このところ飛鳥時代を勉強している。
「日本」という国号を使うようになり、大王(おおきみ)から天皇に変わったこの時代、つまりニッポンのはじまりがどうだったのかを知ることで、日本という国柄を理解したいと思ったからだ。
これは東京・府中市のけやき通りにある「万葉集」の歌碑。
万葉集巻十四東歌の武蔵国の一首で、女性が詠んだ恋歌だという。
武蔵野の草は諸向(もろむ)き かもかくも
君がまにまに 吾(あ)は 寄りにしも
武蔵野の草が、あちらへもこちらへもそれぞれになびくように、あなたのお心のままに 私は寄り添いましたのに
相手の男は浮気性でふらふらしているのか。恨み節もまざった恋歌だろうか。
東国の武蔵国からの歌はほとんどが恋歌だという。
「万葉集」について無知な私が意外に思ったのは、女性の詠み人がなんと多いかということだ。
「防人」(さきもり)の歌もある。防人とは徴兵だが、このあたりから関西の難波まで陸路で1ヵ月かかり、そこから船で九州へと向かったという。無事に帰れるか分からぬ別れのつらさは今の時代からは想像を絶する。
その防人の歌も、半分(武蔵から12首中6首)は妻によるものだという。相聞歌になっているものもある。
待てよ、そうすると、歌碑のように、万葉仮名で詠んだわけだから、女性も漢字が書けたのだろうか。まさか・・
防人に徴兵されるのは特権階層ではないはずだから、この時代、平民でも、そして平民の女性でも、漢字の万葉仮名を使って歌を詠んだのか。だとすれば、すごいことだ。
字が書けなかったとしても、7世紀、8世紀あたりで、平民の女性が男性と対等に詩を詠みあった民族、国家が世界にあっただろうか。
がぜん、おもしろくなってきた。
以前、和辻哲郎の本で、「大化の改新」の後の法令によれば、「五歳以下のものを除いて男子に一人あて二段、女子にその三分の二の『口分田』を給せられる」と知った。小児や女性にも土地を与える点は日本独自で、班田収授の制度を輸入した中国大陸とは大きく異なっているという。(『日本精神史』P23~)
当時の日本では、女性たちは、今の時代より堂々と生きていたのではないか・・・
すごい発見をしたような思いになり、楽しくなった。
(もし私の推測が間違っていたら、どなたかご教示ください)
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東京で一日の数字として最高となる224人の新型コロナの感染者が出た。
いま起きている事態は、これまでのクラスター対策では不十分だということを示している。ホストクラブをモグラ叩きしてもおさまらない。誰でもどこででも感染する可能性を前提とした対策をしなければならない。
ここで決定的に重要なのは検査だ。
どこかの施設や店舗で感染者が出たとしても、そこのスタッフや出入り業者の検査を徹底すれば、全面休業をせずに、非感染者で運営、営業を続けることができる。
「経済との両立」と医療崩壊への備えという観点から、会社や学校、医療機関などで検査を拡大し、感染者の隔離を早期に行う体制を整えるしかない。
地域によってはローラー的な検査も導入する必要があるだろう。
こうした対策を早急に具体化すべきだと思う。
小池都知事は感染者急増の要因として「検査件数の増加」を挙げる。たしかに一時よりは増えているが、それでも国際的にはまだ桁違いに少ないレベルだ。
もう半年も前から、専門家からもメディアからも改善策が提案され、安倍首相自らが検査能力の拡大を約束したのになぜ?
ずっと不思議に思い、このブログでもその理由について何度か書いてきた。
(たとえばhttps://takase.hatenablog.jp/entry/20200502)
きょうは、PCR検査が日本でなぜ増えないのか、その「真相」として、もっとも説得力があると私が思う説を紹介してみたい。
まず、ここ1週間、どのくらいのPCR検査が行われているのかを、厚労省のホームページで見てみよう。
数字は1日当たりの検査人数。ただし一人に複数回検査を行う場合があるのでこれは延べ人数で実数ではない。空港検疫の検査数(通常は1日千人から二千人)は除いた。(なお、7月3日の数字は発表されていない)
1日(水) 6,564人
2日(木) 5,460人
4日(土) 3,134人
5日(日) 2,618人
6日(月) 8,228人
7日(火) 7,099人
8日(水) 7,725人
1週間の平均を計算すると1日あたりおよそ5800人となる。
厚労省の発表では、7月7日時点での、PCR検査の1日あたり最大能力は31,494件だという。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12339.html
キャパの2割くらいを使っていることになる。
検査実施件数は以前よりは増加しているものの、その伸びは、期待外れだ。4月でも、検査実施人数が―空港検疫を含めてだが―1日1万人を超えた日があった。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20200415
やろうと思えば一気に検査数を増やしている国々があるではないか。
日本では、なぜPCR検査が増えないのか?
安倍首相はその原因について「人的な目詰まりもあった」という表現で、設備や薬剤などいわゆる「ハード」の問題ではないことを示唆した。
5月4日、《安倍首相はPCR検査について「人的な目詰まりもあった。実行は少ないというのはその通りだという認識をもっている」と述べた。同席した専門家会議の尾身茂副座長も「日本はPCRの件数を上げる取り組みが遅れた」と話した》(日経)(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58781100U0A500C2NN1000/)
「人的な目詰まり」と聞くと、なるほど検査には特殊な技術が必要で、そういう人材を養成するのに時間がかかるのか、と思ってしまうが、そうではない。検査に特殊技術は必要ない。
まず、検査を仕事にしている民間企業を使えばいい。韓国では1社で1日1万件の検査をこなす大手をはじめ多くの民間企業が検査を担っている。
日本には民間の臨床検査会社が600社以上あるという。https://takase.hatenablog.jp/entry/20200220
また、検査技師がいらない検査法もある。日本企業「プレシジョン・システム・サイエンス社」は、ボタン操作で全自動のPCR検査機器を製造しており、2時間で12検体の検査が可能だという。フランスもこの会社の技術を使っている。Https://takase.hatenablog.jp/entry/20200510
ところがいずれも日本では十分には利用されていない。
これまた「人的な目詰まり」のためのようだが、その真相について、月刊誌『選択』6月号が興味深い記事を載せている。結論は―
《「人的な目詰まり」とはスバリ、厚生労働省健康局結核感染症課、国立感染症研究所(感染研)、保健所・地方衛生研究所(地衛研)から構成される「公衆衛生ムラ」によるサボタージュだ》(『選択』6月号P110)
なんと、原発における「原子力ムラ」のような巨大利権集団の存在が、PCR検査が増えない背景にあるという・・・
《厚労省関係者は「民間の検査会社や大学に頼めば、PCRは幾らでも増やせたのに、カネと情報を独占するため、あえてやらなかった」と打ち明ける》(同上)
(つづく)