PCR検査強化に大学学長が「蜂起」呼びかけ

 きょうは真夏日になった地域もあったようだ。暑い。

f:id:takase22:20200502154542j:plain 今はステイホームとかで家にいる時間が長いから、番組視聴率が軒並み上がっている。コロナ情報を求めてか、報道、情報系番組が健闘している。

 4月20日~26日の関東地区ランキング1位はテレ朝の「ポツンと一軒家」(制作は朝日放送)で22.9%。番組始まって以来の高視聴率を記録した。
 しかし、《視聴率20%台連発の『ポツンと一軒家』に大きな落とし穴! ロケ不能で“ストック切れ”目前》(日刊サイゾー)で指摘されるように、再放送でしのぐしかなく、これからどうなるのか。多くの番組に共通の大問題だ。
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 速達が届いて、新潟県の地方紙『新潟日報』の4月30日朝刊が送られてきた。社説の下の「座標軸」というコラムにジン・ネットのことが取り上げられている。

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 書いたのは論説編集委員の原崇さん。
 1997年に拉致問題が破裂した後、横田めぐみさんの拉致現場だった新潟県のメディアは精力的に動いた。原さんとは取材現場でよく顔を合わせた。
 2002年の小泉訪朝では、平壌からの吉報を待っていた被害者家族に「8人死亡」が告げられ、その場でカメラを回していた私たちも驚き涙にくれた。当時取材にあたっていた人たちとは共通の体験があり、「戦友」という思いがある。
 コラムは過大評価もいいところだが、ありがたいはなむけとして読ませていただいた。

 同じ30日朝刊の物故者欄に、これも原さんによる李英和(リ・ヨンファ)さんの追悼記事が載っている。

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 ジン・ネットが李さんにインタビューした回数は、おそらく20回くらいにはなるだろう。
 RENK(救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク)を立ち上げ、朝鮮総連からはエネミーNO.1の扱いを受けた。
 「1994年、私が所属していたRENKの集会(集会側30人弱)に朝鮮総連(200人以上)が襲撃し、暴力的に潰されたことがあった」と語るジャーナリストの高英起(コウ・ヨンギ)さんは、20年以上妨害、嫌がらせを受けているという。李さんと高さんはともに、総連が番組に出演させないようテレビ局に圧力をかけた「反共和国」分子だった。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20140208
 また李さんは、朝鮮学校の無償化に反対する数少ない在日コリアンでもあった。勇気ある行動の原動力は、平時において殺されるづける北朝鮮の民衆への連帯だったと思う。北朝鮮と総連の闇を明らかにすることに大きく貢献した李さんのご逝去にあたり、感謝と哀悼の意を表したい。
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 この間の報道などから、コロナ関係で情報の整理をしておきたい。
 PCR検査がなぜ進まないのかについていくつかの番組で取り上げていた。

f:id:takase22:20200502204155j:plain報道特集より)

 政府は検査数を増やす増やすと言っているが、実際は増え方が鈍い。ようやく民間検査会社も使うようになったが、いま1万5千件超のキャパのうち半数も実施できていない。

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厚労省28日提出資料から共産党小池晃事務所作成

 「モーニングショー」が民間検査会社5社に問い合わせたところ、3社はフル稼働中だが、2社は余力があり、うちA社は「一日40件検査可能なのに先月3件検査しただけ。開店休業状態で歯がゆい思いだ」とのこと。C社は「先月に検査受託を開始したが、初検査はちょうど1ヵ月後だった」といい、民間検査会社が生かされていない理由を「保健所(帰国者・接触者相談センター)が検査するかを判断するとき、空き病床数を加味していると思う。病床数が少ないと、検査に回せないのが現状だ。軽症者の待機場所が増えたので、検査数も増えるのでは」と答える。
 陽性者全員を入院させる(たくさん陽性になると病床がパンクする)という当初方針の影響がいまだに残っていることがうかがえる。

 また、「(一部の)コロナ指定病院では、検査を民間ではなく地方衛生研究所にゆだねるという意識が強い。感染症は国が担うものだという意識が強い」(検査会社担当者)との声もある。国立感染症研究所の前身が、陸軍と関係の深い伝染病研究所(伝研)で、感染症の情報を独り占めする傾向があると指摘する医師もいる。

暴走しかねない日本版CDC設立には冷静な議論が必要 | 大阪府保険医協会


 コロナ対策の指揮をとる人々の閉鎖的体質も背景にあるのかもしれない。

 よく指摘されるのが保健所の人手が足りないという問題。
 このブログでも指摘したが、経費削減で保健所の体制が弱体化している。いま468ヵ所で過去20年で2割減。
 検査を相談しようにも保健所に電話がつながらないのでは話にならない。
 保健所の現場からは「人員・予算もなく保健師の多くが疲弊している」「ほぼ全員が24時間対応せざるを得ない」「精神的にダウンする職員が増えそうだ」との悲痛な声。
保健所のコロナ対応業務は、電話対応/検体の採取・運搬/健康観察/病院での調査/消毒や火葬についての指導などなどと多岐にわたる。
 これではスタッフは身が持たない。仕事が膨大で、乳児健診など通常業務がまったくできないという。保健所の機能は崩壊している。

 そもそも、検査するかどうかの判断をする入り口に保健所をかませるシステムにしたことが間違いだったのではないか。余計な労力を保健所に押し付けると同時に、検査までの無駄な時間を浪費させた。
 実際には、政府の検査拡充の掛け声にもかかわらず、今なお4日ルールはじめ厳しい条件をクリアしないと検査させないところがあるという。(共産党の調査)
https://www.excite.co.jp/news/article/Gendai_630450/

 「モーニングショー」では以前から、検査の入り口には保健所を関与させず、結果だけを保健所に報告するシステムを提案している。実際にこれから稼働する医師会などの新システムは保健所を介さないことになる。

 問題は検査用の試薬が足りないという情報だ。
 とくに足りないのはRNA抽出用の試薬だという。モーニングショーによると、主にヨーロッパで製造されているので発注から納品まで3~4週間かかるうえ、世界中で需要があり発注もむずかしいという。
 小池都知事も試薬が足りないと言っていたが、一方で、こんな報道が・・

 《朝日新聞によると、厚生労働省は韓国製の新型コロナ検査(PCR検査)キットの日本国内の使用の可能性についての質問に「韓国製キットは性能が具体的に把握されていない」とし「日本のPCR検査と同等の正確度をもっているかなどを確認しなくてはならない」という立場を明らかにした。

 すなわち、韓国メーカーが生産した新型コロナ検査キットを日本国内で使うなら、まず“国立感染症研究所による性能評価を受けなければならないというのが厚労省の説明である。
 厚労省は“PCR検査に使用する試薬などが不足になる可能性がある”という指摘にも「一部の製造メーカーではそういうことがあっても、全体的には不足にはならない」と一線を引いた。》

 韓国はいま国を挙げて検査キット、試薬を生産し世界各国に輸出している。
 だが日本政府は、韓国製など性能がわからないからすぐには使わない、しかも試薬は不足していないというのだ。
 不足しているのかしていないのか、不足していたらどんな解決策があるのか、政府が情報を出さないので、このあたりもっとメディアに報じてほしい。

 人手不足の問題も指摘されるが、これを解消する全自動検査機というのがあって、すばらしい性能らしい。
 スイスのロシュ社のPCR検査システムで、すでに国内の(民間含む)検査センターや大学病院が導入しているという。

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モーニングショーより

 フル稼働させたら一日で7万6000件検査可能だという。

 新型コロナ検査の時間短縮については研究開発が進んでおり、モーニングショーが紹介した長崎大安田教授らの開発した「蛍光ランプ法」というシステムは、検査の前処理から判定まで、従来のPCR検査法が4~6時間かかるのに対してわずか35分ですむという。
 「蛍光ランプ法」システムはすでに長崎市に停泊中のクルーズ船の乗員623人の検査にも使用され、現在長崎県の主要な医療機関で導入しているほか、ドライブスルー検査でも使用しているとのことだ。


 そんななか、「PCR 検査体制強化に今こそ大学が蜂起を! 」という目を疑うような檄文を大学の学長が書いている。
 「このような惨憺たる状況に陥った要因をデータに基づき解明し、国難を乗り越えるための方策を示したい」。
 地方の大学病院が立ち上がれと檄をとばすのは山梨大の島田眞路学長だ。

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 全国には、第一種感染症指定医療機関が16施設、第二種感染症医療機関が28施設ある。それぞれのところには技師や医学研究者など多くの医療関係スタッフがいる。本気でやれば「ものすごい数検査できる」という。

https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2020/03/6bf1e59badd192ea0597a659e94a9d59.pdf


 メディアの名前が「医療維新」。コロナ禍のなか登場した「国士」?!

 島田学長については「モーニングショー」のほかTBS「報道特集」も取り上げていた。

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報道特集」より

 島田氏は、2002年から03年にかけてのSARS流行のさい、山梨大学医学部附属病院で感染対策委員長を務めた。その経験から、この1月にはすでに対策を講じ、コロナ患者専用の病床を用意し、院内でPCR検査ができる体制を整えていたという。ダイヤモンド・プリンセス号の患者も受け入れていた。

 政府のあまりの後手後手ぶりに業を煮やし、地方から「蜂起すべし」というのだ。

 その政府はというと、一日2万人の検査をやると言ったのだけれど・・・
 《加藤勝信厚労相は30日の参院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染を確認するPCR検査に関して、1日当たりの処理能力を現在の1万5000件から2万件に拡充するが、「2万件検査するとは言っていない」と発言した。小池晃委員(共産)への答弁。》(ロイター)

www.jcp.or.jp


 処理能力を2万件にするが、2万件検査するわけではない??なんだこの答弁は。
 危機感も当事者意識もない閣僚ばかりだ。やはり「蜂起」しないと。