『ラモツォの亡命ノート』(2017)にまとめた。
チベット人の内面に入った稀有な人間ドキュメンタリーであり、一つの家族からチベット問題が抉り出されるすばらしい映画だった。クラウドファンディングで、17年11月18日から「ポレポレ東中野」での上映が実現し、私はそこで彼女と知り合った。
映画の上映期間中にすごい展開が待っていた。ドゥンドゥップが中国から脱出することに成功したのだ。真利枝さんはすぐに、当時一家の亡命先だったアメリカに飛び、12月25日、ちょうどクリスマスの日に家族が再開する瞬間を撮影している。
私は彼女から相談を受けて、これまで撮りためた映像素材にドゥンドゥップの独占インタビューなどを加えて、大型のテレビドキュメンタリーにすべく、テレビ局に何度か売り込んだのだが、結局実現しなかった。
今回の受賞作『パンと牢獄』は、一家再会とドゥンドゥップの独占インタビューも含めたノンフィクションで、ある出版社のノンフィクション賞の最終選考(最後の5作品)までいった作品を書籍化したもの。
ここ数年読んだノンフィクションではもっともインパクトを感じた本で、このブログに書こう書こうと思っていてきょうまで来てしまった。すばらしい本だ。
真利枝さんは大学卒業後、大手のテレビ番組制作会社に入社したが、2年でやめてダラムサラに通うことになる。チベットに関心をもったきっかけがおもしろい。
高校受験に向けて夏期講習まっただ中だった夏休み、テレビで映画『セブンイヤーズ・イン・チベット』(1997)を観ていた。主人公のオーストリア人登山家が自分の功績を自慢げに話したのを聞いたチベット人女性が冷たくこう返す。
西洋では、あらゆる意味で頂上を極める人が英雄。
私たちの理想は自我を捨てること。目立つことが重要ではないの
受験戦争で、他人と競い合う日々を送っていた真利枝さんは、この言葉に衝撃をうけたという。
「このとき、一瞬にして『チベット』に心をつかまれてしまった。いつか、チベットへ行こう。私にとって『チベット』という地名が、憧れの言葉になった」(本書P21)
これが真利枝さんのダラムサラ通いへとつながるわけである。若い頃の憧れをずっと保ち続けるなんて、もうここからタダモノではない・・
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というわけで、きょうのGLIM SPANKY はふたたび「大人になったら」。
♪ネコっかぶり 大人は知らない
この輝く世界が だんだん見えなくなっていくけど
いつか昔に強く思った憧れは決して消えない
消えやしない