韓国の支援を拒否した北朝鮮

今年、北朝鮮民衆の生活は極めて厳しく、黄海道(ファンへド)で多くの餓死者が出る事態にあることは、今年5月くらいから少しづつ情報が出ていた。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120530-00000001-asiap-int
この黄海道を8月の台風15号が直撃した。「平壌は明るく、物資も豊富で見違えるようだった」という訪朝報告がよくメディアに流れるが、黄海道は地獄の様相になっているようだ。
それなのに、北朝鮮は、韓国政府の水害復旧支援物資の受け取りを拒否した。
《韓国統一省当局者によると、韓国は11日に小麦粉1万トンやラーメン300万食、医薬品などの提供を打診。これに北朝鮮は「そのような支援は必要ない」と表明した。特に物資の品目に韓国側が北朝鮮側の「意思を尊重していない」との不満を示した。
 朝鮮中央通信によると、北朝鮮の朝鮮赤十字会の報道官は12日、支援にコメやセメントが含まれていないことに不満を表明。「(李明博政権は)人道主義精神を愚弄している。幻滅を感じた」と訴えた。
 韓国が提示した支援規模は100億ウォン(約6億9千万円)相当。統一省当局者は「北朝鮮が望む品目について協議できると北朝鮮に伝えていた」と述べ、拒否されたことは「残念で遺憾だ」と話した。》(共同)
もらえるものならもらっておけばいいのに、これが世界中が振り回されてきた北朝鮮の外交だ。いま、遺骨収集をきっかけに北朝鮮との拉致問題交渉の進展をと期待が高まっているが、この北朝鮮外交に惑わされないようにしてほしい。
北朝鮮全体主義体制は、飢えた人民を救おうなどとは、これっぽっちも考えていない。90年代後半、300万人もの餓死者を出しながら、同時に、莫大な金と人材をつぎ込んで核・ミサイル開発を急ピッチで進めていたのだ。人民の命より核保有が優先されるのだ。
人民が困っているということと、北朝鮮指導部が困っていることは別のこと。飢餓が外交に影響するのは、それが体制の支配にかかわる限りにおいてである。
向こうは困っているから下手に出てくるはず、とか、こちらが善意を示せば向こうも譲歩するはず、という「常識」は全く通じない。
交渉も何も始まっていない上、そもそも拉致を議題にすることを約束していない北朝鮮に対して、日本がいま課している制裁を先に解除するなどということは決してしないように。