気候変動対策は「国際法上の義務」

 国際法の下で各国が温室効果ガスの排出削減など気候変動対策をとる義務を負う」

 これは国際司法裁判所ICJが7月23日に出した勧告的意見だ。

 今回の勧告的意見は、世界の気候訴訟を後押しするもので、気候変動対策における国家や企業の責任がさらに問われる動きが活発化すると予想されている。

 岩澤雄司所長は、「気候変動の影響は深刻で広範囲に及ぶ。緊急かつ存続に関わる危機を浮き彫りにしている」と危機感を露わにし、「すべての国が環境を保護するために協力する義務がある」とした。

国際報道より

 この勧告的意見は、太平洋の島国バヌアツなどが主導して国連総会がICJに諮問した結果、出されたもので、気候変動問題に対する国際法の解釈と、各国の法的責任を明確にした歴史的な判断とされている。史上最多の96か国・11国際機関が審理に参加し、ICJの判断は全15名の裁判官による全会一致で採択された。気候変動に関する世界的枠組みである「パリ協定」の締約国ではない国々も含めた全世界に向けて発せられている点が重要だ。

 「気候正義」という言葉が搭乗して久しいが、これが国際司法機関で認められたと理解することもできると思われる。

はじめはバヌアツの青年活動家がはじめたキャンペーンだったという。


勧告的意見のその他のポイントは―

清潔で健康的で持続可能な環境に対する人権は、他の人権を享受するために不可欠であるとし、各国は環境を保護するため、特に気候システムを保護するために野心的な措置を講じなければならない。

○最良の科学的知見に基づき、すべての国は産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるための削減目標を定め、1.5℃目標達成に最大限の努力を払う義務がある。

各国が条約によって課せられた義務を遵守しないこと、気候変動対策を行わないことは、国際法上の不法行為になりうる

○各国が適切な措置を講じずに国際法違反と判断された場合は、気候変動で被害を受けた国に対する損害賠償を含む国家責任が問われる可能性がある。

○各国は気候変動による損害を防ぐ義務を負っているので、気候変動の主な要因である化石燃料の生産と使用を抑制しないことは、国際法に違反する可能性がある。

 勧告的意見は、国連機関などの要請に基づいて、国際法上の特定の法律問題について見解を示すもので、判決と異なり、直接的な法的拘束力はない。しかし、国際法の解釈や適用に関する公式見解であり、国際社会に対する道義的・政治的な影響力は非常に大きい。今後、各国の政策決定や、気候変動に関する訴訟などに大きな影響を与える可能性がある。

 気候変動対策を話し合うCOP30が11月に予定されていて、その前に示された見解だけに、各国の対応が注目されている。


 この勧告的意見により、温室効果ガスの削減が各国の国際法上の「義務」とされ、義務違反とされれば国際違法行為となり、被害を受ける国が賠償や補償を求める可能性も出てくる。また、各国政府の対策が不十分として勧告的意見を根拠に訴訟を起こす可能性もある。

 この重要なニュースが日本ではほとんど報じられていない。

 6月の異常な高温に身を焦がされたばかりだったのに、7月の参院選でも争点は物価高対策などの目の前の課題ばかりで、気候変動に関する政策を掲げた政党はごくわずかだった。酷暑も集中豪雨もすでに日常の安心を脅かし、さらには将来の世代により大きな負荷を課すことが確実な問題だ。

 そもそも有権者である私たちの関心が低い。
 ある国際世論調査では、「個人が今すぐ行動しないと次世代の期待を裏切る」と考える日本人は40%と、32か国中最下位2021年の約59%から19ポイント減と、下落幅も最大だった(イプソス2024年12月–2025年1月)。

 私たちの関心は、ますます「いま」「ここ」「自分」のことばかりに集中し、他者や将来への視点を見失っているようだ。

 私たちは誰一人として、独りで生きてはいない。家族や友人、社会、自然とつながり合って生かされている。自分さえよければ、「何とかファースト」という発想こそが、今の日本と世界を破壊していることをあらためて思い知らされる。