脱北者の不祥事に思う

私の知っている日本人妻の脱北者が逮捕された。
北朝鮮から脱出して帰国した「日本人妻」が、自らの親族になりすました中国人の男女4人を日本に入国させたとして、大阪府警などは8日、日本人妻の斉藤博子容疑者(67)(東京都板橋区)ら5人を入管難民法違反(不法入国など)容疑で逮捕した。日本人の配偶者や子、孫の入国を認めている入管制度を悪用したもので、脱北帰国者に絡む不法入国の発覚は初めて。
 捜査関係者によると、斉藤容疑者は2000年頃、中国側へ脱北。01年の帰国時から06年までに、「長女」など親族と偽った中国籍の男女4人を不法入国させるなどした疑い。
 斉藤容疑者が昨年、府警に出向き、「不法入国を手助けしてきた」と告白したことから発覚。府警は、不法入国をあっせんする中国人ブローカーの存在が背後にあるとみている。
 日本人妻を巡っては、帰国後も身をひそめて暮らす人が多いが、斉藤容疑者は実名を公表し、北朝鮮に残る日本人妻らの早期帰国実現を訴えていた。》

(2009年3月8日 読売新聞)
斉藤さんは、メディアに顔を出して、今も北朝鮮に残る日本人妻の救出を訴えてきた人だ。こういう事件はとても残念である。去年の末から一部の脱北者の間で噂になっていたのだが、実態がよく分らなかったこともあり、私は報道を控えていた。
きょう、新聞にコメントを求められたので、私はこう答えた。
《この事件の背景には、中国が脱北者を難民として認めないことがある。強制送還を恐れ、中国で逃げ隠れしながら暮らす脱北者は、中国人の援助を必要とする。そこには援助する中国人(ブローカーの場合も多い)が立場の弱い脱北者を利用するという歪んだ関係がつきものだ。今回の事件は、起こるべくして起きたといえる。》
一方、政府は日本に入ってくる脱北者をきちんと調べていない。それは日本定住への受け入れ態勢がないということと表裏一体だ。管理も世話もしないまま、形式的に入国させているだけなのだ。
脱北者の不祥事は、個々人を責めてすむ話ではない。
今回の事件が脱北者支援運動に悪影響を与えないよう願う。