今さら聞けないガザのこと~藤原亮司さんが語る

 ガザの状況はもう「危機的」などという表現では表せない。どんどん餓死者が増えている。日本政府ははっきりとイスラエルに停戦と食料搬入を迫れ。

国際報道より

 Youtubeチャンネル「高世仁の報道されない見えざるニュース」「今さら聞けないガザのこと~ジャーナリスト藤原亮司さんが語る」を公開しました。

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  私との対談収録は2月末で、公開が大変遅れて藤原さんには申し訳ない。でも、ガザはそもそもなぜこんなことになっているのか、基本を押さえてもらったので、入門編としてはいいと思う。

 

 以下は、動画をAIで「記事化」したもの。しっかりまとめている。今後またパレスチナ問題を取り上げるので、乞うご期待。

 

ガザの復興支援…イスラエルの占領の後方支援とは
ジャーナリスト藤原亮司が語るパレスチナ問題の真実

 ガザでは2023年10月以降、イスラエルによる軍事行動で5万8000人以上が亡くなり、230万人の住民のほとんどが住む家を失っている。ガザ地区の80%以上が立ち入り禁止区域、戦闘区域あるいは破壊された区域となり、残された20%以下の極めて狭い地域にガザの全人口が集中して避難を強いられている状況だ。

 イスラエルはガザへの物資搬入を厳しく制限し、国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWA/アンルワ)の活動も停止させた。食料配布所は400箇所から4箇所に激減し、7万人を超える子供たちが重度の栄養失調に陥り、すでに餓死も始まっている。しかし、国際社会はこの非人道的な状況を止められないでいる。

 パレスチナを十数回にわたり取材したジャーナリストの藤原亮司さんに、パレスチナ問題の基本から解説してもらった。

 

イスラエルハマスの戦闘」という誤った構図
 
 多くのメディアでは、2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃が事態の発端で、イスラエルはそれに「報復」する形でガザに攻め込んでいると報じられている。しかし藤原さんはこの構図自体に問題があると指摘する。

 「確かに10月7日にハマスが1100人ほど殺害したのはテロといえますが、その背景には長年続いてきた占領があります。圧倒的な力で自由や尊厳を抑圧している側に対する抵抗を、『どっちもどっち』のような報じられ方をよくされますが、これは大きな誤解です」

 さらに、攻撃の発生自体についても驚くべき事実を指摘する。

 「イスラエルは9月の時点でハマスが攻撃を仕掛けるという情報をイギリスの情報部から得ていました。イスラエル軍は24時間常にドローンでパレスチナ地域を監視しており、パレスチナ人の中にもイスラエルの協力者が多数います。そんな状況で情報が入っていないはずがなく、攻撃を『分かっていて』させたと考えられます」

 藤原さんによれば、これは過去にも繰り返されてきたパターンだという。
ハマスが攻撃を仕掛け、イスラエルが報復して徹底的に破壊する。すると人道援助や復興という名目で国連や諸外国から多額の資金がイスラエルパレスチナ自治政府に入る。パレスチナ自治政府は延命でき、イスラエルも利益を得られる。ガザは『叩けば金が出る打ち出の小づち』なのです」

 

■封鎖された監獄のような生活実態
 
 ガザは2007年に封鎖されたと言われることが多いが、藤原さんによれば実際はもっと早い段階から事実上の封鎖状態だった。

 「メディアではよく2007年説が言われますが、私が2002年にガザに入った時点ですでに、国連関係者と許可を得たジャーナリスト以外はガザに入ることができませんでした。ガザからパレスチナ人が出ることもほぼ不可能でした。2007年説があるのは、ガザへの物資そのものの出入りも止められたからです」

 そして封鎖された環境での生活は極めて厳しいものになっている。

 「ガザでは失業率が実質7〜8割です。日本のメディアでは30数%と報じられますが、あれは存在しない仕事を週に1回とか1日2時間とかで分け合っているから。子供に小遣いを渡すことすらできず、国連かNGOからもらった1シェケルとか3シェケルを渡す状況です」

 教育環境についても興味深い事実が明かされた。

 「ガザは大学進学率が高いんです。高校までは国連の学校で一応無償。なぜみんな大学に行くかというと、高校卒業しても仕事がないからです。ガザが封鎖解除されたらいつか海外に出て自分の能力を試したいと思っている人はたくさんいますが、30代、40代、50代になっても同じ状況が続いています」

 藤原さんはガザの人々を「夢の犠牲者」と表現する。

 「希望がないので、自分の将来こうなりたいとか、海外に出られるようになったらこんなことをしたいという夢を描いて、目の前のつらさをやり過ごします。でも高校や大学を出て大人になって、絶対に自分の夢が叶わないという現実を突きつけられる。つらさを回避するために持った自分の夢によって、再び傷つけられるのです」

 そして2023年10月のハマスの攻撃についても、「あれは集団自殺だった」と現地の友人が語ったと藤原さんは伝える。

 

ハマスとは何か - 誤解を生む「ハマス」という呼称
 
 メディアではよく「ハマス」という言葉が使われるが、藤原さんはこれが誤解を生じさせていると指摘する。

 「ハマスというのは政党であり、役人でもあり、福祉団体でもあります。ハマスには政治部門、社会福祉部門、そして軍事部門のカッサムがあります。攻撃を仕掛けているのはカッサムで、ハマスの他の部門の人たちは普通の援助団体の人や、クリニックの医師・職員、役所の人、水道修理担当者です」

 「イスラエルは『ハマスが学校にいるから攻撃した』と言いますが、そこにいるのは戦闘員ではなく一般の職員かもしれません。しかしイスラエルは『ハマスはいるでしょ』とすり替えています。そして日本のニュース番組は『ハマスイスラエルの戦闘』と報じるので、ガザの人のほとんどがイスラエルに対して銃を持って抵抗しているようなイメージになってしまいます」

 さらに藤原さんは、イスラエルにとってハマスの存在は都合が良かったとも指摘する。

 「シナイ半島にはISやアルカイダ支部もあり、もっと過激な思想を持った人たちがいます。ガザ内にもそうした小さな細胞ができたことがありますが、ハマスがそれらを潰してきました。ハマスがガザからいなくなれば、より過激な集団が台頭しかねない。弱いハマスがあそこで統治しているのは、イスラエルにとって非常に都合が良かったのです」

 

■生産手段を奪われ続けるガザ

 藤原さんが初めてガザを訪れたのは1998年。その後、周辺国も含め10〜12回取材を行っている。取材を重ねる中で、藤原さんはガザの生産基盤が徐々に破壊されていく様子を目の当たりにしてきた。

 「昔はガザにも農園がありました。北部のベイト・ラヒアには国連開発計画(UNDP)が指導した広いイチゴ畑が広がっていましたが、それらは破壊されてなくなりました。エジプトとの国境近くのラファ周辺にはトマト畑がたくさんありましたが、第2次インティファーダ中にイスラエル軍が『バッファーゾーン』にするとして、すべて更地にしてしまいました」

 生きる術を失わせるような破壊が続いているのだ。

 「封鎖されていれば材料も入れられないし、売るマーケットもない。仕事自体が作れません。ガザの中だけで消費するしかなく、みんな苦しい生活をしているので嗜好品を買う余裕もありません」

 現在のガザ住民の生活手段について、藤原さんはこう説明する。

 「ガザの227万人の人口のうち、7割以上は難民です。つまりガザの外から来た人たちで、残りの3割弱の人たちは家賃収入など不動産収入で食べています。あとは封鎖される前にUAEサウジアラビアクウェートなどの湾岸諸国に行って仕事を見つけた人たちからの仕送りや、国連などからの援助で暮らしています」
援助はイスラエルの占領を支えている
 
 藤原さんが最も強調するのは、国際社会からの援助がイスラエルの占領を間接的に支えているという矛盾だ。

 「イスラエルは自分が占領している地域の復興に対して一銭も金を出しません。復興させるのは国際社会や国連です。本来なら占領者が占領地域を持ちたいのであれば、そこの社会保障は占領者がすべきですが、何の批判もなしに国際社会が勝手に担ってきました」

 「今回もおそらくそうなるでしょう。ガザを復興させる、ガザを援助するということは、イスラエルの占領の後方支援を国際社会が勝手にやっていることになるのです。こんな馬鹿げた矛盾した話はありません」

 その上、復興のための資材はイスラエルの利益にもなる。

 「復興に必要なセメントや木材は、エジプトから入ってくるかもしれませんが、イスラエルも潤います。イスラエルの人口からすれば220数万人のガザの人口は大きく、そこで消費されるものはイスラエルにとって重要です」

 

パレスチナ自治区」の実態

 ガザの状況を理解するには、ヨルダン川西岸地区(通称「西岸」)の状況も知る必要がある。藤原さんによれば、「パレスチナ自治区」という呼称自体にも大きな問題がある。

 「パレスチナ自治区にはエリアA、エリアB、エリアCがあります。エリアAはパレスチナ自治政府が行政権と治安権を持ち、Bは行政権のみ、Cはイスラエルが両方ともコントロールします。そしてCは西岸地区の60%を占めているのです」

 「新聞やニュースで見るベタ塗りの西岸地区の図を見ると、パレスチナはかなり領土があるように思えますが、実はその大部分がイスラエルのコントロール下にあるエリアCなのです」

 さらに、入植地とそれを結ぶ道路がパレスチナ人の移動を困難にしている。

 「入植地と入植地をつなぐ道路が建設されると、それはユダヤ人専用道路になりパレスチナ人は通れません。道路を超えるにはチェックポイントを通らなければならず、許可証が必要です。しかし許可証を持っていても理由もなく通してもらえないこともあり、仕事や学校に行けなくなるのは日常茶飯事です」

 

イスラエル人とパレスチナ人の分断が進む

 かつてパレスチナ人はイスラエルに働きに行くことができた。しかし第2次インティファーダ(2000年頃〜2005年初め)で自爆攻撃が発生したことを理由に、イスラエルパレスチナ人の入国を厳しく制限するようになった。

 「以前はパレスチナ人がイスラエルのレストランの厨房や清掃、ホテルの下働き、農作業などで働いていました。しかし壁ができてからはほとんど行けなくなり、その代わりにタイやフィリピン、中国などから労働者が来るようになりました」

 この分断がイスラエル社会に与えた影響は大きいと藤原さんは言う。

 「日常的に職場でパレスチナ人と一緒に働く機会を持っていたイスラエルユダヤ人たちが、もう道端でパレスチナ人を見ることもなくなりました。生身のパレスチナ人を知らない世代が増え、彼らにとってパレスチナ人とは『たまにロケットを打ち込んでくる悪い奴ら』というイメージしかなくなったのです」

 「ネタニヤフはこの20年以上かけて、自国民がパレスチナ人と接しなくて済む、パレスチナ人への知識がない状態を作り、『あいつらはテロリスト』という印象を植え付けることに成功しました」

 

■国際社会が沈黙し続ける理由
 
 これほどの人権侵害と国際法違反が続いているにもかかわらず、国際社会、特に欧米諸国からの批判は弱い。藤原さんはその背景についても解説する。

 「5万人ほどの市民を含めたガザの人たちが殺されているという事実があるにもかかわらず、国際社会は経済制裁もせず、非難すらほとんど聞かれません。これがシリアやウクライナの場合なら、西側諸国は完全に経済制裁をしています。この異常さをまず理解する必要があります」

 アメリカがイスラエルを支持する理由については、宗教的な背景も大きいという。
アメリカにもたくさんユダヤ人がいて、彼らが強硬派なのかと思われがちですが、実はアメリカのユダヤ人はむしろリベラルな人が多いです。むしろアメリカの人口の約25%を占めるプロテスタント福音派が非常にイスラエル寄りで、キリスト教シオニストのような存在です。彼らの意向があるため、民主党のバイデン政権でも強く出ることができないのです」

 ヨーロッパについては歴史的背景が影響している。

 「ホロコーストでは600万人のユダヤ人が殺されました。当時のヨーロッパはほぼキリスト教社会で、ユダヤ人の存在は異質でした。ヨーロッパにとってイスラエルという国を作らせることは『体の良いユダヤ人追放』でした。追放した結果、イスラエルに対し 
て強く言えないのがヨーロッパのスタンスです」

 

■日本人に何ができるのか

 インタビューの最後に、日本人に何ができるかと問われた藤原さんは、イスラエル製品のボイコットなどいくつかの方法を挙げながらも、最も効果的なのは日本政府への働きかけだと強調した。

 「私が一番思うのは、日本政府に対して物申すことです。私たちの税金をイスラエルの占領の後方支援に使うなと言うことが重要です」

 「病院にも行けないかわいそうな子どもたちがいるのに援助をやめるのか、という反論もあるでしょう。しかし、条件を付けない援助をするべきではありません。イスラエルに対して『病院を攻撃しないなら病院を支援する』などの条件を出さずに復興支援をすべきではないのです」

 

 高世仁さんは最後にこう締めくくった。

 「暴力が目の前で振るわれている時に、これを止めないで傍観することは暴力に加担することになります。パレスチナの人々が求めているのはまさに人として生きる権利です。あきらめずに私たちも声を上げ続けていかなければなりません」
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 パレスチナ問題は非常に複雑で、メディアで伝えられている状況と実態には大きな乖離がある。藤原さんの解説から見えてくるのは、単なる「紛争」ではなく、一方的な占領と抑圧の構造、そしてそれを間接的に支えてしまっている国際社会の矛盾だ。私たちが理解すべきは、ガザの現状はたんなる「イスラエルハマスの戦い」ではなく、長年にわたる構造的な問題の結果だということだろう。