早紀江さんの「幸せ」

25日放送予定のサンデープロジェクト特集のため、横田さん夫妻をインタビューした。明日からは、めぐみさんの写真展のため宮崎に行かれるとのことで、急遽取材をお願いして、きょう川崎のマンションにうかがった。
横田さんの住むマンションは、拉致問題に理解のある住人が多い。「あさがおの会」というグループがあって、各地で開かれているめぐみさんの写真展は、実はこの会の尽力ではじまったのだ。
会のホームページには、《2003年5月 横田ご夫妻と同じマンションに住む住民有志がご夫妻の拉致被害者救出活動を身近で支援するために設立した団体です。会の名称は北朝鮮でめぐみさんが曽我ひとみさんに押し花を作って贈った、めぐみさんの大好きな花「あさがお」にちなんでご夫妻につけていただきました。》とある。
このホームページは、横田めぐみさんの写真を網羅している唯一のサイトだ。赤ちゃんから次第に可愛らしく大きくなっていく女の子の笑顔が中学1年でぷつんと消える。そして次のコーナーは北朝鮮に拉致されてからの写真となる。これを観る人はだれでも、拉致の残酷さに感じ入るはずだ。
http://asagaonokai.jp/jp/index.html
横田さんのインタビューは、マンションの共用スペースのロビーでと決まっている。
私はたいてい少し早めに行って、横田さんたちが来るのを待ちながら、管理人の渡辺さんという女性とおしゃべりする。渡辺さんも横田さんたちの活動を熱心に応援している方で、管理人室ではブルーリボンバッジやめぐみさん関連の書籍を売っている。
毎日のように横田さんたちと顔を合わせているので、二人の体調をよく知っており、いつも気遣っている。彼女と話していると、私の知らない横田さんたちの素顔に驚かされることがしばしばだ。
きょう、渡辺さんがこう言った。
「お二人とも本当にお疲れなんですよ。でもね、早紀江さんは『私なんか、まだ幸せなんですよ』っておっしゃるんです。高世さん、『まだ幸せ』って、どういう意味か分かります?」
早紀江さんが幸せだっていうんですか。分かりません。何ですか、その「幸せ」って?
「特定失踪者その他、拉致だとはっきりわかっていない方のご家族のことを思いやられているんですよ。『私なんか、政府にも拉致と認められて、こうしてみなさんに支えられているでしょ。まだ幸せよ、ありがたいことよ』っておっしゃるんです。
 早紀江さんたちは、拉致と分かってからの10年の前に、原因が分からないときの20年があったでしょう。その20年間のどうしていいか分からない、ものすごい苦しみがあったからこそ、そういう心遣いがおできになるんですね」
そんなふうに思えるなんて、すごいなあ。早紀江さんの立場にもし自分が置かれたなら、きっと、自分ほど不幸な者はいないと思うでしょうね。
「ご夫妻がすばらしい方たちだから、私たちも応援したくなってしまうんですよ」
渡辺さん、いい話をありがとう。