北京五輪に翻弄されて・・

 3回目のワクチン接種を5日に受けてきた。ただ、これも日本は先進国中もっとも遅れているようだ。
 
 ブースター接種といわれる3回目のワクチン接種ついては、去年11月、政府は2回目の接収から8カ月たってから、との方針を示した。その後、世界各国でのオミクロン株の爆発的な蔓延を前に「一般の高齢者は6カ月」と期間を縮めたものの、方針転換が遅すぎた。

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2回目接種から8ヵ月としたが・・(TBSより)

 日本の接種率は、2月4日段階で5.3%にすぎない。英国、韓国は接種率が50%を超えているが、いずれも昨年中に3回目までの間隔を3カ月に短縮していた。(英国は11月、韓国は12月に短縮)

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(TBSより)

 頑張ってるフリしてるけど、いつも後手後手の日本政府です。
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 4日、北京冬季五輪が始まった。

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聖火ランナーの最終走者にウイグル族の選手(左)を起用。露骨な政治的演出を行った

 テレビでは日本選手の感動話を流しているが、そもそも北京で五輪を開くことへの疑問はどこにいったのか。

 ウイグル人への人権弾圧などで、欧米が外交ボイコットをするなか、「言うべきことは言う」(岸田文雄首相)はずの日本は、大臣歴任者でもある橋本聖子氏を派遣。どうともとれる形でお茶を濁した。

 一方、衆院は1日の本会議で中国を念頭に置いた決議を採択した。ここでは「新疆ウイグルチベット南モンゴル内モンゴル自治区)、香港」を挙げ、「国際社会から深刻な人権状況への懸念が示されている」と指摘し「国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう強く求める」としている。

 世論に、そして米国に押されてか、一応「言うべきことは言う」形にしたのだが、「中国」と名指しせず、「人権侵害」や「非難決議」なども強い言葉も入れなかった

 全会一致での採択を目指し、親中派公明党に配慮したからだというが、れいわ新選組などが、腰が引けすぎていると反対して全会一致にはなっていない。共産党も賛成はしたが、人権侵害への正面からの批判がなく中国の名指しもないことを批判している。

 さっそく朝日川柳のネタにされた。

擦った揉んだあげくの決議ワサビ抜き (岐阜県 深萱宗男)

 これをNHKの岩田明子解説委員が、決議案の「調整」が長引いた結果、春節で五輪開幕直前の採択という「最悪のタイミング」になったと解説。(「国際報道」の「日本の外交」というコーナーで)
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 まるで、中国を「刺激」したことがまずかったかのような言い方だった。

 

 きのう6日、北京五輪に翻弄されて・・・娘が語る、亡命チベット人家族の14年」というトークイベントがyoutubeで開かれた。主催はアムネスティ日本。

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 メインゲストは、テンジン・ダドゥンさん

 米国の大学で学ぶチベット女性だ。彼女の父親ドゥンドゥップ・ワンチェンさんは、2008年の北京夏季五輪に関する映画を製作したために政治犯として逮捕、拘束されていた。
 その『恐怖を乗り越えて』というタイトルの映画は、「五輪について、どんな思いを抱いているか」とチベット人に問うドキュメンタリーで、罪状は、国家分裂扇動罪、刑期は6年だった。

 インドに亡命していた、彼の妻、ラモツォさんと子どもたちを2009年から取材し続けているのが小川真利枝さんで、その成果は映画『ラモツォの亡命ノート』に、さらには『パンと牢獄』という著作になり、去年の山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞している。

 歴史に残る素晴らしい取材だ。

takase.hatenablog.jp


 ドゥンドゥップさんは2017年、奇跡的に中国からの脱出に成功。クリスマスの日にサンフランシスコで家族が感動的な再開を果たした。小川さんはその瞬間にも立ち会い、カメラを回している。その後、一家は米国に暮らす。

 ダドゥンさんは父親が獄中にあったときの気持ちや再会の喜びなどを語った後、北京五輪について、こう訴えた。

 2008年のとき、映画をつくっただけで6年も投獄されるなんて、ひどい人権弾圧です。この状況が今も続いているということは今年の五輪をボイコットする大きな理由になります。

 五輪を開催することはこの状況を正当化することになるからです。

 2008年の北京五輪は、IOCが中国の中の状況が改善されることを約束して行われました。しかし、いま2022年も酷い状況は変わっていません。

 チベットだけではありません。中国は、香港、ウイグル内モンゴルなとにも同様の問題を生じさせています。

 人権弾圧をやめさせるために、みなさんと一緒に行動していきたいと思います。

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左上が小川真利枝さん、下がダドゥンさん、右上はダドゥンさんのダラムサラのTVCの同級生で通訳を務めたチュニさん(日本在住)

 つぎに小川真利枝さんが、2008年以降、弾圧に抵抗するためのチベット人焼身抗議が続いたこと、これに対し、当局が取り締まりをさらに厳しくして、いまではほとんど声を上げられなくなっていることを指摘、「平和の祭典」がこうした中で行われていることを考えてほしいと訴えた。

 小川さんは、ダドゥンさんと通訳をつとめたチュニさんをダラムサラのTVC(チベット子ども村)で学んでいた小さい頃から知っており、この日しっかりとコメントする二人に「こんなに成長して・・」と感慨深げだった。そんな微笑ましい光景にちょっと感動した。

 

 チベット情勢の解説を担当した明治大学鈴木賢教授は、五輪の聖火リレーの最終ランナーにウイグル族の女性選手を起用したのは、批判を気にして免罪符として利用していると指摘。五輪をやる資格のない国がやっていると批判した。

 1日の衆院決議については、「中国」と名指しをしていないが、五輪開会直前にぶつける形になって「良かった」と、岩田NHK解説委員とは逆の評価だった。

 固有の言語や宗教を奪う政策が、チベットからウイグル、モンゴルと他の民族にも拡大して、民族のアイデンティティを奪って漢民族化しようとしている。民族のアイデンティティをそのままにしておくと、国がバラバラになってしまうという恐怖感からくるもので、自信のなさをも示すと鈴木教授は分析する。
 この人権抑圧は少数民族だけでなく、漢民族や外国人にも及んでいる。例えば、北海道教育大学の袁克勤教授は拘束されて2年半たつが、拘束の理由さえわからないままだ。
https://takase.hatenablog.jp/archive/2020/03/31

 中国のこうした残酷な人権弾圧状況はこれからもつづく。日本人として関心を持ち続けていこうと結んだ。

 

 イベントの参加者は160人をずっとキープして、途中で退場した人はほとんどいなかった。最後にアムネスティは、「5人を釈放せよ」キャンペーンへの支持を訴えた。

「中国は5人を釈放せよ!」とアムネスティ - 高世仁の「諸悪莫作」日記 (hatenablog.jp)

 五輪のうらで、多くの人々が理不尽に苦しめられていることを忘れないようにしたい。