横田めぐみさんの「歯」をめぐる怪奇②

 自民党政治資金規正法改正案が成立する見込みだという

 公明党は、政治資金パーティー券購入者の公開基準額の「10万円超」から「5万円超」への引き下げなどを再修正案に盛り込むことで了解。維新は、政策活動費の領収書を10年後に公開することなどで合意してOK。公明と維新の賛成が固まったので、自民の規正法改正案は今国会で成立することが確実になった。マスコミでは自民党が「譲歩」したと報じているが、どうでもいい「修正」を見せての猿芝居。

 現行の規制法ではパーティー券は20万円超購入した者の名前を政治資金収支報告書に記載し、公開することになっている。しかしこれこそザルで、ある企業が50万円購入してこれを従業員などの名義で2万円づつ25枚を購入したことにして処理したケース(茂木派の井野俊郎・元防衛副大臣も発覚している。「10万円超」から「5万円超」にすることなぞ、何の規制策にもならない。政治家と企業が結託すれば何でもありだ。

 企業・団体献金見直しには一切触れず、これで政治資金規正法改正案は、ほとんど意味のない内容となった。岸田首相、「火の玉になって」改革を断行するんじゃなかったのか? 

 はじめから公明と維新を抱き込んでまとめるシナリオで、あたかも大変な修正をやったかのようなふりをしてみせただけのようだ。こんな改正案は問題外!
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 毎日新聞』に載った、日テレ報道部の福澤真由美さんのインタビュー記事で「04年に北朝鮮を訪れた藪中三十二・外務省アジア大洋州局長(当時)率いる調査団が持ち帰った横田めぐみさんのものとされる焼かれた『遺骨』の骨つぼには、本人のものとみられる歯があった」との「極秘情報」が紹介された。

 これについて、30日の集会で、「救う会北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)」の西岡力会長は、「歯」が骨つぼに入っていたことは知っている、西岡氏がめぐみさんの母、早紀江さんに電話で聞いたところ、当初からそのことは知っていたという、「歯」があったからといってめぐみさん死亡の証拠にはならないと語った。

 西岡会長は、そんな事実はとうに知っている、「極秘情報」のスクープなどと騒ぐものではない、と言いたげな口ぶりで、かなり長い時間を使って「反論」した。

 私はめぐみさんの「歯」の情報を、3月末に福澤さんに聞いて初めて知ったのだが、早紀江さんはずっと前から知っていたというのだ。 これには驚愕した。 

 また、福澤さんの情報の真実性が、期せずして西岡会長の証言によって裏づけられたことが意外だった。

 驚きがまだ失せぬ31日早朝、以下のお知らせが出て、またまた驚かされた。

救う会HPより

 東京連続集会西岡発言訂正

本日令和6年5月30日に都内で救う会東京連続集会が開催された。そこで、私、救う会西岡会長は一部の報道が、北朝鮮から提供された横田めぐみさんものだとされた偽遺骨と一緒にめぐみさんのものと思われる歯が入っていたと伝えていたことについて解説する中で、横田早紀江さんは偽遺骨が出てきた当初に政府から歯が入っていることについて説明受けていたと話した。しかし、早紀江さん本人に再確認したところ、そのような事実はないということが明らかになった。西岡発言のその部分を取り消します。なお、早紀江さんが歯の存在について知ったのは、一部の報道があったときだという。

救う会会長 西岡力

 マジっすか!!
 年甲斐もなく若者言葉が口をついて出たが、いったいこれはどういうことなのか。

 「めぐみは虫歯がたくさん多かったですからね」などと、西岡会長、早紀江さんとの電話の会話をライブ感たっぷりに再現していたのに。

 「早紀江さん本人に再確認したところ、そのような事実はないということが明らかになった。西岡発言のその部分を取り消します」の「そのような事実」と「その部分」が何を指すのかいま一つはっきりしないが、「早紀江さんが歯の存在について知ったのは、一部の報道があったときだという」ということは、福澤さんが「覚悟を決めて」この情報を明かした、ここ1~2カ月まで、早紀江さんはこの事実を知らなかったことになる。

 ということは、どうなるのだろう。

 西岡会長がありもしない話をでっちあげたのか。だとすると、虚言癖を疑わざるを得ない。

 あるいは早紀江さんが「歯」のことを知っているのは事実だが、公にすると「問題」が生じるのか。だから、どこかから「圧力」がかかって、あったことをないことにしたのか。いろいろと想像を巡らせてしまう。

 もう一度西岡発言を確認しようとYoutubeのURLをクリックしたら、もう動画が見られなくなっている! 発言訂正のあわてた様子と合わせて考えると、「歯」の情報の扱いに関して、何かパニックが起きている気配。

 西岡会長は「あたかも極秘情報のように言うこと自体おかしい」などと「歯」の情報の重要度を懸命に下げようとするけれど、こんなドタバタを見せられると、ますます気になってしまうではないか。何を隠したいのだろう?
 
 既視感があって思い出したのは、有田芳生さんがモンゴルでの横田さん夫妻とウンギョンさん家族との面会の写真を公開したときの「騒ぎ」

 あのとき、横田さん夫妻は、西岡力会長、櫻井よしこ氏、中山恭子参議院議員、「政府のエライ人」らから圧力を受け、言ったことを否定させられ、逆に思ってもいないことを言わされたのだった。

takase.hatenablog.jp

 福澤さんが横田めぐみさんの「歯」の問題を取り上げるのは、めぐみさんが死亡していることを証明するためではない。拉致問題に関する日本政府の隠蔽体質、情報の誤った扱い方を問題にしているのだ。

 日本政府は節目節目の重要な情報を、国民の目から隠蔽し、誤った情報にすり替えてきた。「遺骨」問題しかり、田中・金田さん生存情報しかり、北朝鮮との交渉を左右しかねない情報を正しく伝えず、拉致問題を自らの政権運営、権力保持に利用してきた。このことが拉致問題の進展を妨げてきたのではないか。

 ここに拉致問題をめぐる「利権」構造をバックに「伏魔殿」が築かれ、情報のバリアとタブーが張りめぐらされているかのようだ。しかし、この伏魔殿はいま少しづつ掘り崩されつつある。

(つづく)