アジア人権人道学会がスタート

takase222009-05-09

きょう、明治大学で「アジア人権人道学会」の設立大会があり、その報告会を聞きに行った。http://d.hatena.ne.jp/asiajj/
去年12月14日の6団体合同集会が学会の設立準備だった。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20081214
基本理念に、「アジア人権人道学会は、21世紀のアジアの人権・人道問題への貢献を通じ、我が国の名誉ある地位を守ることを目指すものである」とある。これは、おそらく、憲法前文のこの箇所を意識した文章だろう。
《われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。》
単に「戦争がないこと」が平和なのではない、しっかりと人権の内実が保障されてはじめて真の平和なのだ、と言っていると解釈できる。「専制と闘う平和」なのである。この意味で、学会の目的に共感する。
報告者の一人に国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の東京ディレクターがおり、スリランカの内戦の最終段階で起きている緊急事態のアピールがあった。住民多数を盾にして追い詰められた「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」に対する政府軍の掃討作戦で大量の犠牲者が出ているという。すぐに、政府軍の攻撃をやめさせないといけないのだが、日本は最大の援助国なのに強いアクションを取ろうとしないと政府の姿勢を鋭く批判した。これはミャンマーについても同じ構図だ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は先月、東京にオフィスを開いたばかりで、アジアの人権状況のモニター、日本政府への啓蒙、ロビー活動などで期待されているという。
ミャンマーからの亡命者も登壇した。写真はカチン族女性マリップ・センブさん。報告会の会場には、カチン、カレン、チン、シャン、ラカインなどのミャンマー少数民族が来ていたが、ビルマ族は一人もいなかった。ミャンマー民主化闘争が、民族間の反目を克服しきれていないという厳しい現実に改めて気づかされた。
ところで、この学会のユニークなところは、創立会員に護憲派改憲派もいて、それが全く違和感を感じさせないことだ。人権が政治的に利用されてはならないと考えている人びとだからだ。「民主的」と見られていた法律家団体(人権といえばすぐに飛んでくる人たちだ)が、ながく、北朝鮮による拉致を否定・無視してきたことに抗議した弁護士も創立メンバーにいる。
護憲派陣営には、北朝鮮の人権を問題にすることが、何かタブーのように思う傾向がまだあるらしい。きょうの報告会では、5月3日に日比谷公会堂で開かれた護憲集会についても触れられた。ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英京都産業大教授がゲストスピーカーになったことがニュースになった集会である。http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090504k0000m040050000c.html
この集会では、生活保護や介護、生存権などさまざまなことが論じられたが、どの論者からも、北朝鮮の拉致や強制収容所はもちろん、核やミサイルという単語すら全く出てこなかったという。憲法を論じる上で、これらの要素ははずせないはずだが・・・。
いま世界で起きている事態を具体的に見ていけば、護憲派改憲派、左派・右派などの立場には関係なく、人権を旗印に行動できるはずである。