アルジェリア事件の背景は温暖化2

takase222013-02-04

古い友人の遠藤正雄さんがシリア北部で負傷したもようだ。
彼のフェイスブックに怪我の写真を載せている。腰のあたりをやられたようだ。英語でこんなコメントが書いてある。
「セクシーショットでなくてごめんね。爆撃で怪我したのです。ファーストエイドじゃなくてもうフォース(4回目)エイド。ここには医者がいないから、毎朝、自分でガーゼを取り替えている。こんな写真載せるのはばかばかしいけれど、どんな状況で仕事をしているのか証拠を残しておきたいと思って。雪国も大変のようだけど、戦場の暮しと仕事はもっと大変だよ。」
Sorry, this is not sexy shot. This is my wound from the bombardment. This is not first aid, 4th aid.There is no doctor here. Changing paper napkin by myself every morning. Stupid to show this kind of picture but I need to proof my work environment. Is not easy to living in snow country but war zone is more difficult to live and work as well.
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=4946063403953&set=a.4634126645729.173593.1069803737&type=1
さすが歴戦の戦場ジャーナリスト。肝の据わり方が違う。
遠藤正雄さんは、ベトナム従軍経験のあるおそらく唯一の現役戦場ジャーナリストで、私の知る限り、最も危険な取材を経験してきた人だ。
ご無事で、と祈るしかない。

と書いたのですが、この記事を訂正します。
遠藤さんのフェースブックにこう書いてありました。
《怪我の写真は前回の写真です。御心配なく。我が家の人達が雪掻きが大変だ、道が凍るなど文句たらたら、こちらは紛争地取材、内戦で苦しむ人達や取材する人達の苦労を理解してもらう為に掲載しました。》
ああよかった。
このブログで驚いた人がいたと思いますが、失礼しました。

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近年、北・西アフリカの不安定さが増している。
新聞では「2011年に起きたリビア内戦の前後から、国際テロ組織アルカイダと関係を持つイスラム武装勢力の動きが活発になっているためだ。イスラム武装勢力が影響力を持つ地域は各国政府の監視が緩いサハラ砂漠の周辺。人質事件が起きたアルジェリア東部やマリ、リビア南部など広範囲に及ぶ」ともっぱら政治的視点から解説されている。(日経0123)

アルジェリアで今回の事件を起こした武装勢力側は犯行声明で、隣国マリでのフランスの軍事介入の停止やアルジェリア政府に逮捕されている過激派メンバーらの釈放などを要求した。
アルジェリア事件はマリに事態と連動しているわけである。
マリの事態について、去年12月10日、国連の難民高等弁務官は国連安保理に声明を出した。
そこでは人々が難民化している要因の一つが「気候変動」だと指摘されている。「気候変動」とはつまり「温暖化」である。
この声明によれば;
マリ北部では、干ばつと長引く食糧不足で、去年はじめから35万人が故郷を離れ、うち20万人が国内難民になり、14万人以上が周辺国に難民となって出ている。
このため、食糧をめぐる奪い合いや犯罪、人権侵害が起きており、この事情はマリだけでなくサヘル地帯(サハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域)全域に共通である。
イベリア半島(スペイン、ポルトガルのある)全部よりも広い地域が過激武装勢力支配下にある。ここは麻薬や武器の密輸、不法な国境移動、テロ関連の諸活動などの温床になっている、という。
声明から引用すると;
「砂漠化と気候変動の結果によって悪化した貧困と低開発が、人種的・宗教的過激主義にもとづくイデオロギーに利用されている。しかし、その結果は、全員がみな敗者になるのだ。これは今マリで進行している事態だが、我々は、このことが持つ地域的な意味を忘れてはならない。
もし、包括的な政治的解決策が見つからないならば、これよりはるかに広範な事態―リビアからナイジェリアまで、大西洋からアデン湾(イエメン・ソマリアにはさまれた湾)までの関連しあう一連の危機―の引き金を引く危険性があり、何カ国もの治安と安定を脅かすだろう。人道面からみた、このようなシナリオの結果は破壊的なものとなろう。私は、国連安保理がこのような事態が起きるのを食い止めるためにあらゆる可能なことをすると信じるものである」

高等弁務官はさらに、国際社会全体、とりわけ「地球温暖化により寄与している国々」には、サヘル地帯のコミュニティの建て直しに「明白な倫理上の責務」(clear moral obligation)があるとし、いま進行中の事態に対して行動を起こすよう求めている。この「国々」に日本が含まれることは言うまでもない。
日本ではほとんど報じられていないが、地球温暖化が世界各地の治安悪化とテロの激化さらには戦争につながっているという見方は、国際的な共通認識になっている。
こっちのテロリストをやっつけ、あっちの武装勢力を武装解除しても、問題は解決しないのは明らか。世界の「常識」をもっと知らなくては。