きのう天安門近くで車が突っ込み炎上、5人が死亡した事件。
写真は私がいた1週間前(22日)の天安門広場。広場に入るには身体検査を受けなければならない。検査の列に並んでいるときにアイフォンで写真を撮ろうとしたら、そばに直立不動で立っている兵士に、検査を終えるまでは写真をとるなと制止され、その警備ぶりにあきれた。
事件には、少数民族であるウイグル族が関与しているようだ。
チベット族とならんで激しく迫害されている民族で、この事件を口実に、当局が一段と弾圧を強めるのではと懸念している。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20130705
報道ステーションでは、来日した際のラビア・カーディル氏(亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」の総裁)のインタビューを流していた。ウイグル族への抑圧と民族消滅の危機を訴えている。ノーベル平和賞候補にもなっているそうだ。
この画面を見ながら、かつて日本のテレビは、中国当局の恫喝を怖れてダライ・ラマ法王を出すのも自粛していた時代があったなあ、とちょっと感慨に浸った。
20年前、他ならぬ私が、チベット問題がタブーであることを体験した。亡命チベット人コミュニティをインドで2週間取材したあげく、放送されずにお蔵入りになったのだ。
だが、このおかげで、ダライ・ラマ法王と直に会って1時間以上サシで話せたし、「カーラチャクラ灌頂」を受け、人生が変わったのだから、運命とは面白いものだ。
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北京を案内してくれたR君。
日本ではなぜ落とした財布が戻ってくるのか。いろいろ考えた。
「日本では、法律で、落し物を届けないと犯罪になることがわかったんです!」
刑法254条 「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」
だから日本人は落し物を届けるのだとR君は結論づけた。
私たち日本人(3人)はそれを聞いて、「いや、そういうもんじゃない。法律なんか意識してないよ」と思うのだが、R君は真剣である。
そして、友人らと中国を変えるには、しっかりした法律が大事だと議論しあったという。
「中国では前は飲酒運転は普通のことだったんです。でも、厳罰を科す法律ができてから、みな酒を飲んだら車に乗らなくなってタクシーで帰るようになった。数年で、これが常識として根づいたんです」
この議論がどこまで妥当性があるかはともかく、私は、R君とその友人たちの、この国を良くしよう、他国の経験に学ぼうという姿勢に感銘を受けた。
そして、R君はこうも言った。
「みなさんは当たり前すぎて気がつかないかもしれませんが、日本の国籍を持っていることを感謝すべきだと思いますよ。」
R君はガイドとして日本人旅行者を連れて中国各地を訪れているが、どこに行っても「日本人」とわかると、住民やスタッフの態度が好意的に変わるという。
そういえば、天安門広場の検査でも、前の外国人がカメラなどを細かく調べられているのを見て、こっちは複数のビデオカメラからワイヤレスマイクまであるので心配していたのだが、R君が「日本人」と言ったら検査なしで通してくれた。
「礼儀正しく、なんでもきちんとする日本人という評判が確立しているから、日本人だと言っただけで、どこでも歓迎されるんです」
そうなのか。私たちの先達に感謝しなくては。
若いR君の見識に感心させられた。
「観光バスの会社は、日本人のツアーだと値引きするところが多いんです。日本人を乗せたあとは、きれいでゴミも落ちていないから掃除しなくて済みます。つまりバスの回転率を上げられるんです」
R君の業界の話だけに説得力がある。
(つづく)