入管法改正案は可決成立したが・・

 入管法改正案は6月8日(木)に参院法務委員会で強行採決、翌9日(金)に参院本会議で可決、成立した。

 日本国民として恥ずかしい限りだ。

 廃案にすることには残念ながら失敗したが、国民の関心が高まり野党ががんばったこともあって、現在の入管行政、難民審査で起きている重大問題がボロボロといくつも白日の下に晒されたことは、収穫といってよい。

 ほとんどのテレビニュースが改正案可決の事実だけをごく簡単に報じるなか、10日(土)のTBS「報道特集と11日(日)のサンデーモーニングは独自取材をしてこの非道をしっかり伝えていた。

 「報道特集」では、入管職員による暴行が日常化している問題、今年1月に大阪入管の常勤女性医師が胆石の被収容者を酩酊した状態で診察した問題、前回のブログで書いた難民審査参与員の審査がまともに機能していない問題などを取り上げた。

 111人いる難民審査参与員のうち一人で5分の1から4分の1の件数(21年で1378件、22年が1231件)を審査した柳瀬房子氏について、実際に審査にあたっている参与員に意見を聞いた。

報道特集より

 柳瀬氏は、21年4月21日の衆院法務委員会で、申請者に難民がほとんどいないと発言、政府はこうした証言をもとに、難民でない人が難民申請を濫用しているとして、申請回数を原則2回に制限することの根拠にしてきた。

 参与員の一人で弁護士の伊藤敬史さんは、去年1年で担当した審査は17件。柳瀬氏の担当したとされる千件超の審査はとうてい「不可能」だという。

 また「申請者に難民がごほとんどいない」という柳瀬氏の発言には―

21年4月の衆院法務委で「入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません。私だけではなくて、他の参与員の方も約100名ぐらいおられますが、難民と認定できたという申請者がほとんどいないのが現状です」

 「一人たりとも取りこぼさないために参与員制度が導入されている。一人でも取りこぼしてしまって、その人が送還されてしまったら、拷問されたり、場合によっては殺害されたりするリスクがある。それをしちゃならない使命を負って職務に当たるわけです。非常に緊張感を持って本来ならば1件1件審査しなければならない。そう考えると(柳瀬氏の)あの件数というのは考えられない。」(元参与員の弁護士、北村聡子さん)とコメント。

報道特集より

 柳瀬氏は、書類だけでなく対面で審査する件数を、「一年間に90人くらい、100人までにいくかいかないか」と言っている。対面審査は1割未満にすぎない。

 また、柳瀬氏が「どこの国だって、日本にとって、その国にとって、都合のいい方だけ来てください、都合の悪い人は困ります、どこの国もしています。主権国家であれば。」(5月30日にある難民支援者との電話での会話)と語っていることについては―

 「移民の受け入れならば国益という視点をもってもいい。でも移民じゃない、難民なんです。そこは国益ということをはさんではいけない」(参与員の大学教授、鈴木江理子さん)

報道特集

 いずれももっともな批判である。

 日本政府は、難民でない人が難民に認定されるのを阻止することに注力しているが、難民条約の精神からいえば、難民なのに難民に認定されない人をなくすことを第一にすべきである。また、難民審査に国益をつよく押し出していることも国際基準から言えば失格だ。現在の難民審査は、いったん不認定になった人を救う難民審査参与員制度においても機能不全に陥っている。

 具体的なケースとして、参与員の書類審査で難民認定されなかったものの裁判を経てその決定が覆ったウガンダ女性が登場。この女性はレズビアンであるために警察に拘束され激しい拷問を受けた。皮膚移植が必要だったほどの怪我を負った。ウガンダでは同性愛は犯罪で、先月の法改正では最高刑で死刑が科されることになった。

 女性は3年前に来日してすぐに難民申請したが、迫害されるという訴えに信ぴょう性がないなどとして認定されず、2年前大阪地裁に訴えを起こした。そして今年3月、裁判所は国に対し難民と認めるよう命じる判決を言い渡した。入管の決定とは逆に、帰国すれば迫害のおそれがあると認めたのだ。ウガンダ人女性は裁判での勝訴を受け、今年4月ようやく難民と認定された。

 女性は、入管に行くたびにウガンダに帰れと言われつづけ本当に悲しく、うつとストレスが激しかったという。女性を支援してきたNPO「RAFIQ難民との共生ネットワーク」代表理事の田中惠子さんによると、女性は参与員による(書面審査だけでなく)対面審査を求めたが、入管が実施しないと決めたという。その理由は、女性の言うことが真実だとしても難民には該当しないというまったく理不尽なものだった。田中さんは難民申請している多くの外国人の相談に乗ってきたが、8割くらいが難民の可能性が高いとみている。

「真実であっても難民にあたらない」ともうムチャクチャ(報道特集より)


 今回の入管法改正では、難民審査の方法については何ら改正されていない。参与員への仕事の割り振りが恣意的だったり制度運用の問題が具体的に上がってきているのだから、制度自体の見直しが必要ではないか。

 「入管側が不法滞在の人を取り締まるという行政庁でありながら難民の審査をするという事務的なところを全て司っているところが一番大きな問題」(伊藤敬史さん)

 また、制度の抜本的な改革の前でも、「審査が適切に行われているかということを第三者の目でチェックできるような代理人の同席、あるいは録音とか録画をまず導入することによって(審査を)適切なものにしていく」ことができる鈴木江理子さん)という。

強制送還対象の外国人に暴行を加える入管職員の動画。三人がかりで腕をねじ上げられ、イタイ、イタイと悲鳴を上げる外国人。(報道特集より)

さらに床に押し倒し、脚の上に乗るなどして5人がかりで痛めつける。弱いものに対するあまりに一方的な見ていて怒りがわいてくる。(報道特集より)

 9日、入管法改正案が参院本会議で可決されたあと、国会前で抗議のシットインがあったので参加した

ミャンマーから逃れてきたミョーチョーチョーさんは9日の採決を知って泣いていた。’サンデーモーニングより)

ミョーさんは軍政への反対運動にも参加した(サンモニ)

 ウィシュマ・サンダマリさんの遺族弁護団指宿(いぶすき)昭一弁護士、「私たちが負けたんじゃない。負けたのは入管です。きょうは入管の終わりの始まりの日です」とこれからの闘いが大事だと集まった人たちに訴えた。

指宿弁護士「負けたのは入管です」(筆者撮影)

若い人が多いのが頼もしい(筆者撮影)

国会に向けて「これからも闘うぞ」と叫んだ(筆者撮影)




 施行までまだ1年ある。また現行制度でもやれることがある。帰国できない事情の人たちに特別在留許可を出させることは喫緊の課題だ

 ウクライナからの避難民にはすぐに就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」という在留資格を与え、生活費の支援もしているではないか。少なくとも同様の待遇を他の国の難民申請者に与えて安心して日本に滞在できるようにすべきだ。