ウルムチ虐殺事件4周年

takase222013-07-05

先月末からウイグルで大きな民族間の衝突が続いている。
中国メディアによると、26日、新彊ウイグル自治区武装グループが地元の警察などを襲撃し35人が死亡。また28日には100人以上の「暴徒」がナイフなどを持って警察施設を襲撃しようとして警官隊と衝突したという。その後も衝突が続いているようだ。
ちょうど、亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル総裁が来日した直後のことだった。「ウイグルの母」と呼ばれる彼女の講演のチケットをいただいていたこともあり、ぜひ聞きたいと思っていたのだが、急に抜けられない仕事が入って残念ながら参加できなかった。
(写真はダライラマ法王とラビア・カーディル氏)
ラビア・カーディル氏は事件直前の20日、東京都内で記者会見し、習近平国家主席の就任後、「中国政府の民族政策は以前より厳しくなった」と批判していた。
《記者会見でカーディル氏は、警察や特殊部隊が多くのウイグル人をテロ対策の名の下に殺害する一方で、漢民族自治区内に大勢移住させるなど、ウイグル人の弾圧を進めているとして、厳しく批判した。》(朝日新聞
すでに数年前、漢民族が人口でウイグル族を上回ったという。この中共の手口はチベットでやっているのと同じである。
中共による民族弾圧の実態は徹底して秘されているからよく分からないが、『チベットの秘密』を読む限り、アメリカの黒人差別や日本の在日差別のような普通の市民社会での差別ではなく、党組織が主導する不満分子の徹底的抹殺と漢民族以外のものの権力からの排除であって、義憤を抑えられなかった。
きょう5日は、ウルムチ虐殺事件4周年だ。
《2009年の暴動で約200人が死亡した中心都市・ウルムチ市内には5日、人民解放軍の装甲車が配備され、武装した警察官が不審な動きに目を光らせていた。市内のショッピングモールでは、警察官が暴徒を鎮圧する演習を行うなど、街は緊迫している。》(NTV)
どうなったのだろうか。
ウイグルでは40数回も核実験を行っているが、この影響なども全く外に情報が出てこない。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090918

残念なのは、チベットウイグルなど中国の民族弾圧となると、いわゆる人権派といわれる「進歩的な」人々が全くと言っていいほど関心を持たないことだ。
ミャンマーはじめ他の国々の人権弾圧では、さかんに非難を浴びせるのに、相手が北朝鮮や中国になるととたんに沈黙してしまうのだ。
以前から人権の政治的「棲み分け」として批判している問題である。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20071103
この事態を「赤旗」はこう書いている。
《2009年7月に新疆ウイグル自治区の区都ウルムチウイグル族と漢族が衝突し、197人(当局発表)が死亡した大規模騒乱から5日で4年になります。同自治区では6月末に、死者も出た暴動が相次ぎ、中国共産党・政府指導部は対応に追われています。 同自治区トルファン地区ピチャン県で6月26日発生した暴動では、ウイグル族16人、警官2人を含む24人が犠牲となり、警察は派出所などを襲撃した「暴徒」11人を射殺しました。
 28日には、ホータンでも群衆による騒動が発生。4月には、カシュガル地区マラルベシ県で警官と暴徒が衝突し、計21人が死亡する事件も起きています。
 こうした事態を受け、習近平国家主席は28日夜、党政治局常務委員会を開き、ウイグル自治区の安定を維持するよう強調しました。
 29日にはウルムチ武装警察を集めた大会が開かれ、司法・公安を統括する党中央政法委員会の孟建柱書記が24時間体制で警備にあたるよう指示しました。中国共産党機関紙・人民日報は連日1面でウイグル自治区の安定を守るよう訴えています。
 一連の事件の背景には、ウイグル族と漢族との間の経済格差や中国政府の少数民族政策などに対する住民の不満、それにつけこんだ「独立」をめざす一部の活動があるといわれています。
 中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)副報道局長は7月1日の記者会見で、「中国政府の民族・宗教政策は、中国の国情と新疆の状況に合致しており、各民族の支持を受けている」とアピール。ウイグル自治区の問題は「中国の核心的利益」であり、「民族分裂主義に断固反対する」と強調しました。》
「暴徒」とか「それにつけこんだ「独立」をめざす一部の活動」とか、中共の主張を垂れ流し。北朝鮮の人権弾圧を非難することを「内政干渉」だという論理で拒否した体質はそのままだ。
日本共産党は正論を言うのだが、国民に根本的なところで信頼されないのは、こういうところからきている。