11月7日は、いまではすっかり忘れられているが、ロシア革命記念日だ。
1944年のこの日、リヒャルト・ゾルゲと尾崎秀実(ほつみ)が絞首刑になった。
写真は、多摩霊園の尾崎の墓。ゾルゲの墓もここにある。今年も恒例の「ゾルゲ・尾崎墓前祭」が行われ、取材してきた。
この霊園には、左翼闘士の墓も多く、戦後共産党のカリスマ的リーダー徳田球一、右翼青年に刺殺された浅沼稲次郎、「中共謀報団」事件の中西功などの墓も見ることができた。
戦後史をちょっと勉強しているのだが、この話はまたいずれ。
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先週土曜の「新週刊フジテレビ批評」のクリティークトークは「天安門突入事件の真相とメディアの課題」で、中国問題に切り込んだ。
ゲストは水谷尚子氏。中国問題ではユニークな人選。あまりテレビには出ない人である。
http://www.fujitv.co.jp/newhihyo/index.html
亡命ウイグル人の聞き取り調査をまとめた『中国を追われたウイグル人』でアジア・太平洋賞特別賞受賞。『「反日」解剖―歪んだ中国の「愛国」』や『「反日」以前―中国対日工作者たちの回想』などの著作がある。
水谷氏、まず、ウイグルの基本情報をレクチャー。以下、水谷氏の説明。(私の記憶による)
新疆ウイグル自治区は、日本の面積の4倍もあって、8つの国!(インド、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、キルギスタン、カザフスタン、ロシア、モンゴル)と接し、地政学的に重要なうえ、資源も多い。
およそ1000万人いるウイグル人はトルコ系のイスラム教徒で、漢人とは言葉も文化も全く異なる民族であり、漢文化の勢力化に入ったのは18世紀に清朝に征服されてからで日があさい。
次に、ウイグル人夫婦とその母親の3人が、ベンツで天安門に突入した10月28日の事件概要と当局による事件処理を解説。
水谷氏は、「テロ」のレッテル貼りによる処理は、民族抑圧だとバッサリ切り捨てた。
事件3日後の31日になって、中国共産党の公安・司法部門のトップ、孟建柱が、ETIM(東トルキスタン・イスラム運動)の仕業だとメディアのぶらさがりで語ってから事件はテロだということになった。
ETIMは、米国、中国、国連から「テロ組織」とみなされているが、2003年にリーダーがパキスタンで殺害され、事実上消滅している。
70歳の母親と突っ込むテロリストなどいるのか。同じ28日には、四川省南充市で、漢人の男が小型バスで警察と裁判所の敷地に突っ込み、5台の警察車両に衝突した事件が起きている。
7月には、北京国際空港で車いすの男(漢人)が爆発物を爆発させた。警察官にひどい暴行を受けたことへの個人的抗議行動だった。
中国では暴力的な抗議行動がいろいろ起きているが、こういう事件を、当局はテロとは呼んでいない。つい先日の6日には、山西省の共産党のビル近くで爆発が起きて死傷者を出したが、こんなのは「テロ事件」ではないのか。
当局は、今回の事件だけを「テロ」と呼んで、ウイグル人への弾圧を正当化しようとしている。
11月2日には、海外メディアの取材に応じた北京在住のウイグル人教授のイリハム・トフティ氏の運転する車(妻、3歳と7歳の子供も乗っていた)に公安警察の車が故意に追突し、取材を受けるなと脅迫するなど、実際に弾圧が広がる気配がある。
そもそもウイグルの抗議行動は以前は「反革命暴動」「国家分裂主義策動」と呼んでいた。「テロ」と呼び始めたのは、米国の9.11以降で、ウイグル人弾圧を米国にも認めさせようという意図がある。
最後に水谷氏は、日本のメディアが中国当局の発表に乗っかった報道になりがちであることを批判した。
今回の事件の「犯人」とされる3人の名前すら、ウイグルの発音ではなく、漢字からの音を使用しているという。
メディアへのアドバイスを求められて、水谷氏、「(事件が起きたら)言葉ができる人をすぐに捕まえられる態勢をとる」、「分からない事は聞けばいい」と答えた。日本のメディアによるウイグル関連報道は、水谷氏からみると、よほど低レベルらしい。
この日のコメンテーターはジャーナリストの江川紹子氏。
ウイグルの問題は、チベットと同じようなものだろうが、チベットにはダライ・ラマ法王という象徴的な人がいて、世界に知られている。その点、ウイグルは、我々の知らないうちに問題が進行しているのではないか、とソツなくまとめていた。
このコーナーでは、天安門突入事件をめぐる問題が、通常のテレビニュースや新聞記事とは違った角度から整理され、視聴者も勉強になったと思う。
視聴者が「観て得をした感じ」を持てる番組だった。