人権と安全保障

takase222010-05-15

きょう、明治大学リバティタワーで「アジア人権人道学会 第二回大会」が開かれた。テーマは「脱北とは何か」。
姜哲煥(カンチョルファン、思春期に北朝鮮政治犯収容所に10年間入れられた)、野口孝行脱北者支援活動中、中国で逮捕され、懲役8箇月の刑を受けた)、海老原智治(タイ人拉致被害者救援に取り組む)、加藤博(北朝鮮難民救援基金代表)の各氏の報告のあと、荒木和博(特定失踪者問題調査会代表)、西岡力救う会会長)、三浦小太郎(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表)のパネル報告があった。(写真は左から荒木、西岡、三浦)
どれも勉強になったのだが、三浦さんが人権と安全保障の関係を指摘し、普天間の問題にまで話が及んだ。とても大事なことを指摘している。左派・右派を超えて共感できる内容だと思う。
趣旨は、今日付けの「守る会」のサイトに載った三浦さんのコラムに書いてある。これを以下に紹介したい。http://hrnk.trycomp.net/

 3月末に、北朝鮮との境界線の近くで46名の乗組員が死亡・行方不明になった韓国哨戒艦沈没事件で、英、米、豪、スウェーデンも加わった国際軍民合同調査団が「魚雷による沈没」と結論づけたが、三浦さんはここから説き起こす。

《今日本の政治は、正直なところ国内問題で手一杯です。しかし、現実に東アジアではこのような緊張関係が続いています。今議論になっている沖縄の米軍基地の問題ですが、これは三浦の個人的意見ですが、まことに残念なのは、米軍基地維持はも反対派も、日本を守るための抑止力の是非や、基地周辺の市民の苦境などは語られるのですが、この東アジア、特に独裁国家である中国と北朝鮮に対し、民主主義の価値観からどうアプローチするのか、どのようにかの政権の人権弾圧をやめさせ、同時に中国の軍拡・覇権主義北朝鮮のテロ国家としての本質を変えていくのかという議論はいまひとつ少ないように思います。

もちろん、沖縄市民の方々にそこまで責任を負わせようとは思いません。問題なのは政治家の議論です。中国や北朝鮮が平和で民主主義的な国家となることは、東アジア全体の人権状況の改善にも、また平和なアジアの建設にもつながることであり、同時にそれが実現していくことで米軍基地問題は根本的なところで解決に向かうはずです。

人権問題と安全保障の問題は、しばしば別次元のものと語られがちです。しかし、隣国北朝鮮の独裁体制を黙過し、その国内での人権抑圧を事実上黙認してきたことが、かの国が日本国民を拉致し、また民衆が餓死しても核開発を優先するような危険な国家を作らせてしまったことを、私達は忘れてはならないはずです。

米軍基地に関しては、撤去賛成、また反対、いろいろな意見があることと思います。ただ、少なくとも政治家の方々に私が望むのは、米軍基地の撤去を求める場合も存続を認める場合でも、それを単なる日本の安全保障にとどまらない議論と未来像です。日本の平和も、また、日本国の安全保障も、独裁政権が自国民を殺し続けるのを黙過し、脱北者北朝鮮に送り返されて拷問や強制労働にさらされている現状を黙過したままで維持されるのならば、それは極論を言えば「恥ずべき平和」といわれることになるかもしれません。

鳩山首相にも、また他の閣僚、野党の方々にもお願いしたいのは、アジアに人権と民主主義を広めていく、少なくとも現在の北朝鮮のような体制に対しそれをどう改善していくかのプランと実践です。そのような人権外交が明確に示されてこそ、米軍基地問題に対しても、国際的な理解を得られる解決策が見出せるのではないでしょうか。「東アジア共同体」が、単なる経済共同体ではなく、民主主義と自由の共同体を実現する総合的な外交政策が今日本には求められているはずです》