自由を求める世界の若者たちに連帯を!

 お知らせです。

 今年の締めの【高世仁のニュース・パンフォーカス】を公開しました。《自由を求めて早稲田が燃えた日々―「川口君事件」を振り返る》です。

www.tsunagi-media.jp

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 今年は、ノーベル平和賞が言論、報道の自由のために闘う二人のジャーナリストに与えられ、バイデン米大統領が民主主義サミットを開いたことに見られるように、自由・人権をめぐる問題に焦点があたった一年だった。

 年末、今年を象徴するようなニュースが二つあった。

 29日、香港の代表的な民主派ネットメディアが弾圧され閉鎖に追い込まれた。あの民主派アイドルのデニス・ホー氏も関係者として逮捕された。

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30日朝日新聞朝刊

 独立系ネットメディア「立場新聞(Stand News)」が、幹部ら7人が逮捕されたことを受け、同日付でスタッフ全員を解雇し、ニュース配信を停止すると発表したのだ。

 「立場新聞」は、民主派メディアの中でも一目置かれ、尊敬される存在で、政府と民主派とのせめぎあいのなか、警察の弾圧の実態などでスクープを連発していた。
 私もこのメディアには注目していて、一昨年香港を訪れたとき、「立場新聞」記者の取材活動を紹介することが取材テーマの候補の一つだった。

 29日、《香港警察の国家安全当局は警官200人余りを動員し、立場新聞の編集室を家宅捜索。犯罪条例に反する扇動的な出版活動で共謀したとして立場新聞に関係する7人を逮捕した。香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によれば、29日に逮捕されたのは立場新聞の林紹桐・編集長代行や最近まで編集長だった鍾沛権氏ら。

 SCMPはまた、米議会で香港の状況について証言した歌手のデニス・ホー(何韻詩)氏と弁護士で元立法会(議会)議員の呉靄儀氏も立場新聞の元取締役として逮捕されたと報道。ホー氏の逮捕は同氏のフェイスブックで確認された。

 同条例違反では、最長2年の禁錮刑と5000香港ドル(約7万4000円)の罰金が科される。》https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-12-29/R4UU46DWRGG501

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Denise Ho (フェイスブックより)

 デニス・ホー氏については、このブログに紹介したことがある。

https://takase.hatenablog.jp/entry/20210630

 

 6月の『リンゴ日報』廃刊に次ぐ民主派有力メディアの弾圧である。

https://takase.hatenablog.jp/entry/20210702

 《リンゴ日報の廃刊直後、立場新聞は当局の摘発を避けるため、5月以前に掲載したブログや読者からの評論をすべて削除し、経営陣6人も自主的に退陣するなど当局側に歩み寄る姿勢も見せていた。

 しかし、治安機関を統括する鄧炳強保安局長は今月3日、立場新聞が2019年の反政府デモで警察に批判的な報道をしたことなどに触れ、「(警察に)偏見を持ち、誤解を招いた」と主張していた。》(朝日新聞

 立場新聞でさえ、当局に配慮して弾圧を避けようとしたが、中国共産党は容赦しなかった。香港のメディアにはどんどん中国資本の下におかれ、主要な新聞やテレビも政府批判を控えている。以降、批判的な報道は影をひそめるだろう。

 ネット空間を含めて中国「本土並み」の言論封殺の状況になる。あれよ、あれよという間に、香港はここまで来てしまった。日本を含めた海外からの支援、連帯がいっそう求められる。

 

 一方、ロシアでは、旧ソ連スターリン政権による粛清の犠牲者の名誉回復に取り組む人権団体「メモリアル」が、解散を命じられた

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31日朝日新聞朝刊

 《ロシア最高裁は28日、ロシアの人権団体「メモリアル」の解散を命じた。ロシア当局は2015年に同団体を「外国のエージェント(代理人)」に指定しており、これに伴う法律に違反したとして解散を命じた。メモリアルは活動を継続するために法的な手段を模索するとしている。

メモリアルは旧ソ連ゴルバチョフ元大統領が推し進めた「グラスノスチ(情報公開)」時代に設立。ノーベル平和賞を受賞した物理学者の故アンドレイ・サハロフ氏も設立に関与しており、1937─38年のスターリンによる大粛清を含む政治抑圧を記録してきた。1990年代のチェチェン紛争ではロシアの主な人権団体として活動したほか、最近ではプーチン政権による抑圧に対抗し、メモリアルが「政治犯」と認識する人のリストを公表するなどしていた。

検察官は裁判で、メモリアルは旧ソ連が「テロリスト国家」だったかのような誤ったイメージを拡散したほか、第2次世界対戦中の旧ソ連の行動の記憶を汚したと非難。メモリアルのこうした裏切り行為に「誰か」が資金を提供していたとした。

メモリアルは国外から資金提供を受けている事実を明らかにしており、ウェブサイトには、ポーランド、ドイツ、カナダ、チェコなどから資金を得ていると掲載。当局はこうしたことを根拠にメモリアルを「外国の代理人」に指定している。

メモリアルに解散命令が下されたことに対し、国際人権団体のほか米独などが非難。米国務省のプライス報道官がロシア当局に対し人権保護者の抑圧をやめるよう呼び掛けたほか、ドイツ外務省報道官も解散命令は「理解し難い」とし、深刻な懸念を表明した。》(ロイター28日)

 以前から「メモリアル」の活動家が暗殺される事件も起きていた。

https://takase.hatenablog.jp/entry/20090812

 

 プーチン政権は、ロシアの偉大な歴史を汚す団体や言動の取り締まりに注力しており、いくらでも解釈を広げられる規定で弾圧が広がっている。このロシアの偉大さには共産主義時代のソ連邦の歴史も含まれる。

 あの30年前の「民主化」は何だったのかと、年末、暗澹たる気持ちになった。
 しかし、私にとってはいくら不都合でも、私たちはこういう段階を踏んでいかなくてはならないのだろう。

 来年は、人権・自由の状況と逆流に抗して闘う人々を注視していきたい。
 自由を求める世界の若者たちに連帯を!

 

 今年もブログを読んでいただきありがとうございました。来年はホームページも立ち上げ、活動を広げていこうと思っていますので、どうぞよろしく。

 よいお年をお迎えください。

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年末のサイクリングロード。来年も自転車でたのしく遊びたい