石丸次郎をテレビに出すな!3

takase222013-12-26

会社の近く、まだ落ちていないイチョウの葉の黄とそばのシロカシの緑が陽に映えて美しい。
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情熱大陸」で、石丸さんが連日、何人もの北朝鮮の住民からの電話音声を入手しているのを見ておどろいた人も多いだろう。
こんなことができるのは、彼しかいない。電話はたいてい深夜かかってくるというが、幸運にも、我々は取材中、しかもカメラが回っている前で、2回も音声ゲットの場面に遭遇した。いずれも北朝鮮から中国人の協力者にかかってきた電話音声だった。その録音ファイルはすぐに石丸さんに送られてくる。石丸さんが「パートナー」と呼ぶ情報収集者は10人いて、それぞれが石丸さんにつながるルートは別だ。中国や韓国を経由するルートもあれば、大阪に直接に電話がかかってくることもある。
電話による状況報告は、張成沢粛清のニュースのあと、2日に1回という頻度で入ってきたという。
それを石丸さんはツイッターに刻々と書き込んでいる。
きょう(26日)はこんなツイートが;
《ああやっぱり!なのですが、凄まじい張派の人々に対する粛清が進行中。特に国防委傘下の外貨稼ぎ組織54局(張氏の対外金儲けの拠点だつた)の幹部と家族は、皆殺しにされるんではないかという勢い。中国のオフィスには代わりの人間が平壌から送り込まれていますが、中国企業とトラブル続出みたい。》http://twitter.com/ishimarujiro/status/416163991216328704
さらに:
《今秋の北朝鮮農業の作況はまずまずだったのですが、早くも軍隊が、農場に出向いてがばちょと収穫物の徴発始めているもよう。3月ぐらいから、2012年黄海道飢饉のような事態になるかもしれません。》http://twitter.com/ishimarujiro/status/416165168591020032
石丸さんもまた、食糧の絶対量が問題ではない、食糧はあるのに飢餓がおきているという見方で、全面的に同意する。
12月14日のブログにも書いたように、通常の軍隊のための供出に加えて、金正恩体制になってからは、首都・平壌を「改造」するための穀物の強制徴発が行われた。その結果、黄海道(ファンヘド)という穀倉地帯で餓死者が相次ぎ「人肉食」までが報告されている。
北朝鮮は、金正恩体制になって、人民は豊かでたのしい暮しをしていると内外に印象づけることにやっきになっている。平壌に遊園地ができた、高層アパートが次々に建っていると、むこうが見せたものを無批判にそのまま報じることは、北朝鮮のメディア戦略に乗っかっていることになる。
北朝鮮では、外国人とくにメディアが訪問したときには、外国人の目につくところに決められた人を「配置」するというのは広く知られている。インタビューに応じる市民もきまっており、どんな答えを言えばよいかも指示される。本当の「庶民の声」など期待できない。石丸さんは3回北朝鮮を訪問したが、結果、外国人が入っても何も取材できないことを痛感し、北の国民が中でひそかに取材し、それを外部が支えるというプロジェクトに行き着いた。パートナーを通じてえられる庶民の生の声は非常に貴重だ。
「石丸次郎を出すな!」という圧力にどう対応するか。これは、メディアが北朝鮮のような全体主義国家の実像をどう描くかという方法論にも関わってくる。
(つづく)