入管はウィシュマさんのビデオを全面開示せよ

 きょうの畑は、インゲンのネット張り、トマトのわき芽とり(幹と太い枝の分かれ目から生える細い枝を摘み取る)そしてピーマンの摘花をやった。摘花というのは、よけいなところに栄養が行かないように花や花芽を摘んでしまうこと。せっかく咲いた花なのに、かわいそうだが、しかたない。

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ピーマンが花をつけたが、咲いた花も、花芽(小さな球)も摘んでしまう

 畑いじりをしていると、いかに自分が農業を知らないかを自覚する。
 農業とは、植物を自然に伸ばすのではなく、大きな実を成らせるという人間の都合で無理強いするのだな。
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 TBS「報道特集」は、きょうも入管に収容中に不審死をとげたスリランカ女性、ウィシュマさん関連の特集。来日した妹、ワヨミさん(28)とポールニマ(26)さんのウィシュマさんの遺体との対面、名古屋入管訪問、東京での上川法相との面会などに密着して取材している。

 遺体と対面したときの2人の妹さんの嘆きは、観ていてつらくなった。「愛する日本でなぜこんな仕打ちを受けるのか。こんなになるまでなぜ入管は放っておいたのか」と怒りを露わにしていた。

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遺体に対面した二人は姉のあまりの痩せ方、やつれ方に衝撃を受けていた

 ウィシュマさんは食事が摂れずに嘔吐を繰り返し、7ヵ月間に体重が20キロも減っている。面会をしていた支援者によれば、その尋常でない弱り方に、入管に何度も仮放免や点滴、入院などの医療措置を求めたという。体調の異常さは分かっていたはずだ。

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これにどう答えればよいのか

 ウィシュマさんがどんな様子だったかは、彼女が入れられていた部屋の監視カメラのビデオ映像を見ればわかる。妹さんたちはそれを見せてほしいと要求するが、入管はかたくなに拒否している。
 入管庁の「中間報告」には、「医師から点滴や入院の指示がなされたこともなかった」と記されていたが、医師の診察記録には「(薬の)内服ができないのであれば点滴、入院」と記載されていたことが判明。妹さんたちは「中間報告」に不信感をもつ。2人は、ビデオ映像を見てウィシュマさんの死の真相を納得するまで帰らないと滞在を90日延長した。闘いはこれからだ。

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中間報告。20キロもやせて、面会に嘔吐用のバケツをもって現れた人に「目立った異常は見られない」はないだろう


 入管のビデオ開示拒否の理由は二転三転している。
 まず入管が挙げたのは「保安上の観点」だ。「収容された人の中には罪を犯した者、例えばテロリストも含まれ得る。逃走を防止するため、施設の形状や巡回態勢、頻度、監視カメラの解析度など、具体的な状況は保秘の対象だ」というもの。7
 これに対し、野党側は非公開の理事懇談会での開示なら問題ないと主張。かつて刑務所内で起きた死亡事件をめぐり、衆院法務委員会でビデオ映像を公開した前例がある。

 入管庁はさらに「名誉とプライバシーの保護の観点」も理由にあげた。
 上川法相は「死亡されるまでの過程が逐一記録されている。亡くなられた方の名誉、尊厳の観点からも問題がある」(12日)と説明した。
 しかし、家族に対してもプライバシーを持ち出して拒むのはおかしい。

 18日の参院法務委員会で入管庁は、最終報告に向けて外部の識者らが調査中であることを盾に「三者の方々に先入観なしに調査してもらうことが困難になる恐れがある」という新たな理由を持ち出した。(朝日新聞20日
 ああ言えば、こう言う。かたくなにビデオ不開示にこだわる。

 それに最終報告を外部識者とともにまとめるというが、その識者の氏名を秘匿している。これでは客観性や公平性が担保されるはずがない。とにかく真相を隠したいらしい。
 そのうち、「ビデオは適切な手続きで消去しました」なんて言うんじゃないだろうな。

 元入管職員の木下洋一さんは、いま入管行政を変えようという運動をしている。私は彼の勉強会に2回参加したことがある。内部の人間だっただけあって、圧倒的な説得力があった。先日の新聞にこう語っている。

 《まず指摘しなければならない問題は、巨大な権限を持つ入管の「不透明性」です。「国家主権に関わるから」という理由で、入管は外国人に対して収容や仮放免の判断基準を明確にする必要も、処分理由の説明をする必要もないとされてきました。それに対して外国人は不服申し立てをすることができません。
 このため、収容や仮放免、在留特別許可などの処分や措置があいまいに決められているのが実態です。外国人の立場に立てば、理由や基準を知りたいと思うのは当然でしょう。
 入管法改正の理由として政府が挙げる送還拒否の増加は、不透明な行政への不信感によるものが大きいと思います。収容時の司法審査や、第三者機関による透明性のチェックなど、人権を土台にした施策の方が、長期的な不法残留者の減少につながると考えます》

 私が面会した被収容者のなかには、職員から「なまいきだ」と睨まれているから仮放免されないと訴える人がいた。客観的な基準を示す必要がないから、職員の個人的な感情が判断に入ってくる可能性が高くなる。木下さんの指摘する《巨大な権限を持つ入管の「不透明性」》である。

 現在の入管行政は抜本的に変える必要がある。その第一歩として、ウィシュマさんのビデオを全面開示させたい。