とんでもございません2

takase222009-07-13

 ヒメジョオンは漢字では「姫女苑」となまめかしい。
 これと似ているのが春に咲くハルジョオンhttp://d.hatena.ne.jp/takase22/20080509、いずれも都会でもっとも目に付く雑草だ。映画「蝉しぐれ」に時代的にありえないハルジョオンヒメジョオンが出ていたというマニアの記事を読んだことがある。ハルジョオンが広まったのは戦後だという。ヒメジョオンは幕末に日本に入ってきたから、どちらにしても江戸時代に登場するはずがない。植物を含めて時代考証をやると、映画撮影は非常に難しくなるだろう。
 たとえば、関ヶ原の合戦の映画で、背景の原っぱからセイタカアワダチソウを省くのは無理だろう。
 藤沢周平に『漆(うるし)の実のみのる国』という小説がある。舞台は米沢藩で主人公は上杉鷹山と執政たちだ。
 私の苗字は高世だが、上杉家と運命をともにした一族だったという。高世という苗字は、かつて会津(今の福島県)にあった集落の名前だ。そこに住んでいた漆職人の集団が、直江兼続米沢藩を受領したときか、その後の上杉家の会津から米沢への移封のときに付き従って移り住んだ。上杉家は殖産のため、商品作物を奨励したが、漆はその中でも特に重視された。ちなみに私の育った村は「漆山」という。山に入るときには、漆にかぶれないようにしろと大人たちに注意されたものだ。
 漆については、とても面白い話がたくさんあるので、いつか紹介しよう。
 この小説、上杉藩の話で「漆」も登場するとなれば読まないわけにはいかない。
 そこに、国家老が鷹山の前の藩主、上杉重定に対して「とんでもござりません」と言うシーンが出てきたのである。気になって頁の隅を折っておいた。藤沢周平も使うくらいに普及してしまったということなのだろう。
 言葉はコミュニケーションの手段だ。とすれば、多くの人たちが理解しあえる表現が生き残っていくわけで、結局は多数決で決まるということになる。
 そういえば、私も若いころは「食べれる」「食べれない」という言い方は間違っていると強く抵抗していたのだが、今では普通に使っている。
 「とんでもございません」という表現が広まっていくのも「仕方ございません」。