ウィシュマ・サンダマリさん最後の13日間

 「大寒」(だいかん)になった。

 今日から初候「款冬華(ふきのはな、さく)」。25日から次候「水沢腹堅(さわみず、こおりつめる)」。30日から末候「鶏始乳(にわとり、はじめてとやにつく)」。

 厳しい寒さのなか、植物も動物も春に向けて動きをはじめている。
 東京もさすがに寒く、今朝もバケツに氷が張っていた。

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 参議院議員有田芳生さんが、名古屋入管で亡くなったスリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさんの亡くなる直前を記録した監視カメラの映像をFacebookで紹介している。
https://www.facebook.com/yosihifu.arita

 監視カメラの映像をめぐっては遺族や支援者たちから全面公開の要求が出され、映像の一部は、去年8月12日にウィシュマさんの二人の妹さんに公開された。二人にとって映像は衝撃的で、2時間分の映像のうち1時間10分見た時点で、ワヨミさんの体調が悪くなり視聴を続けられなくなったという。

《視聴中、妹のワヨミさん(28)とポールニマさん(27)は終始泣き、ワヨミさんは直後にショックで吐いたという。ワヨミさんは「日本の全ての外国人は見るべきだ。入管は人の道を外れている」と記者団の前で泣き崩れた。
 ワヨミさんらによると今年2月下旬、ウィシュマさんが何度も点滴を求めたが職員は「私たちは医者でない」と対処しなかった。
 同月下旬朝にはベッドから落下。23回も助けを求め職員2人が来たが、手足を引っ張るだけでベッドに戻そうとせず、毛布をかけその場を去ったという。》(東京新聞

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映像を視聴した直後の二人の妹(8月12日)

 有田さんのFBを読んで、私も「人の道を外れている」との印象を強く持った。入管は、重篤な病人であるウィシュマさんに病院に緊急入院させるなどの必要な処置をしていないばかりか、人間として当然の人道的配慮もしていない。読み進むうち、こんなことを平気でやれる人間がいるのかと、私も気持ちが悪くなってきた。

 「入管に殺された」と言っても過言ではないと思う。読んだ後、入管への激しい怒りとともにウィシュマさんとご遺族への申し訳なさがこみあげてきた。
 FBを使わない人も多いと思うので、有田さんの投稿全文をここに掲載する。


 ウィシュマ・サンダマリさん最後の13日間
              有田芳生

【2021年12時27日(月)朝10時から、ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管で亡くなる最後の13日間の映像を見た。法務委員会の理事、オブザーバーと希望する委員だ。6時間28分のスクリーンのすぐ横に陣取り、細かくメモを取った。Twitterで断続的に投稿し、まとめてFacebookに投稿したものにさらにメモをもとに加筆した内容をここに再録する。入管は死因を不明とするが、代理人弁護士は「餓死」だと判断している。この事件だけでなく、2007年からいままで入管で17人が亡くなっている。この分析と総括なくして入管法難民認定法の改正案など認めるわけにはいかない。なおメモは映像を見ながら記録したものゆえに、言葉全体をそのまま正確に再現できたわけではなく、通常の取材時のように、印象的、特徴的な部分を書き留めていることに留意していただきたい。なお()はそのときに書いた感想だ。】

参議院法務委員会の理事懇談会で33歳のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管に収容されて残っている2月22日から亡くなった3月6日までの映像の一部、6時間28分を見ました。ノートにメモを取りながら最後の数日間が終わったとき、手のひらが汗ばんでいました。人間の尊厳の破壊です。

②名古屋入管に残っているビデオは295時間。そのうち遺族側が求めた証拠保全手続きによるものに加え、最終報告書(8月10日)で問題とされた部分を加えた6時間28分が衆参の法務委員会理事懇談会で公開されました。メモを紹介していきます。

③ 前提1。名古屋入管の職員、看護師は、総体として熱心に職務を遂行しているように見えます。しかしウィシュマさんの切迫した状況に対応した仕事ぶりとして正しかったのか。強い違和感を抱きました。それら総体として組織システムに多くの問題があり、ウィシュマさんの死を招いてしまいました。言葉を替えれば救えた命だったのです。日付を追って何があったかを見ていきます。

④ 前提2。ビデオは2月22日からはじまります。その前の2月15日。ウィシュマさんの尿検査結果が最終報告書別添にあります。「ケトン体3+」。ケトン体は栄養が十分に摂れていないとき検出されます。「3+」は飢餓状態にある数値です。看護師もそう認識していました。ここで緊急入院させ、点滴で栄養補給をしていれば命は救えたでしょう。医師は報告された記憶がないとしています。

⑤【2月22日 亡くなる12日前】ベッドに横になったまま看護師との会話。呼びかけに弱い声。(すでに動きはない!)「できれば食べたい」「食べれるといいのになあ」「いろんな栄養が必要なの、ヨーグルトとか栄養あるもの出してもらう?」「飲む本人が頼む、本人の意思が必要」「元気になったらリハビリをやって歩く練習を」と看護師。(「車椅子で来てくれる?」と語ったように、ウィシュマさんはすでに自力で歩くことができない。)

⑥【2月23日 亡くなる11日前】寝たまま。少し首が動く。ほぼ身じろぎしない。手が動き、鼻をかむ。「担当さーん」「痛い」「あーあー、担当さん」。咳をして吐く。「早く、早く、担当さん」。担当来る。ウィシュマさんはバケツを落とす。「のど、つらいね」「大丈夫?」「大丈夫じゃない」。ベッドに倒れ込む。血圧を計る。「死なないから大丈夫だよ。ちゃんとみているから」「トイレ行く?」。会話をしているが声が小さくて不明。「痛い」「病院に行けるようにお話ししてあげるから」。「トイレ、ぶつける」「ぶつけないようにする」。「歩きたい」「ボスに連絡するから」。「戻っていいの?」「行かないで」「本当につらいのはわかっているよ」。車椅子がある。ウィシュマさん、ベッドの端に足を置くが職員2人でも乗せられない。自分でベッドから降りることもできない。吐く。

⑦【2月24日 亡くなる10日前】朝4時台。「あーっ、うーっ」。何度も「担当さん」と呼ぶ。「口から血が、鼻から血が、あー、あー」「担当さん、あー、あー、担当さん、あー、あー、あうー、あうー」と異常なうめきが続く。尋常ではない。担当2人来る。身体を起こして背中をさすって「大丈夫よ」。何か言おうとしているが不明。うめきが続く。ベッドの壁に寄り掛からせる。「ここ痛い」とお腹のあたりを触る。「いま何時?」「4時40分。4時間ぐらいガマンして」。座ったまま静かに眠っている。吐くためのバケツは身体の右側に置いてある。朝6時55分。横になって眠っている。7時に灯りがつく。

⑧【2月25日 亡くなる9日前】朝6時55分。ウィシュマさんベッドの上に座って眠っている。「あーっ」。右側にバケツ。吐く。さらに吐こうとするが、出すものがないようだ。

⑨【2月26日 亡くなる8日前】朝5時台。ベッドから床に落下。「担当さーん、転んだ。起きれない」。右手で何かを探している。「担当さん、担当さん、担当さん、担当さん。ちょっと手伝って」。自分では立ち上がれない。「担当さん、担当さん。ちょっと寒い」。さらに「担当さん」と16回。6時25分に2人の職員来る。「私たち力ないから」。「頑張るんだよ。いっしょに頑張るんだよ」と声をかけるもののベッドに上げること出来ず。「朝、電気つくまで待って」「朝までガマンしてね」。結果的に床の上に寝かせたままだ。(「言葉は少し出るが、すでに物体」「ここまでの状態ー人間的想像力の欠如」)。

⑩【2月27日 亡くなる7日前】ベッドでいつもと逆方向に眠っている。吐くときのためのバケツは首の右側に置いてある。(どんどん衰弱しているように見えた。)

⑪【2月28日 亡くなる6日前】眠っている。左手が動いている。朝7時に電気がついても起きない。右手、左手が少し動いたが、短い時間だ。毛布を自分の手で取れない。腰のあたりが何度か痙攣しているように見えた。

⑫【3月1日 亡くなる5日前】朝7時前。眠っているが身体はほぼ動かない。夜9時台。服薬介助。水を吐く。紙パックのカフェオレを吹き出す。職員「鼻から牛乳や」と発言。

⑬【3月2日 亡くなる4日前】7時55分。職員の介助。ベッドに座っている。職員との会話、食事の介助。18時45分。夜はベッドの壁側に頭。「サンダマリ、重たいわー」と職員。

⑭【3月3日 亡くなる3日前】15時台。職員3人で車椅子に移動。首はうなだれている。18時台。右手を上にして宙を泳いでいる。おかゆ、バナナ。「飲み込もう」「ガンバレ、ガンバレ」と職員。自分では起きられない。バケツに吐く。「野菜も食べる?」「チキン」。口に入れる。ウィシュマさんの首は右側にうなだれている。吐く。「おかゆにする?」。吐く。
19時台。首もすわっていないのに、無理に食べさせている。「食べたら元気になるから。そうしたらまたご飯食べられるから」。(根拠のない善意だ。明らかに大きな異常が現れている。もう「虫の息」の状態。)

⑮【3月4日 亡くなる2日前】朝7時台。起き上がれない。足は伸びたまま。8時2分から服薬介助。寝たままで手も動かない。身体を起こして首の後ろに毛布。薬を口へ。明らかに顔色に異変あり。首が左右に揺れるが声は出ない。「大丈夫?」と声をかけても返事なし。目も開かない。2人の職員は立ったままじっと見つめ続ける。時計を見て出ていく。残った職員は立ったままずっと見つめている。職員のひとりが戻る。職員が時計を見る。2人の職員が出ていき、戻る。「30分ガマンして、OK?」。(こうした状況でなぜ救急車を呼ばないのか。)
午後1時前から。移動の介助。ウィシュマさん、動かない。「起きよう、ご飯食べて、薬飲んで」。職員は3人。グターッとしたウィシュマさん。妙に明るい職員。(その落差に違和感を感じた。)
13時35分から。車椅子で食事の介助。「担当さーん」。弱々しい声。17時1分。車椅子で帰室。うなだれたままで首は上がらない。食事の介助。「新しいスプーン」と妙に明るい職員。ウィシュマさん、口に食事を運ばれるが首がすわっていない。21時台。ベッドで「あー」と小声。首を左右に動かす。うなされている。声は小さい。「寝る前に薬だけ飲もう」「新しい薬だよ」。(白衣を着た女性。少なくとも医療関係者なら普通でないことはわかるだろう。)

⑯【3月5日 亡くなる前日】9時18分から。4人の職員。「気分どう?」「着替えようか。トイレはどうする?」。「サンダマリさん」と声をかけ、顔に手を振って表情を見るが反応なし。「大丈夫?」。ウィシュマさん「あー、あっ、いやー」と叫ぶ。職員「いやじゃないよ」。
9時23分から。「あー、あーっ」と泣き声や叫び声。職員は5人。なぜかある職員が「アロンアルファ」と口にした。10時41分から食事の介助。「サンダマリさん、起きて」と声をかける。(上部からの映像を見ていても身体に異変が進行している。)
14時半から。看護師との会話。ウィシュマさん、首を左右に振り、うめく。うわ言が続く。「こんにちわ」「長いね足」「ドクターに困っていること言えた?」「ちゃんと薬飲んでね」「睡眠とってね」「座りたい?」「起きてリハビリ頑張ろう。起きて」。ウィシュマさん、うつろな顔で横になっている。ウィシュマさん「あーっ」。看護師「水分を摂ってください」。何度も脈を計っている。ときどき「あーっ」とうめき。看護師、ウィシュマさんの手をさする。「担当さん」「あと栄養剤ももらってね」。「いい体に生んでもらった」「食べれるといいね。眠れるといいね」「頭が騒がしいのはどう?」と手をさすり続ける。ウシュマさん「あーっ」。会話にはならない。看護師は足をさする。「睡眠をとって。元気になりますよ」「恵まれてますよ」「元気になるように」「水分だけはしっかりとってね」「次は月曜に来るからね」(この日は金曜日)。18時台、職員との会話。「ボスがお話したいって」「痛い?痛いね」。男性職員「仮放免のOKが出たらどこに行く?」。そして死亡の日、3月6日がやってくる。

⑰【3月6日 亡くなった日】朝8時12分から14分。バイタルチェック(体温、脈拍、血圧、呼吸)の状況。2人の職員「おはよう」。返事なし。何度も「おはよう」。さらに何度も「サンダマリ」と話しかけても反応なし。目もあかない。顔はベッドの右側に向いていてまったく動きもしない。
9時13分。職員は4人。ウシュマさんはまったく動かない。「おはよう」と声をかけても返事はなし。「薬、決まっている?」。ウィシュマさんは右側を向いているが、まったく動かない。9時19分から介助。職員4人。声をかけても何の反応もなし。動かない。首は右向きのままだ。
10時47分から49分。服薬介助。職員「食べようね」。体勢変わらず。身体を起こす。OS -1。「栄養ドリンク飲もうね」。ウィシュマさん、動かず、首は落ちたままだ。
11時11分から13分。服薬介助。無理に薬を飲ませているが、ウィシュマさんは首も動かず、グッタリしている。13時31分から32分、職員の声がけ。部屋の外から「サンダマリさん、大丈夫?」。まったく反応なし。
14時7分から12分。職員入室。「入るよ。よいしょ」。大きな声で「サンダマリさん!」。身体に触れる。インターフォンで「指先が冷たいようです」と報告。「サンダマリさん、聞こえる?」。まったく動かず、反応なし。職員がひとりさらに入ってくる。息や脈を確認しながら「サンダマリさん、聞こえる?」。手を触って「反応がないです!」。さらに2人の職員がやってくる。合計4人の職員。(何が起きたかを理解せざるをえない空気が流れている。)
14時26分から27分。救急搬送。ウシュマさんに救急隊員が心臓マッサージなどを行なっている。ウィシュマ・サンダマリさんを搬送する場面で映像は終わった。病院で死亡が確認されたのは、3時25分。

◎名古屋入管に収容された33歳のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなるまでのビデオ映像(6時間28分)をメモをもとに紹介しました。私の感想です。ウィシュマさんは、医療放棄、介護

虐待の結果、生命を奪われました。緩慢なる殺人と言われても仕方がないでしょう。
映像を見終えて入管幹部たちと質疑。驚いたのは、2007年からウィシュマさんまで、入管施設で17人が亡くなっているのに、調査と検討をしたのはたった5件。しかも自殺者については調査していないという。警備課長が「内心はわかりませんから」と語ったことに唖然とした。職員はウィシュマさんが亡くなる数日前から異変に気づいていたはずだ。それはたとえば3月4日に職員が立ったまま動かない彼女をじっとを見つめていた雰囲気からもわかる。職員はこのときの状況をどう報告していたのか。看守勤務日誌を見ればわかる。問題の追及はこれからも続く。(以上)

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ウィシュマさんの死亡事件については本ブログの以下を参照されたい

入管収容施設で続く不審死 - 高世仁の「諸悪莫作」日記 (hatenablog.jp)

「人権」を言うなら入管法"改悪"をやめよ - 高世仁の「諸悪莫作」日記 (hatenablog.jp)

入管法改正案審議の前にウィシュマさんの死の解明を - 高世仁の「諸悪莫作」日記 (hatenablog.jp)

入管はウィシュマさんのビデオを全面開示せよ - 高世仁の「諸悪莫作」日記 (hatenablog.jp)

入管はウィシュマさんを詐病扱いしていた! - 高世仁の「諸悪莫作」日記 (hatenablog.jp)