くじらから世界が見える 1

takase222012-06-12

9日に石巻市の「浜のかあさんと語ろう会」に行って鯨を食べた話を書いたが、漁業の町、石巻とクジラは縁がある。
石巻市鮎川は、かつて捕鯨基地として栄えた町で、夏は鯨祭りで盛り上がり、「おしかホエールランド」という捕鯨の歴史とクジラ文化を展示する施設もある。(大震災で休館中だが)
今でも鯨肉の消費量が非常に多いそうで、赤肉にかぎると日本一らしい。ネットでみると石巻鯨カレーという名物もある。
捕鯨については国際的にもめており、日本にもいろんな意見がある。
鯨は絶滅に瀕した野生動物で全面的に保護されるべきだという意見から、一部の鯨の個体数は増えすぎており、海の資源管理上からも商業捕鯨を再開したほうがよいという考え方もある。その両極の間に、インド洋と南極海を除く海域と沿岸捕鯨なら許容する、また先住民の伝統捕鯨や調査捕鯨はOKなどの意見がある。
「浜のかあさんと語ろう会」を主催するWFF(ウーマンズフォーラム魚)は、子どもたちにクジラを食べる機会を作ったり、クジラとの関係を考えさせる活動を続けている。小さいNGOなのだが自力で「クジラから世界が見える」という絵本も出した。外国人にも読んでもらいたいと英語版も作った。http://www.wff.gr.jp/camp.html
WFF代表は白石ユリ子さんという方で、写真は絵本の英語版をIWC(国際捕鯨委員会)の議長に贈呈したときのもの。
11年度から、この文章が、小学校5年の国語の教科書に載っている。捕鯨については賛否あろうが、クジラについてよくわかる文章なので紹介したい。

くじらから世界が見える  白石(しらいし)ユリ子
 みなさんは、「ホエール・ウォッチング」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
 ホエール・ウォッチングとは、おびれを海面からおどらせ、ごう快にしおをふくくじらのすがたなどを、船に乗って見物することです。テレビなどで見たことがあるでしょう。
 今は、「くじら」という言葉から、このホエール・ウォッチングを頭にうかべる人が多いと思いますが、今から三十年くらい前までは、くじらは、わたしたちの大切な食べ物でした。
 日本は海に囲まれた島国で、漁業によって成り立っている町も多く、くじらがやってくる地域では、昔からくじらをとっていました。くじらが一頭とれると七つの村がにぎわうといわれ、くじらに感謝する祭りや、くじらにいのりをささげた「鯨塚(くじらづか)」などが残っています。
 そして、くじらとゆかりの深い地域では、現在もくじらは大切な食べ物です。

 今から百年くらい前、くじらの油は今の石油と同じ役割を果たしていました。石油がまだ十分に開発されていなかったので、油を大量にもっている大型のくじら、シロナガスクジラナガスクジラが必要とされました。世界のいろいろな国がくじらの油を使ったため、大型のくじらは、みるみるうちに減ってしまいました。
 そのことに不安をもった各国の人たちは、一九四八年に国際捕鯨委員会(IWC)をつくり、ここで決めたことを国際的なルールにしようとしました。
 一九八二年にIWCの人たちは、「このままでは、くじらが絶滅しそうだ」と心配し、しばらくの間大型のくじらをとることをやめようと決めました。しかし、全部のくじらが減っているわけではないし、どのくらいくじらがいるのかも分かっていたわけではありませんでした。その後、日本が調査をした結果、増えているくじらもいるということが分かりました。
 くじらは八十種類もいるので、すべてのくじらが減ってしまっているという状態ではありません。増えているものとしては、ミンククジラ、マッコウクジラ、ニタリクジラなどがいます。逆に、いちばん大きなシロナガスクジラは、以前に多くとられたので数が少なく、また二〜三年に一度しか子どもを産まないので、なかなか増えないでいます。
 海に近い地域で、大昔からくじらを食べ、くじらと共に生きてきた国の人たちは、くじらが増えているなら、毎年少しだけとってもいいと考えています。しかし、くじらをとることに反対の人もいます。(つづく)