安明進に執行猶予付き判決

安明進控訴審で執行猶予付き判決が出て、彼は午後釈放された。以下、アサヒコムより;

北朝鮮覚せい剤の韓国への密輸や売り渡し、使用などの罪に問われた北朝鮮の亡命元工作員安明進(アン・ミョンジン)被告(39)に対し、ソウル高等裁判所は19日、一審の懲役4年6カ月の実刑判決を破棄し、懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。ソ・ミョンス裁判長は、安被告が韓国の情報機関である国家情報院に覚せい剤の一部を提出していることや、日本人拉致問題で様々な証言をしていることなどを挙げ、情状酌量の余地があるとした」。

第一審は4年6ヶ月の実刑判決だったから、大逆転である。安明進は犯罪を犯したことは認めているから、事実認定の変更ではなく、まさに情状酌量の結果である。

この間、特定失踪者問題調査会の荒木和博さんやテレビ朝日前ソウル支局長の吉野実さんが尽力して、横田夫妻安明進が目撃したという古川了子(のりこ)さんの家族に嘆願書を書いていただき、裁判所に提出した。これが効いたようだ。横田さんに電話したら、早紀江さんが電話口に出て、嘆願書が役に立ってよかったと喜んでいた。
私も微力ながら何かしようと、現地で安明進救援をしているジャーナリストの金基柱(キムキジュ)さんの協力を得て、独自に嘆願書を書いて送ったほか、安明進がいかに日本で重要な役割を果たしたかを示すために、彼に関する新聞、雑誌の記事をコピーして送る手伝いをした。

先週の金曜日、12日、テレ朝の「スーパーモーニング」で安明進の特集があった。フィリピン出張中だったので、きのう録画で見たが、よくできていた。この特集を企画したS記者が、私のこのブログを読んで連絡してきて、出張前にインタビューを受けた。番組では、事件の調書を入手したスクープをもとに、地道な取材で犯罪実態の詳細をはじめて解明するとともに、安明進の転落の背景に太陽政策や日本のメディアの体質があったことをはっきり提示していた。この背景の部分は、私がみなさんに一番わかってほしいところだったので、番組内容には満足できた。

安明進の逮捕以降、彼という存在は何だったんだろう、何に貢献したんだろうと考えてみた。そして、彼が証言者として現れたことは、思想的にも非常に大きな広がりを持っているのではないかと思うようになった。
私は嘆願書で、安明進の証言は単に日本の拉致問題解決に貢献しただけでなく、「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」が去年末の国連総会で採択されるなど、国際的人権意識の高揚に大いに寄与したと書いた。
この条約では「強制失踪」とは、国の機関又は国の許可、支援若しくは黙認を得て行動する個人若しくは集団が、逮捕、拘禁、拉致その他のあらゆる形態の自由のはく奪を行う行為であって、その自由のはく奪を認めず、又はそれによる失踪者の消息若しくは所在を隠蔽、かつ、当該失踪者を法のすることを伴い保護の外に置くもの、であるとし、これをニュルンベルク裁判で登場した「人道に対する罪」と位置づけた。私はここに、日本の拉致被害者奪還運動の成果が反映されているのを見る。そして「強制失踪」の罪を犯した者は、国際刑事裁判所に訴追しうる。金正日を訴追する可能性も出てくるのだ。

安明進は、拘置所では麻薬犯と一緒の房にされ、一人だけ「浮いて」いて苛められ、とても苦痛だったらしい。シャバの空気を吸ってほっとしているだろう。だが、肝心なのはこれからだ。自分の存在が国際的な重要性を持っていることを自覚し、卑下することなく、奢ることなく、今後の人生を大事に送ってもらいたいと思っている。