大メディアが危険地に行かないからフリーが行く

takase222015-02-14

午後、天気がいいので1時間ほど散歩。
あちらこちらで、白梅、紅梅がほころびだした。この木は満開だ。
確実に春に向かっているのを感じる。
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イスラム国」は空爆では駆逐できず、早晩、アメリカ国内で地上軍派遣の声が高まるだろうと思っていたが、案の定、米国政府が動きはじめた。
オバマ米大統領は11日、中東の過激派「イスラム国」の掃討に向け、これまで否定してきた地上部隊の派遣に道を開く新たな決議案を議会に提出した。》

常岡浩介さんへのインタビューをまとめた『イスラム国とは何か』(旬報社)のあとがきで、私は「米国はイスラム国への対応をめぐって大失敗する・・・。この常岡さんの予測が的中しそうだ」と懸念を書いた。
常岡さんは、本書で、アメリカが地上戦に乗り出し、挙句の果てに、超大国の地位から転落するシナリオを語っていたのだ。

そのアメリカの過ちに日本が付き合って泥沼に引きずりこまれるのを、常岡さんも私も恐れたことが本書を出した動機の一つだ。
他国軍へのODA解禁、安保法制の与党協議開始など、いま進行しつつあるわが日本の動きを、これまで以上に注意して見ていかなくてはと思う。
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きょう、外務省が、【イラククルディスタン地域政府当局による邦人逮捕・拘留事案発生に伴う注意喚起】をHPに載せた。

《2月上旬,イラク北部クルディスタン地域のエルビル県において,トルコから陸路イラクに入国した邦人がクルディスタン地域政府(KRG)当局に不審者と疑われ,一時逮捕・拘留される事案が発生しました。KRG当局は,国境地帯等においてISIL(いわゆる「イスラム国」)との戦闘が行われていることを踏まえ,トルコ・イラク国境を通り外国人がISILの支配地域へ渡航することに対する警戒を強化しており,こうした点が,今回の逮捕・拘留に至った理由に挙げられています。》
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo.asp?id={%countrycd%}&infocode=2015C037

イラクの北部にはクルド人自治政府(KRG)があり、イラクのなかでは最も安定した地域だ。その首都のエルビルは、石油バブルに沸く、別世界である。
このクルディスタンには、日本外務省の退避を勧告します渡航は延期してください」、「渡航の延期をお勧めします」、「渡航の是非を検討してください」の三つのカテゴリーが並存している。
エルビルにはNGOの事務所も多く、外国人ジャーナリストやビジネスマンが訪れる。ここは、比較的安全度の高い街である。
このところのメディアへの締め付けを見ると、今回の外務省の注意喚起は、そのクルド自治区でさえも危ないから入るなとジャーナリストに向けた圧力ではないかと疑ってしまう。
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2〜3日前、ある大新聞の記者から電話インタビューされた。
「フリーのジャーナリストは、なんで危ないところへ行くんですか」。
「それは君たちが行かないからだよ」と答えると、記者はきょとんとした声で、「え?どういうことですか」。
そこで、1991年、長崎県雲仙普賢岳の取材で43人もの犠牲者が出て以降、大きなメディア企業は、社員を危険地に送らないようになった歴史をレクチャーした。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20111022

「君たち大企業のジャーナリストが行かなくなったから、フリーが行くようになったんだよ」と言うと、興味深そうにメモを取ったあと、こう尋ねてきた。

「じゃあ、そもそも危険地にジャーナリストが行く意味は何ですか?」
(つづく)