金正恩体制は東アジアの危険要因

北朝鮮が、韓国の延坪島ヨンピョンド)に砲撃を加えたのを、後継者、金正恩が「砲術の天才」と喧伝されていたことに関連付ける見方がある。
北朝鮮は、「人工衛星発射に成功して衛星は今も地球を回っている」などととんでもないウソを平気でつく一方、後になって振り返ると、あれは「予告」だったのかもしれないと思うような言葉を残していたりする。
1988年のソウルオリンピックを妨害するため、北朝鮮はこんな宣伝をしていた。
朝鮮半島はいつ戦争になるかもしれない休戦状態にある。こうした不安定状態でオリンピック大会を開催するのは危険である」。
そして、オリンピックが迫る87年11月、実際に危険で不安定な状態を作るために、大韓航空機爆破テロを起こしたのだった。
あの国の発する言葉をもっと注意深く聞こうと思った。

砲撃の意図については、まだ分からないことが多いが、10月に私が参加した「北朝鮮の内実を知るための講演会」で、北朝鮮の内部情報を伝えてきた「開かれた北韓」のハ・テギョン(河泰慶)氏は、北朝鮮はこれから危険な挑発を行うだろうと分析していた。
「守る会」の要約から一部紹介する。
《河氏と「開かれた北韓」の独自の分析ですが、金正恩体制に対しては、おそらくどのように宣伝しても民心がすでについていかないだろう、また、金正日金正恩の間に今後対立が起きる可能性がある。そして、仮に金正恩が完全に権力を完全に掌握した場合でも、(略)金正恩と軍との関係は緊張関係に向かうのではないかと述べました。
(略)金正日は一応1974年、正式の会議の場で公的に後継者となったが、今回は金正恩は一家と側近の間でのみ決定がなされた。そして、金正日が後継者となったときには一応まだ労働党が機能していたけれど、現在は先軍政治であり、しかも金正恩は軍にも事実上一切服務していないと、この後継者決定の脆弱さを指摘しました。
(略)河氏はここ1,2年の間にさらに権力移譲が進むだろうと述べ、その中で、労働党内の粛清は激化していくだろうと指摘しました。さらに河氏は、すでに幹部の一人李済剛が不信死を遂げており、しかもいつもは葬儀委員会も作られて盛大に送られるのに、今回はまともな葬儀もなかった模様で、しかも情報によれば、党の弔問すら行われなかったらしいと、独裁政権の継承時には必ずおきる粛清の一例を紹介しました。
そして、河氏は金正日の生命は様々な専門家の語るところでももって3年くらいであり、だからこそ権力移譲を急いでいるのだろうが、これまでの金正恩の「業績」とされているものは、実はほとんど失敗した政策だと指摘。2009年4月からの「150日戦闘」とされる国民を総動員しての生産増強も、目標の50パーセント以下の達成に終わった。同年11月の貨幣改革もご存知のように大失敗で、経済の大混乱を招き、幹部ハン・ナンギに責任をかぶせて終わった。(略)
しかし、ここで河氏は、軍事面では決して侮ってはいけないと警告し、特に今年3月の天安艦撃沈事件などは成功した、金正恩は今後ますます、経済を無視しても軍事的な行動を強めるだろう、金正恩は自らの権力を力で維持することにのみ関心が向いているだろうから、決して平和路線や改革開放には向かわない、それはかの体制そのものの自滅につながるからだと述べました。そして、現在、公開銃殺が急激に増加しており、その罪状の多くが、外国のビデオや情報を国内に不法に持ち込んだとされる人々が犠牲になっている。
こうして、外部から真実が伝わるのを徹底的に取り締まると共に、第二の深化組事件というべき(金日成死後、多大の粛清がなされた事件)粛清が発生するだろうし、同時に、金正恩は外部に敵を作ることによって権力を正当化し強めようとするだろう、今後5年から10年にわたって、このままでは東アジアの緊張が高まり、金正恩体制は東アジアの平和のための重大な危険要因となる危険性があると述べて報告を終えました》
http://hrnk.trycomp.net/news.php?eid=00389
北朝鮮の現在の権力移行は非常に激しい矛盾をはらみつつ進行しているとの見立てだ。体制のほころびに注目したい。