横田滋代表最後の手紙

いま25日のサンプロ特集を準備しているが、そこでは、北朝鮮テロ支援国家指定解除がいかに理不尽なことか、その一点を訴える。
横田滋さん、早紀江さんは今月はじめ、アメリカの連邦議会の議員あてに手紙を書いた。
北朝鮮テロ支援国家指定解除のためには、大統領は議会の承認を得なくてはならないので、議員へのロビー活動も効果がある。手紙は100名以上の議員に届けられたという。
滋さんは、あさって24日に家族会の代表を正式に辞任することになる。家族会ができたのが1997年だからまる十年だ。長い間、ほんとうにご苦労様でした。私としては、まだ解決できないことに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
この手紙は、滋さんが代表として公に出す最後のものとなる。どこにも出ていないようなので、全文をここに紹介する。感情に訴えながら理性的であり、説得力のある手紙である。

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 平素より、北朝鮮拉致問題に深い御理解と格別の御関心をお持ち下さっていることに心より感謝申し上げます。
 私たちは、北朝鮮によって拉致された13歳の少女、横田めぐみの両親です。
 1977年、今から30年前に、娘は中学校からの下校途中に突然行方不明となり、その後北朝鮮に拉致されたことが判明しましたが、まだ救出できていません。全く理不尽極まりないことです。何故助けられないのか、口惜しくて悲しくてたまりません。
 私達は他の日本人拉致被害者の家族の方々と共に家族会(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)を結成し、多くの日本人の支援者の方々に助けられながら肉親の救出運動に立ち上がりました。娘めぐみを始めとする全ての拉致被害者を取り戻したい一心で、一瞬も休むことなく闘い続けて参りました。
 私 早紀江は、昨年4月には、米国下院議会(公聴会)において拉致問題について証言致しました(別添写真)。公聴会において証言する機会を与えて下さったことに対して感謝致しますとともに、その時に皆様から示して戴いた励ましは私に勇気と希望を与えてくれたものでした。
 その米国において、最近、北朝鮮テロ支援国家指定を解除しようとする動きが急速に進んでいることを知り、大変心配し、いてもたってもいられず、この手紙をしたためた次第です。
 北朝鮮による拉致は、憎むべき国家テロです。そして、めぐみを含め多くの被害者が、今もなお、北朝鮮に抑留され続け、未だに祖国への帰国を果たせていません。このテロが現在進行形で続いていることを意味しています。このテロ行為が続いている状況下で、何ら責められるべき要素がないのに30年間自由を奪われ「人質」の状況にあるめぐみたち拉致被害者の「命」と「人生」に思いを馳せて戴きたいのです。
 私たちは、米国を、そして米国民を信じています。「個人の尊厳」や「自由」といった基本的人権を何よりも重視し、いかなる国の人権侵害も許さないというその国是に深い尊敬の念をもっております。
 どうか、米国議会の皆様におかれましては、今一度、この北朝鮮による拉致問題につき御理解を戴き、北朝鮮テロ支援国家指定解除が行われないよう、私たちを助けて下さい。拉致被害者家族の心からの願いです。
 私たちは、世界がテロと戦っている中、自由と人権という普遍的価値観を尊重する米国議会の皆様の力を心より信頼しております。どうぞお力添えをお願い申し上げます。
                          家族会代表 横田滋 
                                横田早紀江