内橋克人さんが亡くなった。
よくテレビでもコメントしていたから、お顔は知られていると思う。
《日本社会の経済格差を批判し誰もが安心して暮らせる社会の実現を訴え続けた経済評論家の内橋克人さんが1日、急性心筋梗塞のため神奈川県内の病院で亡くなりました。89歳でした。》(NHK)
民衆の立場に立つことを明確にしていた方だった。お歳を考えると仕方ないが、惜しい方を失った。
私は番組の打ち合わせで、鎌倉のご自宅に内橋さんを訪ねたことがある。熱を込めて日本の政治を糾弾しておられた。内橋さんのように、いつまでも青臭くラディカルでありたいものだ。
そのとき、うちの会社(㈱ジン・ネット)が制作した報道番組を激賞してくださったことが忘れられない。とても励まされた。
ご冥福をお祈りします。
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急遽、総裁選には出馬しないと菅首相。「新型コロナ対策に専念」するため(笑)だそうだ。
8月24日には、二階派が派閥を挙げて菅再選を支持すると発表し、菅首相の続投濃厚かとの見方もあったのに、この急変。日本中からのブーイングが届いた感じだ。
予想される候補者のなかでは、石破氏が一番マシに思えるが、誰が首相になっても菅氏よりはまともだろう。(あ、高市氏は除く)
菅氏の顔を、10月以降日本の首相として見ないですむのはうれしいが、菅氏よりまともに見える首相が登場することで、総選挙が自民有利になるのは困る。そこはきっちり、これまでの政府の成績表を突きつけなければ。アベノマスクなんて笑い話も思い出して・・。
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このところ、最高気温が20度ほどまでしか上がらず、肌寒い。秋だなあ。
あちこちにセミが仰向けに死んでいる。必ず仰向けなのはなぜか不思議だったが、死ぬと脚が硬直して関節が曲がり体を支えていられずひっくり返るかららしい。
「かわいそうだな、命が短くて」と同情されるセミ。
アブラゼミの場合、成虫になってからは2~3週間の命といわれている。その間、あわただしくオスは精一杯鳴いてメスを呼び、次世代の卵を残して生を終える。そこだけを見ると「あわれ」と無常感が漂う。
セミは世界に1600種いて、ほとんどが熱帯に生息する。日本には32種いて、うち約20種は奄美・沖縄地方にすむという。姿かたちも、生態も鳴き声もいろいろで、沖縄のイワサキクサゼミは早ければ2月には鳴き始めるし、対馬のチョウセンケナガニイニイが現れるのは10月中旬になってから。
(イワサキクサゼミは日本最小のセミで1.5cm、木ではなく草の葉にとまって鳴く)
(チョウセンケナガニイニイは全身にいっぱい毛がはえている。寒さ対策か?)
短い命というけれど、実はセミは昆虫の中では抜群に長命である。
例えば、蝶のヤマトシジミは卵が孵化し、幼虫から蛹(さなぎ)を経て成虫になるまで1カ月もかからない。そして成虫になって1週間ほどで死ぬ。
エンマコオロギは、5月ごろ孵化し、2カ月ほどで成虫になり、2カ月ほどで死ぬ。
これに比べるとセミはすごい。アブラゼミは地中で5~6年ほど過ごし、その間4回脱皮してから地上に上がってきて羽化し、成虫になる。
今年6月ごろ、アメリカでセミが数兆匹大量発生のニュースが報じられた。今年が17年周期のセミの羽化の年に当たったからだ。いわゆる「周期ゼミ」で、13年周期のものが3種類、17年周期のものが12種類分かっているという。つまり最長17年も土の中で生きているのだ。
セミの「はかない命」に同情する人間に対して、セミが言葉をしゃべれるなら、こう言うかもしれない。
「私たちの生きる主な舞台は土の中。そこで長寿を楽しんでいるんだ。地上に出るのは、蝉生(ぜんせい)の最後に子孫を残すため。かわいそうだなんて同情してもらわなくてけっこう。」
人間が勝手に、地上で生きるのがセミにとって「幸福」のはずだと、自分の価値観を当てはめているだけなのだろう。
ふと、セミでなく、人間に対してもおのれの価値観を押し付けていないか、反省させられる。
「あの人は、体に障害を持っているからかわいそう」、「片親しかいない不幸な人生だ」などなどと。それこそ余計なお世話である。
セミは生を全うして死を迎えたのである。