クラスター爆弾禁止ですばやい対応

このところ毎晩午前様でブログの時間が取れない。きょうは今週のニュースから。
15日の朝刊で毎日新聞が《クラスター爆弾:禁止条約批准 日本、G8で2番目 「全面廃棄」へ課題》という見出しの記事を出した。東京版では一面。さすがクラスター爆弾廃止問題をダントツの熱心さでフォローしている毎日新聞である。
《日本政府が14日、「クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)」の批准書を米ニューヨークの国連本部に寄託した。世界で14番目、主要国(G8)で2番目の批准国となり、批准の「先頭集団」に入った。日本は条約の検討段階で消極的だったが、早い批准で積極姿勢を世界に印象付けることに成功した。》
国際刑事裁判所ローマ規程の締約では世界105番目だった。日本政府派は何かというと「国際協調」といいながらアメリカの顔色をうかがって、世界の趨勢に遅れてきたことを思えば、今回は実にすばやい。これは評価していいだろう。
対人地雷禁止条約の際には批准は45カ国目と出遅れた。
オスロ条約では積極的な姿勢を見せるため、発効要件「30カ国」以内の批准を目指し、14番目という「スピード批准」を実現した》という。
毎日の見出しにあるように《対米追従一辺倒に一石》という姿勢は評価できる。《米国が難色を示し続けてきた「クラスター爆弾禁止条約」を日本が早い段階で積極的に批准したことは「対米追従」と批判されがちな日本の「平和外交」に新たな展開をもたらす契機となりうる。》
アメリカはこの条約に背を向けたままだからだ。
さあここで課題が出てくる。
オスロ条約では、米国など条約非加盟国への協力が可能と規定している。批准案の国会審議では在日米軍から依頼された場合、自衛隊が米軍所有の同爆弾を運搬できる点に批判が集中した。
 外務省関係者によると、対人地雷禁止条約の検討段階では、故小渕恵三外相の指揮で地雷に関する米軍との協力の余地を排除した。この点に批判があったため、オスロ条約の議論では、対米協力の余地を残すことが前提になったという。
 英国は域内から米国のクラスター爆弾を撤去するよう求めることも検討中との情報もあり、「全面廃棄」に向けた重い宿題が残る。
  米露中などを除くノルウェーなど有志国や非政府組織(NGO)が主導する軍縮交渉「オスロ・プロセス」が進めた禁止条約作りを巡っては、日本は最初に態度を留保するなど「後ろ向き」と批判されてきた。煮え切らない態度の最大の原因は、同爆弾を大量に使ってきた米国が禁止条約に反対し、プロセス参加国に個別に圧力をかけたからだ。
 日本などの主張によって、条約に参加しない国である米国がクラスター爆弾を使用する場合の共同作戦を認める条項が入り、日本は条約に賛成した。米国の顔色をうかがったとも言えるが、禁止条約で同爆弾を使いづらくなる場面が想定されるのは日本ではなく米国だ。特にクラスター爆弾の使用を是としたブッシュ政権に対し結果として異議を唱えた意味は小さくない。》
アメリカや中国、ロシア、イスラエルなど主要なクラスタ保有国が参加しないから意味がないという議論があったが、実際にはクラスター爆弾が使いにくくなっている。アメリカでさえ、今年3月に不発率が1%以上の爆弾の輸出を恒久的に禁止する法律が成立した。着実に世界を動かしているのである。
日本の独自外交というのは、こういう一つ一つの課題で試されていく。
実は、太平洋戦争でアメリカが日本に落とした「焼夷弾」もクラスター爆弾だった。ヒロシマナガサキの原爆だけではなく、クラスター爆弾の被害国としても、日本は廃絶の先頭に立ってよいのである。