常岡さんの拘束理由はISメンバーの疑惑

いくつかのニュースを総合すると、常岡浩介さんを拘束したのはKRG(クルド自治政府)の治安部隊であることが確実になった。外務省は「イラク日本大使館を通じて早期の面会を要望するとともに、適切な取り扱いを求めた」と説明。けがはしていないという。

【モスル奪還作戦を取材中の常岡さん(26日】》
クルド自治政府の主都エルビルには米国企業の駐在員が多く滞在し、日本大使館の連絡事務所もある。常岡さんは、それなりの手続きを経ていずれ解放される可能性が高い。

 夜になって複数の友人から「近く解放されそうでよかったですね」とメールが届いた。現地紙の報道を日本の通信社が伝えてきたのだった。
《【カイロ共同】イラク北部クルド人自治区のメディア「ルダウ」は1日、取材中に拘束された日本のフリージャーナリスト常岡浩介さん(47)が、自治区内の在イラク日本大使館アルビル連絡事務所に引き渡される見通しだと報じた。クルド当局筋の話としている。
報道によると、常岡さんはクルドの治安部隊に拘束された。同筋は、常岡さんが過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点シリア東部ラッカに滞在したことがあると述べ「ISのメンバーではないかと疑われている」と語った。》

 たしかにそう書いてある。このメディアは政府系とされ、しかるべき情報源からの話を材料にしているのだろう。しかし、「すぐに」解放されるとは書いていない。記事の中心は常岡さんが「イスラム国」のメンバーだとの疑惑を持たれていることにある。
http://rudaw.net/mobile/english/kurdistan/011120161

 「当局筋によれば、彼(常岡さん)はイスラム教徒に改宗しており、チェチェン人のIS戦闘員と密接なコンタクトがあり、シリアのISの首都ラッカに滞在したこともある」と記事は書く。
 常岡さんはシリアの「イスラム国」の支配地に入って取材した世界でも数少ないジャーナリストであり、今回、彼が拘束されたと分かったとき、拘束の理由は「イスラム国」との関係が疑われたことしかないと思った。
 常岡さんは若い頃、チェチェン独立派の部隊への従軍取材をしており、その後もチェチェン人独立派活動家とは太いパイプがあった。今年9月には、常岡さんが、チャターエフというチェチェン人の「イスラム国」幹部をウィーンの自宅まで追跡する「トルコ空港テロ事件の首謀者を追え!」というかなりオタクな番組を私がプロデュースしている。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20160909   
 実際は、常岡さんは「イスラム国」をイスラム教の教えに反するとんでもない輩だと非難しておりシンパでもなんでもないのだが、どうやら、クルド治安部隊は彼の過去の細かいことまで調べ上げて疑惑を深めているようだ。
 クルド自治政府と住民にとって「イスラム国」は、不倶戴天の敵であり、いま総攻撃をかけている相手だ。もし「イスラム国」への内通者だと疑われれば、クルド人イラク人なら処刑されてもおかしくないだろう。「すぐに」解放されるかどうかは未知数だ。
 ここまでの事態になれば、もう外交的な交渉で身柄を取り戻してもらうしかない。

 我々にやれることはないかな。常岡さんがテレビに出た番組を、タイトルを英文にし Tsuneokaの名前を入れて Youtubeに上げれば、クルドの治安部隊の眼にとまり、「常岡はたしかにジャーナリストのようだ」との心証を作るのに役立つかもしれない。
 とにかくも早い解放を祈る。