事始めは観劇―芝居で近代化を問い直す

 明けまして、おめでとうございます。

 新年の事始めは、例年水族館「さすらい姉妹」の路上公演の観劇だが、今年は羽村市のお寺の境内で「のざらし姫」を観た。

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2日の夕方。東京からは夕陽が富士山に沈む美しい光景が見えた

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ステージは羽村市の宗禅寺の境内で3日14時から

 去年はコロナ禍で中止だったので2年ぶり。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20200104

 座長の千代治が「出雲の阿国」役で、彼女をとりまくかぶき者たちが奇想天外なストーリーで笑いをとる。慶長年間から皇紀2600年に時代がワープし、芸人たちは戦地慰問に中国大陸へ。そこからさらに武漢で正体不明の感染症発生と現代に飛ぶ。バテレン癲狂院731部隊、ブルシットジョブなどの言葉が飛び交って、時空を超えてのアナーキーな舞台に笑ってしまう。

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ミスワカナのように戦地慰問で人気者になろうぜ」。近代史の勉強になる・・

 ここ数年、抑圧と諦めが人びとを内向させ、寄る辺なく沈み込んでいくような雰囲気が社会に蔓延しているような感覚がある。

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今回の劇は序章で、5月にここ宗禅寺で仮設小屋を建てて本格公演を予定している。

 水族館劇場の公演は、そんな空気を吹き飛ばして人間の本源的なエネルギーに気づかせてくれる。彼らの劇にいつも元気づけられている。

 座付き作者の桃山邑さんは、日雇い労働をしながら1980年に曲馬舘という劇団に入り、以降、芝居と建設現場での仕事を続けてきたそうだ。

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桃山邑さんhttps://yokohama-sozokaiwai.jp/person/16352.htmlより

 新宿・花園神社や横浜・寿町では、自分たちで巨大な仮設小屋を組み上げ、大量の水を使った大掛かりな仕掛けで楽しませてくれた。

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桃山さんはじめ役者自らが鉄パイプを組み上げて仮設劇場をつくる。

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大量の水を使う演出が劇団の特徴だ

 桃山さんは、「なぜ僕らが存在をしているのか、人が生きていくということの根本、芸能をする根本を突き詰めて考え」、「(芝居を通じて)明治から続く近代化に対する抜本的な問いなおしをしたい」と言う。
 すばらしい。日本の世直しの前提は、近代化の問い直しだと私も思う。

 そしてミドルクラスのインテリを相手にしたアングラ演劇からの逸脱をめざして、こうも言っている。

 「やっぱり水族館劇場は)人間の原始的なものに根ざしているんではないですかね。このままグローバル化が進んでお金持ちの国だけがどんどん肥え太って格差が広がっていることに、ちょっと違う方向をみんなで目指しましょうよと。政治的な主張をしたいわけではありません。自分たちが間違っているということを前提にしなければ、僕はものを言わないほうがいいんじゃないかと思います。自分たちの主張が正しいということを前提にすると、時代が変われば通用しなくなってしまう」。 

 私も今年、腐った社会状況に自分なりに問題提起していきたい。年甲斐もなく、ちょっと「弾けて」みようかと思っている。そっちのほうが楽しそうだ。

 今年もよろしくお願いします。