フィンランド・ショック3

「高福祉だと国民が働かずに怠け者になり、国際競争に勝てなくなる」という議論がある。
高福祉で知られる北欧だが、はたして競争力は弱いのか、ふたたび統計で検証していこう。
E.ダボス会議で知られるスイスの経済研究機関『世界経済フォーラム』が10月31日に発表した07年版「経済競争力報告」のトップ10位はこうだ。
1位米国、2位スイス、3位デンマーク、4位スウェーデン、5位ドイツ、6位フィンランド、7位シンガポール、8位日本、9位英国、10位オランダ。
競争力が取り得のアメリカが1位で、日本も8位と健闘している。だが、3、4、6位とトップグループに北欧が入っている。
先端産業ということでIT部門を見てみよう。
F.IT競争力ランキング
以下は、「世界経済フォーラム」が今年3月発表した、122カ国・地域を対象にした、IT(情報技術)分野の競争力を比較した「07年版世界IT報告」だ。
1位デンマーク、2位スウェーデン、3位シンガポール、4位フィンランド、5位スイス、6位オランダ、7位米国、8位アイスランド、9位英国、10位ノルウェー
驚いたことに、アメリカを凌いでいるではないか。ちなみに、日本は14位だった。
《高福祉は競争力をそぐ》という仮説はウソだった。実際は全く逆で、北欧諸国はダントツのトップ集団に位置している。
北欧は、環境政策で世界を牽引し、アフリカなど後進国への援助に熱心であることもよく知られた特長だ。明らかに時代を先取りしているのだ。
人間にたとえると、北欧諸国は、誰にも優しい教養ある人格者のおばさんというイメージだ。「おばさん」にしたのは、政治家や官僚はじめ各方面に女性がたくさん進出しているからだ。そして、おばさんはボランティアの世話役などカネにならない仕事をニコニコしながら快く引き受けてくれる。このおばさん、実は、闘争心ギラギラで大金持ちなのに利己主義のおじさん、アメリカよりも「成功」できるということになる。「正義は勝つ」を地でいくようで気持ちがいい。
最後に日本も関係する衝撃的な統計を一つ。
経済協力開発機構OECD)が先月、加盟国の医療実態を比べた「図表で見る医療(2007年版)」を発表した。
国民1人あたりの年間受診回数(05年、数字は回数)
日本(13.8)、韓国(11.8)、ドイツ(7.0)、OECD平均(6.8)に対してアメリカ(3.8)、スウェーデン(2.8)
日本人は世界一で、平均1年に14回も医者にかかるという。医療費がバカ高いアメリカで、日本より病院に行かないのは頷けるが、スウェーデンのように基本的に医療が無償の国がいっそう少ないことに注目したい。
医療費を安くすると、必要もないのに病院に入り浸りになる、などという俗説は全く通用しないのだ。
なぜ北欧でこんな国づくりができたかについては、おいおい書いていくが、北欧モデルのすごさの一端を分かっていただけたろうか。
いよいよ北欧の時代なのだ。