菅義偉氏の乱暴なメディア操作

 きょう、国立映画アーカイブの企画「逝ける映画人を偲んで」の映画を観てきた。

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京橋の国立映画アーカイブ。こんなに大きな京マチ子の写真が街頭にあるのがうれしい。

 これは「日本映画の輝かしい歴史を築き、惜しまれながら逝去された映画人の方々を、それぞれの代表的作品を上映することで追悼する」企画。ここ1〜2年で亡くなった映画人、大林宣彦宮城まり子宍戸錠、渡哲也、梅宮辰夫、高島忠夫などに縁のある55作品が上映された。

 5日のきょうは最終日で、京マチ子主演の『雨月物語』(溝口健二監督、1953年)と『大阪の女』(衣笠貞之助監督、1958年)の2本が上映された。シニア料金がなんと310円!ありがたい。

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 『雨月物語』では、亡霊となって男を誘惑。この世のものではない、文字通りの「魔性の女」を演じた。

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大阪の貧しい芸人たちが肩を寄せ合うように暮らす横丁に、あでやかに咲く花のような娘、お千。騙され、傷つけられても、お千はあくまで明るく、健気に生き抜いていく。さわやかな人情話。

 私にとっては、京マチ子ほど華のある、色っぽい女優はもういない。あらためてご冥福をお祈りします。

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 菅政権退陣を前に、備忘録として、いくつか振り返っておきたい。

 退陣を表明した菅氏は、安倍前首相と同じく、人事で首をすげ替え、組織を脅し上げる手法で知られる。あるテレビ番組で元総務大臣片山善博氏が、安倍・菅時代に霞が関(官僚機構)は平気で文書改ざんを行うまでに破壊されてしまったと嘆いていた。

 安倍・菅両氏は、マスコミに対しても手を突っ込んできたことで知られる。

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 菅氏が関与した「事件」で有名なのは、官房長官だったときのNHKクローズアップ現代」での出来事だ。
 国谷裕子キャスターに、安保法制に関して厳しく質問され、菅氏の要領の得ないダラダラした答えが尻切れのまま放送が終わりになった。ごまかしがきかない生放送で、ちゃんと答えられないのは自分の力不足なのに菅氏は激怒、国谷キャスターが理由も告げられず降板になった。

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 今年2月10日には、NHKニュースウオッチ9」の有馬嘉男キャスター(55)と、「クローズアップ現代+」の武田真一アナ(53)という“二大看板”の降板が発表された。局内では「菅政権の怒りを買った2人が飛ばされた」と見られているという。

 有馬キャスターの方は、昨年10月26日臨時国会開幕日、菅首相が生出演した際のやりとり。

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 日本学術会議をめぐる問題で、有馬氏が「国民は納得できる説明を求めている」としごく当然の質問をしたのに対し、菅首相がまともに答えないため、有馬氏が同様の問いを繰り返すと、菅氏はイラっとした様子で「説明できることと、説明できないことがある」と言った。菅氏の怒りが有馬キャスターを降板させ、パリに飛ばしたという。

 武田アナは1月19日放送の『クロ現+』で、自民党二階俊博幹事長をインタビュー。 

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クロ現予告

 新型コロナ対策について、武田アナが「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と、これまたごく常識的な質問をしたところ、二階氏が「いちいちそんなケチをつけるもんじゃないですよ」と不機嫌そうに答えた。首相の後ろ盾、二階氏の不興を買ったことで、武田アナは降板、大阪に単身赴任になったという。
https://bunshun.jp/articles/-/43713週刊文春より)

 菅氏のマスコミに対する脅迫事件とされるものは、民放を含めいくつもあるが、五輪を巡っても不可解な出来事があった。NHK世論調査の設問が全面的に変更された事件である。

 1月13日、NHK東京五輪・パラは開催すべきかの世論調査結果(1月9日~11日調査)を公表。「中止すべき」が38%、「さらに延期すべき」が38%で、「あわせると77%になりました。『開催すべき』という人は16%で、同じ質問をした去年10月と12月から減り続けています。逆に『中止すべき』、『さらに延期すべき』という人は、いずれも増えています」と伝えた。

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1月の世論調査

 翌14日、東京五輪大会組織委員会森喜朗会長が怒っているとの情報がNHK幹部に伝えられたという。
 これがNHKを揺さぶった。

 15日、すでに予告されていた1月24日のNスペ「令和未来会議 どうする?何のため?今こそ問う 東京オリンピックパラリンピック」が急遽中止になる。収録を2日後に控え、スタジオセットの建て込みも始まり、100人を超える出演者に対する依頼も終わって本番を待つばかりだった。現場の驚愕は想像に余りある。結果、番組は2カ月後の3月21日に放送された。もし1月にこの番組が放送されていれば、世論形成にかなりの影響があっただろう。

 さらに2月、こんどは世論調査の質問文が大きく変更された

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2月の世論調査。質問が全面的に変更された

 2月5日~7日に行われた世論調査ではまず、「東京オリンピックパラリンピックの開催まで半年を切りました。IOC国際オリンピック委員会は、開催を前提に準備を進めています」と開催を前提とした上で、「どのような形で開催すべきだと思いますか?」というきき方になっている。そして開催の仕方三つを選択肢として提示し、「さらに延期すべき」ははずされた。

 結果、「無観客」を含め「開催」の合計が55%で、「中止」の38%を大きく上回って、1月から逆転したかのように見えるようになった。

 世論調査とは、質問を同じにして人々の意識変化を追うことに意味があり、質問自体を変えてしまっては、それ以前との比較ができなくなる。ここまでくると、世論調査を操作したというしかない。

 菅氏はメディア界の常識も破壊してきたのである。

 

 では、今日の朝日歌壇(永田和宏選)からも備忘として―

言霊の国の総理が挨拶の言葉とばして原爆忌終ふ (神戸市 松本淳一

記者が問い総理が答える「責任」の意味の重なることなき会見 (観音寺市 篠原俊則)

安心と安全だけを繰り返す機械のような淋しき宰相 (横浜市 森 秀人)