横田めぐみさんの「歯」をめぐる怪奇③

 バイデン米大統領ウクライナに対し、アメリカが供与した武器を使ってロシア領内を攻撃することを一部認めた。ブリンケン国務長官が明らかにした。

バイデン大統領が許可したと会見で認めるブリンケン国務長官NHKニュースより)

 「米国が供与した武器をロシア領内で使いたいとの要望がウクライナからあり、バイデン大統領は許可した」

 アメリカはこれまで、供与した武器のロシア領内への使用を認めなかったが、ウクライナ北東部ハルキウ州周辺でロシアが攻勢を強める中、方針を転換した。遅かったが、ウクライナの度重なる要請がようやく認められた。

 アメリカメディアによると、武器の使用を容認するのはウクライナを攻撃しているロシア領内のミサイル基地に反撃する場合などに限定され、国境から遠く離れた基地への攻撃などは、引き続き認めない方針だという

 しかし、ロシアはかなり遠い基地からミサイルで攻撃しており、実際の運用がどうなるか、注視しよう。

3月22日の空襲。赤線が空中発射型巡航ミサイル「X101」、黄線が極超音速空対地ミサイル「キンジャール」、ブルーの線がイランのドローン「シャヘド」、それぞれの軌跡。

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前回のつづき―

 安部政権が掲げた「拉致3原則」(安倍3原則)とくに「被害者は全員生存しており、即時一括帰国を求める」=全拉致被害者の即時一括帰国を日本政府が掲げたままでは、拉致問題は進まない。2002年の日朝首脳会談以降、これといった成果が上げられなかったことで明らかだ。

 それを糊塗する役割を担わされているのが拉致被害者家族たちだ。「家族会(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)」が、政府および「救う会」の掲げる方針を支持するスタンスをとり続けるかぎり、世論を黙らせることができる。だから政府、「救う会」は家族たちを囲い込み、その言動をきびしくチェックする。

 もし政府・「救う会」の方針から外れれば、有田芳生さんがモンゴルでの横田夫妻ウンギョンさん一家の面会写真を公開した時のように、横田夫妻に思ってもいないことを言わせる、自分が書いたものでない文書にサインさせる。こうして、被害者家族を自分たちのプロパガンダの道具、いわば腹話術の人形のように利用してきたのではないか。

 だから、家族たちがコントロールを外れそうになると思わず「弁士中止!」とばかりに介入したくなるのだろう。

takase.hatenablog.jp

 しかし、あまりに長い「空白」、失われた22年に失望し、拉致被害者家族会の中からも「3原則」で拉致問題を動かすことができるか疑問視する声が出ている。当然である。

 「特定失踪者」の家族たちはもっと大っぴらに不満の声を上げている。

 5月11日に都内で「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」が開かれた。

youtu.be


 そこに特定失踪者問題調査会の竹下珠路(たまじ)事務局長が登壇した。竹下珠緒さんは特定失踪者の古川了子さん(1973年に失踪)の姉である。「国民大集会」でこう発言している。(Youtubeの1時間18分前後から)

発言する竹下珠緒さん

 「特定失踪者そして拉致認定被害者の田中実さん、金田龍光さんは、2013年(正しくは2014年)のストックホルム合意の時に、北から二名に関する申し出があったそうですが、日本政府はその受け取りを拒否したと、最近になって公開されました。

 政治的にはいろいろな思いがあるでしょうが、お二人とももう70代半ばです。そして本人たちの身になって考えてみてください。『もしかしたら自分は日本に帰れるかも』と思った時に、日本から拒否をされた。日本から見捨てられたのです。家族の身にもなってみてください。自分の家族がそんな思いになったら、どうでしょうか。一人ひとりの命に、重さに違いはありません。私たちは4月に、日弁連人権救済申し立てを提出しました。」(略)

 「どうぞ、命に重さ(の違い)はありません。認定被害者も特定失踪者もみんな同じ人間なのです。命のある間に、本人に命があるあいだに、もちろん家族にも命のあるあいだに、日本に散り戻せるようみなさんのお力をぜひぜひよろしくお願いいたします。

 日弁連への申し立てとは、4月24日、特定失踪者問題調査会が、田中実さんと、金田龍光さんについて日弁連に人権救済を申し立て、日本政府に対し、2人の帰国に向けた措置を講じるよう要望したことを指す。

 「申立書は、拉致事件が重大な人権侵害だと指摘。2人の生存情報の報告を日本政府が受け取らず、その後も帰国が果たせず現在に至っているとして、外交交渉の情報開示や、速やかな帰国を図るべく北朝鮮との交渉再開を求めた。

 調査会の荒木和博代表は同日の記者会見で『一刻も早く取り返そうとしているように感じない』と政府の対応を批判した。」(産経ニュースより)

www.sankei.com

 竹下珠路さん(80)の妹、古川了子さんは1955年1月生れで、生存していれば69歳になるはずだ。家族も老いていくなか、早くなんとかしてほしいとの家族の思いは痛いほどわかる。田中さん、金田さんは2014年に北朝鮮が日本政府に「生存情報」を伝えて以来、10年にわたって日本政府から無視されてきた。「日本から見捨てられた」(竹下さん)のだ。

 竹下さんは、集会に参加した、岸田総理、拉致議連の国会議員の他、地方議会の議員、「知事の会」会長の黒岩神奈川県知事らの前で、「3原則」を公然と批判したのである。

(つづく)